5-5 ポケモンたちの行方
リーカ星から少し離れた惑星シロットでは、サーン帝国軍とは別の軍がこの星を攻撃していた。
この星の敵基地を破壊する名目の元、基地だけではなく、街をも容赦なく破壊する蛮行さは、サーン帝国と何ら変わりはない。
ノトカシティが今、空襲をうけている。街の人々は逃げ回るものもいれば、抵抗しようと銃やポケモンで反撃してる者もいる。
「殺しを楽しませるなぁ!」
「俺達が何したってんだ、ぐぁ!」
「サーナイト、サイコキネシスで奴らを止めて!」
「長距離機関銃、喰らえぇ!」
「逃げろ!逃げ…」ドーーーン!!!
戦闘機は、全くダメージを受けず街を壊していく。
「悪いがサーン帝国の頼みだ」
そう言いながらもパイロットは、容赦なく攻撃していく。そして、程なくして街は完全に火の海と化し、生き残った人々は、ただ街の有り様を見つめるしか無かった。
「なんで…何でだよ!」
「家族や友達、相棒のポケモンたちが…」
「戦争って何なんだよ、全く」
街を破壊したのは、惑星シルナの軍隊で既にサーン帝国の属国となっており、今回の戦争の枢軸国側についている。
シルナ軍の司令塔では、今回の空爆の報告を行っていた。
「我がシルナ軍の被害はナシ、ノトカシティにあるラフター基地は壊滅しました。」
「サーン帝国と一緒にいる限り、我が国も軍も安泰です!」
「我らはサーン帝国と共にある。宇宙支配の王ザルク様とともに」
リーカ星のラフター連合軍基地では、ピカソの活躍を見ていた女性兵士によって、ピカソをここに連れてこさせ、隊長のバロンと顔を合わせていた。
「何が無謀ですか?」
「君が戦った相手は、セーロ部隊の一人カリマだ。少しでも戦法を間違っていれば君は死んでいたのだぞ」
実際、正規兵の女性でも敵わなかった相手に、子供であるピカソが挑んだ事は、命知らずで無謀としかいいようにない。
「この子は、才能があります。どうしてあんな風に?」
「幼い頃からメカを教わっていましたから、それより」
幼少期の頃から彼は、父親から機械類の操縦や操作などを教えこまれており、また素質もあったが故に、あそこまで出来たのである。そして彼は話を変えて。
「何で動いてくれなかったんですか!?」
「!?」
「街が破壊されているのを知ってて、何で動いてくれなかったんですか!!」
この基地から街までは、さほど遠くはない。なのに今回の事にラフター連合軍は、一切動いてはいなかった。それにピカソは怒っている。
「言い訳かも知れないが、その時は基地の者たちはいなかったのだ。」
街が襲われた時、基地の軍人たちは本部に招集されており、帰ってきた時はもうすでに焼け野原となっていたのだ。
「そんなのただの言い訳だぁ!」
ピカソは、彼に殴りにかかる。彼も避けるがピカソはさらに殴りにかかりにかかる。その表情はどこか狂気じみていた。
バロンは彼の攻撃をかわし、女性の兵士が彼を食い止める。
「やめなさい!!」
「すまん…」
彼は、小声でピカソに謝罪する。
その頃、妹のリナはいなくなった兄を探していた。手持ちポケモンたちは、モンスターボールに入れていた。
「お兄ちゃん、どこに入ったの?」
彼女は森の中を彷徨っていた。すると、茂みの方から物音がした。
「だ…誰!?」
そして、そこから二人の男性が現れた。
「君、ここで何してるんだ?」
「私、お兄ちゃんを探していて…」
「こんな所にいたら迷子になっちゃうよ、一旦基地に来なさい」
リナは、二人の男によって基地に連れて行かれた。どうやら二人は軍人のようである。
ピカソは落ち着き、女性はソファーに座わらせる。
「あなたが起こる気持ちも分からくはない、でもいきなり殴ろうとするのは良くないわ」
「すいません…」
バロンは、向かい側のソファーに座り、ピカソに質問する。
「君はこれからどうするんだ」
ピカソは、少し間を置いて口を開く。
「サーン帝国を潰したいです。あいつらさえいなくなれば皆」
「君は、憎しみや怒りで挑もうとしているな」
彼の表情を見て、バロンは何を思っているのか理解した。
「悪いですか?」
「憎しみだけじゃ、この戦いを終わらせられないぞ」
「そうですか、でも何としても母の仇を取りたいんです。」
彼の話を聞き、数分後に女性は彼を部屋から出して別の部屋に入れる。
「休憩室よ、ここで休みなさい」
「ありがとうございます。それからあなたの名前は」
「私はゼーラよ」
そして彼女…ゼーラは部屋を出る。ピカソはここでゆっくり休むのであった。
サーン帝国軍基地が置かれている、マージィ星ではセーロ部隊によって、連れ攫われた森のポケモンたちがいた。
ポケモンたちは檻に閉じ込められ、技などで破壊しようとしても頑丈で、ビクともしない。
「無駄だ、もうすぐ君たちは我々の兵器となる」
その言葉にポケモンたちは、戸惑うのであった。
男二人に、連れてこられたリナは、基地の入り口の前まで来ていた。
「もう大丈夫だ」
「ありがとうございます…」
そして基地に入り、隊長のバロンがいる部屋まで歩く。
「ここってもしかして」
リナはあたりを見回し、ここが何の基地かは見当がついた。
「うん、ここはパロス基地、ラフター連合軍の拠点だよ」
「あと僕は、マルトだからよろしくね」
二人のうちの一人が、リナに自己紹介をする。
「僕はジョンだから」
そして二人は、リナをバロンがいる部屋に入らせる。
「また民間人の子供か、さっきも来たばっかなのに」
「えっ!前にも来たんですか」「子供が!?」
二人は、隊長のその言葉に驚く。
「ああ、一時間前くらいにな、名前はピカソ・ルーインだったかな」
そしてリナは、ピカソの名前を聞いて驚愕する。
「お兄ちゃんが、ここに来てるの!?」
「君、あの子の妹なのか?」
「うん、私、お兄ちゃんを探して森に入ったの」
「そうか、それじゃお兄ちゃんの部屋に案内させるよ、二人共この子を休憩室に」
「了解!」
二人は再びリナを連れて、休憩室へ案内させる。
惑星シロットの焼け野原と化したノトカシティ、生き残った住民たちが避難した所から降りてきて、街を徘徊する。
「家が、俺の家がぁ…」
ある女性が、燃え尽きた家からペンダントを見つけ出した。
「あなた、ユミ、コジョフー…」
黒く滲んでいたが、ペンダントには家族写真が入っており、笑顔でいっぱいになっていた。しかし、逃げれたのは彼女だけであった。
そして彼女は、激しく泣き叫ぶのであった。
「どうして奴らは、俺達を殺そうとするんだよ!」
「宇宙征服を実現するために、ここまでやるんですか!?」
街の住民たちは、リーカ星の住民たちの様に、悲しみに明け暮れるのであった。
リーカ星のパロス基地では、リナが休憩室に到着し、部屋に入る。
「リ…リナ!?」
ピカソは、リナの姿を見て驚くのであった。
「お兄ちゃん、今まで何してたのよ?すごく心配したんだからね」
「ゴメンな、それよりも何でお前までここに」
「森にいたこの子を、僕達が連れてきたんだよ」
ピカソは、リナの後ろを見ると、二人が立っていた。
「あなた達がリナを」
「うん、僕達はこの基地の者でジョン、こっちはマルト」
ピカソはその後、リナが自分を探していて森に入った事と、地上の偵察にいっていた二人が、たまたま彼女を見つけて連れてきた事を聞き。
そして二人やリナも、ピカソがセーロ部隊をやっつけた事、その後、ゼーラによってここに連れてこられた事も聞いたのであった。
「そうですか、ありがとうございます。」
「いやいや、二人共無事でよかったよ。」
「全く、お兄ちゃん無茶して。」
兄の話を聞いたリナは、兄の無茶ぶりな行為に呆れるのであった。
「ゴメン…それよりアイツらは、どうしてポケモンを攫っていったんですか」
ピカソは話を変えて、二人に聞く。
「あいつらは、ポケモンを自分たちの兵器にしようとしてるんだ」
「ポケモンたちを兵器に…?」
「うん、ポケモンを戦争の道具に使おうとしているんだ」
それを聞いたピカソとリナは、怒りの表情を露にする。
「何て酷い事を…」
すると突然、部屋にサイレンの音が響き渡る。
「なんですか!?」
「緊急の招集だ!二人共ここで待っててくれ」
ジョンとマルトは、二人を残して部屋を出る。
その頃、リーカ星の上空では、セーロ部隊が数基飛んでいた。
「カリマの仇は、取らせてもらうぞ」
『しかし、隊長の許可はもらってないんじゃ?』
「構わん、行くぞあのパロス基地を襲撃してやる」
そして、セーロ部隊が乗った戦闘機は、パロス基地へと向かうのであった。
次回予告
ピカソ「僕も行きますよ!」
リナ「ダメよ、お兄ちゃん!」
ゼーラ「殺しを楽しんでるんじゃないわよ」
ザルク皇帝「宇宙を支配するのは私の理想」
???『ラフターが悲しみに包まれていく』
ピカソ「喰らえェ〜!」
次回「宇宙は誰のために」
お楽しみに!!