135話 くそったれ
きっと心のどこかでそんなことを思っていた。
翔たちといる限り、いつかはこんな日がやってくる、と。
翔が絶望の縁から這い上がってエンテイを倒したように、あたしだって……。
泰然と翼をはためかすホウオウを、必ず倒して翔たちの元に追いつきたい!
「意気はたっぷりのようだ。目に燃える闘志。本気で我輩を倒す気ではある。ただ……。いや、今はおしゃべりはいい。早速始めようじゃないか」
ホウオウのバトル場にはトゲピー40/40。対するあたしのバトル場にはチョボマキ60/60。他にベンチにポケモンはいない。トゲピーはHPだけでなくその能力も高いとは見えづらい。ここは意地でも先手必勝!
「おっと、忘れていたかな。パーミッション(義務対戦)モードで対戦が始まった際は、仕掛けた側が必ず先攻を引くことになると」
「っ……!」
「慌てすぎのようだな、お嬢さん。では参ろう。我輩は手札から草エネルギーをトゲピーにつけ、手札からデュアルボールを発動。コイントスを二度して、オモテの回数だけ山札のたねポケモンを手札に加える。……オモテ、ウラ。よって我輩は山札からセレビィグレートを手札に加え、そのままベンチに出す」
相手のベンチに颯爽と、緑の風を携えてセレビィグレート60/60が現れる。にしてもグレートポケモンにしてはHPが低すぎる。言い換えればその分だけワザ、もしくは能力が厄介だとも取れる。
「トゲピーのワザを使う。おねだり」
トゲピーが上目遣いでしおらしくこちらを見つめてくる。
「おねだりのワザの効果は相手に二つの条件のうち一つを選択させるモノ。まず一つ。我輩が山札からカードを二枚引く。そしてもう一つ。貴様のバトルポケモンが20ダメージを受ける。さあ、好きな方を選ぶがいい」
ダメージを受けるも相手にカードを引かせるのも、全て自己責任になるというわけね。ならばなおさら慎重に選択をしないといけない。
きっとこのホウオウもエンテイのように例外無くLEGENDポケモンとやらを使うのだろう。ならばかなり重たい一撃が来るのは違いない。
引かせることでホウオウLEGENDが来るのを後回しにするか、ダメージを受けないことでホウオウLEGENDが来ても戦えるように、というセーフティを優先するか。
「……あまりに長考は困るな」
「うっ、うるさい! じゃあ引きなさいよ!」
「……ふっ。ならばこれで我輩の番は終わりだ」
「あたしのターン! チョボマキに草エネルギーをつけ、手札からポケモン通信を発動。手札のプロトーガをデッキに戻し、アバゴーラを加えるわ。さあ、行くわよ。手札からふたの化石!」
ふたの化石は今までの化石と違ってポケモンのカードのような効果は持っていない。自分の山札の底からカードを七枚確認し、その中にプロトーガのカードがあればそれをベンチに出すことができる。
だからこそ、逆にプロトーガ単体ではベンチに出せないのでさっきのプレイのようにポケモン通信などで手札に来てしまったプロトーガを一度戻す必要があった。
「……よし、ふたの化石の効果でプロトーガ(90/90)をベンチに出すわ。そしてサポート、チェレンを発動し、山札からカードを三枚ドロー。ここでチョボマキで攻撃。ぶつかる!」
チョボマキは体を丸めた体勢のまま、トゲピー30/30にタックルを食らわせる。
もっとも威力はたったの10。気休め程度にしかならないけども……。それでも相手のトゲピーからすれば体力の三分の一を持っていったことになる。そう考えれば十分良しと考えれよう!
「我輩の番だ。まずはトゲピーをトゲチック(70/80)に進化させる。続けてセレビィに超エネルギーをつけ、チェレンを我輩も使おう。カードを三枚引く。……トゲチックでワザを使う。見つけだす! その効果で我輩は山札から好きなカードを一枚選んで手札に加える。加えるのはレジェンドボックス! これで我輩の番は終わりだ」
レジェンドボックス……。これまた聞きなれないカード名だ。ただ、レジェンドという名前を冠してる以上きっと関係あるに違いない……。だったら少しでも早く相手の場を削がないと!
「あたしの番よ。まずはチョボマキをアギルダー(90/90)に進化! そしてプロトーガに水エネルギーをつける。アギルダーでトゲチックに攻撃、スラッシュダウン!」
瞬間移動でもしたかのように、アギルダーの姿が一瞬でトゲチックの後ろに移ると、手刀をトゲチック10/80の背中へ降り下ろす。
「む? エネルギー一つのワザで威力が60だと?」
「スラッシュダウンはこのワザを使った次の番に同名のワザを使うことは出来ないけど、その代わり一撃で威力が60。……トゲチックは倒しきれなかったんだけど」
「ほう。なかなか楽しませてくれる! ならば返礼をするのが礼儀というもの。我輩の番だ。まずはポケモン通信を発動。ホウオウLEGENDの下パーツを手札から山札に戻し、代わりにトゲキッスを山札から手札に加える」
じ、自分からホウオウLEGENDを山札に!? LEGENDカードは二枚揃わないと出せないのに、わざわざ自分から出しにくいように山札に戻すなんて。
「否、これこそが我輩の狙い。まずはバトル場のトゲチックをトゲキッス(50/120)に進化させ、先の番に加えたグッズカード、レジェンドボックスを発動。その効果で自分の山札の上からカードを十枚確認する!」
バトル場の隣に金色の豪華な装飾の大きな箱が現れる。蓋が開き、中から煙とともに十枚のカードが現れていく。……確か今のホウオウのデッキの残り枚数は十枚。つまりこのカードの効果でホウオウは自身のデッキを全て確認することになる。確認したカードはこちらに表向きになっていて、あたしもホウオウのデッキを確認する事ができる。
トゲピー、トゲチック、ホウオウLEGEND上パーツ、ポケモンキャッチャー、オーキド博士の新理論、草エネルギー、ホウオウLEGEND下パーツ、セレビィグレート、ポケモンキャッチャー、草エネルギー。山札が十枚しかないのにエネルギーがほとんどない。ということは残りは手札かサイドだろうか。
「レジェンドボックスの真価はここからだ! 確認した十枚のうち、LEGENDが一セット揃っているなら条件を無視してその組をベンチに出す。さらに確認した十枚のうちにエネルギーがあるなら、それをLEGENDポケモンにつける!」
「なっ……! そんな!」
「ふふ。では、我輩自ら戦いの場に出よう」
「えっ?」
素っ頓狂な声が出るよりも早く、ホウオウは自分自らセレビィグレート60/60の隣に割り込んで、草エネルギーがあらかじめ二つついた状態でホウオウLEGEND140/140としてベンチに飛び込んでいく。
プレイヤー自身がポケモンとして殴り込む? そんなの前代未聞っていうか意味が分からない。エンテイの時だってそんなことはなかったのに。……いや、そもそもエンテイやホウオウと戦っていること自体がおかしいんだけど。ってかもう今更そんなこと考えてたって、どうにかなるわけじゃないし。それよりしっかりと集中しなきゃ!
「トゲキッスについている草エネルギーをトラッシュし、ベンチに逃がす。そしてセレビィをバトル場に出そう。ここでセレビィのポケパワー、森の息吹を発動。セレビィがバトル場にいるとき、自分のポケモンに手札の草エネルギーをつけることができる。その効果で我輩はセレビィに草エネルギーをつけてバトル。タイムサークル!」
バトル場へ移動したセレビィ60/60が、目を閉じながら宙を一回転し、自分の周りに半径一メートル程の透明な膜のようなモノを作り出す。そして目を見開いたと同時に、どこからか飛んできた波動の攻撃がアギルダー60/90に突き刺さっていく。
「これで我輩の番は終わりだ」
タイムサークルはワザエネルギーが草超無とかなり高コストな割に、与えるダメージがわざわざ30と極端に貧弱過ぎる。きっとその分だけ何か強力な効果が隠されていると思えるけれど、それにしてはまだ効果が発動していない。……とにかく今は攻めて探りを入れるしかない。
「あたしの番よ! 手札からダブル無色エネルギーをプロトーガにつけ、そのプロトーガをアバゴーラ(140/140)に進化させるわ。そしてグッズ、二枚目のふたの化石を発動。……その効果でプロトーガ(90/90)をベンチに出して、アギルダーでセレビィに攻撃! アシッドボム!」
アギルダーは自身が形成した、紫色の毒々しい球体をセレビィに向けて投げつける。そのままセレビィに攻撃が当たろうとしたまさにその瞬間、不思議な力に拒まれたようにアシッドボムが霧散してしまった。
「そんな! どうして!?」
セレビィのHPも減った様子は一切ない。でも、確かにアシッドボムは発動条件を満たしていた。残る可能性は、セレビィ自身の効果……。
「タイムサークルの効果発動! このワザを使った次の相手の番において、このポケモンは一進化、二進化ポケモンのワザのダメージを受けない」
「うっ……」
次の番相手のワザを無効にするワザはいくつもある。そのほとんどは相手が攻撃した際にコイントスを行ってオモテであれば無効、という判定を下すが、タイムサークルはコイントスをしなくとも相手ポケモンの条件によって完全に攻撃をシャットダウンしてしまう。
あたしのデッキは完全に進化ポケモンに依存してしまってる。真っ向から戦ってしまうとタイムサークルだけで勝負がつきかねない。……いや、突破口はある!
「タイムサークルで防げるのはダメージだけ、だったよね。だったらワザの効果は防げないはず! アシッドボムの効果を発動。コイントスを一度してオモテなら、相手のエネルギーを一つトラッシュする。……オモテ! セレビィの超エネルギーをトラッシュしてもらうわ」
「……小賢しい。だがその程度が何になる。我輩のターン。セレビィのポケパワー、森の息吹でベンチの我輩に草エネルギーをつける。さらに手札のダブル無色エネルギーを我輩につける。ここでセレビィについている草エネルギーを一枚トラッシュして、ベンチに逃がし、新たに我輩自身がバトル場へ出る」
わざわざタイムサークルが使えるセレビィを下げてまでホウオウLEGENDを出すということは、それだけホウオウLEGENDが強いということに直接繋がっていく。
「手札からサポート、チェレンを発動。その効果でカードを三枚ドロー。続いてスタジアムカードのセキエイ高原を発動!」
周囲の風景があっという間に山の吹き抜けの位置から、爽やかな風がなびく高原へと変わっていく。このカードの効果は覚えている。伝説ポケモンのHPを30増やす、というもののはずだ。ホウオウLEGENDのHPも140/140から170/170へと大幅にライフアップしていく。
「手札からグッズカード、ポケモンキャッチャーを使わせてもらう。その効果で貴様のベンチのアバゴーラ(140/140)をバトル場へ引きずり出す。そして我輩自身で攻撃!」
「待った! あんたのワザは炎エネルギーが四枚必要よ。それなのについているエネルギーは草エネルギーが二枚とダブル無色エネルギー。ワザは使えないはず!」
「甘くみられては困る。我輩は自身のポケボディー、聖なる虹によって、ついているエネルギーを全て炎エネルギーとする」
「そんな!」
だからホウオウのデッキはセレビィグレートだったり、草エネルギー重視で、炎タイプのホウオウLEGENDが入るにはやや違和感のあるデッキ構築だったのね。
「改めて我輩でアバゴーラに攻撃。紅蓮の翼!」
ホウオウLEGENDが体から現れた炎のシンボルマークを噛み砕くと、突如ホウオウLEGENDの体全体が火に包まれる。苦しそうな素振りを見せるどころか、そのまま空高く舞い上がり、ある地点まで到達すると翼を広げてそのまま急降下し、アバゴーラめがけて突進してくる。
「アバゴーラのポケパワー、ハードロックを発どっ、きゃあああああ!」
体が持ち上がるほどの暴風と、押し寄せる熱気に体が無抵抗に持ち上がってしまい、乱雑に地面に叩きつけられた。何とか受け身を取って、頭を保護することは出来たものの全身あちこちが痛む。脳震盪にはなっていないだろうが起きあがれる気がしない。
ああ、どうしてあたしはこんなことをしているんだろう。そう投げやりになりかけたとき、小さな手のひらが視界を遮った。
「薫ちゃん大丈夫!? しっかり!」
「……松野さん」
じんじんと痛みの引かない赤い手のひらを松野さんのそれに重ねると、非力な松野さんはもの凄い形相でその手を引っ張り、あたしを起こしてくれた。
「これからは私も一緒だから大丈夫よ」
「……ありがとう、ございます」
そんなとき、炎を振り払ってもとの形態に戻ったホウオウが再び前に立ちはだかる。
「ふん。仲良しこよしも笑わせる。紅蓮の翼の威力は100。この一撃で貴様のアバゴーラも致命的なダメージを負った!」
「そうとは限らないわ。薫ちゃん!」
「アバゴーラのポケパワー、ハードロックの効果によってダメージを受ける際にコイントスをし、オモテなら受けるダメージを50減らす。今回のコイントスの結果はオモテ!」
「な、なんだと!?」
甲羅に体を引っ込めていたアバゴーラ90/140が、首と手足を再び突き出してしっかりとホウオウLEGENDを見据える。
「……まあいい。我輩は紅蓮の翼の効果で自分の炎エネルギー、もとい草エネルギーを一枚トラッシュする」
前髪を押し上げ額の汗を軽く拭う。そして側にいる松野さんに体を向け、ありがとうございますと軽く礼をする。
「全然いいって。大丈夫よ」
「……あれ、そういえば松野さんがここにいるってことは」
松野さんは左目で軽くウインクをして、大丈夫、この通りよ、と微笑む。
その笑顔には力のない愛想笑いしか出来なかった。ああ、やっぱあたしと松野さんはこんなにも違うんだ。
くそったれだ。
何気なく心の中で呟いた一言が、心の堤防を粉砕しそうになる。どこまでもネガティブな濁流が、今にも全身を押し流しそうになる。
松野さんの他意のない笑顔だからこそ、それが余計に心に突き刺さる。ああ、やっぱあたしは松野さんみたいになれない。こうやって松野さんに支えてもらってやっとなんだ。
「さ。ルギアがいなくなった以上、約束は貴方に守ってもらうわ。貴方たちの本当の狙いはなんなの?」
「狙い? 有瀬が言っていただろう。貴様等の次元を無に返し、新たな次元を生み出す。世界の再生だ、と」
「それなら勝手にすればいいじゃない。私たちを巻き込まずとも、ね。それに、本気で計画を阻止されたくないのなら、こんなまどろっこしく人数を制限する仕組みを用意する必要もないわ。それともまさか……」
「正の精神エネルギー。次元を新たに作り出すためにはそれが大量に必要なのだ。しかし自分自身で生成出来る量には限界がある。そのために貴様等と我々が戦うことで正の精神エネルギーを供給する必要がある」
「……分かったわ。それなら尚更負けるわけにはいかないわ。行くよ、薫ちゃん。……薫ちゃん?」
肩を叩かれてようやく我に返る。顔を覗き込まれて本当に大丈夫? とまで聞かれて、力なく大丈夫だと答えた。
自分がいくら劣っていようとも、松野さん達に迷惑をかけることだけはしてはいけない。そうきつく言い聞かせて。
「あたしは手札の水エネルギーをアバゴーラにつける。続いてグッズ、研究の記録を発動。その効果でデッキの上から五枚を確認し、好きに並び替える」
「ここは一気に攻めるわよ」
「はい。アバゴーラでホウオウLEGENDに噛み砕く!」
ジェット噴射で一気に間合いを詰めたアバゴーラは、その勢いに任せてホウオウLEGENDの首筋を、大きくはなくとも強靱な顎で噛み砕く。ホウオウLEGEND10/170の悲痛な叫びが周囲に木霊する。
元々の威力は80しかないが、それでもホウオウLEGENDは水タイプが弱点。80×2=160ダメージで、逆にこっちが一気に致命傷まで陥れた。
「さらに噛み砕くの効果発動! 相手についているエネルギーを一つトラッシュする。選択するエネルギーはもちろんダブル無色エネルギー!」
これでホウオウLEGENDについているエネルギーは一つだけ。ワザは紅蓮の翼しかないから、どうしてもエネルギーを三つ以上つけなければいけなくなってしまう。
もしそうなったところで、返しのターンでホウオウLEGENDは処理できる。
いけるかもしれない。
松野さんの手助けがあってこそだけど、さっきまで全身を支配していた痛覚がふっと抜け、どこまでも飛べそうなほど体が軽くなるように思えた。
「能力?」
「ああ。詳しい理屈は分からないけど、なんかポケカ通して変な能力を使うやつがいるんだよ」
初めて能力のことを聞いたのは、PCCが終わって二日経った日のことだった。
あからさまにおかしいと思ったのは、山本と対戦している翔の様子もそうだけど、腕の骨を折ったなんて言う藤原先輩を見てからだ。
放課後帰り道に翔に問いつめてみたところ、浮かない顔をして悩んで、渋々と話してくれた。
その話を聞いて、信じられない、とか、もっと早く言ってほしかった、とか、そんな小さい感情を抱いた他に、遠いな、と強く思ったのを今でも覚えている。
聞いてみれば風見先輩も能力者と戦っていたり、藤原先輩が元能力者だったりと、身近な所で知らないことが起こっていて、壁を感じていた。
いつもすぐ隣にいたはずの存在が、それが蜃気楼かのように掻き消えて。目を凝らしてみればその姿は遥か先。越えられないオブジェクトが間に割って挟まっているかのように、決して追いつけないそれがあった。翔には内緒で地元のショップの大会で何度も戦い続けたけど、その差は埋まる気配すらしなかった。
だからこそこの空間に巻き込まれたときは、怖い、嫌だ、といったネガティブな思考だけじゃなくて、ほんの少し嬉しさもあった。
翔は何も思っていないかもしれないけど、このまま遠いままではあたしがあたしでいられなくなるかもしれない。あたしがあたしを保つために、その隣へ近づきたい。
「ぐうう! 我輩のタァーン! グッズ、ポケモン入れ替えを使い、我輩とベンチのセレビィを入れ替える。そしてセレビィのポケパワー、森の息吹! 手札の草エネルギーを我輩につける。さらにセレビィの草エネルギーをトラッシュしてベンチに逃がし、トゲキッスをバトル場に出す!」
一ターンに一度しか、原則的にポケモンを逃がすことはできない。だからこそ森の息吹を使うためにポケモン入れ替えを挟んで、うまいことこうやって二回ポケモンを入れ替えてきた。
ただ、これはあたしでも分かる。明らかにホウオウは狼狽している。負ったダメージが原因なのか、焦りが原因なのかは分からない。それでもあたしならホウオウLEGENDにこだわらず、セレビィグレートで戦うという選択肢を選んだだろう。
「トゲキッスにダブル無色エネルギーを使い、ワザ、恵みの翼を発動。トゲキッスとついているカードを全て山札に戻すことで、我輩の場の全てのポケモンのHPを全回復する!」
「くっ……!」
今、ホウオウのポケモンはトゲキッスを除けばセレビィとホウオウLEGENDのみ。ダメージを負っていたホウオウLEGENDのHPが、160回復して再び170/170へ回復していく。
そしてトゲキッスは光の玉となり、ホウオウのデッキポケットの中へ吸収されていく。
「バトル場にポケモンがいなくなったことから我輩はセレビィをバトル場に出す!」
「薫ちゃん、チャンスよ!」
「あたしのターン。グッズカード、エネルギー交換装置を発動。手札の草エネルギーを山札に戻し、水エネルギーを手札に加える。そして加えた水エネルギーをベンチのプロトーガにつけて、プロトーガでセレビィに攻撃。噛み砕く!」
80ダメージを受け、セレビィグレート0/60は背中の羽を止めてそのまま地面に倒れ込み、気絶する。
これでようやく最初のサイドが引ける。今まで長いターン数を重ねてきたのに、両者ともまだ一枚もサイドは引いていなかったのだとようやく思い出した。
「やった……! これであたしの番は終わりよ!」
「……我輩は我輩自身をバトル場に出す。……小娘風情にこの我輩が後れをとったと本当に思っているのか?」
顔をこちらに向けず、くぐもった声でホウオウは静かに一人笑い出す。
「ど、どういうこと?」
顔を持ち上げたホウオウと目が合う。今までにない狂気的な輝きが、心に深く突き刺さる。思わず情けない声が上がりそうになってしまった。
「いいか、今から一瞬でここを灼熱の焦土に変えてやる。三ターンだ! 三ターン後に我輩が貴様を倒すと宣言する!」
薫「今回のキーカードはホウオウLEGEND。
どんなエネルギーを使ってもワザを使えるわ。
ダブル無色エネルギーをつければ、一気に炎エネルギーが二つ分!」
ホウオウLEGEND HP140 伝説 炎 (L1)
ポケボディー せいなるにじ
このポケモンについているエネルギーは、すべて炎エネルギーになる。
炎炎炎炎 ぐれんのつばさ 100
このポケモンについているエネルギーを1個トラッシュ。
【特別なルール】
・手札にある2枚のホウオウLEGENDを組み合わせて、ベンチに出す。
※「伝説ポケモンのカード」は、「上」と「下」を組み合わせて使います。
弱点 水×2 抵抗力 闘−20 にげる 2