104番どうろ(続)
俺の手持ち。
ワカシャモ level:20
ワンリキー level:18 計2体。
俺はワンリキーを先頭に出す。
スモモはアサナンを繰り出した。
.
ワンリキーの気合いだめ!
ワンリキーは張り切っている。
アサナンのヨガのポーズ!
アサナンの攻撃力が上がった。
「アサナン!念力!」
アサナンの念力!
「先手はやらねぇぜ!」
ワンリキーのマッハパンチ!
効果はいまひとつのようだ・・・。
「(ち、あまり効いてねぇ!)」
アサナンの念力!
効果は抜群だ!
ワンリキーは混乱した。
「ワンリキー!リベンジだ!」
「次は炎のパンチ!」
ワンリキーのリベンジ!
しかし、わけもわからず自分を攻撃した。
「(く、混乱がこれほど厄介だったとは・・。)」
アサナンの炎のパンチ!
ドッゴオオオオ!!!
「リッキーーーー!!?」
アサナンの炎のパンチで、ワンリキーは数メートル吹き飛ばされ、砂に体をうずめる。
「な!?(なんだあのアサナン!?俺のワンリキーはそんなヤワな鍛え方はしてねぇぞ?)」
「アサナンの特性、『ヨガパワー』です!アサナンの通常攻撃力を倍増させています!ヨガのポーズで攻撃力も上げています!ワンリキーは戦闘不能です!」
スモモの言う通り、ワンリキーは倒れたまま動かなかった。戦闘不能で俺はボールに戻す。
.
・・・ただのワンリキーならの話だがな!
.
「起きろ!」
「リッキ!」
ワンリキーのこらえる!
ワンリキーは体力をギリギリ持ちこたえた。
「な!?」
スモモは圧倒された。アサナンの決定打を覆された事に、驚きを隠せない。
「これからだぜ!な、ワンリキー!」
「リッキーー!」
「なかなかやりますね。しかし、体力の差は歴然です!それに、アサナンの炎のパンチの影響は、ダメージだけではないはず!」
ワンリキーはやけどを負った!
「ワンリキー、イケるな?」
「リキ!」
「(・・・相手のワンリキーはもう体力がゼロに近いはずです。何をする気でしょう?起死回生か、リベンジか、それとも大技でくるか・・・。しかし無駄です!アサナンにはエスパーの属性があります!格闘技は半減、さらに火傷で攻撃力も落ちます!・・・勝機です!)」
スモモが余裕の表情を浮かべる。
「アサナン!めざめるパワー!」
「ワンリキー!からげんき!」
ワンリキーのからげんき!
バキィ・・・・・!!!
急所に当たった!
アサナンは倒れた。
「え!!?」
ワンリキーは火傷のダメージにより、戦闘不能になった。
「相打ちか・・。」
「ち!ちょっと待って下さい!どうして空元気の技ひとつで、アサナンを倒したのですか!?あのくらいじゃあ、私のアサナンはやられませんよ!?」
スモモは訳がわからないかのように、あたふたとする。
「あ?武道を嗜む者が言い訳すんのか?恥ずかしくねぇのかてめぇ!?」
「う・・・し、しかし!」
イマイチ納得してない面してやがるな。
「・・・・・・特性『根性』だ。」
「な!・・・そ、そういう事ですか。」
そうだ。アサナンの炎のパンチで火傷になったワンリキーは、異常状態時に発動する特性の『根性』で、通常攻撃力が1.5倍になる。しかも、この時は火傷による攻撃力の半減は影響されねぇ。
更に、空元気の技を使う事で、更に異常状態による攻撃力の増加。ノーマルタイプの技だが、アサナンは格闘技に耐性があったから、念をいれて別タイプの攻撃にした。
・・・まあ、一番の決め手は、気合いだめによる急所への命中が大きかったよな。
俺はワンリキーを、スモモはアサナンを戻した。
「行け!ワカシャモ!」
「頼みます!リオル!」
俺はワカシャモ、スモモはリオル?を繰り出した。
あの小さな青いポケモンはなんだ?見たことねぇな。パッと見、犬っぽいけどな。
俺は、オダマキ博士に貰った図鑑で、リオルを調べてみた。
.
『データなし』
.
「は!?・・・つ、使えねえええ!?」
あんのオッサン!これみよがしに図鑑渡してたくせに、ふざけてんな!
「あ!それはポケモン図鑑ですよね?」
「あ、あぁ。そのポケモン検索してみたけど、NOデータだった。不良品みてーだなコレ。」
「えっと、おそらくこのリオルは、ホウエンには生息していないから、図鑑には載っていないのでは?」
「そ、そうなのか?お前のいうシンオウって、どこだ?」
「さあ・・。どうなんでしょうか・・。」
・・・・は?
何コイツ?まさか自分が住む所も知らないのか?
「・・・・・・・用事を思い出した、帰る。」
「わわわ!待ってください!これには理由があるんですよーー!決してシンオウが何処か知らないなんて事はありませんから!」
「・・・・・・てめぇ、からかってんだろ?」
「信じてくださいよ〜!これには深い訳があるんです〜!」
涙目になってたじろぐスモモ。
「・・・・・とりあえず信じてやる。ってことは、俺のワカシャモはホウエンにしかいねぇから、お前はワカシャモ見るのは初めてって事か。」
「そうですね。ワカシャモっていうんですか。格闘タイプなんですよね。」
「ああ。コイツはそう簡単には倒れないぜ。な、ワカシャモ!」
「シャモーー!」
「私のリオルだって負けません!」
「リオーーー!」
.
ワカシャモの気合いだめ!
ワカシャモは張り切っている!
リオルの砂かけ!
ワカシャモの命中率が下がった!
「(こいつ、意外に補助効果技を多様するぞ?)」
「リオル!電光石火!」
「こっちも電光石火だ!」
リオルの電光石火!
ワカシャモの電光石火!
互いに小さなダメージ!
リオルのはっけい!
ワカシャモは麻痺状態になった!
「ち、ワカシャモ!つつく攻撃!」
ワカシャモのつつく!
しかし攻撃は外れた!
「(砂かけのせいで相手を捕らえられねぇ!」
「リオル!影分身!」
リオルは影分身で、回避率を上げた。
「ワカシャモ!心眼トレーニングを思い出せ!目でみるんじゃねぇ!相手を感じるんだ!」
ワカシャモは、はっ、と気づかされる。心眼鍛え打ちの鍛練で、ワンリキーに敗れて、悔しい気持ちで反復鍛練をしていた事を思い出した。
ワカシャモは目を閉じた。
「目を閉じた?・・・・・・・リオル!一旦離れて!」
スモモは、リオルに間合いをとらせた。・・・いい判断しやがるぜ。
あの心眼トレーニングは、今回のように、目を潰された時に実力発揮をできる。
あいつは真面目に鍛練をしてきたから、すでにあの技を極めたはずだぜ!
「いくぜワカシャモ!心の目!」
ワカシャモは狙いをリオルに定めた!
「こ、心の目!?まずい、リオル!みきり!」
リオルはみきりの耐性に入った。
ワカシャモのフェイント!
ヒュッ・・・ドゴッ!
「リオーー!?」
ワカシャモはリオルのみきりを崩して、攻撃を当てた。
「フェイントを使った!?」
スモモが驚く。
ワカシャモの火の粉!
しかし、身体が痺れて動けない!
「ち、このタイミングでマヒ状態かよ。」
リオルのドレインパンチ!
リオルはワカシャモから体力を吸収した。
「(コイツ!卑怯な技使いやがって!)」
ワカシャモの二度蹴り!
リオルに二回攻撃を当てた。
リオルの瓦わり!
ワカシャモにダメージを与える。
ワカシャモは膝をついた。
まずい!体力がもうねぇ!
相手はまだ余裕だってのによ!
「ワカシャモ!根性だせ!諦めるなあ!」
俺は激を飛ばした!
「・・シ・・シャ、シャーーモーーー!!」
ワカシャモの猛火!
ワカシャモの炎の威力が上がった。
「(前のアサナンのように、もう油断はしません!)リオル!きつけ!」
リオルのきつけ!
ワカシャモは大ダメージを受けた!
ワカシャモは倒れた!
「な・・・、ワ、ワカシャモ!?」
.
・・・俺、負けたのか?
.
「か、勝ちました・・・!私の勝ちです!」
スモモがリオルを抱きしめながら喜ぶ。
.
・・・・・そっか、俺達、負けたんだな。
あーあ、こんな調子じゃ、シバを越えるなんて夢のまた夢だぜ。
俺はワカシャモをボールに戻した。
.
.
.
.
正確にいえば、戻そうとした。
.
.
.
.
「シャーーーーーモォオオオオオオオ!」
な!なにぃ!!
ワカシャモが起き上がった!?
「えぇっ!?」
スモモの奴も驚いてやがる。俺もだっつーの!
ワカシャモのマッハパンチ!
しかし、リオルは攻撃をかわした!
「な!ななな、ど、どうしてまだ攻撃できる体力が!?」
確かにな。ワカシャモは麻痺状態になっていた。その状態でリオルから『きつけ』という、麻痺している相手には倍のダメージを与えるという技を使ってきた。
だから、反撃するどころか、立ち上がる気力もないはずだぜ?
「まさか・・・アドレナリンか!?」
「ええ!?・・・か、考えられません!」
・・・いや、そうとも限らねぇ。
ワカシャモは全身の筋肉や血管細胞を麻痺したせいで、血流が遅滞していた。
そしてワカシャモの猛火。
血流が速くなり、全身の動きを活性化させる。
ここからだ、リオルがきつけをした。
確かに瀕死に追い込むダメージをワカシャモは受けた。
だが、血管が麻痺して圧縮されて尚且つ、猛火で血流のスピードが速くなった状態で、麻痺という枷を外せばどうなるか・・・・・。
簡単だ。爆発的なドーピング!
結果、ワカシャモは瀕死から立ち直ったんだ!
「まだ勝負はついてねぇぜ!ワカシャモ!心の目!」
ワカシャモはリオルに狙いを定めた!
「・・・!リ、リオル!みきり!」
リオルのみきり!
しかし、リオルはうまく見切れない。
「し、失敗した!?」
「いっけぇえええワカシャモ!!」
ワカシャモの火の粉!
急所に当たった!
リオルは倒れた!
・・・・・・力を使い果たしたワカシャモは、砂浜に体を預けるように、ゆっくりと倒れた。
「・・・また相打ちか。」
俺はワカシャモをボールに戻した。
スモモは、開いた口が塞がらなかったが、すぐにリオルをボールに戻す。
「くっ!まだ決着は着いていません!ポケモンバトルでは互角でした!今度は、格闘家として勝負をつけます!」
スモモは構えた。
「けっ、熱い奴だな。いいぜ、かかってきな!」
俺は足を開き、膝を曲げ、腕を曲げて、構えをとった。
・・・・・・・・・・・・・・・。
「行きます!」
スモモが先手をとる。
ビュン!
スモモが俺の目の前に迫る!
「(な!?早・・ 「せいやあああああ!」
ズババババ・・・・!
スモモは突きの連続打を放ち続けた。
俺はバックステップと手捌きでかわす。
「せりゃああ!」
円錐蹴りか!?
ブォン・・・!!
斜め下から蹴り上げるような攻撃を、ギリギリにスウェーバックして避ける。
バキィ!
「がっはぁ・・!!?」
・・・な・・何だ?
・・確かにかわしたはずだぜ?
スモモは、宙返りしながら砂に着地した。
「(コ、コイツ、もう片方の足で二度蹴りしたのか!?見かけによらず器用な奴!)」
グワングワンと揺れる頭は、どうにかおさまる。
「まだまだぁ!!」
スモモが接近した!
俺はフェイントでワンステップ踏み込む。
ドスッ!
「ぐふっ!?」
しかし、スモモは先読みしていたように、がら空きの腹に蹴りを入れた。
俺はバックステップで間合いを取る。
片手で蹴られた腹を押さえた。
「(うえ・・・は、吐きそうだ・・!常人なら気絶してるぜ!?小柄な体格のくせに、どこからこんなパワーが出てきやがる!?)」
俺は再び構える。
「どうしました!?この程度ですか!?」
スモモが構えをとりながら言い放つ。
「(・・・このバンソウコウ女が!!)」
今度は俺からスモモに接近する!
「《狼杯(ろうはい)》!」
相手の手首を掴んで腕を封じ、正面に蹴りを入れる。
スッ・・・・ブォワッ!
「な!?」
何ぃ!?俺が蹴りをする瞬間コイツ、自分から仰向けに倒れて蹴りをかわし、そのまま巴投げで俺を投げた!?
ドスンッ!
俺は何とか受け身を取り、再度スモモに攻撃する!
「《砕風(サイファ)!》」
相手の足を払い、地から浮いた足を両腕で抱えて持ち上げ、外側に捻転させて地面にたたき付ける。
ズッ・・・!
ば!ばかな?その態勢でこけずに踏ん張った!?顔面から砂にたたき付けるつもりが、スモモは瞬間的に手を地面につけた!
「はっ!!」
ビュン・・バキ、バキィィ!!!
「ぶは・・・っ・・!!!」
・・・コ、コイツ・・・・!
俺は膝を砂につく。
頭がフラフラして、うまくバランスがとれねぇ。
「(俺が抱えていた足を、振り切って抜け出したかと思えば、そのまま腰を回転させて、腕を交互に交差し、カポエイラ・・・!?)」
スモモは立ち上がり、また構えを取る。
「・・・その程度ですか?どうやら、少し買い被っていたようですね。」
スモモは溜息をはいた。
.
.
プチ
.
.
・・・・・・・へぇ・・・・そうかい・・・・。
.
.
スモモ side
アズサさんは、確かに強い方です。
私の攻撃を受けて、まだ立てるなんて!
・・・でも、どうやらここまでのようですね。
・・・・・シンオウのトバリジムでジムトレーナーを始めた初日。模擬試合でジム内全員と相手をして全勝し、現在ジムリーダーの候補として一目置かれるようになりました。
収入は増えるのはいいんですが・・・・・なにぶん強い人が近くにいないので、良いトレーニングができないでいました。
・・・私は成り行きでホウエンにやってきて、骨のある方に出会えたと思いましたが・・・見当違いのようでした。
.
「・・・その程度ですか?どうやら、少し買い被っていたようですね。」
私は溜息をつきました。
・・・・・・?
アズサ・・さん・・?
なんでしょうか?アズサさんが震えています。
・・・ひょっとして、当たりどころが悪くて・・!?で、でも、急所は外しているはずですし・・。
しばらくすると、アズサさんの震えが止まりました。
・・・・・・・?
風が・・・止んだ・・・?
そんな事はないのですが、そのくらい静かすぎます。
アズサさんが顔を上げました。
・・・・・気迫が上がりましたね・・。
「・・・スモモ。」
「なんでしょう?」
構えながら、隙を与えないまま、アズサさんの話を聞きます。
「・・・お前の流派は何だ?」
「私は無差別流の肢踏流(しとうりゅう)です。」
「・・・俺は、シバ流の剛重流(ごうじゅうりゅう)だ。」
・・・!!!?
え
・・え?
・・・・・・・えええ!!!?
「行くぜ。」
シバ流っていいました今!?
唯一無二の、あの格闘界の王者のシバ師範の流派!?しかも剛重流!?
アズサさんが、膝を深く曲げます。
次の瞬間・・・!
バシュンッ・・!!
アズサさんが、物凄い勢いで猛進してきました。
ドゴォ!!
しかし、甘いです!私はサイドにかわし、蹴りを入れました!
「ウウウウウゥゥゥ!!ハアアアァァ!!!」
ドムッ・・!!
・・・・・な!?
よ、避けたはずでしたが、・・アズサさんは軌道修正をして・・私に体当たりしてきました・・!?
私は軽く吹き飛ばされ、態勢を整えます。
「(私の蹴りが効いてない・・?)」
アズサさんが再び、猛進してきます。
二度もくらいませんよ!
ズガンッ!
私はアズサさんを迎え撃つように、大きく跳躍し、身体を半回転させながら踵落としを決めました!
「ウウウゥゥゥ!!ハアアアァァ!!」
バキィ・・!!
「きゃああああ!?」
ま・・・また吹き飛ばされました!?
さっきより強力に当ててるのにもかかわらず、アズサさんの突撃の威力が衰えません・・・!
「・・くっ・・・はぁ、はぁ!」
まだアズサさんは向かってきます!
私はあの猪のよいな猛進を止めるべく策が思い浮かびません。避けてもダメ、反撃してもダメ、ならこちらも猛進するべきか?
・・・ダメです。身体が言うことを聞きません!ダメージが大きすぎます!
「ウウウウウウウウ!!ハアアアァァ!!」
ドゴォォオオオ!!
「が!!・・・・っはぁ・・!?」
・・・・・一瞬、意識が飛びました。
3メートルくらい吹き飛ばされたでしょうか?
砂浜を転がるようにたたきつけられました。
「ウウウウ!!ハアアアアア!!」
「(ビクッ!?)」
ま、また来ます!
・・・私はあまりの衝撃に恐さを覚え、目を固く閉じました。
.
・・・・・・・・・・・?
うっすらと目を開けます。
仰向けに倒れた私に、拳を顔面に寸止めしていたアズサさんがいました・・・!
ゾク・・・!!
全身が逆立つような感覚。
それは、私が今まで味わったことのない感情でした。
・・・私は、自分の強さを鼻にかけた事はありません。しかし、今回の実戦で、私は初めて全力で闘いました。
力も上。技術も上。スピードも上。気迫も上。全く歯がたたなかった・・・!
アズサさんの鋭く光る瞳を見て、私の恐怖心は、羨望に染まりました。
アズサさんが寸止めしていた拳を引きました。
そして、左手の掌底に右拳をそえ、試合後の一礼をしました。
・・・私は倒れた身体を起こし、自然と、ごく自然と頭と両手を砂につきました。
.
「・・・ま・・まいりました!!」
.
アズサ side
シバ流、剛重流奥義《岩砕き》。
全力での体当たりに加え、頭を低くし、肩を突出し、片方の肘を突き出す。
頭・肩・肘を衝突時に同時に当てるのが難しいが、決まれば爆発的な威力を生む。
途中、何度かスモモの奴に反撃を喰らったが、少なくともこの技を止めたきゃ、俺より速く、重く突進しねぇとムリだぜ。
・・・シバから直々に教わった、最初の技だもんな。3歳から鍛練を積んできた、俺の切り札だ。
.
「(・・・あぶなかったぜ、切り札が通用しなかったら、間違いなくやられていた。・・・・・いや、このスモモが強すぎるのか。技術も柔軟性もセンスも高い。・・・・・世の中、結構広いんだなぁ。)」
目の前で土下座しているスモモを見据えて、そう思った。
俺はスモモを見下すように言った。
「あぁ?この程度?買い被っていた?どの口がほざくんだ、てめぇ!」
これでも、だいぶイライラが減ったほうだ。
「すみませんでした!前言撤回します!お見それしましたーー!」
更に頭を下げるスモモだった。
.
.
.
俺とスモモは、トウカシティのポケモンセンターを目指して、歩道を歩きながら、話をした。
.
「アズサさんって本当にお強いですね!私最後の技には手も足も出ませんでした!」
スモモは頭をかいた。
「何いってやがる。そういうスモモこそ、俺の攻撃全部避けてたじゃねぇか。」
互いにさっきの勝負の講評をしあう。
「あ!アズサさん、シバ流の使い手だと聞いたんですが、それ本当なんですか!?シバ師範といえば、格闘している人で知らない人はいないぐらい超有名なんですよ!シバ師範は弟子を持たず、自分の奥義や技の伝承を全くしない方なんです!アズサさんはシバ師範の弟子なんですか!?」
「(へぇ、そういやシバのやつ、ヤマブキの道場では、顔は出していたけど、教えたり指導したりとか全然しなかったな。
・・・・・そっか、俺にだけ教えてくれたのか・・・、なんか優越感・・。)
ん、ああ。弟子っつーより、アイツの娘だしさ、俺。」
「・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
スモモが硬直した。
「んだよ。文句あんのかよ。」
「ええええええええええええええええええ!!!!!」
五月蝿ぇ!!?
でかい声で叫ぶなああ!!
「えええ!!あの方、実子がいたんですか!!?しかも目の前に!!?ええ!?お、女の子!?男の人じゃないんですか!?あのシバ師範をアイツ呼ばわりですか!!?えええええええええ!!?」
スモモは混乱して、思考回路がショートした。
.
.
.
俺は一応、いきさつをスモモに説明した。俺の生まれから現在まで、簡単にまとめて話す。
「うぅ・・、そうだったんですか。苦労したんですね・・・。」
同情して涙目になるスモモ。
「そんなたいそれた事じゃねぇだろ。シバがずっと消息不明だから心配っちゃ心配だけどよ・・・。シバの事、何か聞いてねぇか?」
「いえ・・・。シンオウにも捜索依頼が4年前から来ているんですが、見つかっていません。」
「そっか。・・・まあ、簡単に死なない男だからな、うちの親父は。・・・それよりスモモ、お前はなんでホウエンに来たんだ?」
「・・・え、えっと、あの・・・・・・・・実はですね・・・・。」
.
スモモ side
あの時は今から三日前。
トバリジムリーダーの候補として実力を評価されたものの、就任するには、トレーナーの実務経験が足らないので、武者修業を兼ねて、1年ほど、旅に出ることを決意しました。
私はたいていジムで寝泊まりしているのですが、父が心配なので、たまに家に帰ります。ちなみに私の家は、あまり人には見せたくないくらい、ボロボロの長屋です・・・。
家に帰ると、父はいません。
またスロットに行っているのでしょうか・・・。
バイトをクビになっては放浪し、お金を浪費していく私の父。おかげで私達親子とも、万年金欠のビンボー暮らしです・・・。
なので私は、格闘家とポケモントレーナーになり、ファイトマネーやジムトレーナーの仕事で、家計を賄ってきました。
「帰ったぞー。」
父が帰ってきました。
「今日は大勝ちしたぞ!日頃の行いの成果だな!」
父は、抱えていた景品をどっさりと床に置きました。
「お父さん!もういい加減スロットは止めて下さい!」
かなり前から言い聞かせてるのですが、どうせ聞かないでしょう。
「自分じゃ解ってるんだが、どうも魔がさしてなあ。まあ、こうやって勝つ日もあるんだ。ハハハ。」
「ダメです!ちゃんと働いて下さい!これ求人情報です!赤丸がしてあるところが、私の知り合いの伝(つて)ですから!」
父は求人を手に取った。
「・・・・・まーた清掃業かよ。めんどくせーな。」
「もう!しゃんとして!私は明日からいないんですよ!ただでさえお父さん、ご飯をちゃんと食べれるかどうか心配なのに・・・。」
「・・・ジムリーダーの課程だったっけ?期間はどれくらいだ?」
「昨日も言いました。一年です。」
「一年もいなくなるのか。寂しくなるな。」
「だからちゃんとバイトでもいいから、就いて欲しいんです!」
「ん・・。・・・まあでも、仕送りしてくれるんだろ?気長にやるさ。」
「お父さんっ!!」
・・・全く!そんなこと言うんだったら、仕送りしませんからね!
.
.
.
その翌日、トバリを出た私はまず、海辺へとやってきました。
でこぼこした岩礁の上に立ち、うちつける波に怯えず、大きく息を吸います!
決意表明です!
私は海に向かって叫びます!
「いつか抜群のプロポーションにーー!なれますよーーにーー!!」
・・・え?違いますか?
じゃあもう一度!
「格闘界の頂点へーーー!行けますよーーーにーーー!!」
.
・・・ふう、さて!武者修業の始まりです!
意気込んでいた時にふと、何か飛んで来ました!
あれは・・・・・・・キャモメとペリッパーですね!
シンオウでは、なかなか見れないポケモンですよ!
数十匹はいるペリッパー達の群れが、私のいる岩礁にやってきました。
「わあ、かわいい!今から南へ渡るんでしょうか!?」
今は夏ですが、少し早めにシンオウを去るのでしょう。
すると、私の目の前に一羽のペリッパー飛んできました!
「ペリ!ペリ!」
「ん?どうしましたか?」
.
.
パク!
.
.
・・・・・一瞬、何が起こったのかわかりませんでした。
目の前が突然暗くなったと思ったら、身体がいきなり軽くなったかのようにフワフワと感じました。
それに、なんだか窮屈です・・・。
手足をバタつかせて、もがいてみると・・・。
・・・よだれがつきました。
「(わ、私、食べられてますーーー!?)」
私はペリッパーの口の中から顔を出しました!
「こらー!私は食べ物じゃありませーん!スモモという人間・・・・・で・・・・・?」
下を向きました。
.
・・・なんて広大で綺麗な海なんでしょう♪
私、こんな高さから海を見たのは初めてです!
私は息を大きく吸いました。
.
「きゃああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!?」
.
どこまでいっても、水平線が途絶えません。
今は夕焼けが海を照らして、当たりを橙色に染めて、幻想的でした。
まるで、オレンジジュースの海でした。
ペリッパー達は休む事なく、長い長い移動を続けます。
野生のポケモンは、なんて過酷な生活の中にいるのでしょう。そして、なんて雄大な自然に恵まれながら生きているのでしょう。
私は、野生のポケモンの口の中から、自分のちっぽけさを体感しました。
・・・彼等の旅は、まだまだ続きます。
オレンジの太陽に呑まれるように・・・。
.
.
.
アズサ side
「というわけで!昨日降り立った場所が、このホウエン地方だったという訳です!」
「アホだろ、てめぇ。」
「ぁ・・ぅ。」
何も言い返せないスモモは、俯いて顔を赤くする。
・・・下手すりゃ、俺は危うく、こんなアホな奴に負けるところだったのか・・・・。
「・・・だいたい話は解ったけどよ、・・・スモモの親父は、なんだ、ニートか?」
「ニ、ニート・・・なんでしょうか?仕事もせずに、スロットばかりしているので・・・。」
「バカだろてめぇ!なんでんな穀潰しの為に金稼いでんだ!?ソイツのせいでてめぇはビンボーなんだろうが!俺だったら引きずり回して、ぶん殴ってるぜ!」
「あ、あはは・・・。でも、あんな父でも、たったひとりの父親ですから、ほっておけないんですよ。」
「・・・・・お互い、父親には苦労するな。」
「全くです。シクシク・・・。」
二人でダラダラと、涙を流して嘆く。
色んな意味で、スモモと親睦が深まった・・・。
.
.
トウカシティのポケモンセンター。
俺とスモモはポケモンを預けた。
「腹減ったな・・・。」
「もう夕食どきですね。」
「レストランで食うか。スモモも来いよ、一緒に食おうぜ。」
「あ、はい。」
ポケモンセンターのロビーには、夕焼け色の空からオレンジの光が、天井の窓から照らされている。
トレーナー宿泊施設やレストランやパソコン室など、ポケモントレーナーに優遇された施設が、たいてい無料で使用できる。
俺達は、レストランに入った。
・・・結構空いてるな。
適当にテーブルについて、向かい合わせで椅子に座った。
ウェイトレスがやってくる。
「んー、どれにすっかなー。」
今日は持続トレをメインにしたし、スモモと試合もしたし、スタミナがつくヤツにするか。
「えっと、このガーリックチャーハンと、冷しゃぶセット。あと、スポドリな。」
「はい。かしこまりました。・・・そちらのお客様は?」
「わ、私は・・コーヒーで。」
「(・・・は?)」
「かしこまりました。」
ウェイトレスが注文をとって、去っていく。
「おい、食わねぇのか?」
「は、はい。・・・その・・・も、持ち合わせがなくて・・・。」
はにかみながら苦笑いするスモモは、目の前にある水をちびちび飲んでいた。。
「・・・・・・・・・はぁ・・。」
俺は溜息をついた。
俺はテーブルの隅に立ててあったメニューを、スモモの目の前に投げつけた。
「え?」
スモモは、飛んできたメニューに目を見張る。
「食え。」
・・・なんつうか、俺だけ食うのも気が引けるし、・・・・・・読者が奢れ奢れって叫んでるような気がするし・・・。
「い、いえ!そんな!悪いですよ!
手を振りながら、遠慮するスモモ。
「俺がいいっていってんだよ。人の好意は素直に受け取れ。」
「あ・・・・・ありがとうごさいます!ご馳走になります!」
ニパっと笑顔になったスモモは、メニューを開いて、どれにしようか楽しそうに選んでいる。
「うわ〜、レストランなんて久しぶりですから、どれにしようか迷いますね〜。」
スモモは悩ましげにメニューとにらめっこしていた。
・・・そういや、スモモは穀潰しの親父のせいで、ビンボーな生活してるんだったな。
スモモはスモモで苦労してきたんだろうな・・・。万年金欠で親父の為に働くお前みたいな奴が、レストランが久しぶりだと?
・・・多分、初めてなんだろうな・・・・・。
「おいスモモ!遠慮はいらねぇぜ、好きなもんをじゃんじゃん頼みな!」
「ええ!?い、いいんですか!?自分で言うのもなんですが、私結構食べますよ!?」
「おう食え!今日は俺の奢りだ!」
「あ!ありがとうございます!!アズサさん!サイコーですよ!嬉しいなあ!」
これ以上ない笑みを浮かべるスモモ。
すみませーんと、大袈裟にかわいくウェイトレスを呼ぶ。
「(くぅ〜、俺っていい奴だよな〜。)」
自分の行いを自画自賛し、陶酔した。
「はい、ご注文ですか?」
「はい!えっと!リブステーキとデミグラスハンバーグをひとつずつ!パプリカサラダとシーザーサラダにオニオンサラダ!ご飯を大盛りで4杯でみそ汁と豚汁!あと、シシャモとホッケとサバの煮付け!シャケのムニエルにサーモンのカルパッチョにカツオのたたき!それから、ヨーグルトを3つ!納豆に冷や奴を3つずつ!あ!先に牛乳とグレープフルーツを持ってきて下さい!あ!あと麺類は、とんこつラーメンとおろしぶっかけ!あと中華は・・・シューマイとギョーザを二皿!春巻と手羽先の唐揚げをひとつずつ!ガーリックチャーハンにネギチャーハン!マーボーナスにホイコーロー!!以上です!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
.
30分後、スモモの頼んだメシがテーブルに陳列した。(ひとつのテーブルじゃ小さいから、もう4つ持ってきて固めている。)
来たメシから、ガツガツと食べていくスモモ。
「おいしいです〜!」
・・・それにしても食欲が尋常じゃねぇぞ。食べるスピードが早すぎる。しかも、一向にスピードが減らない。
片っ端からメシが、空の皿へと変わっていく。
次々メシを運ぶ店員も、食えるもんなら食ってみろって感じに、ジト目になっている。
18分後・・・。
「ふ〜!おいしかったです!」
ば、化けもんかよ!
完食だと!?
ギャル○根もドン引きだわ!
「・・・じゃ、そろそろ行くか。」
「ええ、行きましょう。・・・・次のオーダーに!!」
そっちのイクじゃねええええ!!
っつーか、まだ食えるのかよ!?
「スモモ、お前、まだ食うのか?」
「はい!・・・あ、ご、ごめんなさい。やっぱり、ご迷惑ですよね・・・。」
自分の怠慢に気づき、シュンと上目遣いに落ち込むスモモ。
「(・・・ぐ、そんな顔しやがって・・・!)」
俺がきっぷを見せた以上、中途半端に終われるか!
「言ったろうが、食いたいだけ食えってよ。遠慮すんな!」
スモモの気分は晴れ模様。
「ありがとうございます!!すみませーーーん!!」
「(どうせデザートだろ?そんなに頼まねぇはずた!)」
「えっと!ビーフシチューとホワイトクリームソースオムライス!カニクリームコロッケ3つとチキン南蛮!マカロニサラダとナゲット!カルボナーラにナポリタンにペペロンチーノ!イカの刺身に田楽みそ!刺身盛り合わせとカニ雑炊!イクラ丼と梅茶漬け!デザートは・・・・・ティラミス2つと抹茶アイス2つ!デラックスタワースペシャル(?)とフルーツの盛り合わせ!」チョコバナナクレープにみたらし団子にマンゴープリン!ジュースは・・・ミックスジュースにメロンソーダにジンジャーエール!以上です!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
.
.
.
会計。
俺:¥1,280
スモモ:¥96,900
計:¥98,180
残金:¥1820(←センリに前借り8万)
.
.
.
・・・スモモ。
・・・お前と親父さんがビンボーなのは、
多分、親父さんのギャンブルの浪費癖が原因じゃあねぇ。
・・・・・てめぇの食費だよ!!!!