01
『ダレカ』が、呼んでいる。
私を・・・私の魂を・・・
行かなきゃ。
ふわふわとした、妙な浮遊感の中で。
私は思い、
『ダレカ』は呼んでいる。
ココハドコダロウ?
風がほおをなでていく。
雨の後なのだろうか・・・。
私の下の芝生のような短い草が、ひんやりとして気持ちがいい。
うっすらと目を開けると、空が見えた。
水色の絵の具を、そのまま垂らしたような空。
そのはじっこに、真っ白な雲が浮かんでいる。
そして閉じる。
熱を帯びていた目が、ほどよい具合に冷やされたからだ。
気持ちがいい。
このまま眠ってしまいたい・・・。
しかしその欲は満たされなかった。
「ごふ!」
変な声が出た。
同時に腹部に激痛が走る。
だれかに踏んづけられたのだ!
当然だが眠気は吹っ飛んだ。
「バタフリーさん!ほんとにこっち!?」
あせったように叫ぶ声。
急いで起き上がると、ぎざぎざした黄色いしっぽが下生えに飛び込んでいった。
「はやく!私のキャタピーちゃんが・・・!」
今度は今にも泣きそうな声。
そしてまたももや痛みが!
しかし腹ではなく額だった。
理由は簡単。なにかがぶつかったのだ。
その衝撃で私は吹き飛ぶ。
目の端になにかが見えた。
―蝶?
それも、下生えの中に消えた。
「なに、あいつら・・・。」
ごめんも言わずに!
このとき、私の中でなにかがはじけた。
それは・・・そう、怒り?
私としては珍しい方だった。
あとをつけてやる!
そして仕返しをするんだ。
怒りで我を失っていた私は、自分が『4本足』で歩いていることに気がつかなかった・・・。