行きたくないです
大きな草原。
広い草原。
その向こうには望んだ海への崖っぷち。
僕が大好きな崖っぷち。
この海には悪いけど、ここを汚してしまうけど、僕はここで消えることにしよう。
崖っぷちまで足を運ぶ。
痙攣。
強張り。
こんなものは一切無かった。
ものすごく、空が綺麗だ。
僕は消えたいから、星になっちゃだめだ。
気体になろうかな。
宇宙の。
ヘリウムとか。水素とか。窒素とか。
地球の窒素は多いから…生命のいない惑星でいっかな?
惑星に失礼だ。
でも、僕はここで消えるって決めたんだから。
ここで消えるって。
断崖絶壁の寸前までやってきた。
最後は飛び跳ねていこっか。
せーっの
バササッ
僕の体を何かが支えた。
準備していた痛みなんて、どこにもない。
「君は?」
僕を支えたのは、大きなコウモリみたいな生き物だった。
僕を草原に下ろすと、人間へと姿を変えた。
「私はスオーノ=ポーネー。
見かけはたんなるオンバーン。
正体は…正体もポケモンだけど、この様にヒトになって話すこともできるの。」
「どうして邪魔したの?」
「もっと広い世界に行きませんこと?」
人の話もまともに聞かないポケモンだな…
「僕は行かないよ。
ここで消えるんだ。」
「では、貴方の気が済むまで、邪魔を致しましょう」
ニコリと笑うと、僕の手を引いて山の方へ向かった。