05
ぱこん。
森に、かわいた音が響いた。
「・・・!?」
リンゴが頭にあたったポッポは、ふらふらと回る。
けど、まだ倒れてないようだ。
当たり前だよな・・・。技じゃないもの。
「いけ!キイ。」
「って、ボク!?」
キイが驚いてぽっぽを見つめる。
「ポー!!」
ポッポが翼を広げる。
さっきより姿勢が低かった。
「あ、早くやんないとやられちゃうぞ。」
「やっぱ人ごとなのね・・・!」
当たり前だ。
「う・・・うおおおおおお!!」
キイが走る。
お、体当たりか?
ごん!!
「ぽっ・・・!!」
腹にキイの体当たりをくらったポッポは、近くの木まで吹っ飛ぶと、首をたれて動かなくなった。
「殺ったか・・・。」
「物騒なこといわないでよ!」
キイが目を回しながらキャタピーに近寄る。
ていうか自分もダメージくらってどうする。
「ふええ・・・怖かったです・・・。」
キャタピーが、助けに来たキイに抱きつ・・・
・・・かなかった。
きらきらと目を輝かせ、私を見つめる。
「カッコイイ・・・!」
じょうだんじゃねえええ!!
「本当に、ありがとうございます!!」
私は、小さな森の入り口に立っていた。
あの巨大な蝶々と、キャタピーの前で。
「このこも無事で・・・もうなんとお礼をもうしたらよいか・・・。」
「いいよいいよ。お礼は。最近なぜか地震とか多くてキケンだしね。」
キイが答える。
そして私は・・・キャタピーの視線を受けていた。
こ、これは。
AKOGARE目線!
「・・・ルノさん・・・ですよね?」
AKOGARE目線をやめずに、キャタピーは口を開いた。
「ぼく・・・ルノさんみたいになりたいです。」
ほお。
「カッコイイ!」
「あの、これ、少しだけですが・・・。」
え、おい。お母さんのほうもすこしだけAKOGARE目線じゃないか!
そうした二つのAKOGARE目線に少しおされながらも、私はお礼を受け取った。
三つの木の実だった。
それを見て、キイが言う。
「え・・・!おれいなんていらないよ!」
「いいえ・・・助けていただいたのだから。」
蝶々はすこしほほえむと、キャタピーをちらりと見た。
「では、キイさん。」
「ルノさん!」
「「ありがとうございました。」」
大きな蝶々と、キャタピーは帰って行った。
キャタピーの方は、最後まであこがれの目線をやめなかった・・・。
キイが私と向き合う。
「さっきは手伝ってくれてありがとう!」
無理矢理つきあわされたんだけど。
「キミ、なかなかつよいんだね。見直しちゃった。」
あたりまえだろ。
「・・・さっきからルノの目がこわいんだけど。」
うん。にらんでるからね。
「で・・・ルノってどこに住んでるの?」
「なんでそんなこと聞く?」
ストーカーか。あんた。
私は教える気などなかった。
いや・・・教えられないのだ。
記憶がないのだから。
「い、いやあ・・・その、ルノさえよければさ・・・。」
キイが胸のあたりで手を組む。
女の子か!
キイは私から目をそらしながら、言った。
「その・・・ボクと一緒に、救助隊を組まないかい?」
救助隊ィ?
私は、キイと出会ったときの会話を思い出した。
―ケイサツはいないけど、救助隊なら。いるよ。
「それがなんでどこに住んでるかの質問につながるわけよ。」
「いや、リーダーとメンバーの家は近い方がいいかなって。」
・・・。
「やだね。」
「お、お願いだよ!ルノとなら、ボク強くなれると思うんだ!」
なにそれ!?
「いやだ!」
救助隊なんて!
それよりもイーブイになってしまった理由を探さなければ。
「ルノなら絶対一流の救助隊になれるよ!」
そんな肩書きいらんわ!
だいたい、私の記憶があって、家を忘れていなかったらどうするきだったんだ。
その家への帰り道がわかったら・・・。
・・・?
「ん?どうしたの、ルノ。」
私は、キイに聞いた。
今ひらめいた考えを。
「私がリーダーになったら・・・その家に引っ越すの?」
「ま、まあ・・・リーダーは緊急事態でも駆けつけられるよう、基地に住むことになってるけど。救助隊協会では・・・。」
そんなものあるのか。
でも今回は・・・。
あってよかったかも。
「わかった。いいよ、私がリーダーになる。」
「ええ!?」
じぶんから誘ったくせになにおどろいてんだか。
「正直やだけど・・・寝床がないからな・・・。」
そのつぶやきは、喜ぶキイには届いてないようだった。
「じゃあ、ついてきて!!キミにぴったりの家だよ・・・。」
う、うわあ・・・・!!
キイに案内された家は、小さな森のすぐそばだった。
木々に囲まれ、そばには低木まである。
入り口のそばには小さな白い花が咲いていた。
赤い屋根の頂上には葉っぱが突き出ている。
同じく赤いポストの中には、何も入っていないらしい。
使われていない、空き家なのだ。
これは・・・。
「あ、ルノ。感動してるね?」
なんか、しっぽふってよろこぶかんじ?
これも、イーブイになったからなのかな・・・。
「うん、気に入った。手がつけられてないところとかいいね。」
「それはほめてるの・・・?まあ、いいや。」
精一杯のほめ言葉なんだが。
キイは赤いポストを指さした。
「これはお助けポスト。救助隊の依頼や、ポケモンニュースが届くよ。」
ぽ、ポケモンニュース・・・。
なんてベタな。
「なるほど。わかった。」
いつの間にか、空は夕焼け色に染まっていた。
私とキイの影が長く伸びる。
今日はここでわかれ、明日から活動を始めるという。
基地のなかは、以外にきれいだった。
奥にわらを固めただけの簡単なベットがある。
特に気にせず、私は眠りに吸い込まれていった・・・。