9話 一枚二枚
「おれのターンや。手札からキモリとシェイミをベンチに出すで」
新たにキモリ50/50とシェイミ70/70とが西山のベンチに現れる。シェイミはランドフォルム、確かこのシェイミは……。
しかし幸いにもどちらもHPは高くない。もっともキモリに関しては進化すればHPは増えていくのだが。
「草エネルギーをシェイミにつけ、ミカルゲのワザ、ダークグレイスを発動や!」
ミカルゲから再び黒い霧が発せられ、ベンチのキモリを包みこむ。
この自分のベンチのポケモンを進化させるというワザの怖いところは、ワザエネルギーを要しないところにある。その分ベンチが通常のプレイよりも育ちやすい。
だからこそ、ミカルゲは早めに叩かなくては。
「ダークグレイスの効果で、キモリをジュプトルに進化させる!」
黒い霧の中からジュプトル80/80が現れる。HPが増した分、より倒しにくくなる。
「ダークグレイスを使ったミカルゲはHPを10減らす。これでおれの番は終わりや」
しかし、ミカルゲ40/60は仕留めることが出来る射程圏内に入った。
まずはこのターンで一匹!
「あたしのターン、ドロー! 手札の水エネルギーをベンチのタッツーにつけ、タッツーをシードラ80/80に。バトル場のヒトデマンをスターミー80/80に進化させるわ」
もしトレーナーカードが使えたら、あたしの得意な速攻でミカルゲだけでなくさらにベンチにいるポケモンも狙撃出来たのだが、トレーナーカードはミカルゲのポケボディー、要の封印により阻止されてしまっている。ほんとにあのミカルゲうざったいたらあらへんな……。
しかし、そこまで行かなくてもミカルゲ「だけ」ならなんとか倒せる。
「スターミーでミカルゲに攻撃や。大回転!」
スターミーが車輪のように素早く縦回転しながらミカルゲに突撃する。
攻撃を受けたミカルゲは要の石ごとぶっ飛んで派手に倒れた。HPゲージは40/60から0/60へ減り、ミカルゲは気絶。よし、と右手でガッツポーズ。
「水エネルギー一つだけで40ダメージ……。なんて威力やねんこいつ」
「でもその大回転のデメリットとして、次のターンにスターミーは攻撃できひんようになるで」
「なるほど。ならおれはリーフィアを新たにバトル場に出すで」
「サイドを一枚引いてターンエンドや」
「おれのターン! ベンチのジュプトルに草エネルギーをつけ、ジュカインに進化させる!」
ジュプトルの体が白く輝きそのシルエットが大きくなると、ジュカイン100/100へと進化を遂げる。
「さらに手札からグッズを発動、プレミアボール。デッキまたはトラッシュからLV.Xポケモンを手札に加える。おれはリーフィアLV.Xをデッキから手札に加え、バトル場のリーフィアをレベルアップさせる!」
ミカルゲがいなくなったことによってポケボディー、要の封印の効果はなくなり互いにトレーナーカードが使えるようになった。先に相手に使われることによって、相手にとって有利に事が進んでいく。
そしてリーフィアは一瞬光を纏うと、リーフィアLV.Xとして新たに現れる。こちらもHPは110/110。ジュカインにリーフィアLV.Xねぇ。想像以上に厳しい展開やないか。
「リーフィアLV.Xのポケパワー発動、エナジー促成。自分の番に一度、手札の草エネルギーを自分のポケモンにつける! おれはベンチのジュカインにつけてリーフィアLV.Xで攻撃、深緑の舞!」
エネルギー加速のポケパワー! こいつが厄介ったらありゃしない。しかし、これで相手は手札を使い切った。
しかも。
「深緑の舞は草無で発動できるワザや。リーフィアLV.Xには草エネルギー一個しかついてへんから不発やな、ジュカインに草エネルギーをつけるやなんて初歩的なプレイングミスちゃう?」
西山はその反応が愉快だといわんかのように、はっはっはと豪快に笑う。
「そんな初歩的なプレイングミスはここにきてするやつはおらへんで。仮にも決勝リーグや。そやから当然このワザは決まる」
「どういうことよ」
「ジュカインのポケボディーは生い茂る。その効果によって自分の草ポケモンについている草の基本エネルギー一枚を、草の基本エネルギー二枚分として扱うことができる。だから、リーフィアLV.Xには枚数的には草エネルギー一枚しかついてへんけど、実際は二枚ついたものとして扱えるから深緑の舞は通る!」
リーフィアLV.Xの足元から風が吹き荒れると、それは緑色の竜巻になり、そのままスターミーを襲う。
「深緑の舞は自分の場にあるエネルギーの数かける10だけ威力があがる。今、おれの場にはリーフィアLV.Xに一枚、ジュカインに二枚、シェイミに一枚の合計四枚。しかもジュカインの生い茂るによって八枚と扱う。元の威力30に80加えて、合計110のダメージをスターミーに与える!」
「ひゃっ、110ダメージ!?」
竜巻に巻き込まれたスターミーがようやくそれから解放される。しかしHPは無常にも0。たった1ターンでこんなに食らうだなんてのはさすがに予想しなかった。
「だったらあたしはシードラをバトル場に……」
「サイドを一枚引いてエンド!」
まだこちらの場は全然整っていないというのに、相手は完全に準備も終わって攻撃体制に入っている。五ターン目にていきなり崖っぷちだ。これが決勝リーグ……。
それでも負けるわけにはいかない。なんとしてでも逆転してやる。
「速攻型が速攻型に負けるなんてなぁ。でもあたしの方が展開力では勝つで! まずは手札からサポーター発動、ハマナのリサーチ。デッキから基本エネルギーまたはたねポケモンを二枚まで選び、手札に加える。タッツーとヒトデマンを手札に加えてベンチに出し、更にタッツーに水エネルギーをつける」
すぐさまベンチにポケモンが溜まり始める。このままあたしの番が終われば勝利が確実だった西山は僅かに表情に悔しそうな色を見せる。
「グッズ、ゴージャスボールを使い、その効果でデッキからキングドラを手札に加え、バトル場のシードラをキングドラに進化させる。もう一枚グッズを使うで、不思議なアメ! 場のたねポケモンに手札の進化ポケモンを重ねて進化させる。あたしは手札のキングドラをベンチのタッツーに重ねて進化させる!」
よってあたしの場には水エネルギー一つついたHP130/130のキングドラが二匹と、新たなヒトデマン50/50。戦う準備は万端だ。
「手札を二枚トラッシュし、キングドラでリーフィアLV.Xに攻撃、ドラゴンポンプ!」
キングドラが頭を後ろに少し傾けるがそれをすぐさま前に戻し、勢いよく口から水を吹き出した。
水はホースから吹き出るような優しいものではなく、龍の形をしたものでそれがリーフィアLV.Xに突撃していく。
リーフィアLV.Xに水龍が打ち付けられた後、水は再び龍の形を成してベンチにいるジュカインも襲う。
リーフィアLV.XのHPは70/110、ジュカインのHPは80/100まで削られる。
「リーフィアの抵抗力は水―20。ダメージは軽減できたがエネルギー一枚でこの威力……」
「そっちのに比べたらまだマシっていう自覚はあんねんけどな。ドラゴンポンプは手札を二枚トラッシュでき、トラッシュした場合はワザの威力が20加算(元の威力は40)されてベンチのポケモンにも20ダメージ与えれるようになるワザ。これであたしの番は終わりやな」
「よし、おれのターン。手札の草エネルギーをリーフィアLV.Xにつけてキングドラを攻撃。深緑の舞!」
またもや激しい竜巻攻撃があたしの場を抉るように襲いかかる。
今、相手の場にあるエネルギーは草エネルギーが五枚。それにベンチにいるジュカインのポケボディー、生い茂るによって草エネルギーは一枚で二枚扱いになるので、つまり相手の場に十枚エネルギーがあるということになり、深緑の舞は元々の威力30に100が足されて合計130ダメージ。
「キングドラが一撃、か……」
キングドラ0/130のHPをきっちり削ってきた。こういうことを想定してもう一匹のキングドラを用意したのは正解だったな。
「あたしは次のポケモンに、ベンチにいるキングドラを選ぶわ」
「よし、サイドを一枚引いてターンエンド」
ともかく何をするにしても目の前のリーフィアLV.Xを倒してから……。ただ単純にワザの威力が高いだけでなく、水タイプに対する抵抗力もしっかり持っている。こいつを攻略するにはどうすれば……。
由香里「今回のキーカードはリーフィアLV.X。
強力なパワーで相手を押しきれ!
ポケパワーとワザとが強力なシナジーをもつ一匹や」
リーフィアLV.X HP110 草 (DP4)
ポケパワー エナジーそくせい
自分の番に、1回使える。自分の手札のエネルギーを1枚選ぶ。その後、そのエネルギーを、自分のポケモンにつける。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。
草無 しんりょくのまい 30+
自分の場のエネルギーの合計×10ダメージを追加。
─このカードは、バトル場のリーフィアに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 炎+30 抵抗力 水−20 にげる 3