転校編
♭1 ダイル
 これまで生きてきて、オイラはどれだけの苛めを受けてきたのだろう?

 あまりに多くてどのくらいかも分からなくなってしまった。暴力、パシリ、落書き……色々されてきた。

 どうしてオイラだけがこんな風にされるんだろう?と疑問に思う。理由は色々あるだろうけど、ただ単純に苛めやすかっただけなのだろう。オイラ自身でさえそう感じられる。

 運動神経もよくないし、バトルも強くない。やられてもやり返す勇気がない。そんな弱い自分だからこそこんな仕打ちを受けている。時間が経つにつれてそう感じるようになっていった。

 だけど、中学に入って初めてオイラに友達と呼べるような相手が出来た。

 友達はいつも苛められている自分を見ていてとても辛かったみたいで、ある時助けてくれた時があった。

 嬉しかった。

 オイラにもこんな風に接する相手がいるんだなと初めて実感した。

 それからしばらく友達と遊んだり、一緒に登下校したりした。

 楽しかった。幸せだった。

 でも、それはほんの少しの間だけだった。

 辛い現実が再び舞い戻ってきた。

 ある時、友達が校舎裏で傷だらけになっているのを発見した。理由は考えなくてもすぐわかる、オイラと関わっていたからだ。よくよく考えれば、いつかそうなる事は分かっていた筈なのに。

 それなのにオイラは友達との時間を失いたくなかったから。

 オイラは、友達の元に駆け寄った。だけど、手を貸そうとしたら思いっきり手を叩かれ拒絶されてしまった。そして、フラフラと立ち上がると静かに呟いた。

 ゴメン……さよなら……

 その日を最後に、友達は友達でなくなった。

 数日後、友達だった彼は引っ越していった。

 それからだ。オイラが運命を受け入れる事を決めたのは。

 誰とも接してはいけない。

 助けを借りてはいけない。

 もし破れば、誰かが不幸になる。

 もう誰も……傷ついて欲しくはない。

 傷つくのは、オイラだけで十分なんだ。

 そうしてこの1年間オイラは誰にも助けを求めず耐えてきた。中には助けようとしてくれたポケモンもいたけど、自分から拒否してきた。

 そうすれば、みんなは平和にすごせるのだから。

 だから、これからもずっと。


けもけも ( 2017/08/07(月) 22:09 )