第9話 突入!魔族への挑戦
ライとソウは、ジークを倒すべく塔へと向かっている最中。二人の手元には、モンスターボールがそれぞれ、一つずつ持っていた。
「貸してくれたのは、いいんだけど」
「どうすればいいんだ…」
ミチは、二人に手持ちポケモンがない事を知ると、自分のポケモン二体を貸してくれた。ライチュウが攫われた後も、この二体だけは、隠していたのだ。
とはいえ、ポケモンを手にしたことが無い二人にとっては、どうやってポケモンを戦わせるのか、わからない。
「とりあえず持っておこう…ってあれ!?」
ライは、ふと何かに気づく。モンスターボールの結合部に小さな紙が挟んでいた。それは、ソウが持っているのも同じであった。
読んでみると、それはミチが書いたものであった。内容は、入ってるポケモンについてや覚えたいる技などが、丁寧に書き記していた。
そして、読み終えて使い方を知ると、モンスターボールを天高く投げる。するとボールが開き光と共にポケモンが出てきた。
「ゼニ〜!」
そのポケモンは、元気良く鳴き声を放つ。ライの出したポケモンは、ゼニガメだ。とある地方の初心者用ポケモンの内の一体だ。
「ゼニガメって言うんだな、すまないけど協力してくれるか?」
「ゼニ!」
ライの言葉に、ゼニガメは元気良く、今度は気合の入った声を放つ。
「俺のは、どんなポケモンだ?」
そしてソウも、モンスターボールを天高く投げ、光と共にポケモンが出てきた。そのポケモンは、地面につく事なく浮遊していた。
「え〜と、何なに」
ソウは、メモの中身を読む。そのポケモンは、ジェット機のような姿をしており、赤と白色の体、真ん中に△の模様をしていた。そう、むげんポケモンのラティアスだ。
「ラティアスって言うだな、よろしくな」
「クゥ〜!」
-こちらこそよろしくね。ミチの願いだから-
ラティアスが鳴き声を放った後、二人の脳内に声が響き渡った。あの神殿にいた女性のように。
「これって、ラティアスの声か?」
ラティアスは、テレパシーを使う事ができる、知能の高いポケモンだ。そして、自己紹介を終えた後は、ラティアスの背中に乗せてもらい、塔へと一直線に向かうのであった。
その頃、ミチは家のリビングで座っており、祈っていた。
「父さん…ライチュウ」
そして立ち上がり、階段を登る。ミチは、とある部屋に入ると、そこには寝たきりの母がいた。
「調子はどう」
「ありがとう、前よりかは良くなってるから」
母は、去年から今に至るまで、ずっと病に倒れており、ミチが看病しているのだ。それでも中々良くならないのだ。
「前までは元気いっぱいだったのに、あいつらが来てから…」
魔族が来る前までの、明るく元気な母の面影は今はない。空が暗くなってからは、落ち込んでいく一方だったのだ。
「大丈夫よ、それよりもお客さんが来てたようだけど」
「あの人たちなら、ジークを倒すって塔に」
「無茶よ…そんな事」
かれこれ三年も魔族は、人々やポケモンたちを苦しめ続けている。たがらこそ分かるのだ、ジークがどれほど恐ろしいかを。
「それで、その人たちには言ったの?父さんのこと」
実は、ミチは三人に父の事を詳しくは、話していないのだ。ミチは首を横に振る。
「あの人たちには、さらに心配かける事になるかもしれないから…それに、」
ミチは、ベットのそばに置いてある椅子に座っていたが、立ち上がり窓越しへと移動し、話し続ける。
「まだ完全には、信用してない。」
「ミチ…」
三人が来る前もジークを倒すと言った者たちが、何人も現れたのだが、誰も成し遂げた者はおらず、中にはジークの覇気を前にして、裏切った者までいたのだ。
「でも、今までの人とは違い何かをしてた、だから…」
「ポケモンを貸したのね」
母がミチの代わりに、最後の部分を言う。母の方に振り向いたミチは、頷き笑顔を向けた。
「それじゃ、下のおじいさんに用があるから」
「下の人は、今何してるの?」
「頼まれて、家にあった文献の本を調べてるよ」
「そう。」
ミチは、部屋を出てリビングへと降りていった。
リソルタウンの外は、相変わらず暗い。空も人の心も何もかもが暗いのだ。以前まで住人や来客たちで賑わっていた街の広場も、今ではほとんどいない。
街に来る者たちは激減し、住人たちは、引きこもる事が多くなった。
「朝日が見たいねぇ…」
最初に三人に声をかけた中年の女性は、家で洗濯物を干しながらそう呟く。
「これじゃ、お花たちも元気にならないよ」
この街は別名、花の都とも呼ばれており、名前の通り花畑などが沢山ある街なのだ。しかし、暗い空の今、その面影はどこにもない。
道中では、ある一人の男性がフラフラと歩いていた。そしてこう呟いた。
「クソぉ、全部あいつのせいだ。あいつのせいで魔族が来たんだ。」
男性は、そのまま歩き続けていった。
ライとソウは、ラティアスのおかげで、もう塔の付近まで来ていた。
-下には、見張りの兵が沢山いるから、上から乗り込むね。-
「頼むよ!」
「どうやって、上から入るんだ」
塔は、窓や隙間などが無く、地上の入り口以外に入る場所がない。
-まかせて!-
塔の中では、彼らの動向に感づいた者がいた。
「ふん、また現れたのか。目障りな人間どもめ!何度来たって同じだ。」
To be continued…