第二幕 かつての仲間
私はその島に別れを告げることにした。
幸い島には漂着したお金があったので、それを使って必要最低限なものを買った。
(さすがに服は一着しかなかったので買ったが)
マップ、きずぐすり、バッグ、そして―モンスターボール。
背中に汗がにじむ。
だが、私が目覚めたということは、おそらく他の
ポケモンも目覚めているだろう。
そして―主の喪失感から―凶暴化、
つまり野生化していることもありえなくないので、
私は主のように、トレーナーになることにした。
帽子を被り、船へと歩き出す。
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航海中は特に何もなかった。
ただ…ひとつ気にかけることがあった。
極力気配を殺し、普通に乗船していた私に声をかけてきたものがいた。
それだけならまだしも、そいつらはかつて
主が滅ぼした組織だった。
正体がばれないうちに《ダークホール》で眠らせたが。
奴らは連携していたので、おそらく私がポケモンということはわかっているようだ。
これから注意しなければならない。
それともう一つ。
私の
正体を見抜いたものがいた。
確か――名前は『N』だったか。
彼は先ほどのやつらのように邪気すら発していなかったものの、
私を最初から信頼して近づいてきたのだ。
話を聞くと、どうやら《イッシュ》という遠い地方からやってきたという。
彼とは鉱山の島で別れたが、不思議な少年だ(青年というべきか)。
主と同じような空気を出している。
人に興味を持ったのは、主と会ったとき以来だったか。
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ブオオオオオオ!…
汽笛の音で目が覚めた。
ついた様だ。
ここは、二つに分かれた街だ。
運河をはさみ、西側はジムや図書館、ポケモンセンターなどがあり、
東側には住宅地や、ショップなどがある。
はずなのだが…
人がいない。
まるで私が全員を眠らしたかのように―過去にあったが―
音がない。
普段ならにぎわうはずの図書館やジムにも人はいない。
「…おい、そこのアンタ!」
「?なんだ…?お前は…」
「いいからこっちに来い!…」
そのジムリーダー…たしかトウガンといったか…は、?マークが出ている私を
ポケモンセンターに引き込んだ。
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「アンタ、なんであんなとこを一人で歩いているんだ?
外は今
第一級非常事態宣言が発表されているんだぞ。」
ポケモンセンターの中は、騒がしかった。
バトルしているもの、笑っているもの、
笑いすぎて呼吸困難をおこし、
ラッキーとジョーイさんに運ばれているものなど、
混沌としていた。
「本当に
第一級非常事態宣言なのか?」
「ああ…だが、楽しく行くのが俺たちのしんじょうだ!なあ野郎ども!」
おうよ!、とか、そうだそうだ!、とか聞こえる。
「…それで、原因は何なんだ?」
「それについてはな…どこの馬の骨とも知らない、
あんたにはおしえられんなあ…」
数人の気配が変わったか。
「では…教えてもらえるようにしようか。」
「ほう…俺がジムリーダーとしてもか?」
さらに数人。殺気も混じっているな。
「ココロを信じて歩む…私はそれに従うまでだ。」
静寂が支配している…
「…なかなかいい目じゃないか。ようし!いいだろう。気に入った。
野郎ども、こいつは今から俺たちの家族だ!」
拍手が起こる。
「え…決断速いし、家族って…」
「まま、とりあえず食えよ。」
差し出されたのは熱々のおにぎり。
「いや、そこまでして貰う気は」
グウウウウ…
確かに最近干したものしか食べてなかったしな。
主も『食べることは大事なんだ』といっていたし…
結局おにぎりだけでなく、いろいろ食べた。
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ゆるさない…私はあの時誓ったはずなのに。
なんで…なんで…あの時…私たちを裏切ったの…
月の模様が書かれた衣を着た女性。それはポケモンの姿になる。
来る月は河をも砕く。
一撃で船は沈み、奥深くへといざなわれる。
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私がここに来て、一時間はたった。
そろそろ行こうか、そう思うと
ズドオオオオオオオオオオン!
とてつもない音がした。
一気に周りのトレーナーたちの緊張が高まる。
「おまえら…準備はできたか。行くぞ!」
トウガンの一声で士気が上がる。
「「「「ウオオオオオオオオオオ!!!」」」」
彼らは何をしようとしているのか。
周りに見つからないよう…―見つかっても眠らせたけれど―
こっそり外へ出た。
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そこでは、ポケモンたちが必死に守っているところだった。
空より《サイコカッター》が降り注ぐ。
「トリデプス、てっぺき!」
「ゴローンはロックブラスト!
ハガネールはりゅうのいかりで叩き落せ!」
この感じ…まさか、やつなのか?しかし奴はこんなことをしないはず…
それはこちらを見下ろす。そして、
「その髪…その目…あなた…ダークライ?」
「貴様…クレセリア…!」
まさか…やつ―クレセリア―
第一級非常事態宣言の原因だったのか!?