六話
壁とグランブル
 幸い怪我人は出なかった。
マッハに負けて気が立っていたグランブルは、怒りの矛先をトレーナーのトシオに向けてしまったのだろう。
フウタは何度も謝ったが、少年たちのフウタを見る目はその日から変わった。

 いつものように遊びに行ったりはしてくれるが、バトルにはフウタを参加させようとしなかったのだ。
当たり前だろう。
自分が噛まれるのかもしれないのだから。


 フウタはあれ以来モンスターボールを触っていなかった。
今度は自分に攻撃してくるのではないかと恐れていたのだ。

 ところが、数日後にフウタはグランブルの名前を呼び、モンスターボールを投げたのである。

「出てきてよ グランブル」

 フウタ自身、グランブルとちゃんと向き合おうと考えていたのだ。
グランブルはフウタを見たとたん、顔を綻ばせて甘えてきた。

 フウタはグランブルの笑顔を見て、急に涙が溢れてきた。
自分でも理由はわからない。
でも、涙は止まらなかった。
フウタにできていた心の壁は、この出来事によってほんの少しだが崩れたのである。







( 2013/09/23(月) 12:24 )