4-4 ピカソ出動!!
サーン帝国は、リーカ星に軍の偵察機を一基、出動させていた。目的は、まだ捕まえていないポケモンがいないかどうか、確かめるためだ。
「あんだけ、暴れまくったんだ、残ってるわけねぇ」
荒らした森を、コックピットから見渡す男性は、昨日のセーロ部隊の一人だ。
「ポケモンはなし!だが、このまま何もせず帰るのもアレだな、おっ!?」
すると男性は、東の方角に小さな村を見つけると、不気味な笑みを浮かべる。
「いっちょのこと、暴れてるか」
そして彼は、村の方へと進路を変えた。
ピカソは、サーン軍の偵察機をずっと追っていた。息切れをしながらも、ただひたすら必死に走り続けた。
「ハァ、ハァ...」
だが、20kmぐらい走ったところで、とうとうスタミナ切れを起こし、倒れてしまう。
「くそぉ!サーン帝国!」
仰向けになり、空を見渡す。今日は、雲ひとつない青空であった。
「ハァー...こんないい天気は、母さんや父さん、姉さんやリナと一緒にいたかったのにな...」
ドーーーン!!!
「何だ!?」
東の方角から、ものすごい爆音が響き渡った。
「向こうには、村があったはず。まさかさっきの!?」
息を整え、再び彼は走りだして、村の方へと向かう。
村では、偵察機による爆撃に遭っており、次々と燃え広がっていく。
「どうしてだよ!?」
「サーン帝国は、いつもいつも」
村人たちは、必死に逃げ回る。既に数人の犠牲者が出ており、さらに増えていく一方だ。
崩壊した建物の下敷きになり、そのまま炎に飲み込まれた者、爆撃を浴びて無惨に四散した者など。もちろん、村にいたポケモンたちも例外ではなかった。
「ハハハ!!いいぞいいぞ、やっぱ戦争はこうでなくちゃな」
偵察機のコックピットでは、男性の兵士が高らかに笑いながら、攻撃し続けた。
「デク共に生きる資格はない、あるいは奴隷なって我らの下僕になるかだ!」
村人やポケモンたちが襲われている時、全く別の戦闘機が村にやってきた。
「何だ!?」
すると、その戦闘機は、サーン軍の偵察機に向けて、機関銃を掃射し、何発か命中させた。
「くっ!ラフターの連合軍か!偵察機だからって見くびるなよ」
そして、彼は相手の攻撃をかわしつつ、戦闘機にミサイルを高速発射する。
猛スピードで迫ってきたミサイルを、避ける事も出来ないまま、連合軍の戦闘機は命中する。
「そんな...たかが偵察機相手に」
女性が乗った戦闘機はそのまま、森へと落ちていった。頑丈な造りと、落ちたところが密林地帯であったため、爆発炎上することはなかった。
「死にはしなかったか、まあいい、さてとまだ遊び足りないからな」
そう言うと彼は、再び村への攻撃を再開する。
ピカソは、ようやく村の入り口近くまで、たどり着いた。
「ひどいよ、全く」
村は、街のようにひどく燃え広がり、入り口付近は、避難した村人やポケモンたちで、溢れかえっていた。
[ふざけんなよ!!]
[よくも...]
ピカソの脳内に、彼らの叫び声が再び聞こえる。
[大変だわ、これじゃ操縦できない...]
「えっ!?」
森の方から、また違う女性の声が聞こえてきた。気になったピカソは、そっちの方に向かう。
声の聞こえたところに着くと、そこには、怪我をしている女性と、先程、偵察機に撃ち落とされた戦闘機があった。
「これはラフター連合軍の...」
「!!、あなたは誰なのよ...」
女性は、ピカソに気づき驚愕する。
「子供がこんなところにいたら危ないわよ、早く逃げなさい」
「で...でも」
ピカソは、女性の体を見ると、右足を怪我しており上半身も、ひどく傷ついている。
そして、戦闘機のほうを見ると、撃墜されたとはいえ、まだ動かせそうだった。
「僕がやりますよ!」
村の方では、偵察機がまだ攻撃をし続けており、そして、村人たちの叫び声も聞こえる。それに、耐えかねたピカソは、自分が戦闘機に乗りこんだのだ。
「ちょっと、何してんの!?降りなさい!」
「大丈夫です。これでも訓練されてますから」
そう言って、ピカソは何の躊躇いなく、戦闘機を発進させた。そして、そのまま村へと飛んでいく。
「あの子は、一体何者なの?」
ピカソは、戦闘機をいとも簡単に操縦し、村を破壊している、偵察機へと近づく。
「やめろー!!」
そして、偵察機に備え付けている機関銃を連続発射させた。
偵察機の兵士も、突然のことに驚くのであった。
「なんで、また来てんだよ!面白いところだったのに」
「!!?」
ピカソは、コックピットの中でも、相手の兵士の声を聞き取れた。
(いつもそうだ、お前たちは、そうやって面白半分で殺す!)
怒りが込み上がり、戦闘機のエネルギー出力を上げる。そして、照準を敵の偵察機をロックオンさせる。
「喰らぇぇぇぇ!!」
戦闘機の銃口から、巨大なエネルギー弾が放たれ、まっすぐと偵察機に向かう。
「何だこれ!?避けられん!!」
中心からは、逸れたものの偵察機は、大ダメージを受ける。
「おのれぇ、やったな!」
兵士も、先程と同じミサイルを戦闘機に向けて、高速発射させた。
しかし、ピカソの反射神経によって、難なくかわされた。
「チッ、同じ攻撃は...」
言い終わる前に、ピカソが攻撃を仕掛けてきた。唐突に仕掛けられたため、命中してしまう。
「母さんの仇、終わりだぁ!」
ピカソは、敵の偵察機に追い打ちのミサイル攻撃を仕掛けた。
「!?」
そして、敵が新たに言い出す前に、ミサイルは命中。不意をつかれた偵察機は、エンジン部分などが不能となり、落ちていく。
「セーロ部隊の俺が、こんなところで...」
燃料にも引火したのか、偵察機は墜落する前に、空中で爆発、散っていった。
それを見ていたピカソは...
「僕...人を殺しちゃったよ。つい勢いに乗っちゃって」
敵とはいえ、母や街の人たちを殺したとはいえ、人を殺めてしまった事に、次第に罪悪感がよぎる。
ピカソが乗る戦闘機の真下の森では、元々のパイロットである女性が、これまでの戦闘を下で見ていた。
「あの子って、本当に子供なの?」
女性は、今回の出来事を、自分が所属する基地に伝えた。
ピカソは、戦闘機を着陸させ降りる。そこに、先程の女性が急いでやってきた。
「あなた!一体、自分が何したかを...」
女性は、ピカソの顔を見て、何か様子がおかしいと気づく。
「すいません、僕、人を殺しちゃって」
(この子...)「何言ってるのよ」
そして女性は、ピカソを抱きしめた。突然の行動に、ピカソは驚く。
「あなたがやらなければ、村人たちはさらに殺されてたわ」
しばらく慰めた後、女性はピカソを連れて基地へと帰還するのであった。
同じ頃、リナがいる街の避難所では、住民たちがざわついていた。
「ポケモンがいなくなった!?」
「ああ、一匹残らずに」
「多分、サーン軍の仕業だ」
リナも、手持ちポケモンたちと一緒に、皆の会話を片隅で聞いていた。
「ポケモンが...」
ピカソは、女性に基地に連れてこられた。彼女はラフター連合軍の兵士であり、この基地のパイロットである。
「失礼します。」
ドアをノックして開けると、広い部屋に入った。そこの真ん中には、一人の男性が机の椅子に座っていた。
「バロン隊長、例の少年を連れてきました」
そして、隊長のバロンが立ち上がり、ピカソのところへとやってくる。
「この子がそうなのか?」
「はい。セーロ部隊の一人、カリマを撃ち落とした少年で、名前はピカソ君です。」
ピカソは、二人の会話を聞きながら、あたりを見渡す。ここはパロス基地で、ピカソの住む街からそんなに、遠くないところにあるのだ。
「無謀な事を...」
サーン帝国のとある基地では、隊長のギラによってセーロ部隊の隊員が、集められいた。
「ここに、皆を集めたのは他でもない、我らの仲間、カリマが殺られた。」
その言葉に隊員たちは、驚きを隠せず動揺する。
「彼は以前、標的にしたリーカ星の偵察に行っていた所、何者かによって、機体ごと撃ち落とされたのだ。」
「隊長!誰なんです?カリマを殺ったのは」
隊員の一人が、ギラに問いかける。どうやら彼は、カリマの同僚で幼なじみの様である。
「まだ調査中で分からんが、恐らくは、ラフター連合軍のパイロット兵士だと思われる」
「カリマが、あんな雑魚どもに、殺られるわけありません!」
「これから詳しく調べる。それまで待て!判明した後、これを我々への完全宣戦布告として、こっちも行動に移さなければならない。総員、それまで準備しておけ」
そして、セーロ部隊はその場を去り後にする。
次回予告
ピカソ「何で動いてくれなかったんですか!?」
リナ「お兄ちゃん、どこに行ったの?」
バロン「憎しみだけじゃ、この戦いを終わらせられないぞ」
ピカソ「ポケモンたちを兵器に...?」
次回「ポケモンたちの行方」
お楽しみに!!