エトワール・フィランテ〜星降りの夜の導かれし出逢い〜


















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第十章 渓谷にある氷の国の現状〜王子と不審な影〜
第七十五話 予期せぬ二つの衝撃〜事実と真実と現実〜
 満場一致で城に強行突破を仕掛ける事が決定して緊張した空気に包まれてからも、不変なる時は清流の如く淀む事なく流れていた。あれからラプラスのフリップが小屋を飛び出し、続いてニョロトノが後を追って出て行った。その場にはループ、ティル、ヴァロー、ライズ、レイルが残されていた。すっかり打ち解けていたライズとヴァロー、ループとティルの組み合わせで、それぞれ要件を告げずに外出した二人が戻るまで雑談を交わす事にしていた。
「アルムくんとシオンさん、本当に大丈夫かな」
 ゆらゆらと揺れる炎を目の前にして暖を取れる自らの状況を顧みたライズは、二人の安否を心配していた。手荒な真似を受けているとまでは想像していないが、暖かい部屋でもてなしを受けているとも思えない。目に映る明るい赤い光と肌で感じる熱が徐々に弱くなっていくのがアルム達の姿と重なって見えた。
「もんにゃらぱっぱー」
「もんにゃらぱっぱー!」
 明るい空気を好むループとティルのコンビは、特に意味もない呪文めいた掛け声で笑い合い、完全に意気投合していた。あまりにも悠長で能天気なやり取りには、傍らで気分が沈みがちになっていたライズ達も思わず苦笑い。それがどこか羨ましくもあり、一種の活力のようなものを貰い受けていた。
「あははっ! ループって面白いねー!」
「そう? 僕ちゃんもティルと一緒にいると楽しいだの」
 この場にアルムが居れば、浮気されたと泣き出しそうなティルのはしゃぎようだった。いないのが幸か不幸かはさておき、それを傍から見ているレイルは、やけに感興をそそられているようだった。表情に変化が窺えた訳ではないが、普段は独りで熟考しているところを、今日に限ってはじっと熟視している行動に表れていた。
「なーに見つめてるの?」
 気まぐれ星っ子の次のターゲットは、図らずも側にじっと控えているレイルになった。黄色い羽衣をたなびかせて飛び上がると、レイルの角張った頭を挨拶代わりに軽く叩く始末。ティル本人は至って無邪気なもので、単に関心を持たれた事に興味を惹かれたという事らしい。
「いえ、主がいないのをどう思ってるのか気になりまして」
「どうも何も、今から助けに行くんでしょー? だったらもう良いもーん」
 さっきまで我慢していた素振りは何処かへ行ってしまっていた。あっけらかんとしたいつもの調子と笑顔に戻っており、比較的機嫌が良さそうである。だが、それに振り回されるような感情も持っていないレイルは、お気楽な様子さえも観察の対象としていた。
「お取り込みのところ悪いが、聞いても良いか?」
 取り留めのない会話の間を割って、待ち構えていたヴァローが顔を出した。事の顛末を黙って見ていただけのループは、冷えた手を温めているティルに一旦背を向け、横たえていた体を起こした。
「はいはい、何なんだの?」
「王子に因縁をつけてたザングースに二回会ったんだけどさ、あいつが何者か知らないか聞きたいんだ。同じ事を考えてるから、もしかしたら仲間なのかとも思ってさ」
「よーく知ってるだの」
 思い当たる節があるのか、ザングースという名前が出た瞬間、ティルと触れ合って解れていたループの顔つきが変わった。それを皮切りに、先刻まで頻繁に飛び交っていた言葉も同様に途絶え、暫し静寂な時間が訪れた。
「僕ちゃんは結構新入りに近い方だから詳しくは知らないけど、腕の立つ傭兵だったって話は聞いてるよ」
「傭兵と言う事は、かつては王子に仕えていたって事か?」
「そうなるんだの。確かもう一人同じ時期に同じ場所に配属されたポケモンといつも一緒にいたっけね」
「その一緒にいた奴も何か関係あるのか?」
「そんなに矢継ぎ早に質問されても困るだの。少し落ち着かせて欲しいんだの」
 ループは建物の隅に固めておいた新雪の表面を軽く掬い取り、口いっぱいに含んで喉を潤した。乾燥した空間に長時間留まっていては仕方のないことであったが、ヴァローは焦らされているような気がして、閉口して待ち続けていた。ちゃっかり目の端でヴァローの機微を捉えていたループは、頬張っていた分を一気に飲み込んで吐息を漏らした。
「ちゃんと話すから落ち着くだの。どうやら二人は年齢が離れていたらしくて、ザングースは一緒に入ったポケモンの方を兄貴として慕い、そのポケモンもザングースを弟分として見ていたみたい。だけど、ある日問題が起こったんだの」
「何か、嫌に問題の多い国なんですね」
 本人にその気はないが、話が気になって加わってきたライズから皮肉が飛び出した。事実だとしても気に喰わないループは、突然の介入者の方にむくれた表情を向けた。もちろんそれも本気ではなく、ほんの突っ込み代わり。すぐに笑みが戻り、丸っこい手を精一杯伸ばしてライズを小突いた。
「脇から細かい事を言わないで欲しいだのっ」
「話の腰を折ってごめんなさい。どうぞ先を聞かせて下さい」
「まあまあ、そんな謝らなくても、僕ちゃんだって自分の国の事くらい分かってるから、怒ってる訳じゃないだの。それで、何の話だっけ?」
 しゃくしゃくと小気味良い音を立てて氷にかじりつくループに、二人は唖然として溜め息を漏らした。自分で作り出した張り詰めた空気をぶち壊す辺りにも、あくまでマイペースに動く気質が見受けられた。それに加えて、会話の端々に窺える独特なアクセントが何とも特徴的であったが、うっかり巻き込まれないようにしてヴァローが導く事となった。
「だから、ザングースの話で、一緒にいた奴と何か問題を起こしたってところまで行ったぞ」
「そうそう、忘れてたね。あれは確か国民の勢力の間で(いさか)いがあった時に、彼らを擁護する側と非難する側に分かれたんだの。そこで城でそれなりの地位にいるあるポケモンと、ザングース達二人の間で意見の対立があって、その際の責任を負って先輩の方が国を追い出されたんだよね。それに不満を抱いたザングースも城を飛び出していって、今に至るんだの」
「ん、ちょっと待ってくれ。そういえば、町の中でザングースと王子が向かい合った時に、『“あいつ”を追放した』とかどうとか言ってた気がするけど、もしかしてその事なのか?」
「たぶんね。えーっと、何て言う種族だったかちょっと思い出せないけど、すごく似たような背格好と体格だったね。すごく仲良さ気だったから、よっぽど辛かったんだと思うんだの」
 一応関係者であると言うのに、しみじみとしている様はまるで他人事だった。方々に視線を泳がせては暇潰しに身体を動かして、まったく緊張感のない話の運びとなっていた。気掛かりな事が浮上したライズは、ループの自由な振る舞いに構うことなく次なる質問をぶつける事にした。
「それでは、今はあなた達にとっても協力出来る相手なのでは? 元は城で働く同士だったんですし、現在でも王子に抵抗する勢力ではあるならなおさらでしょう」
「それがそう上手くは行かなかったんよね」
 暖気が対流して閉ざされていた空間に、雪を孕んだ風に紛れて、聞き慣れた高めのだみ声が流れ込んできた。扉が閉まる音と共にニョロトノの姿が全員の視界に入り、当の本人は流れを察しながら横槍を入れてきた。体に積もっていた雪を手で軽く払い、何食わぬ顔で一同の方に向き直った。
「何度か声を掛けたりはしたが、反応は芳しくなくてな。やはり単独で動きたいらしい」
「そうそう。僕ちゃんたちも彼がこの国に留まっている事は知ってたから、一緒に戦わないかって誘ったんだけどね。何だか僕ちゃんたちまで目の敵にして、全く取り合ってくれなかったんだの」
「あれ、ループさんを始めとする三闘士の方々が動くのは分かるのですが、何故ニョロトノさんまで? そもそもニョロトノさんは宿を経営してらっしゃる一般の方なのでは?」
 機会を逃してついぞ聞けていなかったことにライズが堂々と切り込んだ。ライズもヴァローも両者が真剣かつ興味津々な輝く瞳を向ける相手はしかし、二人の秘めたる思いなどこれっぽちも把握していないようで、きょとんとしてループと顔を見合わせていた。
「おろろ? それは隠居暮らしの一部で、元は王子の教育係兼世話係だったんよ。言ってなかったかいの?」
『言ってない!』
 素っ頓狂な感嘆の声に遅れて放たれた事実は、答えを受け止める覚悟をしていた二人でさえも驚愕させるには威力十分だった。反射的にすかさず突っ込みを入れるまでは出来たが、直後に余韻が拭いきれずにしばらく放心状態となっていた。
「そんなに驚く事でもないと思うがの。まあまあ、細かいことは良いとして。王子が必要以上にお金を搾取している事を掴んだ以上は、おいちゃんもかつて面倒を見ていた立場としては見過ごせなかったんよ」
「横から失礼します。先程から一貫して王子の所業について語ってますが、はたしてそれは真実なのでしょうか?」
 国の事情に関しては今まで沈黙を貫いていたレイルが、突如機会を見計らって食いついてきた。強引に立ち入ってくるのは、町で出会ってから一緒に旅を続けて以来初めての事で、ヴァローやライズもどう対応すべきか決めあぐねていた。下手な刺激は禁物との判断から、今のところは成り行きを静かに見守る事に徹するようだった。
「ルッツやフリップ、それに僕ちゃんも、その筋の者から聞いたんだの。何か問題でも?」
「では、あなた方が自ら調べて情報を得たわけではないのですね。あくまで他者の主観の入り得る、人伝の事だと」
「それが何だって言うの。城の仲間が教えてくれた事は筋が通ってるし、集めたお金の行方を我々も詳しく知らされていないところから推察しても、あながち間違ってはないだろう」
 反論にも思わず力が入ってしまい、ループの口調が大きく変化していた。睨みを利かせてレイルを射抜くその姿は、先程まで地面に寝転んでいた者とは全くの別人であると同時に、“三闘士”という地位に相応しい風格を纏っていた。
「そこは私も否定しません。ですが、単純化された世界認識ほど怖いものはありませんよ。受け取った情報は所詮“現実の断片”でしかありません。断片が真実だとしても、全体的に見ればずれが生じている事もあります」
「――それで、おいちゃん達が知らぬ間に騙されて虚実を伝えているとでも言いたいんかいの? そもそもこの対立自体が間違っている、とでも?」
 疑いの目を向けられているとなれば、ニョロトノ達も良い気がするはずもない。和やかな雰囲気は俄かに凍りつき、王国側の二人は目の色を変えて異論を唱えるレイルから視線を離さなくなっていた。レイルにはそもそも応戦の意志はなく、そんな対抗心を内に秘めた眼差しを巧みに掻い潜っていた。しかし、既に歯止めの効く域は越え、言葉の応酬は徐々に加熱して行った。
「飛躍してもらっては困ります。私はあくまで今我々に見えている全てが真実とは限らないという可能性を示唆しただけの事。ただ伝えておきますと、情報は誰によっても、いくらでも、歪めようがあるのです」
 ここぞとばかりに無機的な言い回しと声色が強調され、無闇に冷淡さと威圧感を与える結果となっていた。元よりレイルとは全くと言って良いほど交流をしていないループとニョロトノだが、穏和に接していた際の仲間意識は薄れ始め、同士に対する信頼も半ば揺らぎかけていた。不快感を顕わにしている事が顔つきにも如実に表れていたが、まだ現時点では踏み止まっているようである。見兼ねたヴァローは遂にレイルの視界に入って目つきを鋭くした。
「レイル、次々と疑うような事ばかり言って、失礼だろっ!」
 語りだす予兆すらも一切垣間見えなかったうえ、何分未だに生態も分かっていない事もあって、予想外の暴走にヴァローは戸惑っていたのである。主となっているアルムもいないとなれば、自分が代わって抑えなければならないとの使命感から声を張り上げた。最初は悪びれた様子も無かったレイルだったが、次第に事の重大さを認識しだしたのか、緩慢に頭を垂れた。
「俺からも謝るよ。レイルがずけずけと失礼な事を言って本当に悪かった」
「いや、僕ちゃんもちょっとカッとしちゃった。もう気にしないで欲しいだの」
「おいちゃんは別に怒ってはないんよ。もう今の事は忘れような」
 気分を害するような発言も二人は軽く水に流してくれた。その寛容さには文字通り頭が上がらず、ヴァローは地面を向き続けていた。慌ててライズも真似ようとするが、行動に移るよりも先にループが制止に入った。
「もういいってば。情報量が少ないんじゃ、うたぐり深くなるのも無理はないだの。僕ちゃん達も完全に現状を把握しているわけじゃないのは事実だからね」
「ああ、だが――」
「こんなところでこれ以上いがみ合うつもりもないんだの。仲間を助けるためにも、仲良く行こうよ」
 レイルの突然の失言で一悶着はあったが、何はともあれ、わだかまりも消えた。息苦しかった空気も幾分か穏やかさを取り戻し、互いにほっと一息。ここでようやく本題に戻った。
「そういえば、フリップの帰りが遅いの。ちょっと様子を見に行こうかいな――」
 心配したニョロトノがやおら立ち上がろうとした刹那の事だった。耳を劈くような轟音と共に、耐え難い衝撃が何の前触れもなく唐突に訪れた。軋む時間すら与えずに、元々風化していた小屋は脆くも一斉に崩れ落ち、原形を失って凶器と化した木材が次々と降り注いできた。頭の中で警鐘が鳴り響いていても、建物内では逃げ場もなく、襲い掛かってくる倒壊の渦に巻き込まれるしかなかったのだった。







 取り込んだものを全て攫って行かんとする凛とした烈風は、地に落ち着いていたまばゆい白雪をことごとく巻き上げていった。遠くの冬山からも咆哮が轟いており、わんぱくな風たちの悪戯によって、踏み締める度にしっかりと残っていくはずの足跡が綺麗に消えていた。氷河の大地に築かれた大国の中で、長時間歩き続けて足の感覚や体力も時間の経過と共に削られつつある。ある意味冒険史上で最も地味ながらに美しい障害物で、最も過酷な試練にアルムとシオンは立ち向かっていた。時折立ち止まって建物の陰に隠れては、小康状態になるまでやり過ごしての繰り返しだった。近辺は民家ばかりが軒を連ねており、店はおろかめぼしい建物はみんな堅く扉を閉ざして吹雪が過ぎるのをじっと堪えているようだった。
「シオンの事を疑ってるわけじゃないけど、このまま歩いてて本当に着くのかな?」
 闇雲に突き進んでいるわけではないにしろ、歩けど歩けど目の前に広がるのは似たような町並みと、それを題材として彩色を施されたきらびやかな白銀の世界。たまたま豪邸の前を通り過ぎた時には、絵に描いたように幻想的な景観に酔いしれながら琴線に触れていたが、それで全身に伝わる寒さをごまかせるはずもなく、美麗さと辛苦を兼ね備えた雪国の現実にいい加減飽きてうんざりしてきたのも事実だった。名状しがたい不安がアルムの心を着実に抉り、自分だけが把握していない土地に置き去りにされた錯覚に苛まれ、孤独感を内に抱え込んで胸の中の大部分を占めていた。
「この天候の中で歩きっぱなしが辛いのは分かる。でも、今は私を信じて。こんな大きな国で路頭に迷わせるような事はしないから」
 縁起でもない事を言っているのも、焦燥を必死に抑え込もうとしているが故の迷いの一部だった。シオンとしても大見得を切った以上は多少は責任を感じており、是が非でも早くヴァロー達と再会しようと努力していた。しかし、ところどころに現在地を示す目印こそあれ、気まぐれに流れていく吹雪は視界を奪って方向感覚を狂わせ、真っ直ぐ歩くことすらも困難にしていた。それはこの国の事情に明るいはずのシオンにしても例外ではなかった。ここで挫けず先に進んでいるのも、ひとえにアルムを伴っていることが大きな要因であった。
「あ、ごめん。僕はそんなシオンを追い込むつもりじゃ……。ただ、ちょっと不安になっただけで」
「うん、その気持ちも分かる。慰めにはならないかもしれないけど、私も少し不安なの。だけど、アルムと一緒にいるから和らいでるの」
 解釈の仕方によっては大胆な告白とも取れるシオンの言葉に、アルムは寒さで固まりきっていた表情が綻んでいくのを感じた。ただのお荷物ではないかとの憂慮がちらついていたのも晴れ、だが、本音では実感が湧かないのもあって、返事に困ってしまった。
「え、何の役にも立ってない僕が、なんで? その、オルカと一緒にいたほうが安心できるんじゃないの?」
 ようやく搾り出したのも消極的な思いの丈だった。それも余計な一言まで付属させてしまい、嘆いた後で顔が見る見るうちに赤くなっていった。かつての二人の仲を羨んでいるのは否定しないが、何もここで言わなくても良かった。勢いに任せて言の葉を吐き出してから思ったところで、引っ込みがつかない以上は後の祭りだった。
「あら、私の言う事が信じられないの? 一緒にいたいと思う相手となら、役に立つか立たないかはほんの些細な事よ」
 いたずらっぽく浮かべた明るい笑みを認めた瞬間に、アルムは心がすっと楽になった。芯まで冷え切っていた心まで暖めてくれるそれは、優しさ以上の何かを帯びていた。その正体の判断が付かずに戸惑いつつも、アルムは出来る限りの笑顔で精一杯のお返しをした。アルム自身もようやくこの時点に至って本当の意味で安心していた。
「ううん、もちろん信じるよ。だって、僕はシオンのこと――あっ、やっぱりいいや」
「なあに、それ。まあいいけどね。さあ、吹雪も収まったみたいだし、また激しくなる前に行きましょう」
 言葉を濁したのは気恥ずかしさから来るのだろうとシオンは心得ていた。距離を置きたくないとの思いから手を差し伸べるが、四足歩行のアルムが掴めない事を咄嗟に思い出すと、そっと引っ込めて体を近づけていった。アルムはさっきとは異なる要因で顔が熱くなるのをぼんやりした思考の中で感じつつ、この天気が弊害ばかり生むのではない事を改めて思い知らされた。今度はシオンの方から歩み寄ってきた事もあり、伝わってくる温もりがとても心地よかった。
「うん、ヴァロー達のところに早く――」
 新たな決意を胸にして気分を一新しようとしたところで、見事にぶち壊して妨害せんとするものが二人の元にもたらされた。空気を大きく震わせる衝撃音が響き渡り、普段は脅え以外を滅多に見せないアルムも全身の毛が逆立った。轟音とは言え単に音を感じたに過ぎないにも係わらず、無性に胸がざわつき、すぐにでも原因を確かめたい衝動に駆られた。
「これ、近いよ!」
「もしかしたらヴァロー達もいるかも……。行ってみましょ!」
 確信に至る証拠もありはしないが、仲間の身に何かあったのではないかと不吉な予感がした。被害に遭っていない事を祈りつつ、僅かに残っている悪い可能性を払拭すべく、二人は躊躇うことなく急ぎ駆け出したのだった。



コメット ( 2013/02/12(火) 22:57 )