4
2
 放課後。屋上。昼休みの会話が見事に的中し、分厚い暗雲が空を覆い、激しい雨が降り注いでいる。
 ザァと豪雨が降り頻る荒天の下、何時もの様に俺と『ふたば』は居る。勿論雨具は持ってきていなかったので屋上に出た瞬間にずぶ濡れの状態で。
 上履きはサンダルを履いているので足下が水に浸かり続ける事はないが、シャツやらスラックスやらが肌に張り付いて気持ちが悪い。目付きの悪い相棒の念力等で防ぐ事も出来なくはないがわざわざ行う必要ないし、不快という事は生きているという事であるからこれでいい。
 というわけで。激しい風雨に吹き付けられて水を滴らせる相棒の視線を受けながら、硬貨を天へ向かって弾く。
 びうびうと吹き荒ぶ雨風の音の中。キィンと混ざり込む硬質な金属音。
 くるりくるりと高速で回転するそれを眼で追いながら、その結果を想って全身の血が凍りつく。
 そして。落ちてきたコインは掌の中へ。
 それを、開く。跳ね上がる鼓動。心臓さえも凍りついて軋んだ痛みを錯覚する。
 瞬間が幾千倍にも引き伸ばされたもどかしさの中で、俺は生きているのだと限りなく実感する。
 生きている。生きている。生きている。今、俺はこの場に生きて存在している。
 にィ、と口角が上がるのを自覚する。視線をずらせば、エルレイドらしからぬ凶悪な面相の相棒も同様に、にたりと口角を上げている。
 嗚呼。俺も『ふたば』も生きている。
 当たり前の事実をこの上なく実感する土砂降りの雨の中、開いた掌の中の硬貨は。
 裏。

秋桜 ( 2017/11/16(木) 23:31 )