01
――「それ」が最後に聞いたもの……「それ」が最後に発した言葉……
慟哭、咆哮、涙……
とにかく、聞くにも見るにも気分のよいものではないことは確かだった。「負の感情」という邪悪なものが渦巻くその場所で、「それ」はあるものに抱きかかえられながら、命の灯火を消そうとしていた。
「それ」を抱きかかえるものは必死にそれに対して言葉をかける。涙を流しすぎて声にならない声を上げながら……
謝罪、嘆願……
「死なないでくれ……!」
という言葉だけは、はっきりと聞き取れた。しかし、「それ」は力なく腕を自分を抱きかかえるものの頬に当て、小さく笑った。
「……笑って……いつまでも……笑顔で……」
小さな声でそう言い残し「それ」は息を引き取った。
「ウォォォォォォォ!!!!!!」
「それ」を抱きかかえていたものの、怒りと哀しみの叫びが、空へ虚しく消えていった……