第一章 『悪夢』の旅
第三幕 月と悪夢の争い
クレセリア!

「何でこんな事をする!貴様はそんなことをしないはずだろう!」

「相変わらずだね。私はただ単にリアリスト(現実主義者)なだけよ。」

「知り合いなのか?」

「腐れ縁さ…これからすることは黙っててくれよ。…《ダークホール》」

瞬時に眠りにつく人々。トウガンと他の人は起きている。

「変わらないわね…やっぱり。」

そう言いつつ《あくのはどう》をよけているのだから、物凄いことだ。

「わたしはね…きづいたの。主人が必要としてたのは

私じゃなくて貴方みたいな人。有能で力もある、すばらしい人だったのよ!」

サイコウェーブが襲い来る!

「トウガン!人を引き連れて退避しろ!

私も本気で行かないとまずそうだからな…」

「おうよ!お前は俺たちの一員なんだ。絶対帰ってこいよ!」

さすがジムリーダー。人がすぐにいなくなる。


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「さてと…主人に裏切られたというのは勘違いだ。」

「貴方に何が言えるの?私の気持ちもわからないのに。」

「少なくても、人の忠告を聞かないようなひとでは―」

「人になっても男勝りな女の子じゃあもてないわよ。」

さすがにカチンときた。が、ここは耐える…

「昔は楽しかったな。」

「昔なんて忘れたわ。今はもう楽しく生きるだけよ。」

おかしい…いくらクレセリアとはいえ、こんな性格ではなかった。

それに昔の事をあんな風に言うなんて。

何かあると思った私は、一つの賭けに出た。

「シャドークロー!」

「甘いわ…サイコカッター!」

「きゃああああ!」

「ふふふ…とどめよ…」膨大なエネルギーが集合していく。

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「…」

「破壊光線!」

「いやあああああ!」

跡形もなくあいつは消えた。

「ふふふ…勝ったわ…私の」

勝ち、と言いかけたところで声が出なくなった。

『相変わらずなのはお互い様だ、クレセリア。』

とつぜん空間が漆黒に染まっていく。

(何を…何をしたの?催眠術も何もしていなかったはず…まさか!)

『そのまさかだよ。』

パリーーーーーン!!

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「私にばっかり気をとられすぎだ。」

「まさか…私が破壊光線のチャージ中に…《ダークホール》をしたの?」

「残念。貴様が今まで攻撃していたのは私の《かげぶんしん》だ。

私はずっとお前の影に隠れていたのさ。」

「そんな…昔の貴方なら…」

そういいかけて止めた。

「…完全な敗北ね。…判っているわ。貴方にも人にも手は出さない。

私は静かに『次のトレーナー』を待つことにするわ。」

「私は旅を続ける。貴様は?クレセリア。」

「さっきも言ったでしょう?二度言うのは嫌いなのよ…」

(つまり、全部貴方にまかせるって言ったのよ。)

「クレセリア…」

テレパシーで伝えてきたことこそ、元に戻った証だった。

「『グッド ラック。』 幸せを祈るわ。光に誓って。」

彼女はそういって、空を飛んでいった。

「ふう…」

私は脱力した。

「…これからどうしよう…」

かつての仲間があのようになっている、ということは、

他もそうかもしれないということだ。

「ねえねえお姉ちゃん。」

見ると、小さな子供が封筒を持っていた。

「これは…」

「トウガンのね、おじちゃんがね、お姉ちゃんに渡して来いって。」

中身を空けると、こう書かれていた。

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名もなき旅人へ

 どうやらやっかいなことがありそうだから深くは聞かない。が、

お前はこの町と私たちを守ってくれた。

それに、お前は私たちの家族だ。

 もしもまた、道に迷いそうになったら自分の言葉を思い出せ。

 追伸 お前のことを『女神』なんていう

馬鹿どもがいるから早めに行く事を進める。
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と書かれていた。

「ふっ…人と仲良くするつもりは無かったのだがな…」

私は静かに街を去った。

街では、大騒ぎをやっていた。

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パチパチと炎が燃える。

あの後私は海を越えて、捕まえたポケモンで何とか

テンガン山の近くまで来た。

「この手紙は…もういらないな。かさばるし。」

ひざにイーブイ―私が捕まえた―を乗せながら私はあの手紙を燃やそうとした。

しかし、

「…これは…」

ぼんやりと文字が浮かび上がったではないか!

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名もなき旅人よ。

 この手紙に気づいただろうか。万が一の盗難に備えてあぶり出しで書かせてもらった。

行く先はわからんが、もしいく当てが無いならクロガネシティに行くといい。

 ワシの息子でヒョウタという名のジムリーダーがいるはずだ。

どうやら最近でかい遺跡が発掘されたそうだ。行ってみるといい。

 追伸 できればヒョウタに父がよろしくといっておいたのを伝えてくれ。

    それと、バッジも添えておいた。何かあったらそれで説明するといい。

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「…用意周到すぎるだろ。」

「ともかく、ミオバッジはゲットしたな…」

主のようには行かなかったが。

「イーブィ!ブィブィ。」

イーブイが行くべきだ、と言っている。

「イーブイ…わかったよ。

とりあえず引き返してクロガネシティへ向かおう。しかし…」

遺跡…か…。

目の前にそびえ立つテンガン山。

その上にある『やりのはしら』。

主はそこにいるのだろうか…。



夜桜 ( 2013/01/26(土) 16:48 )