第3話 遺跡の正体
ソウの過去を話してから、しばらくして三人は、ようやく遺跡に到着した。老人は、遺跡を見るやいなや、柱や建物に触りまくった。それを見たソウは、こう呟いた。
「やっぱり学者、昔の血が騒いでるな、ありゃ」
「それよりもソウ、あの文字調べてもらったほうが…」
「おう!そうだったな」
二人は、建物を徹底的に触り尽くしている老人の前まで、近づく。そしてソウが口を開く。
「なぁ、じいさんに調べてほしい所があるんだよ」
「なんじゃ?」
老人は、建物に触るのを止めて、二人の方に体を向けた。
「入り口の横にある、古代文字みたいな奴なんだけど」
そして二人は、老人を連れて遺跡の入り口と思われる扉の前までやってきた。そして、老人に横にある文字を見せた。太陽の光が当たっていれば、まだ見えるようだ。
「これは!」
古代文字を見た老人は血相を変え、それまで半開きだった目を全開させて、一文字ずつなぞりながら調べていく。
「何だろ…」「さぁな…」
後ろにいる二人も、心配そうに老人を見ている。そして、老人が調べ終わると、二人の前までやってきた。
「お主たち…どうやら、とんでもない物を見つけたようじゃぞ」
「はぁ!?」
「え!?」
この老人の言葉に、二人は、驚きと疑問の声を上げる。
「この遺跡は、かつて外の大陸群を復活させるために作られた神殿、そしてこの文字は、古代ルルタ族が使っていたルルタ文字じゃ」
老人の解説に二人は困惑していた。復活なりルルタ族なりと、二人には、訳のわからないことばかりである。
「壁に書いてあるルルタ文字、こう綴られておる」
そして老人は、古代文字であるルルタ文字をスラスラと読み上げていく。
我らが子孫へ…
この大いなる世界は、邪悪なる者によって闇に落とされた。そして、人々の魂や命も同じ運命を辿ることになってしまった。
しかし、このスフィア大陸群だけは闇に呑まれずに済んだ。我々、ルルタ族も、もう終わりだ。ポケモンは完全に滅ぼされ、人間もこのスフィアにしか生き残っていない。
だが、希望は消えてはいない。ルルタ族は、力を合わせてこの神殿を作り、未来の希望を手に入れた。せめて、残ったスフィアの人々にこの希望を託したい。
何年…何十年…いや、いつまで経ってもいい、この世界を救ってくれ。この神殿は、負の心を多く持っているものを、寄せ付けないようにしてある。
老人は読み終える。そして二人は、さらに分からないような表情をしていた。
「ルルタ族…世界を救う…って何だよコレ?」
戸惑いながら老人に、疑問を投げかけるソウと、腕組みしながら、考え込んでいるライ。もはや二人の頭は、滅茶苦茶な状態になっていた。
「戸惑っても無理はない、わしの記憶がただしければ、これは復活の神殿じゃ」
「復活の…神殿…」
それを聞いたライは、腕組みを解き、神殿を見上げて、それを言う。それは、ソウも同じであった。
「話にあった、外の大陸群とポケモンっておとぎ話に出てくるのですよね?なぜ」
外の大陸群については、スフィアの人々たちに、おとぎ話として語り継がれ、ポケモンは、その中に出てくる生き物として、伝わっている。
「外の大陸群は、かつて実在しておった。そして何かの原因で消えてしまったんじゃ」
スフィアの人々たちにとって、外の大陸群の事は、おとぎ話の中であるため、実在したなんて信じる者は、基本的にいないのだ。
しかし、目の前にある遺跡もとより神殿は、その外の大陸群を復活させるために作られたのだと言うのだ。それを聞いたソウは、次第に興奮していく。
「おもしれぇじゃん!本当だったら俺達は、世界を救う冒険ができるって事じゃん!」
「そう言うことじゃ、復活の神殿については、学会でも噂になっていたんじゃが、結局誰も見つけられなかったんじゃよ」
「どうして、見つけられなかったんですか?」
ソウが興奮し、遺跡を見回していられる中、ライは、冷静になって老人に話す。
「文に書いてあった通り、この神殿は、悪い心が多くあるものを寄せ付けんのじゃ、あの子の言う通り、学者たちは、自分の事や研究しか頭にないからのぅ、わしも現役じゃったら、近づけんかったじゃろう」
見回していたソウが、二人の所まで戻ってきた。
「じいさん、それでどうやって神殿の中に入るんだ!?」
すぐにでも出発したいのか、ソウは、早く神殿の中に入りたい様子だ。
「まぁ待て、神殿の扉を開くには、まだ足りぬ物がある」
「足りぬ物…?」
ソウは、首を傾げる。ライも頭上にはてなマークを浮かばせる。
「扉の真ん中に窪みがあるじゃろう、あの窪みと同じ形をした物をはめる必要があるんじゃ」
確かに扉の中心を見てみると、特異な形をした窪みがあった。恐らくこれが鍵となっているのだろう。
「でも、あんな形をしたもんなんか、ないよな?」
「そうだな…」
二人に心当たりはなく、考え込む。すると老人は、再び口を開く。
「それが、心当たりはあるんじゃ!」
「ええ!」
老人の言葉を聞いて、二人はこれまで以上に驚くのであった。そしてソウが、慌てふためく。
「どこに!どこにあるんだよ、じいさん!!」
「落ち着け!わしの家の地下室に確か、こんな形をした物を見た覚えがある。」
この後、老人に詳しい話を聞いて、今日は帰ることにした。明日の朝に、また神殿で待ち合わせる事になった。
ライとソウも、それぞれ自分の家に帰宅した。
「明日が楽しみだぜ!」
ソウは、わくわくしながら家路を歩く。そして自宅の扉の前まで辿り着いた。扉を開けるとそこに、一足の靴が不規則に置かれていた。
「これって…まさか」
ソウは、これに心当たりがある。急いで家に入り、リビングに向かうと、そこに一人の男性がテーブルで食事をとっていた。
「ソウか?今まで何処行ってたんだ」
後ろ姿を見ただけで、ソウは、それが誰なのかすぐに分かった。
「親父…」