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闇の中に充満する苦痛を訴える声。怒声とも悲鳴とも言い表せられない声の渦。絶望を湛える坩堝の中に俺は居る。
熱い。熱い。熱い
痛い。痛い。痛い。
怖い。怖い。怖い。
何が起きたのかなんて考えには至らない。突如の衝撃。そして暗転。勢いよく放り出された俺は。
気が付けば、地獄の直中に投げ込まれていた。
体験したことのない苦痛と恐怖。こんな状況に至る前に膝に乗せて抱いていた小さな相棒は、俺が力一杯に抱き締めて放さなかったので幸いなことに無事で、短い腕で俺の腕をぎゅっと掴んで震えている。
そして。
死と苦鳴が満ち満ちて恐ろしい異界と化した空間で震えて泣いている俺と相棒を守るように、包み込む二つの温もり。
「ダイジョウブ」「ダイジョウブ」
どろりと濡れた躰で。煤と鉄錆の臭いを漂わせ。聞いたことのない声色で。壊れた様にその言葉を繰り返す。
嗚呼。またか。
夢だこれは。
――俺の記憶にこの温もりは無い。