カナズミシティ(続)
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アズサ side
キーン、コーン、カーン、コーン。
始業のベルが鳴った。
扉が開いて、部屋の中へ女の講師が入ってきた。
教壇の机に教科書を置いた女の講師は、背が高くて、長い綺麗な髪を赤いリボンでツインテールにまとめ、ネイビーブルーかつグレーっぽい上下つながったスカートを身につけて、黒いタイツをはいていた。
「・・え〜と。参加者は、20名ですね。それでは講義を始めます。私はツツジといいます。主にポケモンのタイプや技の相性について教えています。今日はよろしくお願いします。」
一礼をして、そのツツジという人は、黒板に向かって、手に持った教科書を見ながらカツカツと板書していく。
俺やスモモや他の受講者達も、ノートに写していく。
・・・・あ?
何でこんな事してるかだと?
・・・・・・ジムにいったら、ジムリーダーは講習でいないから、場所を聞いたら、とある学園内の講堂に案内されて、ジムリーダーがトレーナー対象の講習をやるっつーから、折角だからセミナーに参加したっつーわけ。
実際俺、トレーナーになったばかりで、ポケモンやバトルの知識はあまりねぇからな・・・。(スモモは別だが。)
この際だから、スモモと二人で受講する事にしたんだ。・・・・代金の3,000円×2が痛いが・・・・。
講習名は『ポケモンと技の相性』。
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「・・・えー、ポケモンバトルで勝つためには、自分のポケモンを育てる事も重要ですが、そのポケモンに合った技を選出し、トレーナーとポケモン双方が、うまく扱えるようになる事が大切です。
技をひとつでも覚えておけば、相手とのバトルの戦略や戦術の幅が広がり、有利に戦う事ができます。(この作品では、覚える技は4つまでという制限はない。)
では、どのようにして、技を覚えさせればいいのでしょうか?わかる方はいますか?」
ツツジがあたりを見回す。
「はい。レベルアップで覚えさせます。」
麦藁ぼうしのちいさい男の子が答えた。
「その通りです、明確な答えですね。ポケモンはバトルや経験を積むことで、レベルアップをする事ができます。バトルの能力が上がる他に、そのポケモン独自の技を覚える事ができます。その技を基本技と呼びます。
基本技は、そのポケモンのタイプにちなんで、覚える技が決まっています。ノーマルタイプなら頭突きや体当たり。炎タイプなら火の粉や火炎ぐるまなどのように、違う属性の技を覚える事はまずありません。」
・・・なるほどな、・・・ん?
俺は手を上げた。
「質問です。」
「はい。あなたは・・・アズサさんですね。」
「はい、あのー。俺のワカシャモは炎と格闘のタイプなんですけど、『つつく』の技を覚えています。このつつくは飛行タイプなんですけど、基本技に入るんですか?」
「いいところに気づきましたね。アズサさん。ポケモンによっては、自分のタイプとは異なるタイプの技を習得します。例えばアズサさんのワカシャモは、タイプでいえば火と格闘に入ります。ですが種族で考えるとワカシャモは鳥ポケモンと扱われます。よって飛行タイプの技をレベルアップで覚える事ができます。
ほかにも、ニャースやコラッタには”かみつく”。コダックやゴルダックには”ねんりき”。ザングースやヒトカゲの”アイアンクロー”など、タイプとは別に、種別やポケモンの体型や性質に応じた技を覚えます。」
「へぇ・・。・・あれ?ニャースのかみつくは、タイプが同一だからいいんじゃ?」
「ふふふ、アズサさん。かみつくは悪タイプの技ですよ♪」
周りから笑いが沸き上がる。
「・・・・・///。」
ポカッ!
「痛っ!な!なんで叩くんですか!?」
隣の席にスモモがいたので叩いた。
「・・・・なんとなくだ。」
・・・ったく、いちいち笑いやがって。
「基本技については理解できましたか?本来のバトルならば基本技をうまく駆使して戦いたいところですが、基本技のみでは、相性の悪い相手に勝てない場合があります。このような時には、どうすればよろしいですか?」
「はい。技マシンを使います!」
ミニスカートの女子が答えた。
「そうですね。現在は科学の発展により、ポケモンの力を機械に記憶させて、量産化された、技マシンがあります。これを使えば好きな技を覚えさせる事が可能ですが、誰しも、どの技を覚えられるわけではありません。各ポケモンにはタイプや種別、性質が異なりますから、それにちなんだ技でなければ、覚える事ができません。
では、覚えられる技をどんどん覚えさせてもいいかといいますと、そうではありません。例えば、雷の技マシンがあるとします。そして手持ちにはケンタロスがいるとします。ケンタロスは雷を覚える事が可能です。しかし、ここで雷を覚えさせるのはよくありません。なぜだか分かる人はいますか?」
・・・うーん。
ケンタロスっつったら、暴れ牛ポケモンのあいつだろ?ノーマルタイプで雷の技使えるんなら、水や飛行相手に、対策になるから良いんじゃねぇのか?
「はい!」
お、スモモが挙手したな。
「はい、スモモさん。」
「はい!ケンタロスは、とくこうが低いからです!ですから、物理技を覚えさせた方がいいと思います!」
「大変素晴らしい答えです。拍手!」
あたりに拍手が沸き起こる。
「えへへ・・///。」
・・・おーおー、真っ赤ににやけやがって。さすがはジムリーダー候補だけはあるな。
「そうですね。スモモさんのいう通り、ケンタロスは攻撃力に特化したポケモンなので、特殊技による攻撃はあまり効き目がありません。
このように、自分のポケモンが、どの能力に長けているか、また、どの技が効率よくバトルで発揮できるかを考えなければ、技マシンの無駄遣いとなります。相性だけでなく、自分のポケモンをしっかり観察し、性質や能力を理解してあげる事が重要となります。
技マシンのほかにも、特別な訓練によって、ポケモンに技を教える事も可能です。(おしえ技。)ですが、これは個人で独断でやらないようにしてください。技開発はとても危険ですので、必ず指導者や専門家の方の元で訓練するようにしてください。」
スモモが俺に話しかけてくる。
「ボソボソ(私のアサナンの炎のパンチがそうなんですよ♪)」
「ボソボソ(へぇ。そうなのか。)」
・・・なかなか興味深いな、それだと、ワンリキー達にもバトルの効率が上がるしな。
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「それでは唐突ですが、今からペーパーテストを実施します。ポケモンと技についての設問が用意されているので、よく考えて答えて下さい。」
げえ!?
よりによってテストかよ!?
受講だけじゃねーのか!?
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・・・前の席から用紙が配られた。
俺は早速シャーペンを回しながら取り掛かる。
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問1.ゴースト・悪タイプのポケモンに対して、効果抜群の攻撃を与える方法を書きなさい。
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・・・・・・は?
ハナからわかんねー!?
ゴーストっつったら・・・ゴースト技に弱いはずだよな、だったらシャドーパンチで・・・あれ、悪タイプってゴースト技効くっけ?
・・・・・次だ!後回し!
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問2.地面タイプのポケモンに対して、麻痺状態にさせる技を4つ書きなさい。
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じ、地面タイプ!?
電気技きかねーじゃん!?
・・・あ、わかった!そういや、スモモがリオルで俺のワカシャモを麻痺にした技があったな。へへ、よく覚えてるなあ・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・・なんて技だったっけ!?
・・・・・・・・・次!
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問3.「ねこだまし」に対する対策を書きなさい。
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・・・・・・しるわけねーだろ、つぎ。
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問4.バトル時に、自分のいずれかのステータスを、複数同時に上げる技を、5つ書きなさい。
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・・・ビルドアップだろ、つるぎのまいだろ、・・・あ、つるぎのまい違う、複数だ。
・・・・・ビ、ビルドアップに・・・・・・・・・。
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問5.特性「テクニシャン」をもつポケモンを一匹明記し、またその効果を説明し、その効果を最大限発揮できる場面を簡潔に説明しなさい。ただし、連続攻撃の技に関しては、5回の攻撃とす うがああああああ!!!
か、簡単な問題はねーのか!?
なんてイジメだよこれ!?
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問17.格闘タイプの技が効果抜群なタイプを全て書きなさい。
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・・・・じ、じゅうななもんにして、やっとマシなのがでた。
えっと、ノーマルと悪・・・っと。(←氷を忘れる。)
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「はい。そこまで!それでは用紙を回収します!採点結果は後ほど通知します。」
俺は用紙をツツジ講師に渡す。
・・・・・はぁ。知らなかった。
ポケモンって・・・結構奥が深いんだな・・・。
「先輩、どうでしたか?」
「・・・そういうお前はどうなんだよ。」
「全然ダメですよ〜。結構難しい問題でしたし。」
ジムリーダー候補でさえ、音をあげてるぜ。そうだよな〜、どんだけ難しいテストだよ。初心者にやらす問題じゃねーぞ。
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「それでは、採点しましたので、テストを返却します。その間に、問題の解説に移りたいと思います。」
俺は、係りの人からさっきのテストを受け取る。
・・・・・・点数?
・・・・・・・・・俺はんなもん、いちいち気にしねぇ。
「全問30問、各1点の30点満点で、今回の参加者の平均が、19.3点でした。」
「ぶうううぅぅぅ!!?」
は、は、はあああああ!!?
「ど、どうしたんですか?先輩?」
「・・・い、いや。咳込んだだけ。(平均19ぅぅう!?俺どんだけカスなんだよ!?)」
「それでは、解説に移ります。7問を見てください。
『特性『ふゆう』に対して、地面技を当てる方法を書きなさい。』
・・・これは、《じゅうりょくを使ってふゆうの効果を消す》が正解です。そのほかにも、特性『かたやぶり』のポケモンを使う、鉄球を投げつけるもしくはトリックで入れ替えるも、正解とします。」
・・・俺は、自分の回答を見た。
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《泥を体にぬりたくり、体当たり。》
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「次は9問。
『相手のポケモンは『ハサミギロチン』で攻撃してきます。こちらは『すなかけ』と『影分身』を覚えています。どの技を使用するべきか。』
答えは《『すなかけ』》です。影分身もすなかけも、ハサミギロチンの命中率を下げる数値は同じですが、万一当たった場合にも、次のバトルでも効果が持続するためです。ただし、自分のポケモンが最後のポケモン、もしくはレベルが一番高いポケモンだという事が明記してあれば《『影分身』》でも正解です。」
・・・俺の回答。
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《砂分身》(←ごっちゃ。)
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「問16です。
『メロメロの対策を2つ書きなさい。』
正解は、《交代する、メンタルハーブを持たせる、相手を倒す、赤いビードロを使う、特性『どんかん』、同性。》などです。補足として、ビスナの実というメロメロを治す珍しい木の実があるようですね。」
俺の回答。
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《勝負の最中に色目つかう地点で、ぶったるんでる証拠。》
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「次は24問。
『きあいのハチマキの効果を書きなさい。』
正解は《一定の確率で瀕死を持ちこたえる》です。」
俺の回答。
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《一撃必殺技をあみだす。》
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「最後の30問目です。
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『トレーナーとしてアナタが最もするべき事は?』
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・・・この問題に関しては、正確な正解はありません。アナタ達の思う事を素直に書いて貰いました。
・・・その中でも、私が一番感銘を受けた回答がありました。この場を借りて発表しようと思います。
《ポケモンと、共に生きていく事を、共に考えていき、その過程で、人やポケモンを助けられるようになりたい。》
・・・スモモさんの回答でした。今回のテスト、見事の満点でした!」
「「「「おおおおぉぉぉぉ!!?」」」」
「え!?ウソ!?満点ですか!?」
「はい。私の受け持ちで満点を取ったのは、アナタが初めてです。おめでとうございます。盛大な拍手を!」
パチパチパチパチパチパチ!!!
「え、・・・えへへへ///。ありがとうございます!」
・・・・・・・・・・マジで?
・・・・・こんの・・裏切り者めがぁ!!さっき全然ダメっつってたろうが!!
「いや〜、5問目が少し不安でしたので、ダメかと思ったんですけど、よかったです!!」
・・・・・・・・・・・殴りたいけど・・・殴れねぇ。
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「そしてもうひとり、30問目に素晴らしい回答を書いていた人がいたので紹介します。
《自分はトレーナーとしてはまだ未熟なのでなんともいえないですが、自分の信じた武道を通じて、自分の夢を諦めない事!自分はバカですが、こんなバカについてきてくれる仲間を大切にしたいから、もっと強くなりたいです!》」
・・・え!!!?
いや、ちょ、それ、まっ・・!
「アズサさんの回答です。確かにテストの点はゼロでしたね♪」
いうなああああああああ!!!
「「「「ぎゃははははははは!!!」」」」
「が、ぐ、うるせぇ!笑うな!」
やばい、泣きそうになってきた。
スモモと俺、全然扱いが違うじゃんか・・・。
「でも、アズサさんの書いてあった、《夢を諦めない!》
とても気迫がこもっていて、思わず身震いしました。
その通りです。トレーナーは確かに、知識や戦略は重要です。しかしそれよりも最も大切な事は、その信念です。
ポケモントレーナーは、一朝一夕で強くはなれません。これから、様々な困難がアナタ達を待っているでしょう。
例え道がなくなろうと、壁が立ち塞がろうと、アナタ達が膝をつけば、ポケモン達も膝をつきます。
夢を持って下さい。それが、私がアナタ達に一番教えたい事でした。
アズサさんに、拍手を!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
「(・・・・・・・フォローはありがたいけど・・・あんま嬉しくない・・・。)」
「先輩!一生ついていきますよ!」
「・・・あ、そう。(もう二度とセミナーなんてやるかあああ!!)」
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キーン、コーン、カーン、コーン。
終業ベルが鳴った。
教室には、俺とスモモとツツジが残っている。
「あら、挑戦ですか?解りました。ジムでお待ちしています。」
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俺達はセミナーを出た。
さて、アポもとったしそろそろ・・・?
「・・・・スモモ?何もってんだ、それ?」
「これですか?成績優秀者って事で、星がつきました!」
スモモは手に持っていたトレーナーカードを俺に見せた。そこには星がふたつ、きらびやかに光っていた。
「ふたつ!?」
「はい!シンオウで、既にひとつ獲得していたので!」
二つ星トレーナーって事かよ・・・。
確か、星の数によって、トレーナーの熟練度が分かるし、信頼度も実力も変わってくる。
一般の人からの依頼とかでも、真っ先に優遇されるのが、星の多いトレーナーだってユウキから聞いたことあるな。
「・・・・・星ゼロの俺が、二つ星トレーナーを弟子に持つって、どんだけシュールなんだよ。」
「で、でも先輩!先輩はトレーナー初心者ですから無理もないですよ!?でも最後の問題の回答には私、感動しました!」
スモモがフォローする。
「あんの女、人の点数人前でバラしやがって・・・!!・・・目にもの見せてやるぜ!」
「あ、あははは・・・。」
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カナズミジム。
俺とスモモは、最初のジムへと入る。
勿論、この時の格好は道着である。
ツツジの元へ行くには、幾人ものジムトレーナーが立ちはだかる。
「おれはそのへんのザコトレーナーとはわけがちがうぜ!」
タンパン小僧はイシツブテを繰り出した。
俺はワカシャモを繰り出した。
ワカシャモの二度蹴り!
効果は抜群だ!
イシツブテは倒れた!
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「ツツジさんに会わせるまでもないな!」
山男はイシツブテを繰り出した。
スモモはアサナンを繰り出した。
アサナンの飛び膝蹴り!
効果は抜群だ!
イシツブテは倒れた!
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ツツジ side
・・・・・・・・強い。
格闘家とは聞いていましたが、ここまでの実力とは・・・。
私のジムトレーナーは、そう簡単にやられる程甘くはないのですが・・・。
あの黒髪のアズサさんは、トレーナー初心者にもかかわらず、よくポケモンを育てています。
そして、ピンクの髪のスモモさんは、シンオウ地方からやってきた格闘家。ジムリーダーに匹敵する実力者。
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・・・・・・・面白いですね。では、私も本気でお相手しますよ。
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アズサ side
「よし、あらかた片付いたか?」
ジム内のトレーナー達を一掃した俺達は、奥にいるツツジの元へと歩いていく。足元のタイルがゴツゴツとした石が敷き詰められ、いかにも岩タイプの印象が大きい。
「先輩、まず、どっちから戦いますか?」
スモモは、俺とスモモのバトルする順番を聞いてきた。
「それだけどよ、ひとりひとりで分けてバトルしたら、時間もかかるし、ツツジさんにも迷惑かかるだろ?だからよ、ダブルバトルで頼んでみようぜ?」
「ダ、ダブルバトルで挑むんですか!?」
「んだよ、変か?」
「いえ!・・それは、私と先輩でタッグを組むって事ですよね。」
「ああ。」
・・・まあ、最初のジム戦でダブルバトルをするってのも、相手からすれば舐めるなよって話になるかもしれねぇ。
でも、こっちは二人で二匹、向こうは一人で二匹を指示するわけだ。
ダメもとで頼んで、もしダメだったら、しょうがねえけどよ・・・・。
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「ええ、構いませんよ。」
・・・あっさりと承諾された。
「え?いいんですか?」
俺とスモモは、少しキョトンとした。
「ダブルバトルですか。ホウエン地方ではダブルバトルが盛んですので、挑戦者の中では、それで戦う人も少なくありません。」
ツツジが言った。
「しかし、お二人共よく決心できましたね。ダブルバトルは連携やチームワークを必要とする、難易度の高いバトルですよ?」
「いや、まあ、驕るつもりじゃないんですが、むしろ俺達のほうが都合いいんじゃないかと思って、ヒヤヒヤしてたんです。だって、俺達は二人ですし。」
「構いません。私はジムリーダーです。そのくらいの場数は踏んでいます。・・・しかし、それでも私はシングルを推奨しますよ?」
シングルを推奨?
やっぱり、初心者だからか?
「・・・弱いもの虐めになるといけませんから。」
ツツジの目つきが変わった。
「・・・(ち、この野郎。)・・・スモモ!格闘ポケモンの力、見せてやろうぜ!」
「はい!先輩!」
「岩タイプの真髄、とくと味わいなさい!」
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ジムリーダーのツツジが勝負をしかけてきた!
ツツジはゴローンとヨーギラスを繰り出した!
俺はワンリキー、スモモはリオルを繰り出した!
「先手を。」
ツツジが余裕釈釈に先手を譲る。舐めやがって。
「ワンリキー!気合いだめ!」
「アサナン!影分身!」
それぞれ、能力を特化する。
「(攻撃をせずに能力をあげましたか。)ゴローン!いわなだれ!ヨーギラス!ステルスロック!」
ゴローンのいわなだれ!
ワンリキーとアサナンに小さなダメージ。
ヨーギラスのステルスロック!
あたりの岩がウヨウヨと地面にまとまりつく。
「スモモ!ゴローンから狙うぞ!」
「はい!」
ワンリキーのけたぐり!
効果は抜群だ!ゴローンに小さなダメージ。
「(ち、固いってレベルじゃねぇぞ!?)」
「新しい技を見せてあげます!リオル!ゴローンに真空波!」
リオルの真空波!
効果は抜群だ!ゴローンは膝をついた!
「(やるわね、防御が高い事を察知して、とっさに特殊技で攻めるとはね。)」
ツツジが指示を出す!
「では、これはどうかしら?ゴローン!ヨーギラス!穴をほる!」
ゴローンとヨーギラスは、地中深く潜った!
「どちらを攻撃するか、検討はつくかしら?」
俺とスモモは口端をつりあげた。
「「みきり!」」
ワンリキーとリオルはみきりの体勢に入った!
ゴローンとヨーギラスの穴をほる!
しかし、ワンリキーとリオルに見切られてしまった。
「んな技は聞かないぜ。」
「次はこっちからです!」
「・・・・・フフフ。」
「・・・何がおかしい?」
「ゴローン!大爆発!ヨーギラスは穴をほる!」
ゴローンは爆発前に、体を光らせる!
「な!」
「え!?」
ヨーギラスは穴を掘って地中に潜った。
「ワンリキー!みきりだ!」
「リオル!みきりです!」
しかし、技が決まらなかった。
ゴローンの大爆発!
ドッゴオオオオオオオオオオオンンン!!
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ワンリキーとリオルは倒れた。
ゴローンは倒れた。
「(な、くそ!ワンリキー!)」
「(みきりをあえて使わせたんですか!?)」
俺とスモモはボールに戻した。
ツツジもゴローンをボールに戻す。
「これで、残り2対3です。・・・みきりは確かに高度な防御技です。しかし、それゆえにデメリットも高いですよ。」
「(なんてヤツだよ。本当にユウキのヤロー、コイツに勝ったっつーのか!?)・・・ここからだぜ!いくぜスモモ!」
「はい!」
俺はワカシャモ、スモモはアサナンを繰り出した!
ワカシャモとアサナンはステルスロックでダメージを受けた。
ツツジはツボツボを繰り出した!
「なんだ?あのポケモンは?」
「岩タイプ・・・でしょうか?」
赤い石?甲羅のような入れ物に入っているツボツボ。
「よそ見していていいのですか?」
ヨーギラスの穴をほる!
ドガアアァァン!!
「シャモオオォ!!?」
効果は抜群だ!ワカシャモに大ダメージ!
「ワカシャモ!?(ダ、ダメージがでけぇ!?いっつも鍛練してんだぜ!?なんて攻撃力だ!)」
ワカシャモはフラフラと立ち上がる。
「先輩!反撃しましょう!」
「おっし!ワカシャモ!ツボツボに二度蹴り!」
「アサナン!ヨーギラスに念力!」
ワカシャモの二度蹴り!
ツボツボに微量のダメージ。
「(なに!?なんだコイツの硬さは!?)」
アサナンの念力!
ヨーギラスは混乱した!
「ツボツボ!原始の力!ヨーギラス!頭突き!」
ツボツボの原始の力!
ワカシャモに小さなダメージ。
「(このツボツボ・・・防御はとんでもねぇが、攻撃力はたいした事ねぇな。)」
ヨーギラスの頭突き!
しかし、わけもわからず自分を攻撃する。
「スモモ!ヨーギラスを狙うぞ!ワカシャモ!マッハパンチ!」
「はい!アサナン!飛び膝蹴り!」
「(・・・思った通り、ツボツボを放置したわね。)ツボツボ!パワートリック!ヨーギラス!もう一度頭突き!」
ツボツボはパワートリックを使った。
ワカシャモのマッハパンチ!
効果は抜群だ!
ヨーギラスは膝をついた!
アサナンの飛び膝蹴り!
効果は抜群だ!
ヨーギラスは倒れた!
「やった!」
「やりました!」
「・・・ヨーギラス、お疲れ様。」
ツツジはヨーギラスを戻す。
ツツジはノズパスを繰り出した。
「これで2対2ね。・・・なかなかよく育てられてるわね。技の威力も高いし、命中精度も高いし、打たれ強い。格闘家と名乗るだけはありますね。
しかし、まだまだです。(ジムトレーナーを次々と一撃で倒したアナタ達を見て、私は惜しいと感じました。・・・アナタ達は、勝つことが強さだと思って欲しくないからこそ、この勝負、勝たせてもらいます!)」
「へっ、いくぜワカシャモ!ノズパスに二度蹴り!」
「アサナン!同じくノズパスに念力です!」
「ツボツボ!原始の力!ノズパス!とうせんぼう!」
ノズパスのとうせんぼう!
ノズパスはツボツボを庇うように道をふさいだ。
ワカシャモの二度蹴り!
効果は抜群だ!
ノズパスに小さなダメージ。
「ち・・コイツも硬い!」
アサナンの念力!
ノズパスに小さなダメージ。
「・・特防も高いですね、そのノズパス。」
ツボツボの原始の力!
ドッカアアアアアアアアンンンンン!!!
「何!?」
「えっ・・・!?」
・・・・・アサナンは倒れた。
「・・・残り、1対2ですね。」
ツツジが微笑む。
「(な、なんだ今のは!?さっきまであんな威力なかった筈だろ!?しかも、あのアサナンを一撃だと!?)」
「あ!お、思い出しました・・・。先輩!ツボツボを急いで倒して下さい!今がチャンスです!」
「なに?どういう事だ!?」
「説明はあとです!早く!」
「おう、ワカシャモ!ツボツボにマッハパンチ!」
ワカシャモのマッハパンチ!
しかし、とうせんぼうの技により、攻撃がノズパスに当たった!
効果は抜群だ!
ノズパスに小さなダメージ。
「な!?」
「そんな!とうせんぼうは、そんな効果はありませんよ!」
「私のノズパスは特別です。身をていして仲間を守るバトルをする為に育てています。・・・ツボツボ!原始の力!」
「まずい!ワカシャモ!こらえろ!」
ツボツボの原始の力!
ワカシャモのこらえる!
ドッカアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァンンン!!!
・・・ワカシャモはギリギリ持ちこたえた。
ワカシャモは口から血を吐いた。
「イケるか!?ワカシャモ!」
「・・・シ、シャモ・・・!」
「降参をオススメしますよ。」
ツツジが冷たく言い放つ。
「今さら降参したら、コイツらに申し訳たたねぇよ!ワカシャモ!起死回生!」
ワカシャモの起死回生!
「(・・・見事な精神です。)」
効果は抜群だ!
ノズパスは倒れた。
「終わりです。」
ツボツボのいわおとし!
ワカシャモは倒れた!
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俺とスモモは、ツツジとの勝負に負けた・・・・・。
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「(・・・ワカシャモ・・。お疲れ・・。)」
俺はワカシャモをボールに戻した。
「(これが・・・ホウエン地方のジムリーダーの実力ですか・・・。)」
スモモは驚きを隠せないでいる。
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「・・・アズサさん、スモモさん、見事でした。」
ツツジが賞賛する。
「・・・いえ。こちらこそありがとうございます。大変勉強になりました。・・・少し悔しいですけど。」
そう、いま俺の中にある感情は悔しさで満たされている。
今まで鍛練してきた事が全否定されたかのような、モヤモヤした感じだ。
・・・ユウキが勝ってんだぞ?なんで俺だけ・・・・・。
「アズサさん、スモモさん。」
ツツジが話を続ける。
「どうして、ダブルバトルでの対決を望まれたのですか?
今回のバトルは、力や能力の差では、圧倒的にアナタ達が有利でした。」
・・・・・え、マジで!?
「ツ、ツツジさん。なぐさめはいいで 「私はウソが大嫌いです。」
・・・んなに執拗に言わなくても。
「つまり、シングルならアナタ達が勝てる確率は大幅に上がるんですよ?それを遮り、戦略やコンビネーションを必要とし、なおかつバトルの知識も必要となるダブルバトルで挑んだのですか?教えて下さい。」
ツツジが俺達を見据えた。
隣にいるスモモは、目線をこちらにチラチラと向けていた。・・・まあ、俺が言い出したからな。スモモも困惑した中で戦ってくれたと思う。あとで謝っておこう。
「・・・ツツジさんから見て、能力の差が俺達の方がいいのなら、そうかもしれません。・・・ていうか今では、シングルでやりゃ良かったって思ったりしています。」
「・・・・・では何故?」
「仲間と一緒に勝ちたいからです。」
「・・・・・・?」
「・・・俺は、ある人を目標にして、武道を続けています。その人は、俺に強さを与えてくれました。だから、俺はその強さを何に生かすのかを見つける為に、日々鍛練をしています。
その人もポケモントレーナーなので、自分もポケモンを持って、旅に出てみました。
トレーナーって、ポケモンにバトルを教えるのが一般的ですよね。
・・・俺は、一緒に強くならないかと誘いました。
そしたらソイツら、最初は首を傾げてるんですけど、次第に力を高めあう修業仲間のできあがりですよ。
・・・・・コイツらは、人間とは違うポケモンですけど、俺から見れば大事な修業仲間です。・・・お互いまだまだですが。」
俺は道着の懐にあるボール二つを、道着の上から触って感じてみる。
言葉を言わなくたって、コイツらの意志が手にとるように伝わる。毎日毎日、俺と組み手して、ケンカして、じゃれ合う。・・・武道家としてコイツらに出会えた事に、ホントに感謝したいくらいだ。
「・・・でしたら、なおさらシングルの方が。」
ツツジが言いくるめる。
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「スモモですよ。」
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「・・・スモモさん?」
「へ?私ですか?」
スモモは自分に指を指して首を傾げていた。
「スモモは、ペリッパーにくわえられてシンオウから方がホウエンにやってきたんです。」
「ちょっと先輩ー!?やめてください!恥ずかしいですから!」
ツツジは笑いを少しこらえている。
「いいじゃねぇか。ペリッパーがいなけりゃ、俺達出会わなかったろ?」
「そ、そりゃそうですけど・・・。」
「・・・・・スモモは、俺が唯一信頼できる人間なんです。
立場的にコイツは弟子ですが、初めて自分から繋がりを持てた、大切なヤツなんです。
真面目で、武道が好きで、食いしん坊で、親の為に金を稼いで、ポケモンが好きで、バトルが好きで、少し抜けていますし、肝っ玉小さいし、泣き虫ですけど、
・・・・・なんとなく解りますよね?隣にいてやりたいんです。」
「・・・だから、ダブルバトルを?」
「ええ。今回は勝てませんでしたが、またみんなで鍛練して挑戦します。・・・ちなみに、ホウエンのジム戦は、全部スモモとタッグでダブルバトルで制すつもりですからね。
・・・な、頑張ろうぜ、スモモ・・・・・・ってオイ!なんで泣いてんだよ!」
スモモは顔をくしゃくしゃにして、溢れ出ている涙を何度も拭う。
「・・・・ぇっぐ・・ひぐ・・す、ずみまぜん、ひぐ・・・。・・・・・先輩・・・・私・・・その・・・嬉しくて・・・ぐす・・!」
「バーカ。」
俺はスモモの泣き顔を道着の裾で拭いてやった。・・・あ、コイツ、鼻水ついてら!
「・・・・・・・アズサさん。手を出して下さい。」
「へ?」
俺は言われた通りに手を出す。
ツツジが、俺の手の平に何かを置いて握らせた。
「ホウエンリーグ公認、ストーンバッジです。」
な!?
え、ウソ、マジ!?
「いやいやいやいやいや、意味わかんないし!俺達負けたし!何故わたすし!」
テンパって敬語を忘れる。
「私は今回、全力でアナタ達を倒すつもりでバトルしました。」
「「・・・・へ。」」
「本来ジムリーダーは、挑戦者の力量をはかる為に力を調整します。アナタ達は強かったです。しかしそれ故に、惜しいと感じました。」
「?」
「惜しい・・ですか?」
「もし今日私に勝っていれば、きっとアナタ達は驕りを抱きます。特にアズサさんは初心者ですから、トレーナーの厳しさを知って貰いたくて、バトルで負かすつもりでした。」
「・・・・・・・・ま、まあ。正直、慢心してたかもしれません。それに、セミナーの後だったので、八つ当たり感覚でバトルしてたのも事実です。」
・・・セミナーでのテスト0点の怒りを、バトルでぶつけて汚名返上したかったのもある。もし、このバトルで勝っていれば、俺は知識がなくても勝てると、驕りに思うかもしれなかった。
「・・・アズサさん、スモモさん。どうやら余計な心配だったみたいです。アナタ達は、いいコンビになります。
アズサさんが、テストの30問目に書いた回答を、私は覚えています。
『トレーナーとしては未熟だけど、こんな未熟な俺についてきてくれる仲間を大切にしたいから、強くなりたい。』
・・・どうしてバッジを渡さないでいれますか。
アナタ達ならどこまでもやれそうですね。」
ツツジは微笑んだ。
「ま、またまた〜。そうやっておだて 「私はフザけた事はありません。」
・・・んな執拗に言うなよ。
クスっとスモモは笑う。
「先輩、貰っちゃいましょう!私、次は先輩の足をひっぱらないように頑張ります!」
俺は、握っていたストーンバッジをひとつ、スモモに渡す。もうひとつは俺が。
「・・・慎んで、お受け致します。」
道着をきれいに直し、帯をしめて、ツツジに一礼をした。
俺とスモモは、ストーンバッジを手に入れた!
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「では、折角ですから、先ほどのバトルの解説や反省を踏まえて、今からセミナーを行います。」
「ぃいいい!?」
「あ!賛成です!先輩、頑張りましょう!」
「スモモさんのいう通りです。ダブルバトルでホウエンを制すのであれば、先ほどの戦い方では話になりません。
きっちりと技の選択や判断区別、ポケモンの性質を理解しないと帰しませんからね♪」
「はあ!?ったく、冗談も度が過ぎま 「私は冗談が大嫌いです。」
・・・んな執拗に言うなっつーの!
「苦手なんだよ!勉強は!」
「先輩!鍛練だと思えば簡単ですよ!」
「では先ほどのバトルのおさらいから始めます。アズサさんが最初に気合いだめを指示した所まではいいですが、その次にけたぐりを選択した事は間違いです。理由は、ゴローンの防御及び体重の数値からみて・・・・・・・・・・」
・・・・・・だから・・・・・・勉強は嫌いっつってんだろうがあああああああ!!!
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