ヨシノシティ
マツリ side
「・・・・フン。あばよ。」
ラックが立ち上がり、その場を立ち去る。
「えーラック、もういっちゃうの?」
・・・せっかく仲良くなったのに。
「っせえよ、俺もヒマじゃねぇんだ。お前と違ってな。」
そういうとラックは、背中を見せてサッサと歩いていく。
「忙しいんだー?」
「俺はいずれは最強のトレーナーになる。こんな所で油売ってる場合じゃねぇ。」
ラックはそういった。
アタシは、走ってラックの正面に回りこむ。そして、両手を広げて歯を見せるように笑った。
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「えへへ、アタシも最強になるんだー!」
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ラックと一緒だ〜♪
ついつい顔が綻ぶ。
「・・・・・お前がが?ムリだな。」
「・・!む〜、ムリじゃないもん!」
「お前と俺じゃ、覚悟が違う。」
鋭く睨むラック。アタシもじーーっとラックをしかめて見つめる。
「アタシのとーさんも、最強の水使いになったから、アタシもなるんだもん。」
ラックに言った。
するとラックは、目を見開いた。
そして、蔑むように笑い出す。
「・・・フン、くだらねぇ。親父なんて、形だけの強さで威張ってるような奴さ。お前みたいな甘っちょろいヤローに出し抜かれてたまるか。」
「あー!とーさん馬鹿にしてー!」
アタシは頬を膨らませて、手をグーにして怒った。
「あぁ”?」
ラックも負けずと睨む。
「・・・上等じゃねーか。相手してやるぜ、圧倒的な差を見せてやろう。」
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ラックが勝負をしかけてきた!
ラックは、ヒノアラシを繰り出した。
「(ほえ?このヒノアラシ、研究所の?ラックもウツギ博士から貰ったんだ〜。)」
「・・・フ、どうした怖じけづいたか?」
「むむむ〜!よ〜し!アタシも負けないんだから!」
ラックとのバトルが始まった。
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「あ!」
「・・・・・?」
「あちゃ〜。アタシ、ボール預けたまんまだった〜♪」
えへへ〜、これじゃバトルできないね。
「ちょっと待っててね!直ぐに戻ってくるから〜〜!」
アタシはラックを残して、全速力でポケモンセンターに向かった。
「・・・・・・・・・。」
.
「ジョーイさんジョーイさん!回復終わりました!?」
「はい、この通りで 「ありがとうございまーす!!」
ジョーイが渡してくれた2つのボールを受け取り、踵を返してポケモンセンターを出る。
アタシは再びラックの所へと走り出す。
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「ありゃ?」
湖の近くにやってきた。なのに、ラックどころか、人影ひとつ何もなかった。
「ラック〜!どこ〜?ポケモン連れてきたよ〜!」
大声で呼んでも、静かな空気があるだけだった。
「も〜〜!!待っててって言ったのに!」
折角走って来たのにな〜。
すると、ボールからおやぶんが出てきた。
「何だ何だ、どうしたってんだ一体?」
「あ、おやぶん、待っててって約束したのに、勝手にどっか行っちゃった。」
「はぁ?誰が?」
「ともだちになったラック。」
はぁ、とため息をついた。
「・・・・・へぇ、ひょっとしてマツリのこれか、おい?」
マリルの親分が、指を突き立てる。
「もう、そんなんじゃないもん!」
またおやぶんはからかって・・・!
「へっ、やっぱり男か。旅の初日からやるじゃね〜か。」
ニヤニヤとおやぶんがからかう。もう、違うったら・・・。
すると、アタシのポケギアが鳴った。
「ほえ?」
アタシはポケギアの画面をみた。『ウツキはかせ』と書いてあった、電話みたい。
アタシはボタンを押して話し掛ける。
「はい、もしもし〜。」
ツー、ツー、ツー、
ありゃ?なんで終話音が鳴ってるの?
「馬鹿かテメーは!?そりゃ終話ボタンだ!!」
「えぇ!?」
博士の電話きっちゃった〜。えへへ。
「えっと、じゃあ、履歴で!」
着信履歴から、今度はこっちから電話する。
プルルル・・、プルルル・・。
『接続ミスです。もう一度おかけ直しください。』
「ありゃ?繋がらな 「互いに発信かけてどーすんだよ!!?」
おやぶんのツッコミが炸裂した。
「え、えーと、今度はどっちにしたらいい?掛ける?待つ?」
「・・・まあ、ウツギ博士も二回もかけてきたんだ。急ぎの用事なんだろうよ。待ってようぜ。そのうちまたくるぜ。」
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5分後。
「全然かかってこねえええぇぇ!!?」
「えへへ〜。向こうも待ってるんだね〜。」
「・・・けっ、マツリ!さっさと掛けちまえ!」
「は〜い♪」
おやぶんが電話するように急かす。アタシはポケギアでウツギ博士を繋ぐ。
プルルル・・、プルルル・・、
『接続ミスです。もう一度おかけ直 「てめーら一体何なんだあああぁぁぁ!!?」
「えへへへ〜♪」
「褒めてねぇ!」
「はぅっ!」
.
.
『も、もしもし!?マツリちゃん!?やっと繋がったよ〜。』
「そだね〜♪どうしたんですか?」
『そうだった!大変なんだ!マツリちゃん!』
すっごい慌ててるウツギ博士。何かあったのかな?
『泥棒に入られたんだ!君が研究所を出てから少し後に!ヒノアラシが奪われちゃったんだ!』
・・・・・・・・・・え・・・。
『赤い髪の黒い服を着た、鋭い目つきの男だったんだ!今、警察の事情聴取が済んだんだけど・・・、マツリちゃん見てないかい?』
「(・・・・・ラック・・・。)」
『ど、どうしたのマツリちゃん。ま、まさか会ったのかい!?どこで見かけたの!?』
「え?いいえ会ってないですよ〜、チコリータは無事だったんだ〜。」
『そ、そうか。いやそうなんだ。たまたま机の上においていたヒノアラシを目を離した隙にさ・・・。悪い様に使われなきゃいいけど。』
「・・・・・えっと、あ、じゃあもし見かけたら電話しま〜す。」
『うん、よろしく頼むよ。』
ピッ。
アタシはポケギアの通話を切った。
「おいマツリ。」
「ほえ?」
おやぶんが話し掛けてくる。
「何でウソついた?」
・・・・・・やっぱり敵わないな、おやぶんには・・・。
「え、えっとね、」
「あ〜〜、大体検討ついたぜ。お前の事だ。さっきのダチとかいう男を疑いたくないって訳だろ。けっ、お優しいこった。」
「えへへへ、まあ、それもあるんだけどさ〜。」
「ニヤニヤすんな、テメー泥棒をかばって共犯した事になるんだぞ?」
・・・・・ラック。
ポケモンを盗んだのにはビックリしたけど、
・・・アタシは単にともだちだからという理由でラックを庇ったりなんかしない。
約束したよね。アタシが来るまで待っててって。
・・・・・次会ったらさ、ちゃんとバトルしてね♪
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次の日
「さあさあ!キキョウシティへ向けて出発〜!」
気持ちを切り替えて次の街へ〜♪
キキョウシティにはポケモンジムがあるよ〜。ジョウトのジムで勝って勝ってバッジをゲットして、とうさんと同じようにジョウトリーグで殿堂入りしてやる〜!
「んんん〜!やる気が上がってきた〜!」
「やる気は結構だが、また走るとか言うなよ!」
「ワニワニ〜!」
おやぶんとワニッペがアタシにすがるように言う。
「えへへ〜、大丈夫大丈夫。昨日はやり過ぎたから、そこまできつい事しないよ。」
おやぶんはホッとする。
ワニッペは冷や汗をかいた。
「ワニ〜。」
「ほぇ?おやぶん、ワニッペ何て言ってるの?」
「・・・まさかペースダウンして結局走るのかって言ってるぞ。」
「うん♪」
「ワニャーー!?」
「えへへ、楽しいね〜ワニッペ♪」
「・・・ジョーイにドクターストップかけられたから、ボールに戻してくれって言ってるぞ。」
「しっかりついてきてね、ワニッペ♪」
「・・・・ワニャ。」
「そうそう、コイツの手持ちになった以上、諦めが肝心だぜ。
(はぁ、クドーの野郎と居たときは、のんびりやってたんだかな〜。どうやったらこんな天真爛漫な娘が出来るんだ?)」
おやぶんがあくびをする。
「ほんじゃ、ワニッペ。気合い入れろよ。俺がコーチしてやる。少しでも遅れてみやがれ、LEVEL:65の”転がる”が待ってるぜ。」
「ワーー二ーー!!?(←LEVEL:6)」
「出〜発!よ〜い・・・・どん!」
キキョウシティまでの山道をグングンと進む。おやぶんの話だと、このあたりからトレーナーがたくさんいて、バトルを挑んでくるらしい。
じゃあ、山道の中腹ぐらいで休憩を入れよ♪
・・・ワニッペ、一緒に頑張ろうね♪
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ワニノコ(ワニッペ) side
え〜っと、みなさん、こんにちは。
ワカバタウンの研究所で博士から、新米のトレーナーのパートナーになりなさいと言われたとき、
”平凡で平和主義な普通の人”がいいなあと思ってました・・・。
いやいやいやいやいやいやいや!
ちょっと待って、いやマジで。
なにこの女の子、すっっっごい目が爛々としてるよ。やる気が半端ないよ。
そして凄いのが・・・ノリ。
いきなり走らされた・・・。
仮病も見抜かれてムシされた・・・。
ははは、本人には悪気はないんだろうな〜。
これから先、どれだけ破天荒な毎日を過ごさなきゃならないんだろ・・・・・・。
一緒にいたマリルのおやぶんさん曰く、『ま、マツリのヤローも初日だし、トレーナーも初めてだからよ、多めに見てやってくれや。俺はこう見えてベテランだからよ、困った時は何時でも言いな。』
・・・おやぶんさんっていい人(ポケモン)だよな〜。うん。
・・・・・そう思っていた時期がありました。
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「おらおら!チンタラ走ってんじゃねぇ!転がる2発目ェ!!」
ドッカーーーン!
「ぎゃあああああ!!」
勾配な坂道をグングンと先導するマツリ。
それを死に物狂いで追い掛ける僕。
そして、その僕を追い詰めるように迫るおやぶんさん・・・。
「次は転がる三発目ェ!避けねぇと死ぬぞぉおお!」
ドッゴーーーーン!
「ひぃぃぃいいいいい!!」
お、おやぶんさーーーん!
な、何か主旨違ってきてません!?
死ぬから!コレ絶対に死ぬから!!
誰かーーー!代わって下さいーーー!!