第10話 ジークの野望
塔までやって来た二人、そしてラティアスは、中へと突入すべく技を発射させる。
-竜の波動-
口から強力なエネルギーを解き放ち、塔の壁に命中させた。そして、壁に穴を開けることに成功した。
「よ〜し、突入だぁ!」
ソウは、勢い良く合図の言葉を言う。ラティアスもそれに答え、勢いをもって穴の空いた壁へと突入する。
下のほうでは、部下の魔族たちが、この事態に気づいてパニックになっていた。
「一体、何が起こったて言うんだ!」
「人間だ!人間とポケモンが乗り込みやがったぁ!」
「あそこは、ジーク様の玉座がある所だ!」
下にいた見張りの魔族たちも、この事態に次々と塔に入ってくる。
ライとソウは、ラティアスに乗って、ようやく塔の中に乗り込む事ができた。
「ここが…」
中は暗く、何とか肉眼で見えるほどであり、しかも迷路みたいな複雑な構造になっていた。ライは、懐中電灯を取り出して灯りをつける。
「ありがとな、ラティアス」
-どういたしまして。-
二人は、二匹をモンスターボールに戻して、先を進む。しかし、この階はとても禍々しい気を放っていた。
「ソウ、何だこの嫌な感じは」
「ああ、ものすごい殺気を肌で感じるぜ」
それでも二人は、先に進んでいく。しばらく歩いて散策していると、目の前に赤色の扉に遭遇した。しかし…
「この嫌な感じは、この奥からするぞ」
「多分ジークは、この中だ!行こうライ!」
そしてライは、扉をゆっくりと開けていく。扉の向こうには、広い空間が存在しており、真ん中にレッドカーペットが敷いていた。
それに沿っていくと、向こうに玉座らしき所があり、謎の影がそこで座っていた。
「あいつ…あいつがジークか?」
二人は、玉座の方へと走っていく。そしてジークらしき者の前まで到着した。その者は、人間と同じ姿だが、不気味なオーラを放っており、目が赤色だ。ライが夢で見た者と同じなのだ。
「お前たち人間は、いつまでもしつこい物だなぁ」
その者は、二人に向けて言葉を放つ。不気味な笑みを浮かべながら。ライは、身につけていた竹刀を取り出して、その者へ向ける。
「僕たちは、お前たちを倒すために来たんだ。お前が親玉のジークか!?」
「いかにも、私こそがセト軍の大佐のジークだ。この島は、既に我々魔族の手の中にあるのだ。誰が、どうもがこうともお前たちに勝機はないのだ。」
そしてジークは、右手をかざすと手のひらが光りだして、その光は、部屋全体に広がっていく。二人は、眩しさに目を閉じる。
「何だよ一体!」
ただ眩しいだけでなく、先ほどの禍々しい気を全開に発していた。
「三年もの間、お前たち以外に何人もの人間が私に戦いを挑んだものだ。だが、どいつもこいつも私に敵わずにやられていった。中には私たちに就く者もいたな。」
ジークが言い終えた後、周りから十数人の人間が現れ、二人を囲む。ライは驚愕する。
「人間!?」
「この者どもは、私への恐怖により人間を裏切り、今は、塔の下っ端として働いている。」
寝返った人間たちを見てみると、トレーナーや武闘家らしき者たちも沢山いた。
「すまない、俺のポケモンが獲られてしまってんだ」
「私も愛する者を人質に捕られている。悪いがここでくたばってもらうぞ!」
完全に、取り囲まれた二人になす術はなかった。
「くっ…!」
そして、ジークをそれを見ながら、あざ笑うのであった。
「ウハハハハ!私に刃向かおうとするからそうなる。だが、お前たちに、一回チャンスを与えよう」
そう言うとジークは、指を鳴らす。すると、部屋の扉が開き、そこから数人の手下の魔族達が入ってきた。
「お前たちが持っている、手持ちポケモンを私に差し出せ。さすれば命だけは助けてやろう」
「何!?」
「ポケモンを差し出すだと!」
その要求を聞いた二人は、ジークを睨みつける。二人が持っているポケモンまで利用しようと企んでいるのだ。
「さぁ、差し出せ!」
「その前に…何でポケモンたちにこんな事するんだ?」
ライは、ジークに対して冷静に質問を投げかける。
「ふん、いいだろう教えてやろう。我ら魔族で構成されたセト軍は、偉大なる指導者と共にある。魔族は、全世界を支配するのだ。この手に!」
それを聞いた二人は、驚いた表情でジークを見続ける。そしてジークは、突然、宙に浮き上がる。
「世界征服を効率よく進めるには、ポケモンを使う事が一番だからな。ポケモンの能力を利用し、セト軍の勢力をより拡大させるのだ!」
「なん…だとぉ!!」
ポケモンを信じられない事に使うのに、ソウは、激しい怒りの表情をジークに向ける。
「だが支配が済んだら、ポケモンも用済みになる。その時には、消えてもらうがな。アハハハハハハ!!」
高らかに笑い続けるジーク、そして再び地面に降りる。
「さぁ、話は終わりだ。早くポケモンをだぜ!」
「やだね…」
「何?」
そしてライは、答えを言う。出した答えは…
「嫌だって言ったんだよ、そんな事の為に、ポケモンを利用して、人々を苦しめて、なんて奴らだ!」
「俺も同じだ!てめぇに渡すもんかぁ!!」
ソウは、背後にいた人に勢い良く蹴りをかました。
「ぐはぁ!」
「て…てめぇ、何を…げはぁ!」
ライも持っていた竹刀で、周りを攻撃する。衝撃波が出るほど勢いが激しく、一回のなぎ払いで数人を吹き飛ばした。
「これは!」
ジークは驚く。二人は、決して無謀に乗り込んで来たわけではない。二人は、運動神経に優れ、また武術の心得を身につけている。それも子供にして、超人的なものであった。
「これでも稽古で鍛えてるだよ!おりゃぁ!」
敵の人間や魔族たちをソウは、空手技や柔道技で相手を倒していき、ライも剣道技で次々と倒していった。
「何なんだ…こいつらは!」
ジークは、呆然としながら見続けている。
二人が戦っている中、リソルタウンのミチ宅では。
「これじゃ、これで奴らを一気に潰せる!」
「ホントですか?」
リビングで文献などを調べていた老人ゲンは、ある事を見つ出す。そして、横にいたミチに伝える。
「そうよ、じゃが実行するには、ある物が必要なのじゃ」
「ある物…?」
「それはな…」
また、別の場所では一人の男性が、走りながらリソルタウンの方へと向かっていた。
「やっと見つけた…これで…これでここは救われる。」
To be continued…