エトワール・フィランテ〜星降りの夜の導かれし出逢い〜 - 第十四章 水中都市アトランティスと結界使い〜精霊の秘密と新たな兆し〜
第百十六話 自身の光(おもい)を、フルスターリの光を、今解き放て
 キルリアのティリスによる襲撃の騒動にも一段落着いて、アルム達はニノアに休息の場を与えてもらう事になる。疲れ切って既に眠っているアルムは、アカツキに背負われる形で運ばれた。ティリスは別行動かつ別の建物での休息となったが、それはヴァロー達からの疑いが晴れないからではなく、ティリスが自ら望んでの処置であった。そちらにクリアとブレットが同伴する事は両者共に異存なく、残りはいつもの面子で一夜を明かす事にする。
 アルムを先に寝かせたところで、続いてティルやヴァロー、ライズやアカツキ達が続けて床に就く。体調不良だったアルムだけでなく、アルムを気遣って奔走した仲間達も、それぞれに疲れてはいたのだ。横になってから大して時間を置かずして、意識を暗闇の中に溶け込ませていった。
 ――だが、そこにいるはずの姿が一つ、欠けていた。闇に近い深い青に同化するようにして、静かに抜け出していた者がいたのだ。薄目を開けた折に異変に気付いた青い影は、それを追うようにして部屋を抜け出した。

 疎林の如くまばらに降り注ぐ白銀色の柱。静けさを湛えて平穏を象徴している凪の水面。昼間が空の澄み切った鮮明な青を映しているのであれば、同じく夜の帳が降りた空の色を吸い取っているかのように、群青と黒を織り交ぜた色で染まっている。海中いっぱいに降り注いでいた黄金の光は完璧なかくれんぼをやってのけ、入れ替わるようにして月光による白銀色がところどころに差している。
 昼の姿が目にも鮮やかで壮麗な美しさなら、夜の姿は目と耳に静かに訴えかける、侘びと寂に似た、儚さの共存する美しさがそこにはあった。こちらの幻想的な風景もアルムに見せてあげられたらなと思いつつ、水中の風景を見慣れたマリル――シオンは、他に影のない道を真っ直ぐに泳いでいく。彼女が目指す先は、一番滞在時間の長かった鳥居のある高台よりさらに先の、輝く水晶が安置されている間であった。
「レイル、部屋を抜け出して、こんなところで何をしているの?」
 ここまで後を付けられて、普通ならびくりと驚いても不思議ではない。だが、相手は鉄面皮のポリゴン――レイルだけあって、声が届くなり一瞥して終わりであった。反応が薄いのは興醒めではあるが、シオンが望んでいたのは大袈裟な反応などではない。せめて回答を寄越して欲しいと、地面を蹴ってさらに近づく。
 中央にある石造の円形の台座に、見覚えのある蒼白の水晶――フルスターリが据えられている。他の土地と同じく、厳重に保管されているとかでもなく、皆の目に触れられるところに置いてあるのだ。一応この都市を保つ動力源ではあるらしいが、精霊であるニノアでない限りは力を制御する事は叶わず、故に誰でも見えるところに置かれているのだ。
「あなたの事だから、用もなくここまで赴いた、なんて事はないのでしょう?」
「ご明察です。このフルスターリを一目見たくて、抜け出してしまいました。あなたはそれを咎めにわざわざ私を追ってきたのですか?」
「いいえ、違うわ。アルムだったらきっと、心配して追いかけるだろうって思ったからよ」
「主なら、ですか」
 レイルは口を噤んで逡巡した後に、改めてシオンの方を振り向く。鉄の仮面を被っているはずのその表情にはいささか、いつもなら決して顕現する事のない陰りが映っているようにシオンには見えた。自身ではその変化とも揺らぎともいうものに気付いてはいないらしく、ただ暗い雰囲気を纏ったままである。
「すいません、一目見たくて、と言うのは半分嘘でした。本当は都合よく、かつての“あの人”のように、私に啓示をもたらしてくれないかという望み半分で来ました。――いいえ、本心はもっと違うところにあるようです」
 はっきりした口調が消え、自らの思考の迷宮で彷徨っているようであった。自分の本心すら分からず、何を伝えるべきなのか考えが追い付かない状態にある。シオンはそれを憐れむでも、馬鹿にするでもない。ただ少しでも本心を自覚する手助けやきっかけになればと、諭すように語りかける。
「レイル、落ち着いて。ゆっくり話してくれて良いのよ。私は糾弾しに来たわけじゃないんだもの」
「感謝致します。そうですね、私は迷っているのかもしれません。フルスターリの光に導かれたのもそのため。迷いと焦りのせいか、主にも唐突に妙な事を聞いてしまいました」
「何を迷っているのか、良かったら私に聞かせてもらえない?」
 普段言葉を交わさない事もあって、シオンはどこかおずおずとした様子で歩み寄る。無粋だと覚悟はしつつも、レイルも苦楽を共にしてきた仲間の一人である事に間違いはない。ならば悩みを聞かない道理があろうか、と自らに言い聞かせ、返答を待つために静かに台座の周囲に座り込む。優しく微笑みかけてくるシオンに対して、首を横に振るつもりは、レイルにはなかった。
「私は常に主の傍にいて、その方針に付き従うのが正しい行動だと信じ、これまで共にしてきました。ですが、それだけではいけないと、私の中で警鐘が鳴り響いたのです。このままでは、私の存在意義が危うい、と」
「存在意義ねえ。アルムはそんな事気にしてないと思う――って言っても、あなた自身はそうはいかないのよね」
「私は今まで誰かに仕える事で、自らの存在意義を定義し続けてきました。正しくは存在意義を他者に委ね続けてきたとでも言いましょうか。しかし、今はそれだけでは駄目なのです。ただ仕えるだけでは、私自身の存在意義は達成されない。どうすればより主のお役に立てて、私のいる意味を強固なものに出来るのか、模索していきたいのは山々なのです。ですが――」
 不明瞭ではあるが、答えは確かにそこにある――はずなのだが、中々その先に行き着かない。レイルはそこで言葉を詰まらせ、俯きがちになってしまう。感情を宿す者が、後ろめたさや悲しみといった哀の感情を抱いた時に示す行動である。それをレイルが初めて見せたところで、言葉を再度紡ぎあげる。
「私にはその自信がありません。答えに辿り着く自信ではなく、成し遂げる自信です。可能性がある事柄は何か理解しているのに、それを疑って実行出来ない。こんな事初めてで、どうしたら良いのか分かりません」
「そういう時は誰かに頼っても良いと思うのよ。アルムでも良いし、もちろん私でも、他の皆でも、受け入れてくれるはずよ。悩みを打ち明けるのでも、こうしたいとお願いしてみるのでも良いし。案外誰かに頼られる事って、信頼の証みたいな面もあるから、頼られた方も嬉しかったりするのよ?」
「――ああ、そうでしたか。私に欠けていたのは感情のみならず、誰かに寄り添うという感覚もでしたか。傍にいてお役に立つ時に力をお貸しする事だけが、仕えるという事の全てではない。隣に立って同じものを見て、感じて、喜びと言った感情を共有する事で、本当の信頼関係が築けるという事ですか。ああ、これは――」
 レイルの中で全てが氷解していった。自身の内に刻みつけられた行動指針によって皮肉にも、望む答えから自身を遠ざけていたのだ。そして図らずも、アルム達から一線を引いた位置に身を置いてしまった事が、自身の在り方を見つめ直すきっかけとなり、シオンに諭される事で気付いた重要事項となった。足りないのは感情だけではなかったのだ。
「なーんて、私も本当は偉そうに言えた口じゃないのだけどね。王女として振る舞っている時はどこか、私も誰かに頼らず一人で頑張らなきゃって、背伸びしようとしていた節があるから。でも、アルム達との旅を通じて、そういうのは必要ないって気づかせてもらえたの」
「主が頼れる相手、だったからですか?」
 レイルの素朴な問いかけに対して、シオンはくすりと優しく微笑む。朧げに降り注ぐ月明りに照らされる彼女の顔は、見るからに柔和で、温かさを内包している。
「いいえ、ちょっと違うわね。私以上に背伸びしようとして、頑張っちゃう男の子に出会ったからかしら。でも、そんな背中を支えて押してあげたいって、思わせてくれるきっかけをくれたの。だから、頼られる喜びも、私は感じる事が出来たわけ。王女としての使命に縛られない、自由で胸がすく、ね」
 最初はどちらも偶然の出会いでしかなかったが、いつしかその純真で真っ直ぐな心に惹かれていった。気付けば旅に同行していて、行く先々で様々な表情を見せてもらい、同じ苦楽を共にしてきた。多少の期間の違いはあれど、シオンとレイルがアルムに付いて行った理由に大差はない。だと言うのに、邂逅した時から既に、二人の感性の差は大きく開いていたのだ。
「私にも、今からでも、主と全てを分かち合う事が出来るでしょうか。ありのままの私のままで、隣に立っている資格が、本当にあるのでしょうか?」
「それは直接本人に聞いてみたら良いんじゃない? ねえ、アルム――」
 シオンはもったいぶったように、ゆっくり振り返りながら目を配らせる。ちらりとぼこぼこと泡が吹き出る音が、二人の背後から聞こえてくる。不自然な物音がする方へとレイルも視線を遣ってみれば、物陰から台座の方をこそこそと覗いていたイーブイ――シオンが名指ししたアルムの姿が、確かにそこにはあった。
「シオン、気づいてたの!?」
「ええ。気づいたのはついさっきだけどね。私の聴力、甘く見てたわけじゃないわよね?」
 ばつが悪そうな顔をして歩み寄ってくるアルムに、シオンはにっこり微笑みかける。だが、優しい笑みの中に、ほんの少し不満そうな色を滲ませる。それはもちろん、盗み聞きが気に入らないのではなく、より気がかりな事があってのこと。
「駄目じゃない、ちゃんと寝てなきゃ。今はまだ完全に治ったわけじゃないんだし、アルムが一番ゆっくり休まなきゃいけないんだから」
「う、ごめん。でも、ふと目が覚めた時に、いなくなった二人の事が心配で――」
「――ほらね、言った通りだったでしょう?」
 当の本人を置いてきぼりにして、シオンはレイルに目配せをする。訳が分からず首を傾げるアルムをよそに、レイルは無表情のまま主の元へと近づいていく。あまりにも不気味で唐突な接近に、アルムも一瞬戸惑いを見せるものの、すぐ表情を綻ばせる。不思議そうに首を傾げる仕草が、あまりにも不格好で、無垢な子供のようだったから。
「主、どうしてあなたはそんなにも、私の事を気にかけてくれるのですか?」
「どうしてってそんなの、大事な仲間だからに決まってるよ。レイルがいつも僕の事を気にかけてくれるように、僕もちゃんとレイルの事を見ていたいって、そう思うから。今まではそうする機会が少なかったから余計に、っていうのかな」
「それは理由になっていません。私はあなたを主と認めて仕えているからこそ、付き従って気にかけているだけ。主の方から私にその気遣いを向ける必要などないのです」
「あー、もうっ! そういう事じゃなくて!」
「ではどういう事なのです?」
 レイルとてすっとぼけているわけではない。ただ純粋に意図が読めずにいるのだ。自身に向けられる思いに心当たりがなくて、初めての感覚で。それこそ右も左も分からぬ赤子のよう。仕方ないとは思いつつも、伝えきれぬもどかしさの余り、アルムは頬を膨らませてレイルを凝視する。
「主、それは私に“怒り”の感情を向けているのですか?」
「そうだよっ。レイルが何も分かってくれないから……」
 一人で勝手に怒っているだけである事に後になって気づいて、それでも未だにこびりついた怒りの感情を削ぎ落しきれず、アルムは気まずさから逃げるようにそっぽを向いてしまう。
「私は分かりたいのです。主の思いを、考えを、感情を。ですが、これ以上あなたに嫌われてしまっては、学びようがありません。私はあなたの隣に立つ資格がありますか?」
 だが、レイルはそう簡単には逃がしてはくれない。しっかりとアルムの正面に立ち、真っ直ぐ見据えてくる。閑話休題とばかりにかなり強引ではあるが、いきなり本題に引き戻された。
「資格って何? そんな難しい事言わなくてもさ、今までみたく、僕の傍にいてよ。ね? 僕がそうして欲しいって思うんだけど、それじゃだめ、かな?」
「いいえ、決して駄目などではありません。私も今までとは違う考えで、主の傍にいたいと思うようになったので。そうですか、これがきっと、“嬉しい”という感情なのでしょうね。それならばもう、私に出来る事――いえ、私が自ずと目を背けていた、したいと感じていた事もようやく」
 アルムの思いを真っ向から受け止めて、直に感じて。静かに目を閉じたレイルは、そっと頭を垂れて、今アルムから届けられた思い全てを噛みしめる。アルムの言葉を反芻し、時間をかけて自分の中に溶け込ませていく。それを終えたレイルは初めて、目を細めて見せ、そして、近くにある水晶に触れる。
 刹那、沈黙を保っていたフルスターリが蒼白い光を放ち、レイルの体が包み込まれる。光の衣を纏ったレイルは、同時に自身の体を発光させ、周囲にも目も眩むような閃光を迸らせる。二人があまりの眩しさに耐え切れず目を瞑る直前、レイルの影が大きく揺らぐのが最後に見えた。
「レイル、待って! 何を――」
「ありがとうございます、主。私は、あなたのお陰でようやく踏ん切りがつきました。これで私は、晴れて――」
 言葉を聞き終えるよりも先に、完全に光で視界を塗り潰され、目の前が真っ白になる。断続的に金属同士がぶつかるような小気味の良い高音が響き、その音色が止まった頃。光の炸裂も徐々に収まりを見せ始め、瞼越しに光が止んだのを確認しつつ、恐る恐る目を開ける。奪われた視力を取り戻すまでに数秒、そこから異変に気付くまでに、同じ時間は掛からなかった。
「レイル? そこにいるのはレイル、なの?」
「はい、主。私はレイルです」
「でも、その姿」
 ポリゴンの特徴であるいつもの角ばった体はなかった。代わりに全ての角が削れて丸みを帯びていて、明らかに覚えのない容姿と成り果てていた。だが、目の前にいるそのポケモンは、アルムの問いかけに確かにレイルだと、そうはっきりと答えたのだ。
「これは――“進化”です。主が望んでいた、進化と言うものです。サンクチュアリの精霊によって、以前から所持していたアップグレードという道具と同調した事で、条件が整ったようです。しかし、一番切望していたはずの主より先に進化を果たしていた事、とても申し訳なく思います。ですが――」
「すごい! レイル、進化出来たんだね! おめでとう!」
 悔しがるか、落ち込むか、どちらかだとばかり内心恐れていたレイルに、想定外の嬉々とした声が飛んでくる。アルムが発現しているのは、喜びの感情に間違いはない。レイル自身はこれまでの経験のみならず、“直感”でそれを心得ていた。
「主、ありがとうございます。喜んでいただけるのならば、身に余る光栄と言うものです。これを嬉しい、と表現するのでしょうね。ああ、私にも少し、分かるような気がします」
「レイル、もしかして感情が分かるようになったの?
「さあ、どうなのでしょうか。詳しくは私にも分かりません。ですが、以前の姿の時より、主の言葉が私に響くのは間違いないです」
 進化に伴う変化は、レイル自身にも全てを把握するには及ばない。しかし、レイルは大きな不安材料として捉えていた変化を、好ましいものとして受容するに至ったのだ。その境地に辿り着く一端を担ったマリルの少女に伝える事を思い出したレイルは、新しい体の感覚を確かめるように、やや大袈裟に体を捻ってみせる。
「そういえば、あのアップグレードはあなたの国の王家の証だったはず。半ば成り行きとは言え、私が使用する事になってしまい、大変申し訳ありませんでした」
「謝る事はないわよ。だって、それがあなたのための道具だったのだとしたら、あそこに置いてあったって宝の持ち腐れだもの。それに、あなたの手に渡った――ううん、元の持ち主に戻ってきたのも、全ては運命だったのかもしれないしね」
 シオンが向ける優しい眼差しを見れば、嘘を口にしていない事は一目瞭然だった。元は王家の証であり、試練の際に運び出すものとしてくらいにしか使われてなどいなかった。国宝などならいざ知らず、元より謝られる筋合いなどなかったのである。
 事後ではあるが承諾を得て、レイルも納得したようにこくりと頷いてみせる。そして、シオンとの会話中も視界の端に捉えていた主の、必死に隠そうとしている些細な変化にも気づいていたレイルは、改めて主の方へと向き直る。
「主、私がこの姿になった事で解放された、留めていた記録の一部があるのです。一刻も早くお伝えしたいところなのですが、今は主の療養が先決だと判断致します。なので、今日のところは早く戻って休みましょう」
「そうね。私も同感よ。今後どうするかの方針も決めないといけないなら、明日の方が適していると思うしね」
「うん、わか……った。明日、ゆっくり、考えよ……」
 力なく瞬きを繰り返すアルムは、今にも睡魔に負けてしまいそうである。日がとっぷり暮れてから既に、結構な時間が経っている。ただでさえ体調の芳しくなかったアルムは、まだ回復しきってない中でここまで付いてきたのだ。これ以上の無理は禁物だと、今度こそ休息の場所へ戻る事にする。
(主、私はあなたと出会えて、たくさんの感情を垣間見て、学習するに至りました。私が躊躇っていた一歩を踏み出せたのも、全てはあなたのお陰でしょう)
 アトランティスという特殊な環境では、海面の縞に沿うようにして降り注いでくる月灯りしか認識出来ない。だが、それでも、今宵の月は大層輝いて美しいであろう事は、レイルにも何とはなしに想像が及んだ。鈍く輝き、海水に溶けゆく怪しげな銀の光の揺らめきに、レイルは珍しく思いを馳せる。
 サンクチュアリで話を聞いてからと言うもの、進化して役に立ちたいという願いと、変化を恐れる思いとがレイルの中で渦巻き、葛藤を繰り返していた。進化を誰よりも望んでいたアルムよりも先に変わってしまって、進化した姿を拒まれるのではないか。一縷の望みを託した進化の果てに、主に失望されてしまうのではないか。今眼に映る月光のように不安定で、朧げな感覚でしかなかったのだ。
 しかし、アルムはそんなの杞憂だと言わんばかりに払拭してくれた。故知らぬとは言え、笑顔で以っていっぱいに喜びを表現し、応じてくれた。それが今まで凍り付いていた何かを、新たな姿となっても未だ錆びてついていた鍵を、一気に取り払ったのだ。一夜で起きた“些細で大きな”変化の兆しに、最後は誠意で以って応じねばと、レイルは床に就く前に、瞼を閉じかけているアルムの傍に寄る。
「主、今日は――いえ、今までありがとうございました。おやすみなさい。これからもよろしくお願いしますね」
 今までの感謝を篭めて、ほんのささやかな、レイルのにっこり返し。とことんまでぎこちないが、それでも偽りではなく自然に生まれた、及第点ぎりぎりの微笑みを作る。ほんの真似事ではあるが、今まで感情の篭った変化を見せなかったポリゴンのレイルは、ポリゴン2という新たな姿へと進化を果たした事で、最初の笑顔を大事な大事な主に見せたのであった――。


コメット ( 2017/06/16(金) 21:24 )