エトワール・フィランテ〜星降りの夜の導かれし出逢い〜 - 第九章 生命溢るる花の村〜花の香りと不吉な風〜
第六十二話 月に群雲花に風〜激しく舞う桜の花びら〜
 風に乗せて心を穏やかにする甘い香りを放ち、地面を鮮やかに彩る、赤色や桃色の花々。その隙間を埋めるように青々と茂る草叢(くさむら)。それらにより織り成された広大な絨毯が、澄みきった青空と対比して映え、夢の世界に迷い込んだような雰囲気を醸し出す。そんな空間が、かつてアルム達が訪れた土地の一つにあった。
「今日は天気が良いわね。植物も伸び伸びとして元気が良さそうだし」
「そうですね。これだけ太陽の光があれば、植物も充分に育ちますね」
 赤く色づいた二輪の花の飾りを頭部に着けており、下半身は数枚の緑と黄の葉っぱの形となっている種族――キレイハナが、しゃがみ込んでいるポケモンに話し掛ける。声を掛けられ、巨大な薄紅色の花を頭に持つ、紺色の体のラフレシアは、重い頭をゆっくりと持ち上げて立ち上がる。
「ガートくんやシャトンちゃんなら大丈夫よ。まだ旅立ってからそんなに日にちも経ってないじゃない。ラックさんは心配性ね」
「別に不安がある訳じゃ――まあ、ない訳じゃないんですけどね。確かにガートはしっかり者ですもの。私が心配するまでもありませんね」
 どこか浮かない顔をしているラフレシア――ラックに、キレイハナは微笑みかけた。背が低いからこそ、良く見える表情から心中までも窺い知れたのである。見透かした上での言葉に励まされたのか、ラックは強張りの解けた柔らかな表情に戻った。
「そうそう。いないところで親心を出したってしょうがないんだから、今は気長に待ちましょう」
「そうですね。ありがとう、フィオさん。あ、そういえば、貸して欲しい物があるんでしたね。ちょっと待って下さい」
 すっかり調子の戻ったラックは、キレイハナのフィオに背を向けると、若草で形成された自宅へと入っていった。その後ろ姿をにこやかに見送りつつ、フィオは視線を外して村の外へと移した。
 すると、暖かい陽光が降り注ぐ中を、一人の背の高いポケモンが草を踏み分けて歩いてくるのが目に映った。胸から後頭部にかけて薄い黄色の毛が長く伸びており、両手の先には鋭い鉤爪(かぎづめ)を持っている。両足の先だけ黄色く、それ以外は真っ赤な体色をしている。一部に鳥のような容貌が感じられるその種族名は、バシャーモである。
「……あら、珍しい方がいらっしゃいましたね。花の村――ブルーメビレッジに何の御用ですか?」
「ここにフルスターリがあると聞いた。どこにあるか教えろ」
 植物の命を粗末にした事を脇に置き、フィオは丁寧に対応する。しかし、バシャーモはそんな心遣いに対しても横柄な態度を貫いた。身長に差があり過ぎるせいか、影も完全にフィオを覆い尽くした上で見下ろしている。
「さあ、私は知りませんね。もっとも、知っててもあなたみたいな方には教えませんけど」
「おっと、手荒い歓迎だな。まあ、最初から想定してたけどな。無理にでも吐かせるつもりだし、知らないなら知らないで知ってそうな奴のところまで案内させる」
 初対面ながら振る舞いががさつな相手にも、フィオは怯む事なく強気に出た。しかし、それでバシャーモの気が収まるはずがなく、遂には脅迫じみた事まで言い出す始末。これにはフィオも呆れ顔で見つめる。
「ふぅん、実力行使で聞き出すって事ね。それならこっちも、あなたを客としては扱わない」
 溜め息を小さく吐き出すと同時に、フィオは纏う空気を一変させた。可愛らしい見た目とは裏腹に、激しい敵意と闘気の篭った視線を投げかける。
「おい、オレに刃向かうつもりか? 止めといた方が良いぞ。おとなしくオレに従った方が身の為だぜ。ほら、今の内なら許してやる」
「いいえ、誰が従うもんですか。あなたにお灸を据えてあげる。そこまで言われると、私だって黙っちゃいられないもの」
 バシャーモも凄む様子も退く様子もなく、むしろ自信たっぷりに笑って見せた。体格の差などこの際は関係ない。お互いに火花を散らして睨み合っている。
「後悔しても知らないからな。相性の差がある事くらい――」
「――ごちゃごちゃうるさいわね。とっととかかってきなさいよっ」
 闘志に火を着けられたフィオは、相手の挑発さえも遮った。不満を滲ませてバシャーモは歯を食いしばる。これで、どちらも譲らない事は明白だった。相違と意地から来る戦闘が勃発した。
「お嬢ちゃんが無駄な抵抗すると、痛い目に遭うって事を思い知りな!」
 先に仕掛けたのは、バシャーモの方だった。手首から吹き出した真っ赤な炎で拳を包むと、そのまま素早く振り下ろす。フィオは微笑を浮かべると、体を横に回転させつつ拳を回避した。代わりにぶつかった地面では、植物が一瞬にして焦げてしまう。それ程に炎が強力である証拠である。
「誰が、痛い目に遭うですって?」
 目の前で技を見て力量を感じ取っても、フィオは全く平然としていた。自らの葉っぱのスカートを軽く払う余裕さえ見せる。
「口だけは達者なようだな。まだ始まったばかりだぜ?」
 気にしてない素振りをしてはいるが、こけにされてる気分になり、バシャーモは不快感を(あら)わにしていた。今度は両手に炎を纏わせ、連続で殴りつけようとする。姿勢を低くしなければならないせいか、交互にリズム良く拳を突き立てる事は難しかった。
「足元がお留守になってるわよ」
 その欠点のおかげで、二度の攻撃を左右に動いてかわすと、フィオは攻撃に転じた。下半身の隙間から飛び出した二枚の葉は、紫色の光に包まれた状態で、バシャーモの足を狙って飛んでいく。バシャーモはぎりぎりのところで高く跳躍して直撃を避けるが、刃と化した葉は急に上に方向転換して追尾していった。
「“マジカルリーフ”か。しゃらくせぇ!」
 大きく叫び声を上げたところで、襲ってくる二枚の葉を“ほのおのパンチ”で叩き落とした。途中で燃え尽きると、灰となってフィオの上に降り注ぐ。それを気にも留めないで、フィオはバシャーモの着地を待った。
「かわすばかりで倒せると思ってんのか? それに、技を出したところで燃やされるのがオチだな」
「早くも息が上がってきたあなたが偉そうに言える事じゃないと思うけど」
 挑発を交えた言葉による攻防。フィオの鋭い指摘がバシャーモの心を刺激する。手首からより激しい炎が湧き上がった。怒りで力が強くなったようである。
「ただ殴るだけだと思うなよ!」
 バシャーモが両腕を交差させて振るうと、手首から小さな炎の塊が飛び散ってきた。数こそ多いものの、右に跳んでひとまずは“ひのこ”から逃れた。そうして安心したのも束の間、片手を堅く握り締めたバシャーモが迫っていた。
「よし、もらった!」
 対するフィオの方は、追撃を予想していたように落ち着いていた。近くまで引き付けたところで、頭の二輪の花から大量の黄色い花粉を放出する。一瞬にして辺りの空気が黄色に染められた。
「くそっ」
 バシャーモは短く愚痴を零しつつ、すんでのところのところで攻撃を中止した。花粉が体に付着するかしないかのところで、前に進もうとする脚に力を加え、無理矢理後ろに跳んだ。着地こそ不安定になるものの、花粉を吸い込む事は免れている。
「ちっ、間に合わなかったか」
 片手を開いたり閉じたりしながら、バシャーモは身体の異常を確かめた。感覚や動作が少し鈍くなっており、僅かに痺れの兆候が見られる。
「あら、麻痺してでも攻撃をしてくるかと思ったのに。どちらにしろ効いてはいるみたいね」
「調子に乗るなよ。そこまで頭に血は昇ってないし、多少の痺れなんかむしろ刺激になるくらいだ」
 体調の面でやや不利な状況になっても、バシャーモはまだ心にゆとりを持っているようだった。炎に覆われた手で“しびれごな”を軽く叩き落とすと、再び攻撃の構えに入る。
 充満していた花粉が大気の流れで移動したのを見計らうと、バシャーモは深く息を吸った。今度は手首の炎を出す器官からではなく、足から炎を放出して纏わせた。
「オレが得意とするのは、手じゃなくて足だ。それを今から見せてやる」
 まさしく俊足だった。ダッシュを決める為に屈み込んで地面を蹴ったと思えば、バシャーモは眼前まで一気に接近していた。フィオも遅れて反応して後退するが、蹴り上げられた際に体を炎に焼かれてしまった。直撃こそしてないが、触れただけでダメージを負っていた。
「ふふっ、ちょっと油断してたわね。嘘だと思ってたから」
「はっ、強がりだな。動きを追えなかった癖に」
 火傷した部分を軽く押さえつつ、距離を取ってフィオは笑って見せた。その態度にバシャーモは嘲笑うものの、フィオもそれに動じる様子もない。一進一退の攻防を繰り広げている二人は、もう相手を倒す事しか眼中に無いようである。
「本当に強がりだと思うなら、もう一度試してみる?」
 フィオは両手を添えて胸の前まで持ってくると、祈るような仕草の後にそのまま頭上に(かざ)した。それに天が応えるように、僅かに広がっていた雲も姿を消し、一層強く陽射しが照り始めた。――辺りを陽光で満たす、“にほんばれ”である。
「おい、陽射しの強い状態はオレのような“ほのお”タイプにとっては好都合だって事を知らないのか?」
 より戦いやすい環境が整った事で、バシャーモは揚々としていた。さらに攻めるべく、足に力を籠めて駆け出した。地表の草が風で大きく揺れる。
「知ってるわよ、一応」
 先程はかわしきれなかったのと同じ攻撃。炎を纏った蹴り――“ブレイズキック”が迫る中で、フィオは早い時点で宙返りをした。今度は“あえて”ぎりぎりのところで身をかわし、バシャーモが空を蹴り上げるのを見届けて着地した。そのしなやかな動きに、攻撃を外したバシャーモでさえも一瞬見惚れてしまう。
「私も、晴れ状態に強いのよ。“ようりょくそ”のお陰でね」
 植物と同じように、日の光によって力が漲(みなぎ)る特性。それが活性化され、身の熟しが軽くなったのである。自分の事ばかりでフィオの思惑に気づかなかった為か、バシャーモは歯を食いしばって拳を堅く握る。
「あら、余裕じゃ無かったのかしら? 随分と焦ってるみたいだけど。おとなしくお帰りになる?」
「黙れ。まだこっちに歩があるんだ。それに、この状態が長く続かない事を忘れてないか?」
 (けしか)けるようなフィオの言葉に、バシャーモは堪(たま)らず青筋を立てる。しかし、すぐに拳を解いて冷静さを取り戻すと、バシャーモは鼻で笑った。
「ええ、長く続かせる必要は無いもの。私と踊って下さらない?」
 大胆不敵に微笑んで見せると、フィオは軽いステップで左右に揺れ動いた。その誘いに、バシャーモは乗った。軽く数回跳躍すると、ロケットの如く一気に間合いを詰めてくる。
 待ち受けるフィオは、その鋭い蹴りを見極めて横に小さく跳躍した。燃え盛る足が脇を掠めていくが、受けた損傷は無い。攻撃が通り抜けたのを確認すると、フィオは軽く手を一振りする。バシャーモが足を引っ込めるのと同時に、突如として淡紅色の桜の花びらが大量に宙に舞い上がった。
「舞うのは、私だけじゃないわよ」
 バシャーモは危機を感じて身を翻すものの、辺りを花びらに囲まれては逃げ場は無かった。無数の花びらが、嵐のような勢いで襲い掛かった。バシャーモの体にはいくつも傷を作られ、その怒涛の勢いで押し流されていく。直撃を喰らった挙げ句、強制的に退歩させられた事で、バシャーモは余計に苛立ちが募る。
「くそっ、お前なんかで時間を食ってる暇は無いんだ。邪魔をするな!」
「あら、先に仕掛けてきたのはそっちじゃなかったかしら?」
 唸り声を上げながら蹴りを繰り出してくるバシャーモを、フィオは軽くあしらった。低い位置にいるフィオには足を掬うような蹴りしか出せず、バシャーモとしても苦戦を強いられていた。焦りが隙を生み、フィオに攻撃のチャンスを与えてしまう。
「ぐっ……!」
 縦横無尽に舞う花びらによって、同じところを再度攻め立てられ、バシャーモは初めて苦悶の声を出した。焼き払おうとむきになって炎を纏った腕を振るうが、巧みに動く花びらには掠りもしない。
「せっかくここまで来たんだ。計画を頓挫させてたまるか」
 興奮している訳でも、かと言って冷静な訳でもなく、半ば放心状態でバシャーモは立ち尽くしていた。ぶつぶつと独り言を呟きながら、鋭い目つきでフィオを睨みつける。ぎらぎらした瞳に危険を察知し、フィオも一歩後ろに下がった。
「この村も全部、焼き尽くしてくれる!」
 ほぼ理性を失いかけており、怒鳴り声を発した直後、バシャーモの全身は凄まじい勢いで燃え盛る炎に包まれた。橙色に近い炎により、足元の草は見る見る内に灰と化していく。
「何かおかしいわね。早く止めないと」
 今までと明らかに違う様子に、すぐさまフィオは攻撃に移った。しかし、ピンク色の薄片は炎の壁を突破するには至らず、虚しくも一瞬で塵へと変わってしまった。暴走とも言えるこの状態では、相性の差をひっくり返す事はままならないようである。
「こうなったら、私一人の力じゃ無理そうね。どうにか押さえ込まないと」
 観察している間にも炎の勢力は広がり、治まる気配も無い。後悔先に立たず――それを身を以って思い知らされつつ、フィオは助けを呼ぼうと行動に出る。しかし、遮るように炎が鞭の如く伸びてきたかと思えば、眼前にはバシャーモが立ち塞がった。
「これが発動すると、全てを焼き尽くすまで止められないぞ」
「へぇ、意識はあるのね。全部飛んじゃってるかと思ったのに」
 炎の塊と化したバシャーモを前にしても、フィオは冷静さを失ってはいなかった。突破口を見つける為にも、話し掛けて時間を稼ごうと試みる。しかし、炎は生き物のようにうねり、容赦なくフィオを食い尽くさんとしている。
「無駄って事ね。それじゃあ――」
 フィオが軽く手を振ると、再び無数の花びらが現れて舞い上がった。統率された動きで群れを成して飛び、一瞬にしてバシャーモの周りに桃色の壁を作り上げた。だが、それを突き破るようにして、乱暴な橙色が姿を見せる。
「さあ、次に燃えるのはお前の番だ」
 火だるまとなったバシャーモは、不敵な笑みを見せつつ素早く駆け出した。触れた者をその身に纏う炎で焦がす突進――“フレアドライブ”を仕掛けられるも、フィオは怯む事なく、体を捻りながら宙返りをしてかわした。飛び散る炎に僅かに身を焼かれるが、大事には至らない。一方で、攻撃が外れた拍子に、バシャーモを覆っていた“あつい”鎧は消えていく。
「あまりその力を使い過ぎるのも、体力的には辛いみたいね」
 フィオの的を射た指摘に、バシャーモは肩で息をしながら目を見開いた。先刻までのダメージを考慮しても、体力を消耗しているのは一目瞭然だった。悔しそうに拳を握り締めてフィオを睨みつける。
「俺は負けられないんだ。炎タイプの誇りに賭けても、な」
 深呼吸をして腹を据えた上で、バシャーモは全身を炎で覆った。今度は自慢の足さばきで左右に動きながら、標的であるフィオに翻弄するように迫っていく。
「まだそんなに速く動けるのね」
 最初の頃のスピードは未だに健在らしく、フィオも目で追うのに必死だった。そして、待ち構える間にバシャーモが眼前まで肉迫してきた時、その体の炎は瞬時に消失した。戸惑いつつフィオが顔を上げると、右の拳に激しい炎が集中していた。バシャーモは一気にそれを振り下ろす。
 フィオの方も、甘んじて受けるつもりは毛頭無かった。足元に散りばめた花びらが急上昇していき、バシャーモの顔面近くを襲って視界を塞いだ。予想外の襲撃に喘ぎつつ、真っ直ぐ拳を地面に向けて突き出す。
「あ、危なかったわ」
 植物が焦げた臭いが立ち込める中、間一髪のところでフィオは攻撃を避けていた。軌道がやや逸れながらも、的確に狙い打とうとしていた拳を見極め、フィオは体を捻った。掠った事でその熱は伝わってきたものの、ダメージ自体は軽かった。
「まだまだっ!」
 一撃目を凌いで安心したのも束の間。バシャーモは上体を起こし、次は足払いの要領で“ブレイズキック”を繰り出してきた。息吐く暇も無く押し寄せる鋭い蹴りを、フィオはバネのように高く飛び上がってかわした。その跳躍力を殺さないまま、バシャーモの頭上まで舞うように飛んでいくと、通過する間際に足で蹴りつけた。脳天に直撃してバシャーモがよろめいている隙に、フィオは華麗に着地して後退する。
「さあ、もっと私と一緒に踊りましょう?」
「図に乗るな」
 バシャーモはもう誘いには乗らなかった。完全に無視を決め込み、相手のペースに流されないように考えたのである。深呼吸をすると、両手両足首から勢いよく炎を噴き出し、真っ向勝負を仕掛けに行く。
「もう近寄らせないわよっ」
 フィオはあらかじめ対抗策は練っていた。慌てず草のスカートを軽く振り、辺りに神経を麻痺させる黄色い粉を撒き散らした。一瞬の結界のように漂う中に、地面すれすれの位置にいくつか緑色が隠れている。
「そんなもん、二度も喰らうかぁっ!」
 裂帛の叫び声を上げ、バシャーモは足を突き出した。熱を帯びた横蹴りが空を斬ると同時に、その風圧で粉が吹き飛んでいく。しかし、バシャーモの行動は計算の内。フィオが手を向けるのに呼応して、足元に潜んでいた光を纏った葉っぱが姿を現し、一斉に襲い掛かる。
 しかし、今度ばかりはバシャーモも機転が利いていた。大振りで動作をしてる間にも体を炎で包み込み、“マジカルリーフ”を弾き返した。蹴りの勢いが付いたまま一回転すると、そのまま突進をしていく。二重に渡る罠をくぐり抜けられて、フィオは為す術も無く空中に投げ出された。
「うっ、強引に押し切られるなんて――」
 地面に倒れる形で失策を悔やむフィオを、バシャーモは冷酷な目で見下ろした。間髪入れずに追撃を加えるべく、そして、確実に仕留めるべく、炎で身を包んだ。恐怖を増大させるような、煉獄を彷彿とさせる赤の塊。それが猛進してくるのが瞳に映ったのが最後、フィオの視界は真っ白に塗り潰された――。



コメット ( 2012/10/16(火) 23:58 )