おまけ『スモモの短編日誌です!』
スモモ side
はぁ、先輩に負けたから、私とワカシャモさんとアサナンは罰ゲームですよ・・・。
罰ゲームといっても、夕食の確保なんですけどね。
このムロタウンは、島は大きいんですが、島民が少なく、観光客もあまりいない為、ポケモンセンターに宿泊施設はありません。
なので、私達のような島の外から来た者は、集会所をお借りして、そこで寝泊まりしなければなりません。
もちろん、ごはんも自分達で作ります。
・・・一応スーパーもあるのですが・・・先輩がお金を管理しています。『親に仕送りするんなら、節約しろ。』と先輩は言ってました。確かにそうです!
先輩とワンリキーさんとリオルは、トレーナーバトルに行きました。はぁ、私もソッチがよかったです〜。
「・・・シャモ。」
「・・・・・アサ。」
「・・・・・・釣れませんね・・。」
集会所から釣竿を3本お借りして、魚つりに勤しんでから1時間かかります。
今私達は、町から離れた砂浜から、三人(匹)並んで、竿をぶら下げています
「雨上がりだから、全然魚がいないですよ〜!」
早く魚を釣らないと先輩に叱られます。これに今晩のオカズがかかってるんですよ!
私は竿をぶんぶんふります。
「・・・・!・・・アサ!」
あ!アサナンに手応えがあったようです!
アサナンがリールを手早く巻いて行きます!
「アサーーー!」
コイキングを釣り上げました!
「って、またポケモンですか!?」
コイキングは食べられません。そのウロコは歯が折れるくらい頑丈らしいので、食用には不向きらしいです。先輩から聞きました。
「これで10匹目です・・・。」
アサナンがコイキングにかかった針を外し、念力で浮かせて海へ放り投げます。
・・・もうすぐ先輩が帰ってきますよ。それまでに一匹は釣っておかないと・・!
「・・・・・!・・・・シャモー!」
あ!ワカシャモさんに手応えが!
ぐいぐいとワカシャモさんの竿が引っ張られます!
「シャモーーー!!」
ワカシャモさんが魚を釣り上げました!今度はポケモンじゃありません!
ワカシャモさんが釣った魚を持ち上げています。
見た目は黒っぽくです。ひれにトゲトゲがついてて、カサゴみたいな・・・・・・・・!?
「ああああ!!この魚って!!まさか、オコゼですよ!スーパーで見たことあります!」
こ、高級魚ゲットです!!ウチからすれば全く無縁の魚でした。いつもスーパーの試食コーナーから、ラベルについた特価700円の魚を見て、いつか食べたいと思ってたんです!
「ワカシャモさん!凄いです!」
「シャモシャモー!」
「アサー!」
オコゼの針を取り、バケツに入れました。
「あはは、でも一匹だけだから、みんなで六等分なんですよね・・。」
もう夕日が沈んで、あたりに青みが射しかけています。まだ釣れるとは到底思えません。
「・・・・・・・・・・シャモ。」
・・・?
ワカシャモさんがあたりをキョロキョロしています。周りに私達以外いないのを確認すると、ニヤリと顔を浮かばせました。
ワカシャモさんがバケツからオコゼを出し、
「シャモ!!」
ワカシャモの火の粉!!
ゴオオオォォォ!!!
「ああーーー!オコゼがーーー!何してるんですかワカシャモさーーん!?」
「アサーーー!?」
ワ、ワカシャモがオコゼを焼いています!ま、まさか食べる気じゃ・・・!?
パチパチパチ・・・。
「(あ・・・いい匂いです。)」
「アサ〜。」
ワカシャモさんは、両手にオコゼを置いて、そのうえから火の粉をかけて、休まずに焼いています。・・・熱くないんでしょうか?
・・・その光景を、私とアサナンは3分くらい見ていました。
「シャモ!」
両面焼いたオコゼをワカシャモさんが、私達に見せてくれました。
「おおおぉぉーーー!」
「アサーーーー!」
ちょうどよく焦げ目がついて、おいしそうに焼けたオコゼが、ワカシャモさんの手の平に乗っています!脂がのってて美味しそうです!
「シャモ、シャモ。」
私とアサナンと自分に指をさすワカシャモさん。
三等分・・・って事ですか?
「シャモ。」
人差し指を口元につけたワカシャモさん。
「・・・!・・・わかりました!・・・私達だけの秘密ですね!」
「シャモ!」
ワカシャモさんが引っかくで、オコゼを綺麗に三等分してくれました。
「ありがとうございます!」
「アサーーー!」
先輩、ごめんなさい。でも私達、誘惑には勝てませんでした。
パリッ。
ムシャ。
パクッ。
「お、おいひぃです〜!!」
「シャーモー!」
「アサーーー!」
この触感!今まで食べた魚とは全然違います!ワカシャモさんの火で焼き上げたオコゼは、香りの中に、スパイシーな味を出してくれています!ポケモンの火だと、ここまで美味しく感じるなんて〜!
噛むたびに濃厚な脂が咥内に広がります!
この味は、6等分じゃ味わえませんでした三人で秘密に食べるこのワクワク感は、一生の思い出です!
「・・・・・ア、アサ!」
アサナンが振り返りました。
「・・・!・・・・シャモシャモ!」
「あ・・・・・帰ってきました!」
町の方から3つの人影が遠くから見えました!先輩達です!
「アサナン!穴を掘って!その中に骨を隠しましょう!」
せっせと、証拠隠滅にテキパキと動き出す私達。
さっきまで何事もなかったかのように、私達は釣りを再開し、先輩達が近づいて来るのを待ちます。
「ボソッ(いいですか、これは私達だけの秘密ですよ)」
「シャモ。」
「アサ。」
.
「あ、先輩!お帰りなさい!」
内心ドキドキしながら、先輩に挨拶します。
「おう、トレーナーとやってきたぜ。1000円くらいだな。・・・しけてやがる。」
・・・以外と少ないですね。確かにこの辺は、釣りびとくらいしかトレーナーはいませんから、皆お金がないのでしょうか?
「そっちはどうだ?」
「あ〜、ダメです。全然釣れません。」
「シャモ!」
「アサ!」
・・・ホントはすでにお腹の中だというのは、バレてはいけません!・・・バレるわけないですよね?
「マジかよ?・・・やっぱ雨上がりだしな。」
「あ、あははは。」
海にむかって、ずっと釣りに没頭しているようにみせかけている私とワカシャモさんとアサナンは、先輩を背に向けています。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・せ、先輩が、沈黙しました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・(ドキドキドキ・・。)
.
「・・・・・・・なんか、いい匂いするな。」
「(ギクッ!!)」
「シャモ!?」
「アサ!?」
.
あ!あ、や、やってしまいました・・・!
焼いた匂いを消すのを忘れてましたーーーーーー!!!
「・・・・・・・・・・。」
「に、匂いですか?私はそんなに匂いませんけど・・・(平常心平常心・・!)」
「・・・・・・・・・・・・おい、スモモ。」
「は、はい!」
内心ビクビクしながら、先輩に振り返ります。
「・・・・・・・・・・・・口についてるぞ?」
「へ!?・・・・・・あ。」
思わずバッと手を口元へ持っていきました!
・・・・あれ、ついていない。
「・・・・・・・・・・・・。」
・・・は、嵌められちゃいましたね・・。
「・・・・・・・・・・・・(ニィ)。」
.
.
.
.
.
「いぃぃぃやあああああああぁぁぁ!!!」「シャーーーモーーー!!?」
「アーーサーーーー!!?」
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この日は、ある意味忘れられない思い出となりました。
オコゼ、美味しかったなぁ。
・・・全部吐いちゃいましたけど。