第一章 不思議な力を持つ者たち
6-6 宇宙は誰のために
 パロス基地の兵士たちは、緊急招集によりバロン隊長がいる司令室に集められた。この基地には、ゼーラ、ジョン、マルト以外にも多くの兵士がいた。
「今、緊急の信号をキャッチした。セーロ部隊が数名、ここを攻めてくるぞ!」
 バロンの言葉に一同驚く。そしてゼーラが彼に質問する。
「ひょっとしてカリマの件で?」
「恐らくな、カリマの仇を取るつもりなのだろう」
 それを聞いた、兵士の一人ユツが怒りながら彼に話す。
「悪いのはあいつじゃないですか、それなのに…」
 すると、また違うサイレンが発動する。
「隊長!レーザーに敵戦闘機数基をキャッチ!!」
 女性のオペレーターがいるレーダーには、無数の赤い点が映し出されていた。
「早い!」
「総員、直ちに出動せよ!」
 そして兵士のうち、戦闘員数名はこの場を後にして、直ぐに格納庫に向かった。
「隊長、あの子供二人どうしますか?」
「安全なシェルターに避難させろ」
「了解」

 そしてパロス基地の上空には、セーロ部隊の戦闘機がやってきた。
「あれだなパロス基地は」
『ケミラ中尉、殺りますか?』
「当たり前よ、暴れまくってやれ!」
『了解!!』
 セーロ部隊は、遂にパロス基地に攻撃を仕掛ける。

ドーーーン!!

「なっ…何!?」
「爆撃か?」
 ピカソとリナがいる休憩室でも、かなりの衝撃が発生した。すると扉が開き、男の人が急いで入ってきた。
「お前たち早く来い!安全な場所に避難だ!」
 二人は言われるがままに、男の人に急いで付いていく。
「お兄ちゃん…」
「大丈夫だ!リナ」
 怖がっている妹をピカソは、落ち着かせようとする。

 外では、セーロ部隊が基地の滑走路や建物などを破壊していった。そして建物の崩壊に巻き込まれて、命を落とす者も現れる。
「カリマの弔いだ!まだまだ行くぞ…ぐっ!」
 彼が乗る戦闘機が、突然攻撃された。
『中尉、ご無事ですか?』
「誰だ!後ろから襲ってきた奴は」
 後ろを振り向くと、パロス基地側の戦闘機が飛んでいた。
「チッ…もう反撃してきやがった」
 彼を攻撃したのは、ゼーラであった。
「殺しを楽しんでるんじゃないわよ」
 再び彼女は、ケミラが乗る戦闘機に乱射を仕掛けた。しかし向こうもそれをすべて避けた。
「そう簡単に倒れるか…ぐぁ!」
 すると彼の背後から、再び不意打ちの攻撃を今度は2回受けた。
『応援しに来ました。』
『奴を倒しましょう!』
 ゼーラが乗る戦闘機の無線から、二人の男女の声が聞こえる。
「ユカリ、シュール」
 ケミラは、戦闘機のバランスを崩してしまったが、すぐに持ち直した。
「おのれぇ、何基来ようが、性能はこちらのほうが、段違いに上だ!」
『中尉、応援に入りましょうか?』
「構わん!他の奴らの相手をしてろ」
 ケミラは、後ろの2基戦闘機にミサイルを発射する。
「!?」
 二人は、何とか避けたが、すぐに別の攻撃が来た。
「うぁぁ!!」
 ユカリが次の攻撃に命中してしまった。
「大丈夫かユカリ!」
『えぇ、何とか』

 司令室では、バロンの手元に赤いスイッチが置かれていた。
「これで何基か沈められるはずだ」
 そう言って彼はボタンを押す。すると司令室から、100メートル離れた場所の建物から、アンテナの様なものが姿を表す。
 そしてそれは、中心から巨大なエネルギーを集めて、敵の戦闘機めがけて解き放たれた。
「何だ…ぬわぁぁぁ!!」
「これは…」
「!?」
 エネルギーは、セーロ部隊の戦闘機を何基か飲み込み、中で爆発し消滅した。
「あれは、太陽光弾!!」
 それを見ていたケミラは、キャノン砲でアンテナめがけて撃つ。アンテナに命中し、木端微塵に破壊された。

「太陽光弾のコアが…」
 司令室では、モニターですべて見ていた。
「本部から太陽光弾について通告が…」
「え〜い、そんなの後にしろ!」
 バロンは、激怒しながらオペレーターに答える。
「マホー、キド、あれを使う」
「了解!直ちに起動させます。」
 マホーとキドは、司令室を出て別の部屋へと向かう。たどり着いたのは、大きな扉がある入り口であった。
「入るぞ」
 キドは、扉の横にあるパネルに手を当てると、ロックが解除されて扉が開く。二人は早速部屋に入り、そこにあるコンピューターの前に立つ。
「地球から貰った技術みせてやる」
 マホーは、コンピューターを起動させると巨大モニターが光り、基地の外の映像が映し出される。

 その頃、ピカソとリナは男に連れられて、安全なシェルターにやってきた。
「二人共、早く…」

ドカーーーン!!

「うわぁぁぁぁ!!」
 なんと、外にいた敵のミサイルが、三人がいる所に着弾してしまった。凄まじい威力と爆風で三人は、シェルターに入る前に、吹き飛ばされてしまう。
「リナ…リナ!!」
「お兄ちゃん、私は大丈夫だから」
 運良く二人は、爆風に巻き込まれながらも軽傷ですんだ。
「あの人は?」
 ピカソは、ここに連れてきてくれた男性を探した。
「あッ!?」
 彼を見つけた。しかし、爆風の時の当たりどころが悪かったのか、かなりの傷だらけで目を開いている状態で倒れていた。
 すでに息はしていなかった。
「僕達をここまで連れてきてくれたばっかりに…」
 そしてピカソは立ち上がり、シェルターには入らずに、格納庫のある方向に走る。
「お兄ちゃん、どこに行くの!?」
「お前はシェルターの中にいるんだ。僕も出るよ」
 兄が言った"僕も出る"がどういう意味かは、リナはすぐに分かった。
「僕も行きますよ!」
「ダメよ、お兄ちゃん!」
 妹の制止を無視して、兄は格納庫へと走るのであった。

 サーン帝国星では、皇帝ザルクを筆頭に、今後についての軍事会議が行われていた。
「既に、東太陽系及びアンドロメダ星雲の大半は、我が軍が支配済みです。後は皇帝様の忠誠心を植えつれけば、完全制覇は間違いないでしょう。」
 テーブルの一番前には、ザルクが座っており、周りには軍の上層部数名が座っている。
「今現在、宇宙全体の3割を我々が制圧しております。」
「今後はさらにエリアを広めれるかと」
 それを黙って聞いていたザルクは、立ち上がる。
「"かと"ではない、絶対に成功させるのだ。」
「申し訳ございません。」
「私が今欲しいのは、ラフターのあの不思議な生き物たち。あれさえ手に入れれば軍配は一気に増し、宇宙支配を早く行えるのだ。」
 ザルクは再び椅子に座る。軍人達も真剣な眼差しで皇帝を見る。
「宇宙を支配するのは私の理想」
 その後も会議は、行われ続けられた。

『想像絶する事態だ』
 ラフター星雲のとある空間では、一匹のポケモンがラフターの星々を見下ろしていた。
 戦争で焼けた街や森、死んでいく人々、攫われていくポケモンたちなど、どれもおぞましいものであった。
『ラフターが悲しみに包まれていく』
 このポケモンは、見下ろすのをやめて、何処へと向かうのであった。

 パロス基地では、戦闘が終わらない。
「かかったな、これで死ねぇ!」
 ケミラは、戦法に引っかかったユカリの戦闘機に、強力なレーザー砲を放つ。
「ダメ、このままじゃ」
 ユカリは、もう無理だと覚悟を決めたその時。味方の機体が庇ったのだ。
「えっ!?」
『ユカリ…逃げろ…早く』
 そして、ユカリを庇った戦闘機は、そのまま空中で激しく爆散した。
「シュール…」
 彼女を庇ったのは、一緒のコンビであるシュールであった。
『何やってるのシュールのやった事、無駄にする気なの』
 半ば放心状態だったユカリに、ゼーラが一喝して正気に戻る。そして、旋回させその場から一旦退く。
「逃がすか!!」
「待てぇ!!」
 ケミラは、ユカリの機体を攻撃しようとするが、誰かがそれを止める。
「また邪魔者か?」
 現れたのは、ピカソであった。
『ピカソくん!どうして君が』
「僕も参加します。こんな奴僕が倒します。」
『ダメよ!すぐに戻りなさい!』
 ピカソは、ゼーラを無視してケミラに攻撃を仕掛けた。
「何なのだコイツは…」
 彼独自の戦法や動きで、ケミラを惑わす。
「コイツぅ!!」
 ケミラも様々な攻撃で、ピカソを撃ち落とそうとするが、当たらない。
「喰らえェ〜!」
 ピカソは、一撃の攻撃をケミラに喰らわした。
「なっ…何だとこれは」
 ケミラが乗った機体は、言う事を聞かなくなり地上へと落ちていく。
「私がここで、くたばると思ったか」
 あるボタンを押すと、椅子ごと機体から脱出してパラシュートが開く。そして機体は、そのまま地面に落ちて爆発した。

 その頃、マホーはモニターを見ながら、敵にある照準を合わせていた。
「天候操砲、スタンバイ!」
「天候操砲、始動!!」
 そして、キドが赤色のスイッチを捻る。モニターを見ると基地の空が、黒い雲に包まれる。

「何だ?」
 ピカソは、突然の雲の変化に驚く。
『ピカソくん!早くここから逃げて、早く!!』
 ゼーラの言う通りにし、ピカソは味方の機体と共に、この場から逃げる。
「この雲はなんだ」
 敵の戦闘機たちは、その場で呆然としている。すると黒い雲から雷が落ちてきた。それは、この基地の滑走路を飲み込む程、強大なものであった。
 基地の兵士たちは、既に逃げており無事であったが、敵は全員、逃げ遅れてしまい飲み込まれた。
 そして光の中で機体は次々と爆発していく。
「バカな!」
 運良く戦闘機から脱出したケミラも、雷に飲み込まれ、中で焼けていき跡形もなく消えた。

 司令室も衝撃でかなりの揺れが起きたが、全員無事であった。モニターを見ると滑走路は、完全に破壊したが、敵もいなくなった。
「二人共、やったか」
 成功した事を悟ると、バロンや他のメンバーは安堵する。
「あらかじめ、味方には言っといたが皆無事か?」
「はい!既に全員基地の外に」

 ピカソたちは、基地の外でその様子を見ていた。
「何だったんだ、アレは一体?」
『戻るわよ!』

 そしてピカソは、ゼーラの誘導で格納庫に戻るのであった。

次回予告

バロン「君は、どうしてこんな真似を…」

???「トレーナーである僕が、何をしろって?」

ユカリ「シュールは、私のせいで」
ゼーラ「そんな事ない」

チャロ「何だ、少年?」

ピカソ「サーン帝国は、必ず潰します。」

次回「ピカソとチャロ」

お楽しみに!!

toeistars ( 2015/08/04(火) 20:39 )