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躰が勢い良く投げ出される。視界なんてものは機能しない。激しく流れるそれに映るのは絶望。脳裏には死。只々理不尽に唐突な状況に、為す術もなく曝される。
何にぶち当たったのかわからない。理解出来るのは全身に尋常ではない痛みが走っている事実のみ。
だが、これら全てを処理しきれない脳が大半を遮断したようで、いつの間にやら衝撃とその部分に感じる熱そして口の中の鉄の味程度のことしかわからなくなる。
果たして俺の腕はまだ繋がっているのか。脚は。肺や心臓は機能しているのか。
なんてことを考えた刹那。その一瞬、時間は静止して視覚が再度起能する。
再起する視界。映るものは。投げ出された俺が向かう先は。
牙の様に硝子片が残る破れた窓。
それに、俺の首が喰い破られる。
ブツリ。ゾプリ。皮膚を、肉を突き破られる音と感触が他人事に思えるくらいに振りきれた痛みが襲い来る。
声は出ない。視界も霞む。一気に内部の熱が流出していく感覚に怖気がはしる。命が流れだしていく事実に恐怖する。
口内に溢れる不快に熱く鉄臭い液体をゴポゴポと吐き出し、水中でもないのに溺れながら思う。
嗚呼。また。夢か。
――俺がそこに傷を負った事実は無い。