第4話 父と子
家に帰ってきたソウが、見覚えのある靴が一足、玄関に置いてあるのを見て、リビングに向かうとそこには…
「親父…」
リビングのテーブルには、一人の男性が食事をとっていた。学者である、ソウの父親だ。
「何で帰ってきたんだよ…」
「なんだ、珍しく帰ってきてやったと思ったら、その言われようは」
父の言葉に、ソウは、激怒しながら父親の横まで来る。
「何が、何が珍しく帰ってきただよ!!ろくに連絡もよこさなかったくせに!!」
しかし父は、横で息子が怒鳴っていながらも、冷静な表情をして、言い返す。
「研究が忙しかったんだ、仕方がないだろう…」
そう言って父は、再び食事に手をつける。学者である父、昔は、家に帰る日が多い時もあったが、ここ最近は、全く帰ってこなくなっており、今日になって突然、帰ってきたのである。
ソウは、食事をとっている父の横で、しばらく黙り込んで立っていた。そしてため息をこぼして、再び父に話す。
「親父はいつもそうだ…研究、研究って、母さんの事だってそうだよ…」
母の事を聞いた父は、突然、食事をストップさせる。そしてソウの方に振り向く。ソウは、そんな事お構いなく、話し続ける。
「病院の時や葬式の時も、親父は、研究を優先して顔見せなかった…母さんを捨てたんだよ、あんたは…」
それを聞いた父は、立ち上がり息子のソウに、罵声を散らす。
「違う!!私は、妻を捨てたわけじゃない!もちろん、家族もだ!ただ、外せない研究があって来られなかっただけだ!」
「それって言い訳のつもりかよ!?いつもいつも…」
父の必死な言い分を、ことごとく言い返したソウであった。
「言い訳ではない!もう部屋に戻ってるぞ!!」
まだ食べ残しがあったが、今の会話で食欲がなくなったのか、リビングを後にする父。そして、その場に佇むソウ。
「くっ…!バカ…」
時を同じくして、ライも自宅に戻って、リビングでテレビを見ながら、ゆっくりとくつろいでいた。
「ライ!先に風呂に入りなさい!」
「はいはい、分かったよ」
ライの父は、会社のごく普通のサラリーマンであり、平凡で幸せな家族である。ライには、弟のルイと、妹のユミがいる、三人兄弟だ。
「兄ちゃん、後でカードバトルしようぜ!」
「ああ、上がってからな」
弟と約束をして、一番風呂に入るライであった。キッチンでは、妹のユミが母に料理を教えてもらっていた。
「小さじ一杯入れてね」
「ハ〜イ♪」
ライが風呂に入っている最中に、父が帰ってきた。
「ただいま〜!」
「あら、あなたお帰りなさい!」
父はリビングに入り、母やユミ、ルイの元にかけつける。
「実は…」
父は、三人をテーブルに集めて話をした。
「はぁ〜、いい湯だった」
しばらくして、風呂から上がったライは、リビングに入る。そして父を見つけた。
「父さん」
「ライか、そういえば、まだお前に話してなかった」
「えっ?」
何の事かと気になるライ、そして父に呼ばれてテーブルに座る。
「実は明日から、出張することになってな、しばらく家を開けなきゃいけないんだ」
「そうなのか…まぁ、仕事だから仕方がないか」
父は、長期出張のにより、明日から三週間ほどいなくなるのだ。今までの、父の出張にしては、一番長くなりそうなのだ。
ライは、すぐにそれを受け入れた。その後は、約束通りルイとカードゲームをした後に、就寝についた。
翌朝、家の玄関前では、父の見送る為に家族が集まっていた。
「じゃあ、行ってくるよ」
「体に気をつけてね」
「うん、ライも二人を頼んだぞ」
「分かったよ」
そして父は、出発して家では母と三人兄弟が残った。
朝食を済ませたライは、約束していた神殿へと向かう。
「ライ!」
「あっ、ソウ!」
途中で偶然にもソウと出会い、一緒に神殿に向かうことになった。しかし、二人は、まだ知らなかったのだ、彼らの後ろをこっそりとついて来る人影を。
「あの二人、私を出し抜いて何するつもりかしら?」
そして謎の人影は、こそこそと彼らの後をついていくのであった。
二人は、しばらくして神殿に到着する。そこには既に、老人が神殿の前に立っていたのだ。
「じいさん、早いなぁ!」
「お前たちが、遅いだけじゃよ、待ちくたびれたぞ」
そして二人は、老人の前まで来て約束していた物を、見せてもらう。
「それで、見つかったのか」
「ああ、あったぞい、これじゃ」
老人は、神殿の入口の扉にある、窪みと同じ形をした物体を取り出した。
「じゃあ、これをはめれば!」
ソウは、目を輝かせて扉を見つめるのであった。
「まぁ待て、はめるのは後一時間、待ってからじゃ」
「なんでだよ、じいさん?」
「タイミングがあってのう、太陽の光の位置が扉と合ってからじゃ」
仕方がないので、三人は、一時間の間、待つことになった。