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目が覚めた。
私が感じたのはまず寒い、だった。その次に気づいた事はここはどこだか知らない場所だという事で、何がなんだか良くわからない。どうやら、思考能力が衰えているようで。
「眠い。でも寒い」
その二つで頭の中は埋め尽くされていた。なぜ寒いのか、そこまで考えてようやく私は気付いた。
「……何故にシーツ一枚羽織っただけのほぼ全裸に等しい姿で私は外で眠ってるんだ」
これで一つの疑問が解けた、些細だけど。しかしそこから私の眠気は事の重大さで吹き飛んで行く事だろう。
私は周りを良く見渡した。そこは、見慣れない公園だった。ジャングルジムとシーソー、そしてブランコが設置された標準的な公園だった。生き物の気配は、中央に植えられた樹上で羽を休めているマメパトやムックル以外には感じられない、私を除いて。
そんな公園で私は、ベンチに寝そべっていた。シーツ一枚だけ羽織って。下着も上着もズボンもスカートもタイツも靴下もさらには靴さえも
履かずに。それはもう全裸に等しい。
ほぼ反射的に体を起こそうとした。が、頭がズキズキと内側から痛み、固くて狭いベンチで寝たせいか、体中の節々が痛んだ。
「二日酔いみたい……お酒、飲んだことないけど」
体中の痛みを制し、頭とシーツを抑えながら立ち上がる。足の裏に砂利がめり込み痛い。
取り敢えず、記憶の整理だ。
私は反旗を翻したように暴れ、従うべき主人に痛みを与える脳細胞共を抑え付け思い出す。
確か昨日は、11月の3日だった。母がそろそろ寒いから上着を着ろと、うるさかったのを覚えている。
私は、勿論本当はそんなつもりは毛頭ないのだが、いちいちうるさい母にその時ばかりはついついイライラしてしまって、その日も私は母に怒鳴ってから家を出たのを覚えている。朝食は食べる気にならなかった。
学校に着くとつい母に怒鳴ったてしまった事を悔いながらも、普段通りに過ごした。ただいつもと違ったのは、お腹が終始空きっぱなしだったこと。
その後友達と一緒に弁当を食べて、所属するバト部(ポケモンバトル研究実戦部)で雑談とバトルを繰り返し帰宅、その後私は、
そこで思考は途切れた。忌々しい頭痛が急に邪魔したのだった。
そこから先は思い出せなかった。不思議とその前日、そのまた前日の記憶はあるのだが、先の記憶が無かった。それに昨日何か特別な事があったのかと問われれば、多分なかったのだろうな。
「そもそも、ここはどこだ」
ビルの間に挟まれるようにして出来た公園。土地が中途半端に残ったから、公園でも作ろうかというノリで作られたような、適当な公園。
私は足の痛みを抑え、歩き始めた。
中央に植えられた木の隣の時計は、どうやら午前7時を差していた。
そろそろ、ここ東京の通勤ラッシュの時間ではなかろうか。