オツキミヤマ(3)
アーボックの毒針が迫る!
「・・・避けて。」
ギャラドスは、紙一重でかわす。
「蛇睨みだ!」
「・・・竜の怒り。」
ギャラドスの口から熱線が放出し、幸いにも目と目が合うことはなかった。
因みに、さっきまでかかっていた麻痺は、私が治した。
「かわせぇ!」
アーボックは後退して熱線から離れる。
「毒針だ!絶対迂闊に近寄るな!」
「・・・もう一度。」
互いの遠距離攻撃がぶつかり合い、それらは貫通した後、標的に直撃する。
ギャラドスは毒状態になった。
「ふ、ざまあみやがれ!」
「・・・ギャラドス・・・しみるけど、ガマン。」
私は、傷口に毒消しをかける。
ギャラドスを解毒する。
「・・・傷ついたら・・・私が直す・・・。」
「ガアアアァァ!!」
「てめえら、さっきから見ていていらつくんだよ!!死ね!!毒々の牙!!」
アーボックは噛み付き技で態勢をとる。
相手は怒りで冷静さを欠き、接近勝負に持ち込んできた。
「・・・来る瞬間を・・狙って。」
ギャラドスに言い聞かす。
アーボックは、体を折り曲げ、獲物を狙うかのように跳躍に備える。
ギャラドスも体を曲げ、向かい撃つ準備ができた。
「シャア!」
動いたのはアーボック。
・・・早い!
「・・・アクアテール!」
ギャラドスの態勢は、攻めではなく受け。サイドに素早く転身し、尻尾を靡(なび)かせ、ギリギリかわした。
「シャ!?」
攻撃が外れて唖然とするアーボック。
それもつかの間・・・。
「ガアアアアアーー!!」
ギャラドスは勢いよく水の尾で殴りつけた。アーボックは、勢いに逆らわず飛ばされた。あの男にアーボックがぶつかる。
「ぐわああぁぁ!!?」
ぶつかった衝撃で弾き飛ばされ、男は山道を踏み外し、断崖に投げ出される。
そして男の体は、遥か下方の密林の海へ落ちていった・・・。
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「・・・はぁ、・・・はぁ、・・・・・。」
静けさが辺りを支配する。
立ちはだかる敵を全て制し、とられた大切なものを取り返し、やがて、日常を手にする。
月の石はとられてしまったが、それ以上に嬉しさが込み上げてくる。
ロケット団員との勝負に勝った・・・!
「はぁ、はぁ、はぁ、・・・ぅあ!・・・っぐぅう・・・!」
痛みが再発する。アドレナリンが切れかけている。相当無茶したから・・・。
激痛に苦しみ疲労困憊。とうとう私は意識を手放した・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
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目の前が真っ暗になり、数秒後に目を開く。
「・・・・・・?」
病院の一室の中にいた。
体は包帯やギブスに覆われ、丁寧にベッドに寝かされていた。
「・・・どこ・・・・・?」
窓の外は夜中。
満月の月明かりが眩しく感じる。
私は溜息をつきながら、体を投げ出すように、柔らかいベッドに身を委ねる。
さっきまでの痛みが、嘘のように消えていた。
右肩、首、鎖骨、腕、胸、あばら、腰、背骨、股、膝等確認する。
・・・右膝だけちょっと痛い。
岩の破片をぶつけたところが。
・・・あの子達は!?
室内を見渡してみた。
「・・・・・!」
ベッドの側に、小さく固まるように、フシギダネとピカチュウが寄り添って寝ていた。
「・・・Z・・。」
「・・・ピカピ・・・・・。」
気持ちよさそうに、安らかに眠る姿をみて、一気に安心する。
「・・・・・・無事で、よかった・・。」
安堵して笑みをつくり、頬を涙が伝う。
月夜のまばゆい光に照らされながら、私は深い眠りについた・・・。
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フシギダネ side
「ふぁああ・・・。」
ここは・・・病院・・・か。
そうだった、昨日はルナを連れて山を下りて、途中、人が来て助けてくれて、病院まで搬送してくれたんだ。
「・・・あれ?」
「起きたかピカチュウ?」
「おはよう。」
グググっと背中を伸ばすピカチュウ。
「ピカチュウ?昨日の事、覚えてるか?」
「うん、なんかね、へんなやつに眠らされてからね、なんとなくだけど、周りは戦ってた感じがしててね、起きたらディグダがやっぱりバトルしててね、あ!昨日ルナがドラゴンに乗ってたの見た?あれ凄くない?あそこから私たちをボールに戻してくれてー、そんで出てみたときには、ルナが全然起きなくて、急いで街へ連れていこって話になって、山下りて、なっがい道走ってたら、人がいて、ルナを車に乗せてくれて、そっから私たちボールの中入って、気づいたらルナ病院で手術受けてて、終わった後も全然目が覚めないから、付き添って看病してたら、・・・いつのまにか眠くて寝ちゃった。」
「・・・だよな。・・・ルナ、あんなにボロボロになって、俺達を助けてくれたんだ。だからかなり心配だ。」
「・・・うん。」
「ピカチュウ。ルナ覗いて見ろよ。・・・そーっと。」
「分かった。・・・・そーー。」
ピカチュウがベッドに上がる。
俺はピカチュウに容態を聞こうとした。
「・・・どうだ?」
ピカチュウからは返事がない。
「・・・ピカチュウ?・・・ルナどんな感じだ?」
・・・全然返事をしない。
「おい!何か言えよ!」
「・・・・・・・・ルナが・・。」
何!?
「うぅ・・!ルナァ・・!」
・・・まさか!?容態が悪く!?
俺は血相変えてベッドに登る。
ルナの顔を覗いた。
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・・・・・・・・・・?
元気そうだ・・・。
てか、ルナ目覚めてるし。
「ルナーーーー!!よかったーーーー!!」
ピカチュウが泣きながらルナに抱き着く。
「紛らわしいんだよ!!お前はよ!!」
はあ・・・、何か安心したら、どっと疲れがでた・・・。
ルナは、ピカチュウを宥(なだ)めながら、俺と目が合う。
俺達は、しばらく見つめあった。
ルナが手招きした。
俺は側による。
頭を撫でてくれる。
・・・ああ、いい気持ちだ。
思わずとも、部屋中にアロマの香りがただよった。
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これが、俺達の日常なんだ。
ルナがもし目覚めなかったり、俺達がロケット団に連れていかれたら、一生手に入らないものが、今ここにある。
・・・こんなにケガしてまで、俺達の事・・・。
・・・・・俺も、応えてやらないとな。
俺は強くなる。ルナも、こいつらも、全部守り抜いてやる。
義理で通すんじゃないんだぜ・・・。
・・・俺は本気で想ってるからな。
強くなって、ゆくゆくは最強になってやるよ。
そして、最期にはお前に、『ありがとう』って言ってやるのさ。