122話 デジャヴ
『で、でもな。俺は別に後悔、してるって訳でもないんだぜ』
『お前は自分が良くないと思った思想を持つ相手のそれを否定して、自分のエゴを、正義を相手に押し付ける』
『間違っても自分を責めるなよ。お前のせいで、俺が消える訳じゃない。俺がお前のために体を張りたかっただけだ』
『勝利というもの自体が、相手から何かを奪うものだから。負けた方は少なくとも勝利を奪われる。そして勝った方は負けた方から勝利を奪う。こんな普通のことが怖くなるのは、勝った方が勝利以上のモノを奪ってしまったときからだ!』
『お前は俺の……。俺たちの希望なんだ。お前ならきっとどんなピンチだって乗り越えられる。そんな気がするんだ。……だから頼む』
『どうだ……、味わったか。これが勝利の恐怖だ』
『翔は……。自分の信じた道を行ってくれ。自分が正しいって思う道を行くんだ。たとえいろんなことがあって、自分のやったことが正しくないと思ったら、新しい自分の道を作って進め。未来には無限の可能性があるんだ。決めつけるな。でも、流されるな。自分の道は自分だけで決めつけるなよ』
『今は己が弱きに身を震えさせるがよい』
ぼやけた頭の中で、いくつもの姿がうたかたのように浮かんでは消え、エコーがかかった声が反響し続ける。
結局俺はなんなんだ? 一体何をしたらいいんだ? 分からない。苦しい。辛い。悲しい。痛い。胸を引き裂いてしまいたい。そうじゃない。励ましてもらいたかった。笑いかけてきてほしかった。鼓舞してほしかった。
でも、もう俺の傍には誰もいない。いつも支えてくれていた姉も、友も、あまつさえ敵すらも。
負ければ消える。そういうことは聞いただけでなく実際に観たりもしたから、分かっているつもりだった。でも、いざそれが自分の大切な仲間だったとき事の大きさを心で以て知ることになる。
「くそっ……!」
「分かっているだろう。貴様もその目でしかと見たはずだ。あの向井とかいう小僧は消えた」
「……分かってる」
いつまでも空を掴んでいた右手を離し、身を装う。頭の中にいつまでも向井のビジョンが張り付いたまま、威厳を張っているライコウに相対して自分のバトルベルトを操作する。
「安心しろ。長岡恭介……、貴様もすぐにあの小僧の元に連れて行ってやる」
「悪いがお断りだ。少なくともその前にやらないといけないことがある」
両の頬をパチンと叩き、雑念を振り払って前を見据える。
「面白い。ならばこの己(おれ)を楽しませろ!」
『周囲の使用可能なバトルベルトをサーチ。コンパルソリー。スタンダードデッキ、フリーマッチ』
向井のデッキはどちらかというと守備、耐久に重点を置いたデッキだった。その向井が敗れたのは、弱点も大きな要素の一つだけどそれ以外にもある。力強さだ。ヤツの攻撃力が向井の守備力を上回ったんだ。
しかし十分付け入るすきはある。あんな大きな力を振りかざす以上、その分遅さも際立つハズだ。
なによりヤツのスイクン&エンテイLEGENDは二枚で一つのカード。二枚を揃えるのは容易くはない。そうなれば狙いは一つ。やられる前に勝つ!
ライコウのバトル場にはマンタイン80/80、ベンチにはワニノコ60/60。俺のバトル場にはトルネロス110/110のみだ。ベスト、とは言えないがそれでも十分戦える!
「先攻は己がもらう。まずはサポート、チェレンを発動。その効果により山札からカードを三枚引く。マンタインに水エネルギーをつけ、新たなワニノコ60/60をベンチに出す。マンタインのワザを使おう。仲間と泳ぐ。その効果で己は山札から水エネルギーを加える」
向井と戦ったときとほとんど同じ動き。あのマンタインを軸に、一ターン目は準備にかかる。その上マンタインは地味にたねポケモンとしては一発が重いワザも持っている。
だったらやる事は一つ。速攻で仕掛けてあのマンタインを潰しにかかる!
「行くぞっ! 俺はパチリスを手札からベンチに出す。そしてこの瞬間パチリスのポケパワーを発動。自己発電!」
「何だと?」
自己発電は、パチリス60/60が手札からベンチに出た時だけ使えるポケパワーだ。手札の雷エネルギーを二枚までこのパチリスに付けることが出来る。最初の七枚の手札から既にこいつはいた。だけどベンチスタートだとその貴重なエネルギー加速効果は使えねえってことだ!
「俺は手札の雷エネルギー二枚をパチリスにつける。そしてトルネロスに雷エネルギーをつけてサポート、アララギ博士を発動!」
アララギ博士の効果で手札のクラッシュハンマー、ジャンクアームをトラッシュして山札からカードを七枚ドローする。よし、悪くはない。
「トルネロスの雷エネルギーをトラッシュし、ベンチに逃がす。もちろんバトル場に出すのはパチリスだ! パチリスで攻撃。ビリビリボルト!」
パチリスが体中から電気エネルギーを放出し、そのままマンタインに向かって滑空しながら正面からぶつかっていく。
「ビリビリボルトの効果で、パチリスについている雷エネルギーは二個トラッシュすることになる。だけどその分威力は50。マンタインを潰すには十分だ!」
マンタイン0/80の弱点は雷。よって受けるダメージは倍の100ダメージだ。これでまずは一匹目!
「っしゃ、まずは一枚目のサイドだ!」
「なるほど、早い。だがこの程度は予想出来ていた。己はワニノコをバトル場に出す」
予想出来ていた……? ふざけたことを言いやがって。しかもバトル場に出てきたのはただのワニノコ60/60だ。
いくらパチリスの自己発電が連続で使えるワザじゃないからと言っても、俺の手札にはすぐにパチリスをベンチに下げて、カウンターを喰らわす策は用意してある。そこまで予想出来るなら──。
「予想出来るならやってみろ、とでも言いたいのか?」
「なっ!? ……へっ。ああ、そうだよ。来いよ! 御託はいらねえ!」
意気込む声とは違って、手汗がすごいことになってやがる。心を読まれた。なんていうのは大仰だけど、ただのハッタリや雰囲気作りだけでない嫌な何かを感じる。
そうだ。この感触、いつしか同じようなものをいつだったか感じた記憶がある。そんなに遠い記憶ではないはずだ。
「早速行くぞ。己は手札から不思議なアメを発動。そしてバトル場のワニノコをオーダイルグレートに進化させる!」
あのオーダイルグレート140/140は確かポケパワーがメインのポケモンだったな。ポケパワーの雨乞いは、手札の水エネルギーを自分の場の水ポケモンに好きなだけつける効果を持っているんだっけ。
ってことはいきなり攻撃が来るかもしれねえ。問題は向井と戦ったときに、オーダイルグレートのワザを見ていないことだ。ポケパワーがただでさえバカみたいに強いんだから、ワザくらいは控えめにしてくれよ!
「ベンチのワニノコをアリゲイツ(80/80)に進化させる。そして、オーダイルのポケパワー、雨乞いを発動。その効果で手札の水エネルギーを四枚、オーダイルにつける」
「四枚もか……。くそっ、予想はしてても本当に来るときつい……!」
「さらにサポート、オーキド博士の新理論を発動。手札を山札に戻してシャッフルし、新たに六枚カードを引く。そしてグッズ、研究の記録を発動。山札の上からカードを四枚確認し、好きな枚数を好きな順番で山札の下に戻し、残りを好きな順番で上に戻す」
要らないカードを下にして、必要なカードを上に集めてくる。……ということはヤツはそろそろスイクン&エンテイLEGENDのパーツを探し始めてきていると読んで間違いねえな。
ただ、少なくともこの番には来ねえ。なぜならもう新たにカードを引くようなトレーナーカードは使えないはずだ。
「安心しろ、まだ『来ない』。寿命が僅かに延びただけだがな」
「本当に心でも読まれてる気でもするぜ……!」
「オーダイルで貴様のパチリスに一撃を見舞いしてやる。ハイドロクランチ!」
オーダイルが口から勢い良く水鉄砲を打ち付け、パチリスの体を浮かせる。そしてパチリスが落下する地点へ素早く回り込んだオーダイルは、落ちてくるパチリスを見上げて大顎を開け、噛み砕く。
「ハイドロクランチは水エネルギー四枚で使えるワザで威力は60。そして相手のバトルポケモンに乗ってるダメカンの数かける10ダメージを追加する効果を持っている。だがエモンガの最大HPは60だ。効果が発揮していなかろうが同じこと。己はサイドを一枚引く」
速い。さっきはこんな序盤から大技を使わなかったのに、まるで相手に対してバトルスタイルを変えているような……。
「大方、長期戦では敵わないと思い、短期戦を挑んで来たといったところだろうが……」
ライコウはそう言って言葉を止める。そこは素直に「短期戦でも敵うまい」とでもサラリとこいつなら言ってみせそうだが、次の言葉がなかなか来ない。
「ああ。それがどうした。生憎とこっちは草タイプが弱点のオーダイル以外は弱点が突けるんだしな」
妙な静けさに痺れを切らして言い返すと、ライコウは再びネジが巻かれたように流暢に話し出す。
「フン。さっき散った貴様の連れが身を以て示したからな」
そう言ってライコウは静かに笑い出した。コイツ、向井の事を持ち出して俺を煽るつもりか。
「ククク……。そうだ! もっと怒れ! その怒りをこの儘(まま)に己にぶつけろ!」
「怒んねぇよ!」
ライコウの笑い声を遮るように、怒鳴り返す。確かに声を張ったから怒っているだろうと言われるかもしれないけど、そこじゃねえ!
「別に俺は向井が消えたことに対しては怒らねえ! あらかじめルールだったんだ。負ければ消えるってのは、いろいろ目の当りにしてきたし、俺もアイツも覚悟してる。そうさ、確かにお前がいなければ向井はまだ俺と一緒にいたと思う。だけど、そんなことでお前を憎んだりは別にしねえよ! 勝負ってのはそういうもんだろ!? むしろ俺はそれを出汁にしようとするお前の言葉に腹が立って仕方がねえ!」
「貴様……」
初めてライコウがたじろいだ。こんな返し方をされるとは思ってはいなかったのだろう。
「だからといって怒りをお前にぶつけたりもしねえ! そんなことをしてもなんにもなんねえよ。怒ったところでミスしか生まねえ。向井が消えたことだとか、お前に対する怒りとかは完全には払拭出来るってことじゃないのは分かってる。でも、これが気持ちの問題ってなら、気合いでねじ伏せる! その他もろもろは全部終わってからだ! 俺はバトル場にトルネロスを出す。俺のターン!」
今引いたカードはポケモンコレクター。山札からたねポケモンを三枚加えるカードだ。進化ポケモンを入れていない俺のデッキでは、全てのポケモンがサーチ出来る。バトル場のトルネロスが攻撃に必要なエネルギーが3つに対し、今ついているエネルギーはまだ0。だったら、必要なカードってのは!
「手札からポケモンコレクターを発動。山札からパチリス、シェイミ、ボルトロスを加える。そして手札のダブル無色エネルギーをトルネロスにつけ、ベンチにボルトロス(110/110)とパチリス(60/60)を出す。ここでパチリスのポケパワー、自己発電を発動!」
自己発電の効果で、手札の雷エネルギー二枚をパチリスにつける。向こうもエネルギー加速をさせるのであれば、こっちだって。
「続けて、シェイミ(70/70)をベンチに出す。ここでシェイミのポケパワーを発動。祝福の風! こいつをベンチに出したときにだけ使え、自分の場のエネルギーを全て好きなようにつけ替えることが出来る」
パチリスについている雷エネルギーを二枚ともトルネロスに付け替える。これでトルネロスについているエネルギーの枚数は四枚。これなら攻撃が出来るってもんだ。
「よし。トルネロスでオーダイルに攻撃。暴風!」
トルネロスが掌の上で小さな竜巻を作ると、それをオーダイルに投げつける。最初は小さな竜巻がオーダイルに近づくにつれて大きな風となり、オーダイル60/140を飲み込む。
「さらに、暴風の効果を発動」
暴風は威力80の大技だけど、それに加えてトルネロスについているエネルギー一枚を別のポケモンに付け替える小回りの効くカードだ。必ずしも良いと言える効果ではないが、今この時点では有用に違いない。俺は雷エネルギーをボルトロスに付け替える。
「なるほど考えているようだな。しかしそれが無意味だということを教えてやる。己の番だ。手札からサポート、坊主の修行を発動。山札のカードを上から五枚確認し、そのうち三枚をトラッシュして残り二枚を手札に加える。己はセキエイ高原、マンタイン、デュアルボールをトラッシュしてカードを二枚手札に加える」
ライコウの勿体ぶった台詞から、加えたカードは容易く想像出来る。隠すつもりもないってか!
「己は手札の二枚のパーツを組み合わせることで、スイクン&エンテイLEGENDをベンチに出す!」
激しく、そして広く短い水流がライコウのベンチから湧き上がる。水のカーテンの向こう側から、ヤツの切り札であるスイクン&エンテイLEGEND160/160が姿を現した。
理性的なライコウと違ってまるでただの獣のような二匹の視線が俺を射抜く。改めて対面すると、なんの捻りもないが非常に怖い。バトル場ではなくベンチにいるというのに、大きさ以上の存在感と威圧感が俺を押しつぶそうとしてくる。
「スイクン&エンテイLEGENDに炎エネルギーをつけ、ベンチのアリゲイツもオーダイルグレートに進化させる。さらにポケモンキャッチャーを発動。貴様のベンチのパチリスをバトル場に引きずり出す!」
「ばっ、しまった!」
「速攻はいいが、防御がお留守だぞ。オーダイルでハイドロクランチ!」
再びオーダイルの大顎が二匹目のパチリス0/60を噛み砕く。トルネロスやボルトロスこそHPはそれなりにあるが、パチリスやシェイミはHPが低い。
いくら強いポケモンを並べたところで、弱いポケモンをぷちぷちと潰されていけば終わりってことくらいは──。
『──速くて強力なパワーで攻め立てる。それはそれでいいかもしれない。だけどこの世に存在するあらゆるモノにはたとえ神であろうと欠点がある。たとえば、君のデッキで言うとHPの低いポケモンが露出するところだとか。こういう風にベンチへ攻撃する手段を一つ用意してやるだけで君は同じ攻め方を続ける訳にはいかなくなる。ってことでマンムーで攻撃。雪嵐。バトルポケモンに70ダメージ。そして、ダメカンの載ってるベンチポケモン全員に20ダメージ!』
『あーっ! 一気にダメージが!』
そうだ。似たような事は確かにあった。二か月か三か月くらい前に、翔の引っ越しを手伝った後。アルセウスジムのイベントに誘われた後に一之瀬さんに勝負を持ちかけてボコボコにされたときと同じだ。
だったら同じ負け方は出来ねえ!
「サイドを一枚引いて己の番は終わりだ」
「だったら今度は俺の番だ。トルネロスを新たにバトル場に出す。そしてカードをドロー! まずはボルトロスにレインボーエネルギーをつける!」
ち、ちがっ! レインボーエネルギーはボルトロスにつけるんじゃねえ! ミスった! レインボーエネルギーは全ての色のエネルギーとして扱える代わりにつけたポケモンにはダメカンが一つ乗ってしまう。今迂闊にHPを100/110にしちゃ最悪じゃねえか。
スイクン&エンテイLEGENDはベンチにいきなり100ダメージを飛ばすワザを持っている。このままじゃ──。
いいや、活路はまだある。ピンチの中にチャンス有り。いっそボルトロスを丸ごと囮にしてしまえ。
「手札からポケモン通信を発動。手札のエレキッドを山札に戻し、ゼクロムを山札から手札に加える。そしてゼクロムをベンチに出す!」
ベンチに開いた白い穴から、黒色の巨竜が現れる。ゼクロム130/130の大きな尾が青白く光り、体から紫電が迸っている。
「ほう……。悪くはない」
「トルネロスでオーダイルに暴風攻撃! そしてトルネロスについている雷エネルギーをベンチのゼクロムにつけ、サイドを一枚引くぜ」
二度目の暴風を受けてしっかりとオーダイルのHPを0/140にしてやる。オーダイルはもちろんだが、オーダイルについている水エネルギー四枚分を丸ごとトラッシュに送ってやったのは大きい。
山札に入れているエネルギーの枚数はもう固定されている。だから総数を減らせば次の番、ライコウがいきなり攻勢に入る確率は……。
いや、分かっている。本当はただ安心したかっただけなんだ。今ここで確率論をあーだこーだ並べようが、強いやつは翔みたいに本当に無理そうなことでも現実にしてみせる。
十分に有りうるレベルの話になれば、このライコウクラスだと当然のようにこなして見せるはずだ。
「己はスイクン&エンテイLEGENDをバトル場に出す」
「待ってたぜ。さあ、来いよ!」
バトル場に進んだことでよりスイクン&エンテイLEGENDとの距離が近くなる。思わず顔が引きつるくらいに怖ぇ。
「いいだろう。まずは手札からスタジアム、セキエイ高原を発動。その効果により伝説ポケモンの最大HPが30上昇する」
辺りの風景が一瞬で、爽やかな風が駆け抜ける高台に変わる。これでスイクン&エンテイのHPは190/190。元から高かったHPが200近くに……。もしも弱点が突けなければ果てしなく絶望的な状況だったに違いない。
そう、スイクン&エンテイLEGENDは水と炎タイプ。ならば弱点もまた雷、水タイプと二つ持っている。それが俺の唯一の心の支え!
「手札からサポート、デントを発動する。山札の基本エネルギーを三枚手札に加える。その効果で水エネルギーを三枚加え、ベンチのオーダイルグレートの雨乞いを使ってスイクン&エンテイLEGENDに水エネルギーを二枚つける」
「くそっ、分かっててもいざ来るってなると泣きたくなるぜ!」
「ならば本当に泣かせてやろう」
半分本音の売り言葉のつもりだったが、予想外の答えに肝が冷える。
「そのボルトロス。この己が攻撃するとでも思ったか。その誘いには乗らん」
「へっ! 誘った覚えはないね」
「その割には声音が少し震えているぞ。……だから泣かせてやると言ったのだ。貴様のデッキの本当の核は、エネルギーを自由に動かせるシェイミ。見逃すとでも思ったか。スイクン&エンテイLEGENDで貴様のベンチにいるシェイミに攻撃。激流の刃!」
スイクンが鋭く、そして高速で渦を巻く水流をアーチ状にして放出し、ベンチのシェイミ0/70を狙い撃つ。水流が地面を抉り、そして鋭い衝撃波で体が吹き飛ばされそうになる。
「うおおおおおああっ!」
「激流の刃の効果でこのポケモンについている水エネルギーを二枚戻す。そしてサイドを一枚引いて己の番は終わりだ。さあ、どうした長岡恭介。貴様の力はその程度か」
読み負ける……こと自体は何度も経験しているが、あまりにも読み負け過ぎている。まるで未来や心でも見透かされているような。
『だー、勝てねえ!』
『もう五連敗だ。どうする? まだ続けるかい?』
『いやー、もう無理です。だってそりゃあ勝てねえっすわ。だって俺の心でも見透かされているような──』
この感覚、やっぱりあの時と同じだ。
底冷えする恐怖。こちらから向こうは奥が見えないのに、向こうからこちらは全て見られているような。あまりにも自然的すぎる力の差。これはもう間違えようがない。
「このプレイングは一之瀬さんと一緒だ……。お前、まさか……」
恭介「今回のキーカードはオーダイル。
このポケパワーがあれば自分の番に何度でもエネルギーをつける事が出来る!
雷タイプにもそんなのが欲しいぜ」
オーダイル HP140 グレート 水 (L1)
ポケパワー あまごい
自分の番に何回でも使える。自分の手札の水エネルギーを1枚、自分の水ポケモンにつける。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。
水水水水 ハイドロクランチ 60+
相手のバトルポケモンにのっているダメカンの数×10ダメージを追加。
弱点 草×2 抵抗力 − にげる 3