ムロタウン〜カイナシティ
「33!34!35!36・・・!」
ムロを出発する日、俺達は鍛練を行う。今日は筋トレをメインにして、自分達の身体を追い込む。
「・・・75!・・・76!」
「先輩!ペースが落ちてます!」
・・・今は二人組で基本的なメニューをやってるが・・・なんか今日は調子悪いな。
「98・・・99・・・・・・100!」
バタッと地面に仰向けになる。
焼けた砂の炎熱が道着ごしに伝わる。それでも倦怠感が勝り、全然身体が動かねぇ。
けど、甘ったれてるヒマはねぇ!
「よし!次は腕立てだ!」
「押忍!」
「シャモ!」
「リキ!」
「アサァ!」
「リオーーー!」
二人組になって、相手の足首を持って立ってやる。そうする事で下半身から頭まで地面と平行になり、腕にかなりの負荷がかかる。
「1!2!3!4!5!」
スモモが一心不乱に回数を数えながら腕立てをする。だんだんコイツも板についてきたな。
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「よし!次はおんぶダッシュだ!50m先まで!着いたら交代してダッシュ!」
俺達は、二人組のメニューをとことん行った。この後は、逆立ち飛び、手押し車、スクワット、懸垂、ベンチプレス、腹筋、背筋等、身体が動かなくなるまで行う。
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正午過ぎ。
ポケモンセンターから出て、ハギさんの待つ桟橋へ向かうが・・・。
「・・・あ、あしが・・・・。」
「う、うごけません・・・。」
柔らかい砂に足をとられながら、先ほどの鍛練の疲れにフラフラしながら、俺とスモモは桟橋へと歩く。
「スモモ〜、肩貸せ。よろしく。」
「ええ!?ちょ、重いです!自分で歩いて下さい!」
「あ?弟子なら師匠を労うのが筋だろ〜、ほらほら歩け歩け!」
「む、無茶苦茶です・・・。」
だるい足をひこずりながら、俺達は進む。・・・モンスターボールの中にいるコイツらが妬ましい。
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ハギさんに船に乗せてもらい、俺達は次の街へと海路を進める。
その間、船の上でウトウトしてしまう。スモモはすでに甲板にねっころがって夢の中だ。
・・・ピーコちゃんが頭に乗っかり、スモモはうなされている。
「(・・ちょっとやり過ぎたな〜。)」
関節を回すたび、身体の節々から痛みが沸く。・・・明日は鍛練休みにするか。『超回復』させねぇとな。
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「ほい、到着じゃ。」
船を下りる。
そこは、海水浴場だろうか。広大な砂浜が広々とあった。ビーチパラソルやビーチチェア、海の家等。水着姿の男女が海に戯れ、砂浜で遊んでいる。
「ハギさん。どうもありがとうございました。」
「お世話になりました!」
「またいつでも言ってくれ!」
「キャモー!」
ハギさんは船を出し、水平線の向こうへと走りだした。俺達は船が見えなくなるまで手を振った。
「・・・さて、この先に港町がある。確かカイナシティだったな。いくぜ。」
「はい!」
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カイナシティのポケモンセンターに着いたのは、夕方の4時くらいだ。
俺達は宿泊施設の二人部屋にチェックインし、荷物を下ろす。
「ぐふぅ・・。」
俺はベッドに突っ伏した。
「先輩、大丈夫ですか?なんか今日の先輩、元気ないですね。」
スモモが心配してくれる。
「・・・大丈夫だよ。今日は暑かったしな。・・・少し寝る。」
まあ、炎天下の中で朝から鍛練すりゃ、誰だってしんどい。暑いのは苦手だ。
「じゃあ私、ショップに言ってきます。何かいるものありますか?」
「・・・水。・・・金は俺のカバンにある。」
俺はそういい、意識を夢の中へ委ねた。
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スモモ side
私はポケモンセンターを出て、フレンドリーショップを探します。
先輩、夏バテでしょうか?鍛練の時、先輩結構つらそうでしたし・・・。ポケモン達や私の手前で、無理してたんでしょうか・・・?
港町に吹き渡る海の風が気持ちいいです。舗装された道路を歩いていると、青い屋根の建物が目につきました。あれがフレンドリーショップですね。
私は中に入りました。
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『大特価期間!すごい傷薬40%OFF!』
・・・キャッチコピーの派手な主張に、誰しも目が向きます。しかし、私達にはお金がないんです・・。普通の傷薬で我慢します。
「えっと、いい傷薬は5個あればいいでしょうか。すると、700円×5で3500円。・・・どうしてこんなに高いんでしょう・・・。」
私は商品を持ってカウンターの列で待ちます。
「おい、それどうしたんだ?」
「これか?海の家で買ったんだ。ポケモンの回復に役立つらしいしな。」
「うまそうなソーダだな。ホントにポケモンに効くのか?」
店内にいる若い男のトレーナーが話をしているのをなんとなしに聞きます。
「知らないのか?このソーダ、ここで売ってる『いい傷薬』と同じ効能なんだぜ?」
「マジか?んで、そのソーダいくら?」
「1ダースで¥3,600。」
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『いい傷薬』5個 = ¥3,500
『ソーダ』1ダース(12個) = ¥3,600
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私はこっそりと列を抜けました。そして周りに人がいないのを確認して商品を戻し、店を出ました。
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「・・・はぁ・・はぁ・・、ここですね。」
私は、海の家の前へやってきました。時刻は夕方。辺りの海水浴場のお客さんも、最初の時と比べて、数が減っています。
私は海の家の入口に近寄りました。すると、麦藁ぼうしを被った、ワイシャツのおじさんが出てきました。
「あ、お客さんかい。悪いけど店じまいだ。」
「ええぇ!?」
せ、折角走ってきたのに・・・。
「えっと、無理を承知ですみませんが、ソーダを売っていると聞いたもので。」
私はなんとか粘ります。
「そうは言ってもな〜、時間は時間だし〜。」
「お願いします!」
私は頭を必死に下げます。
帽子をとって頭をかくおじさん。
「・・・よっし、嬢ちゃんはトレーナーかい?」
おじさんがパッと表情を変えて聞きました。
「はい!そうです!」
「よし!じゃあバトルをしてもらおう!おじさんに熱いバトルを見せてくれたらソーダを売ってあげるよ。」
よかったです!その条件で取り繕って頂けまし・・・・・・あ!
「・・あぅ・・その、ポケモンなんですけど、ポケモンセンターに預けたままなんです・・。」
「ありゃりゃ、じゃあまた明日だな。」
おじさんが苦笑いしました。
・・・はぁ。・・・どうしましょう。
途方に暮れた時でした。
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「あーあ、すっかり遅くなっちまったなぁ。」
海岸側から誰か歩いてきました。私は振り返って見ると・・・。
「あれ!?」
「あ!ユウキさん!?」
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ユウキさんは、この海水浴場でトレーナーバトルをしていたようです。
私はユウキさんに、今の事情を説明しました。
「へぇ!ソーダ1ダースで3600円って安いな!よっし、やるか!」
「へ?」
「おじさん!俺もバトルに挑戦してもいいですか!?」
ユウキさんは意気揚々と聞きました。
「ん〜、しょうがないな。じゃあ、おじさんに熱いバトルを見せてくれたらな。」
「よっしゃあ!じゃあスモモちゃん、俺のポケモン貸してやるよ!」
「あ、え、よろしいんですか?」
私は半ば強制的にボールを渡されました。
「いいって!気にすんな!」
にこやかにユウキさんは言いました。
「・・クス、ありがとうございます!」
・・・ユウキさん、楽しそうですね。
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私とユウキさんがタッグを組み、おじさんとバトルする事になりました。
海の家の前で、お互いに向かい合います。
「そんじゃ、2対2でいくぞ〜!」
「はい!」
「お願いします!」
成り行きでユウキさんと一緒に闘う事に。・・・ユウキさんは次々とバッジをゲットしていると聞いています。
味方でこれほど頼もしい人はいないです!
私はボールを投げました!
私はハスボー。ユウキさんはジュプトル。
おじさんはワンリキーとメノクラゲを出しました。
ダブルバトル、スタートです!
「スモモちゃん!ハスボーは草と水タイプだから、特殊技でガンガン攻めてくれ!」
「わかりました!」
よ、よかったです。ハスボーがどんなポケモンか皆目見当がつきませんでしたが、ユウキさんが教えてくれました。
「いくぞ!ワンリキーは空手チョップ!メノクラゲはバブル光線!」
「ジュプトル!電光石火!」
「ハスボーさん!葉っぱカッターです!」
ジュプトルの電光石火!
相手のワンリキーにダメージを与えた。
相手のメノクラゲのバブル光線!
ジュプトルとハスボーに小さなダメージ。
相手のワンリキーの空手チョップ!
ガンッ!!
ハスボーは急所に当たった!
ハスボーはフラフラしている。
ハスボーの葉っぱカッター!
相手のワンリキーとメノクラゲにダメージ!
「ハスボーさん!大丈夫ですか?」
「ハス!」
「スモモちゃん!ハスボーに単発技を指示して!メノクラゲの溶解液がくるよ!相手が弱って来たらチャンスだ!」
ユウキさんが指摘しました。成る程、全体攻撃を続ければ、的にされてしまいます。
「はい!ハスボーさん!吸いとる!」
「ジュプトル!タネマシンガンだ!」
ハスボーの吸い取る!
相手のワンリキーから体力を吸いとる。
ジュプトルのタネマシンガン!
ワンリキーに4回のダメージ!
ワンリキーは膝をついた!
相手のワンリキーの当て身投げ!
ヒュッ・・ズガァン!
ジュプトルにダメージが加わる!
相手のメノクラゲの溶解液!
ジュプトルに命中した!
効果は抜群だ!防御力が下がった!
ジュプトルは膝をついた!
「ジュプトル!いけるか!」
「ジュプ!!」
「ユウキさん!『葉っぱカッター』を!」
「大丈夫!ハスボーにはもっと凄い技があるんだ!」
「凄い技?」
「『自然の力』。指示してみなよ!」
「自然の力・・・。はい!ハスボーさん!自然の力です!」
「ジュプトル!電光石火!」
「ジュプトルを狙え!ワンリキーは空手チョップ!メノクラゲは溶解液!」
ジュプトルの電光石火!
相手のメノクラゲにダメージを与えた。
相手のワンリキーの空手チョップ!
ズガアアァァン!!
ジュプトルは倒れた!
「選択ミスだな。ワンリキーを狙わないからだよ。」
おじさんが言いました。
一方、ユウキさんはジュプトルさんをボールに戻し、笑みを浮かべています。
「選択ミス?いいや、メノクラゲのダメージ減らせて正解だぜ?」
飄々とユウキさんは言いました。
相手のメノクラゲの溶解液!
効果は抜群だ!
ハスボーに大ダメージ!
ハスボーは膝をついた!
「ほら、これで2対1。ハスボーはピンチだ。どうする?」
おじさんは勝利を確定しています。
・・・私は、ユウキさんの指示通り、あの技を命じました!
「自然の力です!!」
ハスボーの自然の力!
ハスボーの自然の力は『地震』になった!
ハスボーの地震!!
ドガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
相手のワンリキーとメノクラゲは倒れた!
海の家のおじさんとの勝負に勝った!
「よっしゃあああ!」
「わあ!凄いです!ハスボーさん!」
私はハスボーさんと抱き合います!
「ハス〜!」
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「いや〜、熱いバトルだったよ〜。おじさんの完敗だよ〜。いい勝負してくれたお礼だ。タダでサイコソーダやるよ〜。」
「マジで!?あざッス!おじさん!」
「ありがとうございます!」
私とユウキさんは、サイコソーダ1ダースを手に入れました!!
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私とユウキさんは、ソーダの入ったケースを持ってポケモンセンターへと帰ります。
途中までユウキさんが持っていたので、慌てて私が代わろうとしましたが、『スモモちゃんに重たいの持たせれないよ。』とユウキさんが言いました。
でも、ソーダが手に入ったのはユウキさんのお陰なので、私はそこまで他人行儀にはなれません。なので、片方ずつ持って歩く事になりました。
「ははは、学校の給食を運ぶの思い出すな。」
「あははは、そうですね!」
「スモモちゃん、ポケモンバトル上手だよ。指示も的確だし、ハスボーもちゃんと言うこと聞いてたし。」
「いえ!そんなことありません!それよりありがとうございました!ユウキさんが来てくれなければ、ソーダをタダで貰えませんでした!」
「いいって。」
ユウキさんには、ホントにお世話になりっぱなしです。
「ありゃ?そういやアズサは?」
「先輩、疲れて寝ちゃってます。」
「・・・・・は?アイツが、疲れる?」
「え、えええ?そこまで非難しなくても・・・。」
「いやいやいや、アイツはマジで疲労とか無縁のヤツだと思ってた・・。そっか、修業、頑張ってるんだなぁ。」
ユウキさんが物柔らかに空を仰ぎました。
「ユウキさんも、ポケモンすごくよく育っていて驚きました!私達、ジムバッジをゲットするの大変だったんですよ。」
「あ、ムロジムで勝てた!?」
「はい!」
「やったじゃんか!おめでとう!」
「えへへへ♪」
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ポケモンセンターに入りました。
ユウキさんがポケモンを預けます。
「スモモちゃん、部屋まで持っていくよ。」
ユウキさんが、置いてあるサイコソーダのケースを指しました。
「いえ!そこまでして貰わなくても!」
「いいからいいから、な?」
「あ、ありがとうございます・・。」
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ポケモンセンターの渡り廊下から、宿泊施設へ移動し、私と先輩の部屋までソーダを運んで貰います。
部屋の前でソーダを置きました。
「どうもすみません、ユウキさん。」
はにかみながらお礼を言いました。
「いいよ。・・・アズサは寝てるの?」
「へ?・・・えと、おそらく。」
「・・・・・・くくく。」
な・・なんでしょう。ユウキさんが黒濃いオーラを醸しだしているような・・・。
「・・・・日頃の恨み、晴らさでおくべきか。」
ユウキさんは片手に油性マジックペンを持っています。
・・あ、あははは。ひょっとして。
「お邪魔します!」
ユウキさんが部屋のドアを音を立てずに開けました!
「あ!だ、駄目ですよ!ユウキさん!」
私は一応止めをかけました!
ユウキさんは既に部屋の中に入り、先輩の寝ているベッドへ近づいたのですが・・・・・・・・・。
.
「・・・・・!?・・げ!ユウキ!?」
・・先輩は起きていました。しかも下着姿で・・・。
勿論ユウキさんは、先輩の目の前に居座るわけで・・・、これって、非常に間の悪い展開ですよね・・・。
ユウキさんが口をパクパクさせています。
「う・・・ぐ・・・があああああ!目がぁぁ!目が腐るぅぅぅ!!」
「死に曝せぇぇええ!!」
バキィィイイ!!
下着姿の先輩が、ユウキさんにシャイニングウィザードで顎を打ちました。
ユウキさんは床に倒れ伏します。
「ったく!オイ、スモモ!帰ったのか!?」
「は、はい!!」
「この有害ゴミ、海に沈めて来い!」
「ええええ!?」
「・・・つつつ!だ、誰が有害ゴミだ!疲れて寝てるって言うから、心配して来てやったのに!!」
「嘘つけ!」
先輩、当たりです・・・。
.
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ユウキさんは、自分の宿泊施設の方へ戻って行きました。ここから少し離れているそうで、ポケモンセンターの反対側で泊まっているそうです。
「なんつーか、行く街にユウキ有りって感じだな。」
先輩はそう言いました。
私は先輩に、買い物していた時の事を話しました。
「へぇ、そのソーダが回復用になってんのか。・・・ま、タダで手に入って良かった。」
先輩が笑みを浮かべます。
咄嗟に海の家に行ってきて正解でした。
「・・・さて、腹減ってないか?」
「そうですね、食べに行きますか?」
「バーカ、俺が作るんだよ。」
先輩が、カバンからタッパーのようなものを数個出しました。そして、部屋に設置されているキッチンに向かいます。
「ちっと待ってな。」
そういうと、先輩はすぐさま調理にかかりました。タッパーから予め切っていた野菜(人参、ごぼう、玉葱、芋)を鍋に入れ、熱しながら袋に入れていた味噌を入れていきます。その間に、フライパンに肉をひき、蕗(フキ)や野草を絡めて炒めていきます。
・・・先輩、すごく手際がいいです。いいお嫁さんになれそうですよ。
「スモモ!カバンから卵だせ!」
「あ、はい!」
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カナズミシティに着いてから現在まで、いつもこうして先輩が手料理を作ってくれました。山で採取したり、農家から分けて貰う等で、野菜を入手して、少しでも家計を賄おうとしていたので、節約になっています。
「いただきます。」
「いただきます!」
私達は部屋の真ん中のテーブルにごはん(炊飯器はないので、先輩が持っている飯盒でいつも炊いています。)、野菜炒めにみそ汁、漬物を置き、少し遅い夕食を食べました。・・・先輩のつくる料理、凄く美味しいんですよ。私もあやかりたいです。
「先輩、料理上手ですよね?」
「ん?ああ、6歳ん時から道場に住み込みで、メシの担当やらされてたからな。周りの道場のパイセンの分もつくらなきゃならなかったからな・・・。」
ろ・・6歳から・・・。
シバ師範の道場の厳しさを垣間見た瞬間でした・・。
.
食事を片付け、洗面や入浴を済ませ、ベッドに入ります。部屋にはベッドが2つあり、部屋の隅と隅に置かれているので、互いの距離は3mくらいです。
「・・・スモモ。」
「はい。」
電気を消しながら先輩が聞いてきます。
「・・・・・ユウキの事どう思う?」
「へ?」
な、なんでユウキの名前が出てくるんでしょう?
「ユウキさんですか?いい人だと思います。」
「・・・遠回しな言い方嫌いだから、率直に聞くぞ。」
・・・先輩が間を空けて言いました。
「ユウキの事、好きか嫌いかどっちだ?」
「すっ!ぅええ!?き、きらぃ・・・ええええ/////!!?」
「答えな、二者択一。」
先輩は悪びれもなく質問しますけど・・・、こっちはどう答えたらいいんですか〜〜〜!
「あの・・その・・・それって、答える必要性ってある 「師匠命令だ、答えな。」
真っ暗闇の部屋の中、お互いの声だけ響き渡ります。
先輩は冗談で話を始める人じゃないですし・・・。
私は顔を枕に埋めました。
「ぅう・・・・。」
「どっちだ。」
・・先輩が急かしますけど、すごく恥ずかしいですよ!ユウキさんを好きか嫌いかなんて!だって先輩はユウキさんの妹なんですよ、言ったら絶対ユウキと直轄するじゃないですか〜〜〜!
私は熱くなった頬を冷ますように、ベッドのシーツになすりつけました。
「え・・と、・・き、嫌いじゃ、ないです。」
「んな選択肢はねぇ。『好き』か『嫌い』か。格闘家ならビシッと答えな。お前の正直な思いを言え。」
真摯と先輩は言います。
「・・・ぅう・・・す、・・『好き』・・・です・・///////。」
私は更に枕に顔を沈めました。
「そっか。」
先輩はそういうと、何か考えるように唸り始めました。
・・・え、まさか、本気にしてるんじゃ・・・・・。からかったりしないでくださいよぉ・・・。
「・・・よっし、スモモ!」
「は、はい?」
「明日、ユウキに告れ!解ったか!」
「こ、こく・・こ!ここここ!って!・・・何を告るんですか・・・。」
「『好き』だって言えっていってんの。」
「無理ですーーーー//////!!」
何ですかそれ!?今までどんな鍛練よりもきついですよ!!?
「ユウキが『好き』なんだろ?じゃあ気持ちをうやむやにせずに、さらけ出しな。」
「で・・・でも。」
私は何かと理由をつけて抗議します。
「やっぱり、格闘家たる者、武の道に恋は邪道だと思うんですけど・・・。」
小さな声で先輩に言いました。
「・・・スモモの武道の信条はなんだっけ?」
「へ?」
「お前の信条。」
「・・・・・・『真剣勝負』・・です。」
「じゃあ、恋も真剣勝負だ。・・・・・・明日、街中で祭があるらしい。ユウキとデート感覚で回ってよ、最後に告れ。いいな。」
・・・・・・・・へ!!?
い、いいい今、無理難題な単語がいっぱい出てきましたよ!?
明日!?デ、デ、デート!?
最後に告白!!?
「あ、あああの、先輩!!?」
・・・既にイビキをかいていました。
私は布団をガバッとかけました。
「(ど、どうすればいいんですか私〜!・・・・ユ、ユウキさんに告白って・・//////そ、そりゃ、ユウキさんは優しいし、背も高いし、面白い人だし、バトルも強いですけど・・・。で、でも、私が告白しても成功するわけでもないですし、・・・・というか、ユウキさんは私の事どう思って・・・・・/////////・・・だ、駄目です!緊張して眠れません!)」
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バクバクと高鳴る心臓を抑えながら、必死に寝ようとしましたが、全然寝付けなかったです・・・・・。
明日の朝になって、先輩が冗談だと一蹴してくれる事を祈ります・・・。