01
目をゆっくりとあける。
まず、わらが見えた。
それから茶色い毛・・・イーブイの毛。
やっぱり。
体、イーブイのまんまだ。
横向きで寝ていた私は、仰向けになって天井を見上げた。
ボウル状の丸い天井。
目のはじには、光の入ってくる窓がある。
頭がぼうっとする・・・。
プールで泳いだ後のように、頭の奥ががんがんと痛む。
昨日は沢山のことがありすぎて疲れた。
目を開いていることにさえ、エネルギーを使うようだ。
もう一度寝むりたい。
開いた時とおなじようにゆっくりと目を閉じる。
暗くなっていく世界を眺めながら、私は思った。
このまま寝て起きたら、なにもかも元どうりならいいのに。
面倒なことはなかったらいいのに・・・。
朝の光が顔に降り注ぐ。
目を閉じていても眩しいほどだ。
まだねむい。けど・・・。
もう一度寝る事はさすがにだめだよな・・・。
私は起き上り、近くにあった水で顔を洗った。
頭痛は前よりも良くなっていた。
だが、まだ若干ぼうっとする。
いやいや、二度寝はまだしも三度寝はだめだ。
そう言えば・・・。
昨日のポケモン、キイっていったっけ。
確か一緒に救助隊やることになったんだよね。
キイはどうしてるだろう?
外に出てみようか。
もしかしたら会えるかも。
救助隊活動が楽しみで、早く起きすぎて玄関前で寝てたりして。
私は苦笑する。そんなことないか。
私は玄関へ向かった。
廊下とかはない造りになっているから、昨日来たばっかでも迷わない。
ドアはしっかりした木を集めてつくられている。
私は頭で押すようにして、ドアを開けた。
しかし、ドアは開かなかった。
何かにさえぎられているようだ。
「・・・?」
私はドアの隙間から、外の様子をうかがった。
視界の80%をしめるものは、見覚えのある黄色いものだった。
「キイイイイイ!!」
「・・・ピ!?ってルノ。なんでこんなとこにいるの?」
力任せにドアをこじあけると、キイは驚いたように目を開いた。
「あ、そうだ・・・。ボク、楽しみで朝早くおきすぎちゃったんだ・・・。」
そんなことあったよ!
救助隊活動が楽しみで、早く起きすぎて玄関前で寝てたりしたよ!!
「そうだ、ポスト!ボク、ルノの事待ってたんだ!」
キイははじけるように立ち上がると、ポストの方向へ走って行った。
待ってなくてもよかったのに。
「昨日結成したから、今日はあれが届くはずだ・・・。」
『あれ』?
「やっぱりあった!救助隊スターターセット!」
キイが取り出したものは、四角く青い箱だった。
プラスチック・・・?
「なんかこの世界ってさ、科学が発展してるのか発展してないのかよくわかんないよね・・・。」
「なんか言った?」
「いやあ、なにも?続けて。」
キイが箱を開ける。
そこには茶色い皮でできたバックが入っていた。
他にも細かいものが色々あるが、それはキイに任せよう。
「これは救助隊バック!道具とか木の実とかが入れられるよ。」
そう言うと、キイは木の実を三つ取り出した。
バタフリーと呼ばれてた蝶々からもらったものだ。
「バタフリーさんからもらった木の実はここに入れとくね。」
木の実はキイの手を離れ、バックの中に入って行った。
キイはバックを地面におくと、次に翼のような飾りが付いたバッチを取り出した。
「救助隊バッチ。救助するポケモンにかざすと、広場に返すことができるすぐれものさ。」
やっぱ、わかんない・・・。
あれか、科学じゃなくて技とかそういうものか?
それともボールの赤い光と同じようなものなのかな・・・。
「救助隊バックは、ランクが上があがるともっと大きいものに変えてくれるんだ。救助の邪魔にならないよう、小さいサイズで多くの物を入れられるようになってるやつ。」
キイが説明を続ける。
「ランクは救助隊バッチの色で表わされるんだ。今はまだノーマルランクで赤色だけど。いつかきっと、ゴールドランクになって見せる。それがボクの夢なんだぁ・・・。」
キイはどこか夢見がちな目になり、バッチを見つめた。
「ふーん。」
夢、かあ・・・。
私の夢はなんだったっけ。
忘れちゃった。
ぜーんぶ・・・。
「他に救助依頼は・・・ないの・・・かなあ・・・。」
キイはポストのふたを開け、中を探るように目を動かすと、がっかりしたように溜息をついた。
「ないよね・・・。昨日結成したばっかだもんね・・・・あはは。」
キイは力なく肩を落とす。
なぐさめる?なにそれおいしいの。
ばさ!
「・・・ん?」
ばさ!ばさ!
キイが顔をあげた。
私も空を見上げる。
ばさ!ばさ!ばさ!
青い翼、黄色い大きなくちばし。
あれは・・・ペリッパーだ。
「お届け物ダヨ!」
カラン。軽い音をならしながら、郵便物はポストの中に入った。
ばさ!ばさ!ばさ!ばさ!
目を輝かせるキイを見ながら、ペリッパーは飛び立っていった。
「救助依頼かもしれない!ルノ、ポストを見てみて?」
「・・・なんで私?」
「いや・・・いざとなると緊張しちゃって・・・。」
なんという・・・。
私はあきれながらポストをのぞく。
白い横長の封筒が入っていた。
それを取り出して封を切ると、なかからやたらカタカナが使われている手紙が出てきた。
「読んで読んで!」
キイが子どものようにせがむ。
まあ、私も年齢的には子どもなのだけど。
「うーん・・・読みにくいな。じゃあ読むよ。」
私は手紙を読み始めた。
ビビビ!
キミタチノ コトハ
キャタピーチャン カラ キイタ。
タノム。タスケテクレ。
コイル ガ ピンチ ナノダ。
ドウクツニ フシギナ デンジハガ ナガレタヒョウシニ・・・。
コイル ト コイル ガ クッツイテ シマッタノダ。
レアコイル トシテ イキテイクニモ イッピキ
タリナイシ コノママデハ チュウトハンパ ダ。
オネガイダ。タスケテクレ。ビビビ。
− コイル ノ ナカマ ヨリ −
よ、読みにくかった・・・!
「ルノ!」
手紙を読み終わると、キイがきらきらした目で私を見た。
「・・・はいはい、救助ね。初めての。」
「さあ、早く行こう!」
キイは新品のカバンを肩にかけ、私を待たずに駆け出した。
・・・リーダーっていったいなんなんだ・・