自然公園〜コガネシティ
マツリ side
アタシ達は今、自然公園に来ていまーす!
キキョウシティから西へ行って、動く木があったんだけど、おやぶんが退かしちった。ホントだったら、南へ行ってヒワダタウンに向かえば近いのに、おやぶんがコガネから行けだって。なんでだろ?
ま、いっか♪
ここの公園はすごい広い!
野生のポケモンもいっぱいいるし、トレーナーさんもいっぱいいる!
通路を歩いてたら、大きな噴水があった!
「うわーー!泳ぎたーーい!」
モンスターボールをもちーふにした噴水の水が、きれーに澄み渡る。
「警察に捕まれ、バカ。」
おやぶんが言った。
「ダメなんだ〜。」
「たりめーだろ。」
「ワニ・・・。」
「んに?そいえばおやぶん。ヒワダタウンには行かないの?」
ヒワダにジムがあるのに、なんでコガネへ行くんだろ?用事でもあるのかな?
「・・・てめぇ、地図を見たのか?」
ちず?
アタシはポケギアを取り出し、タウンマップのアプリを開く。
ピッと音が鳴り、画面にちずが表示される。
「むむぅ〜〜〜〜。」
・・・なんだろ、このでっかい黒丸は?
島かな?でも『現在地』って書いてあるし、ジョウトはこんな形してないし。
「・・・おやぶ〜ん、このでっかい丸ってなに〜?」
困った時のおやぶんだー♪アタシは画面を見せた。
「・・・・縮尺最大になってんぞ。」
「ほぇ?」
おやぶんが、『広域』というボタンを押した。
「おおぉ〜!おっきくなった〜!」
えへへへ♪さっきの黒丸は、自然公園のマークでした〜。
「地図くらい読め!バカ!」
「えへへへ♪」
「・・いいか?このままコガネに行って、そのまま南下すりゃ、自然にヒワダにたどり着くって訳だ。」
あ、ホントだ。ぐるって一周できるね、キキョウシティとコガネシティとヒワダタウン。
「・・・・でも、なんでこっちから?」
「ああ。こっちから行くと、ちっと都合がいいんだよ。っつーか、どっちでも変わんねぇだろ?」
あ、おやぶんが先に行っちゃった。
「待ってーおやぶんー!」
自然公園を走り、関門を抜ける。
.
「わーーーー!!」
すっっっごい数!
トレーナーさんがいっっぱい!
「マツリ、このどうろの先がコガネシティだ。・・・当然バトルは避けて通れねぇ。・・・バトルの約束を覚えてるよなぁ?」
「はーい!水技だけでーす!」
「よし、やれ。」
おやぶんが顎を目の前の道路にやった。
アタシはワニッペを出し、トレーナー勝負の渦中に身を投げた。
一戦、二戦と、ドンドンバトルするアタシとワニッペ。
水鉄砲だけで勝負していく。
ここまで、ブーバー、トガース、コラッタ、ポッポ、ホーホー、ニドランと、水の応酬を繰り広げていった。
「水鉄砲!」
「ピカチュウ!電気ショック!」
バリバリバリバリ!
ワニッペは倒れた。
「あぁーー!負けちったーー!」
「やったあ!私の勝ちね!」
ガールスカウトのトレーナーに当たって、ピカチュウにやられたワニッペ。
ここまで5人抜きだったのに・・・。
アタシはワニッペをボールに戻した。
「よし、マツリ。このままコガネに行くぜ。」
おやぶんが先導してグングンと先に進んだ。
「はーい。」
・・・あーあ、あと少しだったのに。
手持ちがなくなったアタシは、まだまだ残っていたトレーナーさん達を横目に流しながら、歩いていった。
.
関門を通る。
「うっはああああ!大都会だああああ!」
真っ赤なレンガの道路!ピカピカのビル!オシャレな服を着た人達!流れる音楽!おっきい電光板!そして建物がいっぱい!
うに?美味しそうな匂いがする!
アタシは左の方にある歩道をつたって、あるお店の前に来た。
「あー!メロンパン!」
「いらっしゃいませ。」
パン屋さんから、香ばしい匂いが漂っていた!店頭のガラスの中にあるこんがりとしたメロンパンに釘付けになる。
「すみませーん!メロンパン2つー!」
おやぶん、メロンパン好きだしね♪
「毎度ありがとうございます。」
えへへへ〜♪熱々だぁ〜、美味しそ〜♪
紙袋に入ったメロンパンを受け取り、再び歩き出す。
すると、なんか人がいっぱい集まってたから、アタシは行ってみた。すると、駅前の広場かな?そこには4人組の男の人が、ギターやキーボードやベースで路上ライブをしてた。
・・・ふ〜ん。みんな一生懸命聞いてるね。アタシも人混みに紛れて、軽快な音楽を奏でる4人組の歌を聞いていた。
・・・・・ありゃ!何だろあれ?
ふと振り返ると、向こうの通りで何かやってる!行ってみよ!
通行人を避けながら走ってそこへ行くと、何かイベントをやっていた。メガホンを持った係の人の横には、おっきな桶みたいなのがあった。はんけー10mくらいあるよ。中には水が張ってて、ポケモンが泳いでる!
「ねえねえ。何が始まるのー?」
アタシは近くにいたおじさんに聞いた。
「釣り大会さ。たくさん釣れば賞品が貰えるんだぜ?」
「アタシ、釣り得意だよ!」
はーい、と挙手した。
「参加自由だからやってご覧よ。」
おじさんにお礼を言って、大きな桶の前に来た。すっごーい!水ポケモンがいっぱーーい!
アタシはカバンから、釣竿を出した!えへへ、この釣竿は、とーさんの特注なんだよ♪
「あ、お嬢ちゃん!参加費頂戴!」
メガホンを持った係の人が言った。
「いくらですかー?」
「ひとり千円。釣竿はレンタルで500円プラスになるで。」
「はい!千円!釣竿はあるからヘーキ!」
アタシは係の人にお金を渡した。
他のみんなは、桶を囲って糸を垂らしているのに、全然釣れてなさそう。
アタシは竿先にルアーと針と、エサをつけながら、水槽の中を見た。
コイキングにテッポウオにトサキント。
あ!あのオレンジのポケモン、凄い速い!
「釣れたらなんか貰えるの!?」
「せやで。20分以内に1匹でアメちゃん。2匹でモンスターボール5個。3匹で釣竿。5匹以上釣ったら、釣った中から一匹ポケモンやるさかい、きばってや。」
「ほぇ〜。よーし!5匹5匹!」
アタシは竿を振った。
ルアーが水面に浮く。
握った竿を少し引く。
リールを適当にまく。
じっとしばらく待つ。
・・・・・・・ピク。
「ほい!!」
アタシはコイキングを釣り上げた!
「一匹目!」
アタシはまた竿をふる。
今度は奥の方へ。
ルアーにポケモン達が群がる。
竿がピクピクしている。
まだまだ動かさない。
リールのロックを外して糸を緩ませる。
カチッとロックする。
少しリールを巻き、アタシは竿を引く!
「ほい!2匹目!」
アタシはテッポウオを釣り上げた!
「まだまだーー!」
.
「・・・・えっと、お嬢ちゃん?」
「ほい!17匹目!・・・へ?どしたの?もう時間?」
係の人がコッチにやってきた。
「いや、時間はまだあんねんけどな・・・。」
「んにゃ?」
「も、もう5匹釣ったからもうええで?他のお客さんの分のポケモン無くなってまうがな。」
「だって、あのオレンジのポケモン欲しいんだもん。」
アタシは、水槽の中ですいすいと泳いでいる、カワウソみたいなポケモンを指さした。
「げ・・・あ、あれはちょっと。」
「あと5分あるんだよね?あれを釣るまで頑張るもん。」
頑なになって釣竿を投げる。
「ア、アカンてお嬢ちゃん。釣ったポケモンから選びて。」
係の人が汗をかきながら話しかけるけど、集中してるから聞こえない。
「おいアンタ!なんで止めようとすんだよ!やらせてやりゃいいじゃねーか!」
「やかましぃわ!ギャラリーは黙っとけ!(あのブイゼルはウチの客寄せやで!?そう安々と手放すかい!)」
「さてはてめー、あのブイゼルは客寄せ道具だな?もしそうなら、水槽から釣り上げたら素直に渡してやれよ。」
「ぐ・・、ちゃうわい!んなわけないやろ!」
・・・・周りが少し騒がしくなったけど、このカワウソポケモン、ケッコーくせ者だー。
アタシはエサを外し、ワームをつけて竿を投げた。
ゆらゆらと水槽を泳ぐカワウソ。
アタシの糸に近づく。
・・・それでも全然食いつかない。
「・・・むぅ。」
アタシは竿を上げた。
「はい、お疲れさん。こっから賞品選んでや。」
「・・・まだやるもん。」
アタシは千円を出した。
「は?」
「・・・・あのポケモン釣るもん!」
「ちょちょちょ!アカンてアンタ!」
「いいぞ嬢ちゃん!その意気や!」
「おい係!てめーは黙ってろ!」
「だいたいおかしいじゃねーか、あのブイゼル、全然エサに食いつかねぇじゃねーかさっきから。さては事前にエサを食わしてたのか!?」
周りがインチキだの悪徳商売だのはやし立てた。
「んなことするわけないやろが!」
「じゃあやらせてみろよ。こっからこの嬢ちゃんがあのブイゼル釣るって言うからよ。もし釣れなかったら、わかってんだろうな。」
「ぐ・・・・・。」
・・・・こうなったら、切り札!
アタシはカバンから、チィラの実を取り出した。
それを針につける。
「・・・・・そりゃ!」
アタシは針についたチィラの実を、カワウソの近くに投げた。
ビクッと、カワウソはエサを黙視した。
・・・・・・・・。
・・・あ、だんだん近づいてきた。
・・・・・・チィラの実を手でツンツンとつつき始めた。
・・・・・・・・。
パク! 「そりゃああああ!!!」
.
ブイゼルを釣り上げた!!
.
「「「「「うおおおおおお!!」」」」」
わ!周りから歓声が沸き起こる。・・・ビックリした。
「やるじゃねーか嬢ちゃん!いい釣りさばきだったぜ!」
「すごいわ!釣り名人!」
「よっ!名人!!」
周りから拍手が沸き起こった。
「イェーーーイ!!ありがとーーー!!」
ブイサインしながら、みんなに笑顔で応えた。
アタシは係の人の所にいった。
「ねぇねぇ!アタシ、このポケモン欲しい!」
地面に突っ伏している係の人は、虚ろな目でコッチを見た。
「・・・・あぁ、持っていき・・。」
「やったあああ!!このポケモン、なんていうの!?」
「・・・・ブイゼルや・・。」
「ブイゼル・・・、じゃあゼルだね!よろしくー!ゼル!」
ブイゼルこと、ゼルが仲間になった。
あ、ちなみに♀だよー!
.
辺りを見回すと、もう夕方だった。
「んーと。それじゃあポケモンセンター探そっか。」
アタシはポケモンセンターを探して歩きだす。
ビルの立ち並ぶ風景がずっと続く。
人もだんだん増えてきた。帰宅ラッシュってやつかな?
ポケモンセンターを目指して、ひたすら歩き続けた。
.
2時間後。
「・・・おお!さっきゼルを釣った所だ!」
2時間前にやっていたイベントは既に撤収しており、その通りの端側に、大きなポケモンセンターがあった。
すでにもう、辺りは真っ暗だった。
えへへ♪よくあるよくある。
2時間散歩してた事にすりゃいっか♪
アタシはポケモンセンターの自動ドアを通り、中に入る。
.
「動くな手を上げろおおおおお!!」
.
わ!なんだろ一体!?
入った瞬間、張叫ぶような声がアタシに向けられた。ポケモン強盗かな?
アタシは声の主を見た。
・・・・・・あれ?
.
「あ、動いた。『アクアジェット』。」
.
おやぶんのアクアジェット!!
バッシャアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!!
「こんの馬鹿女があああぁぁ!!」
「ひぎぃっ!!?」
おやぶんがアタシに水流を交えて体当たりし、アタシは壁に叩きつけられた。
「今日という今日はもう勘弁ならねぇ!お仕置きだあああぁぁぁ!!!」
「ぅう、ごめんなさ〜い!」
・・・・・そういえばおやぶん、いつからいなくなったんだっけ・・・。
.
.
.
おやぶん side
マツリの馬鹿だけは・・・。
瞬きする間に姿くらましたと思えば、ムダ使いはするわ、暗くなるまで帰って来ねぇわ、とんだ不良娘だ!
たっぷりお仕置きを済ませてやった。今アイツは今泣き疲れてベッドで寝てる。
.
ポケモンセンターの宿泊施設の、マツリの寝室で、俺を含めた3匹は円になって座った。
「・・・さて、自己紹介しな。」
目の前にいるカワウソのようなポケモン。マツリがポケセンの前でやってたイベントでゲットしたらしいが・・・。
・・・シンオウのポケモンだった筈だよな、このポケモンは。
「私はブイゼル。行商の手伝いをしていた。」
「えっと、僕はワニノコ。通称ワニッペです・・・。」
「俺様は通称おやぶんだ。まあ、宜しくな。」
「ああ、私は『ゼル』と名付けられた。だから、そう呼んで欲しい。」
目の前のブイゼルを凝視してみる。・・・レベルは・・・15ってとこか?ワニッペといい勝負じゃねぇか。しかも、素質も高ぇ。ちんたら行商の客寄せさせとくのも勿体ねぇ強さだぜ。
「ゼルっつったか?俺らのトレーナーは駆け出しでよ。ジョウト地方のバッジを集めてジョウトリーグでる為に、修業の旅をしてんだ。」
「そうか・・・。では、私もその一員というわけだな。」
「そういうこった。」
なんやかんやで、水タイプの仲間が増えちまったが、まあマツリにとっちゃ良かったじゃねえか。ワニッペだけだと、何かと不安要素があったしよ。
「君は、ジョウトのポケモンなの?」
ワニッペが軟派をはじめやがった。
「・・・私はシンオウから来た。出店の商売のサクラをやらされていた。・・・正直、あまり気が進まなかったけど。まあ、そう考えると、ここの手持ちになれてよかった気はするけどな。」
「けけけ、木の実につられて釣り上げられたヤツが何いってやがる。」
俺は腹を抱えて笑った。
「ご、誤解するな!あれは本当に美味しくてだな・・・!」
焦燥と恥じらいに駆られたゼルだった。
.
マツリ side
翌日の明朝。
アタシはベッドから起きた。
日課の泳ぎを欠かさないようにしている。
アタシは水着に着替え、ポケモン達を残して部屋から出た。
ポケモンセンターを出て、水場を探す。
・・・ん〜。そういや、街中だっけ。
プールでも借りれないかな〜♪
でも朝5時からムリかな。
考えて唸っていると、ポケモンセンターのドアが開いた。
「ほぇ?」
外へ出てきたのは、ゼルだった。
「おっはよー!ゼル!」
「ブイ!」
起きちゃったのかな?
アタシをまじまじと見ながら、あくびをしていた。
「一緒に泳ぐ!?」
アタシはゼルを誘う。
「・・・ブイ!」
.
35番どうろ。
ゼルに水場を案内して貰って、ここにやってきた。目の前には、綺麗な池がある。
「ありゃ?よくみたら、昨日トレーナーとバトルしたとこだ〜。」
ま、いっか♪
アタシは背伸びをし、屈伸、前屈、手足首を回し、準備体操をして、池に飛び込んだ。
ザブン!!
水中に体を委ね、深く深く潜っていく。
手を使わず、両足を引っ付けて、顎を引き、脚で水をかくように、水深4〜5mまで潜った。
宙返りするように体を回転させて、水の中で大きく奮わせる。そして、水面へ向けて泳ぐ。脚を滑らかに上下に動かし、胸部を少しのけ反らせ、スピードを上げていく。
水面から出た。
目の前にはゼルがスイスイと泳いでいた。
「ゼルーー!競争しよーー!あっちの陸地までねーー!」
アタシは、向こうの、木が生えている岸に指をさし、早速泳ぎ始めた。
徐々にスピードを上げていく。
すると、隣でゼルがアタシを抜かした。
「(ぬぬ〜!負けないよ〜!)」
アタシは更に深く潜る。
そして、体に纏う水に逆らわないように、手を後ろに伸ばし、脚を伸ばし、背を伸ばし、膝下から足首までを思い切りかいた。
すると、水中で水の上を滑るような感覚が研ぎ澄ませれていく。
水面と平行になり、アタシは更に加速する。岸まであと20m。アタシは更に腕を伸ばし、指先まで神経を尖らせる。池の波間や水の重み、それらにぶつからないように滑らかに泳ぎ、ついにゼルを抜いた!
「ぷはっ!」
アタシは岸にタッチし、そのあとすぐゼルがタッチした。
「えへへ♪アタシの勝ち〜♪」
「ブイ!ブイ!」
「でもゼルも速いね♪おやぶんより速く泳げるんだ〜。」
ゼルの頭をよしよしした。
あ!あの木は!
アタシは池から上がり、一本の木の元へ近づいた。アタシは背伸びして、ひとつの実を手に取った。
「木の実だ〜♪ゼル、食べる?」
「ブイ!」
ゼル、木の実好きなんだね〜。
アタシとゼルは、しばらく池で泳ぎ続けた。
・・・帰りはちゃんとゼルが案内してくれたからヘーキだったよ♪
.
.
朝8時!
アタシは、おやぶんの指示で、35番どうろにやって来た。
「いいかマツリ!昨日はお前は何連勝した?」
「えっと、5連勝!」
「ここにいるトレーナーは相当な数だ!だから実践練習に役立つ。・・・コガネジムに挑むんなら、10連勝しろ!そうすればジム戦を許可してやる。」
おやぶんが言った。
よーし!昨日は負けたけど、こっちは新しくゼルが加わったからね〜!
10連勝なんて簡単簡単〜♪
アタシ達は、トレーナー達にバトルを挑んだ。
.
.
.
結果。
初戦でKO負け・・・・・。
ナゾノクサの眠り粉にメガドレインで、あっというまにやられてしまう。
「ぎゃはははは!」
・・・・またおやぶんが笑う。
アタシとおやぶんはポケモンセンターに戻り、回復させた。
.
.
「さあ!今度は負けないよーー!」
リベンジだリベンジだーーーー!
アタシ達は早速バトルに挑む。
.
・・・結果・・・一回勝ってすぐ負けた。
敗因は、昨日のピカチュウだった。
「てめぇマツリ!なに同じ相手に負けてやがる!」
・・・そんな事いったって、しょうがないよ!
.
再び回復させて、また35番どうろへ!
「次こそ10連勝するよ!みんな!頑張ろーね!!」
「ワニ!」
「ブイ!」
アタシ達はポケモンバトルの渦へと飛び込んだ。
.
結果は・・・・・初戦負け。ズバットに混乱させられて、ゴースに『水鉄砲』を金縛りされて、あっという間にやられた。
「いい加減にしろ!そんな事でチャンピオンになれると思ってんのか!!」
おやぶんが怒鳴る。
「うるさーーーい!おやぶんのバカーーー!!」
「がぐぶぅはっ!?」
アタシはカバンをおやぶんに投げつけて、コガネのポケモンセンターへ走っていった。
.
.
.
・・・・・おやぶんの・・バカ・・。
アタシの気持ちを分かってる癖に・・ひどい事ばっかり言うんだもん・・・・。
・・・何で勝てないんだろ。やっぱり『水鉄砲』だけじゃ駄目なのかな・・・?
アタシはトボトボと南へ歩いていた。
・・・ほぇ?ポケモンセンター?
・・・・・わかんないよ、おやぶんがいないんだもん。
気づいたら、アタシはへんな場所に来ていた。大きな通りから離れ、狭い住宅街みたいな所にいた。
「出口どこかな〜。」
あたりをキョロキョロ探しても、どこから来たのか解らなかった。
「(・・・お腹すいた・・・。ワニッペ達も回復させなきゃダメだし・・・。)」
ついつい億劫になってしまう。
「ありゃ?」
アタシの目の前から、人が歩いてきた。
「すみませーん!ポケモンセンターってどこですかー?」
「ポケモンセンター?せやったらワイと行こうや。ワイも用事があんねん。」
.
アタシはワニッペとゼルを預けてソファに座った。
・・・おやぶん、怒ってるだろーな。
ソファで黄昏れてると、隣に誰かが座る。
「どないしたんや、浮かない顔して。」
「あ、マサカさん。」
「マサカやのーて、マ・サ・キ!」
「へ?そうだったっけ。」
さっきポケモンセンターに案内してくれたマサカさんは、パソコンのポケモン預かりシステムの開発者。今日は調整に来たんだって。赤白の縞縞Tシャツにグレーのチョッキを来た、若々しい青年。ちょっと目がキツネみたい。
「マサカさん。」
「なんや?」
「・・・えと、その、・・・もしね、人が一生懸命やってるのに、それを笑ったり、怒ったり、馬鹿にしたりするの、どう思う?」
マダツボミの塔の時だって、負けたアタシを突き放すように笑ってたし。でもおやぶんがアタシの為にやってるのは解るけど・・・・・今日はひどいもん。
「なんや、喧嘩中かいな?」
「・・・・(コク。)」
アタシは少し頷く。
「何や理由がなんかようわからへんな、よかったら話してみ?」
優しい口調でマサカさんが言う。
.
「・・・なるほどなぁ、その人は、マツリちゃんの為を想って心を鬼にして、教鞭してくれてんのやな。」
「うん。・・・でも、アタシ達何回も何回も一生懸命やってるのに、・・・『ぎゃはははは』とか『馬鹿野郎』とか・・・言うんだもん・・・・・・おやぶんのバカ・・・。」
アタシは膝を曲げて、膝に顔を埋めた・・・。
フロアに静かな空気が流れる。
その間、マサカさんがアタシの頭を撫でてくれた。
「・・・・・なぁ、マツリちゃん。もし、マツリちゃんがその人と立場が逆転したとするやろ。・・・ほんならマツリちゃん、その人が一生懸命にバトルして負けたら、『馬鹿野郎』って言えるか?」
「・・・・・(ブンブン!)」
アタシは激しく首を振った。
「せやな。ワイでも無理や。・・・一生懸命にやってるモンを罵倒すんのは辛いわな。・・・その人、どんだけ辛い想いで教鞭しとってんかな?」
「・・・・・・・・。」
「今でも待ってくれてんのちゃう?きっと、マツリちゃんに期待してんのや。いつか勝てる思うてるから、信じてるから、ついつい自分本位になってまうだけやがな。」
「・・・・・・ん。」
「マツリちゃんは、なんでポケモントレーナーになったん?」
「アタシのとーさん、チャンピオンになったんだ。・・・だからアタシもなりたくて。」
「ホンマか!?大したモンやな〜!ほんなら志しは高ぅないと達成でけへんで!ホレ!何ボケッとしてんねん!ボケッとしてる暇あんなら、少しでもバトルして強うならんかい!」
マサカさんがアタシを急かすようにいきり立つ。
「まだ回復中ーー!」
「あ、そらそうやな。」
「・・・クスクス、」
「お、笑た。笑うたな。」
マサカさんがアタシの肩を叩いた。
「・・・ええか、人生楽あれば苦ありやで。少々くじけようが、絶対くさったらアカン。強ぅなれって側で応援してくれる人がおるってどんだけ贅沢モンやねん。」
「えへへへへ♪・・・・そだね!」
ピンピコピコリン〜♪
「お!回復終わったんちゃう!」
「うん!」
アタシは受付に走った。ジョーイさんからボールを2つ受け取る。
アタシは玄関へと走った!
「マサカさーん!ありがとうー!」
「マサカやのーてマサキやて!!」
アタシはマサカさんに笑顔でお礼を言って、ポケモンセンターを出た。
.
マサキ side
ははは、めんこい子やったなぁ。
ま、元気になったようで何よりやで。
・・・にしても、ええ目しとったな。
アイツ思い出すわ。
無愛想な無表情な青髪の、銃ぶら下げた女。
とうぶん会ってへんな。元気にしとんかいな・・。
.
.
マツリ side
アタシは関門を出て、35番どうろへ来た。
遠くを見渡すと、向こうの方におやぶんがいた。
アタシは、おやぶんの所へ走る。
おやぶんがコッチに気づいた。いや、気づいてたかな?おやぶん、耳がいいから。
「えへへへ♪」
「・・・・・・よぉ。どうだ、機嫌の方は?」
「・・・・・ごめんね、おやぶん。」
アタシは謝った。
「・・・・・謝って済む問題じゃねぇぞ。」
おやぶんが顔をしかめた。
「アタシ!もう大丈夫だから!これくらいで一々ふて腐れたりしないよ!」
「そうじゃねえ。」
おやぶんが一蹴する。
「・・・カバンなんかぶち当てやがって。」
・・・おやぶんが顔をさする。アタシがカバンを投げて当てた所だ。
「ご、ごめん。痛かった?」
「・・・・・マツリよぉ。」
おやぶんが眉間にシワを寄せた。
・・・カバン当てられたくらいでおやぶん、怒らないはずなのに・・・・。何に怒ってるんだろ。
.
「てめぇ、カバンの中に何入れてた?」
.
「・・・・・あ。」
.
・・・・・ポケモンの・・・卵。
.
「・・・思いっ切りぶつけやがって。」
おやぶんが目線を端にやる。
そこにはアタシのカバンがあった。卵にくるんであったはずのバスタオルがはみ出ている。
・・・・・バスタオルに、黄色い液がついていた。
「・・・・・・・・アタシ・・」
「カバンに何入れてたって聞いてんだ!!」
おやぶんが大声で怒鳴った!
「・・・・・たまご・・・ポケモンの・・・おじさんに貰った・・・。」
『大切にします!』
そういって、嬉しそうにアタシは卵を受け取った。
『落とすなよ。』
『大丈夫大丈夫〜。』
そういって、アタシは浮かれていた。
・・・アタシは首をふる。
「・・・割れたぜ。・・・見てみろ。」
「ちがう。ちがう・・・。・・・っ・・・っつ・・・ひぐ・・ひっく・・えぐ・・。」
涙が止まらなくなる。自分が許せなくなる。あの時、怒っておやぶんにカバンを投げなければ・・・。
アタシは何度も首を振りながら、アタシのカバンへ歩みよる。
「・・ぅぐ・・っぐ・・ひぐ・・えぐ・・ぅう・・うう・・!」
無意識に溢れる涙や鼻水をよそに、アタシは膝をつき、カバンからはみ出たバスタオルをとり、中を恐る恐る見た。
.
「・・・・・・・・・・・へ?」
.
アタシはおやぶんの方を見た。
「ぎゃはははははははは!!」
・・・おやぶんが何か持ってる。
涙でかすんだ目をゴシゴシと擦り、もいちど見た。
ちょっと大きなプラカードに、こう書かれていた。
.
『ドッキリ!だいせいこう!』
.
「引っ掛かりやがった馬鹿めぇぇ!ぎゃーーっはっはっは!!」
おやぶんは笑い転げて、地面をバンバン叩いた。
.
・・・・・卵?
・・・・・・あったよ!!ちゃんとカバンに入ってたよ!!無事だったもん!!
このバスタオルについた黄色いの、市販の卵だもん!
「コラーーーーーーー!おーーやーーぶーーんーー!!!!」
「馬鹿野郎がぁ!ちったぁ反省しろぃ!」
互いの笑い声が、しばらく響き渡った。
アタシは、こんなおやぶんを慕ってるんだと改めて思う。