第三幕 月と悪夢の争い
クレセリア!
「何でこんな事をする!貴様はそんなことをしないはずだろう!」
「相変わらずだね。私はただ単にリアリスト(現実主義者)なだけよ。」
「知り合いなのか?」
「腐れ縁さ…これからすることは黙っててくれよ。…《ダークホール》」
瞬時に眠りにつく人々。トウガンと他の人は起きている。
「変わらないわね…やっぱり。」
そう言いつつ《あくのはどう》をよけているのだから、物凄いことだ。
「わたしはね…きづいたの。主人が必要としてたのは
私じゃなくて貴方みたいな人。有能で力もある、すばらしい人だったのよ!」
サイコウェーブが襲い来る!
「トウガン!人を引き連れて退避しろ!
私も本気で行かないとまずそうだからな…」
「おうよ!お前は俺たちの一員なんだ。絶対帰ってこいよ!」
さすがジムリーダー。人がすぐにいなくなる。
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「さてと…主人に裏切られたというのは勘違いだ。」
「貴方に何が言えるの?私の気持ちもわからないのに。」
「少なくても、人の忠告を聞かないようなひとでは―」
「人になっても男勝りな女の子じゃあもてないわよ。」
さすがにカチンときた。が、ここは耐える…
「昔は楽しかったな。」
「昔なんて忘れたわ。今はもう楽しく生きるだけよ。」
おかしい…いくらクレセリアとはいえ、こんな性格ではなかった。
それに昔の事をあんな風に言うなんて。
何かあると思った私は、一つの賭けに出た。
「シャドークロー!」
「甘いわ…サイコカッター!」
「きゃああああ!」
「ふふふ…とどめよ…」膨大なエネルギーが集合していく。
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「…」
「破壊光線!」
「いやあああああ!」
跡形もなくあいつは消えた。
「ふふふ…勝ったわ…私の」
勝ち、と言いかけたところで声が出なくなった。
『相変わらずなのはお互い様だ、クレセリア。』
とつぜん空間が漆黒に染まっていく。
(何を…何をしたの?催眠術も何もしていなかったはず…まさか!)
『そのまさかだよ。』
パリーーーーーン!!
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「私にばっかり気をとられすぎだ。」
「まさか…私が破壊光線のチャージ中に…《ダークホール》をしたの?」
「残念。貴様が今まで攻撃していたのは私の《かげぶんしん》だ。
私はずっとお前の影に隠れていたのさ。」
「そんな…昔の貴方なら…」
そういいかけて止めた。
「…完全な敗北ね。…判っているわ。貴方にも人にも手は出さない。
私は静かに『次のトレーナー』を待つことにするわ。」
「私は旅を続ける。貴様は?クレセリア。」
「さっきも言ったでしょう?二度言うのは嫌いなのよ…」
(つまり、全部貴方にまかせるって言ったのよ。)
「クレセリア…」
テレパシーで伝えてきたことこそ、元に戻った証だった。
「『グッド ラック。』 幸せを祈るわ。光に誓って。」
彼女はそういって、空を飛んでいった。
「ふう…」
私は脱力した。
「…これからどうしよう…」
かつての仲間があのようになっている、ということは、
他もそうかもしれないということだ。
「ねえねえお姉ちゃん。」
見ると、小さな子供が封筒を持っていた。
「これは…」
「トウガンのね、おじちゃんがね、お姉ちゃんに渡して来いって。」
中身を空けると、こう書かれていた。
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名もなき旅人へ
どうやらやっかいなことがありそうだから深くは聞かない。が、
お前はこの町と私たちを守ってくれた。
それに、お前は私たちの家族だ。
もしもまた、道に迷いそうになったら自分の言葉を思い出せ。
追伸 お前のことを『女神』なんていう
馬鹿どもがいるから早めに行く事を進める。
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と書かれていた。
「ふっ…人と仲良くするつもりは無かったのだがな…」
私は静かに街を去った。
街では、大騒ぎをやっていた。
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パチパチと炎が燃える。
あの後私は海を越えて、捕まえたポケモンで何とか
テンガン山の近くまで来た。
「この手紙は…もういらないな。かさばるし。」
ひざにイーブイ―私が捕まえた―を乗せながら私はあの手紙を燃やそうとした。
しかし、
「…これは…」
ぼんやりと文字が浮かび上がったではないか!
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名もなき旅人よ。
この手紙に気づいただろうか。万が一の盗難に備えてあぶり出しで書かせてもらった。
行く先はわからんが、もしいく当てが無いならクロガネシティに行くといい。
ワシの息子でヒョウタという名のジムリーダーがいるはずだ。
どうやら最近でかい遺跡が発掘されたそうだ。行ってみるといい。
追伸 できればヒョウタに父がよろしくといっておいたのを伝えてくれ。
それと、バッジも添えておいた。何かあったらそれで説明するといい。
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「…用意周到すぎるだろ。」
「ともかく、ミオバッジはゲットしたな…」
主のようには行かなかったが。
「イーブィ!ブィブィ。」
イーブイが行くべきだ、と言っている。
「イーブイ…わかったよ。
とりあえず引き返してクロガネシティへ向かおう。しかし…」
遺跡…か…。
目の前にそびえ立つテンガン山。
その上にある『やりのはしら』。
主はそこにいるのだろうか…。