Hyper fresh
2話 バトルチャレンジ
 イベント当日。学校に行く日と同じ時刻に起きた。
 学校のそばが会場なので、この時刻に起きるのは当然と言えば当然だ。
 とはいえ日曜日なのにこんな早くから起きるのは気にくわないのだが、二度寝をしてしまわないうちに芋虫のようにベッドから這い出る。



 地元のJRの駅の改札で待ち合わせをしていた。駅の側のコンビニでお茶のペットボトルを買い、一人先に待つ。
 待ち合わせの時間は七時十分。もう八分なのに二人が来る気配が一切感じられない。
 いわゆる時間にルーズというものが信じられないタチなのでだいたい十分前に集合場所に来るのがモットーなのだがいかんせん他の二人は遅すぎる。
 携帯をいじいじしてるとようやく由香里がやって来た。十七分になってからだった。
 黄文字で雑多に書かれた英語をプリントしたピンクの長袖のシャツと、白のプリーツスカートで現れた由香里は着くや否や肩で息をする。
「間に合った?」
「全然間に合ってへんわ」
 これだけ待たして何を抜かす。仕方ないのでペットボトルを渡してやると、ありがとうと一言言ってからガブガブ飲み始める。一口のつもりがこの野郎。
 さて、問題はあと一人だが―――。
「ちょっとタカに電話してくる」



 由香里も遅刻癖があるが、特別タカは時間にルーズ過ぎる。
 ルーズというかただ単に朝が弱いというか、七割近く寝坊してるだろう。
 しつこく電話をかけて四回目でようやく繋がった。
 今もう出るとこだ、とタカは言っていたが今もう起きたとこだの間違いだ。声が寝惚けている。しっかりしなさい。そんなことを言っても何もならないので通話を切る。
 あと二十分待ちか……。このとき既に時刻は七時二十分を越えようとしていた。



 京都駅に着いたのは九時になってからだった。
 由香里とタカの遅刻者二名に加え、人身事故で電車が遅れたため更に予定が狂っていく。集合時間を早めに設定していて本当に良かった。
「いつも八条西口から学校に向かって行ってるけど、今日は反対(こっち)側からやねんな」
「会場にはバスで行かなあかんからな。アホみたいにバス停多いこっちから行かな」
 梅田のバス地獄で経験済みだが、バスが大量にある場所ではどのバスがどこにつながるか確認しなければならない。特に三人ともあまりバスを使わないタイプなのでこの作業は困難だった。
 バスの路線図がびっしり書かれている大きなボードの前に立ち、目的のバスはどれかと探していると、背後の人とぶつかった。
「あっ、すいません」
 そう言って、左に体を動かした。
 ぶつかった男も申し訳ないように軽く会釈する。
 少し太った体型と、大きな黒縁眼鏡。なのに坊主頭な地蔵を思わせるその男と目があったが、意外と愛嬌のある顔だった。
 後から「はよせー!」と、由香里の怒号が飛びかかり、我に帰る。いやいやお前も手伝え。
 ようやく目的のバスを見つけると、今にも発車しそうなそれに俺達三人は駆け込んだ。



 ようやく着いた。
 会場のあるショッピングモールは、中に入ればここが会場だよという甘いものではない。むしろ会場を探すのはここからだ。
 アホみたいに広いショッピングモールの一角にある会場を自分達で探さなければいけない。地図はあれどもそこまでが遠い。
 割りと人見知りな俺とタカは、由香里に職員に会場がどこか尋ねる仕事を押し付けてようやく会場にたどり着く。
 バトルチャレンジ会場。既に熱い対戦があちこちで始まっていた。
 ちびっこ共がゲームで、その隣のスペースでは大きいお友だちがカードで戦いを繰り広げている。
 ちなみにグッズ売り場もあり、カードや各種グッズが売ってある。
「んじゃ行ってくるわ」
「おう」
 俺と由香里は目的の違うタカとは別れ、カードコーナーへ。
 用紙(正式名はバトルシート?)を受け取り、列に並ぶ。
 カードをする机には数が限られているので、溢れた人らは机が開くまで、係員の指示に従って並ぶのが一般的。今回もそうだ。だいたいこの時間がすごく退屈。
 列から目を凝らせば、少しばかし対戦の様子が伺える。
 デッキシールドが東方、しかもその相手は恋姫無双、いわゆるキャラスリーブかよ。分かる自分もアレやけど、回りのテーブルを見たら他にもいろいろあるのにポケモンスリーブが少なすぎる。
 ちなみに俺のデッキシールドはアルセウスが書かれた暗い青色のものである。逆に浮きそう。
「ボサッとすんな」
 急に体を引っ張られる。
 列が進んだから、お前も前に来い、と前にいる由香里に引っ張られた。申し訳ない。
 ところで今の列は、俺の前には由香里とおっさん(に見えるだけで実際は若いかも)が一人いるだけなので、テーブルが二つ開けば出番だ。いつでも戦えるようにデッキケースからデッキを出しておく。
 そんなことをしていると、由香里とその前の人が机につき、そして俺の番が回って来て俺も席につく。
 子供の付き添いで来ました風のパパさんプレイヤーが相手だったため、大人気なくスタン(スタンダードデッキの略)にも関わらず速攻を決めて倒してしまった。
 まずは一勝。このイベントでは勝てば勝つほどプロモカードがもらえる。
 プロモカードはごく一部を覗いて扱い辛いカードだが、コレクター的には希少価値はある。
 スタッフからカードをもらって机に構える。
 そして続けてやってきた人にも圧勝し、勝利のメダル(プロモカードの名前)をもらって最後の挑戦者を待つ。
 そうして俺の前に座ったのは、京都駅のバス停で会った地蔵のような人だった。
「よろしくお願いします」
 デッキを互いにシャッフルして手札のポケモンを伏せ、最後にサイドを並べる。
 最初のポケモンは俺がゴウカザル四90/90。相手はペラップ60/60でベンチにラルトス60/60。
 先攻を決めるじゃんけんで負けた俺は後攻からのスタートだ。


啓史「今日のキーカードはゴウカザル四。
   四っていうのは四天王の四って意味な。
   レベルアップしてからがこいつの本領発揮やで」

ゴウカザル四[してんのう]Lv.55 HP90 炎 (DPt)
炎無  ばくれつだん
 相手のポケモン2匹に、それぞれ20ダメージ。
炎無無  とびひざげり 50
弱点 水×2 抵抗力 ― にげる 1

照風めめ ( 2011/04/26(火) 19:48 )