オツキミヤマ(2)
「隊長、3匹共ぶちこみます。」
「ああ。」
・・・・・この子達を・・行かせない・・・!
「・・・・不服そうだな。」
ギュウ!!ギリギリギリギリ!!
「うあああぁぁ・・!!・・ぁああ!!」
骨が軋む・・!足が・・腕が・・痛い・・・!!
血が止まる・・・・・!!
「へっへ、ガキかと思いきや、良い声出すじゃねえか!発情しちまうぜ!」
「・・・移すなよ。」
「隊長!コイツを!」
男が月の石を取り出す。
「・・・くくく。ご苦労だ、女。・・・礼と言っちゃなんだが、楽に死なせてやる。」
・・・肺が押し潰されそうで息が出来ない・・・。
指先まで力が入らなくなった・・・。
・・・・・まずい!・・・肩が!・・肩が変な方向に・・・!!
想像を超える痛みは、体中に電気が通電するよう。
私の右肩は、強力な圧力により外れかかっていく・・・。
「隊長、あとボールが入っていました。」
「出して見ろ。」
男が私のボールを開ける。
中から出てきたのは・・・・・。
「コイコイコイコイ!」
「・・・は?」
「・・・・・ハズレだな、あの3匹だけでいい。コイツはお前にやる。」
「じ、冗談キツイすよ!こんなザコいらないでしょ。・・・オラァ!!」
男が私のコイキングを蹴り上げ、弧をえがき飛ばされる。
コイキングは、ロケット団達の荷物に突っ込んだ。音を立てて荷物が散乱する。
「・・・おい。」
「す、すみません。足元狂っちまって。すぐ退かしますんで。」
男は荷物のある場所へ向かい、コイキングを一瞥する。
「・・・!・・おい!人のかばんに入り込んで何してやがる!出てきやがれ!」
男がコイキングを鞄から引っ張り出す。
「・・・ん?・・何食ってんだコイツ?・・・・・・あ!・・・ああああーーーー!?」
「どうした?」
「隊長!ヤバいです!増強剤をやられました!全部です!」
「何!?さっさと吐かせろ!あの支給品はそれしかないんだぞ!」
「はい!・・・クッソ!出しやがれ!」
・・・?
「隊長?増強剤って?」
「・・・組織の薬物開発部門が、ふしぎな飴の改良を重ねて、量産化に成功した口径薬だ。・・・つまり、一粒でレベルが上がるんだ。・・・・・ッチ!このクソ女やってくれたな。」
「・・・何粒持ってきたんすか?」
「・・・・・・・20。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!
コイキングが、光に包まれる。
「隊長、ヤバいすよ!もう手遅れです!」
「(進化が始まる・・・!)ずらかるぞ!!お前は3匹を持て!」
「はい!・・・ん?・・・2匹しかいねえ・・・!」
「何!?」
・・・・・あの子・・だ・・・。
「・・・マ、マグニ、チュード・・・・!」
私は痛みを耐えながら声を張って命じた。
グラグラグラグラグラ・・・!!
男達はバランスを崩して転倒する。
「・・・ぐるぁあああ!!舐めやがってぇ!!ラッタ!噛み殺せ!」
ラッタは、地面を揺らしてきた相手を耳で探知して見つけだし、突撃していく。
「あのディグダ、寝たフリを・・・。」
ディグダは、向かってきた相手に、冷凍ビームをぶつける。急な遠距離攻撃に戸惑い、避ける間もなくラッタに命中した。
ラッタは倒れた。
「・・・・・」
男達は沈黙した。
・・・ひしひしと、怒りや憎悪を感じ取れる・・・・・。
「アーボック、本気でやれ。」
「シャーーーーー!!」
ゴキ
右肩。
昔、キャッチボールの特訓で、がむしゃらに投げて、生まれて初めて脱臼した。
あの痛みは忘れない。
骨を折ったほうがましなくらい・・・。
・・・でも、あの時とは違う。
アーボックに締め付けられて、体中が破裂しそうなほどの痛み。
私の右肩が、大きな乾いた音をたてた。
最初は冷たい感じがした。
・・・次第に体中の痛みが引き。
・・・・・外れた肩に、まるで、マグマのヤリが刺さったような痛みが襲う。
「ああああああああああああああああああああ!!!・・・っあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!・・・ぅぅぁぁぁあああああああああああーーーーーーーー!!!!」
ディグダ side
「隊長!コッチもマズイです、はやく・・・ぐわああぁぁ!!」
「・・・クソ!逃げ場がねえ!」
「思った以上にデカい・・・!!」
これが噂に聞く、ギャラドス。
「ガアアアアアーーーー!!」
ビリビリ・・・・・・!
僕は、何とか睡眠スプレーの煙を吸わずに、寝たふりをしてチャンスを伺ってたけど・・・、この状況は確かに危ないが、逆に考えれば千載一遇のチャンスとなる。
聞け、僕のナイスアイデア!
まるいち。ギャラドス大暴れで奴らを蹴散らす。
まるに。そのすきに皆を助ける。
まるさん。穴を掘るで洞窟へ逃げ込み、トンズラスタコラ。
まるよん。皆僕に感謝!皆のヒーローとしてVIPたいぐう。
よし、これでいこう!さあ元非常食!フィーバータイムだ!好きなだけ踊れえ!!
「・・・アーボック!その女捨てろ!コイツを何とかするぞ!!」
アーボックは、締め上げていたルナを放り投げて、ギャラドスと対峙する。
「ルナ!」
あいつら!ルナに乱暴ばっかりしやがって!
僕はルナの元へ駆けつけた。
・・・大丈夫かな?
「ルナ!しっかりして!」
「・・・ぅああぁぁ・・!・・・・・っぐっっ・・・つぅ・・・!」
・・・!・・肩が外れてるんだ!顔も真っ青だし、所々炎症を起こしてる!
って、僕は医者か♪
・・・言ってる場合じゃないや。
「アーボック!蛇睨みだ!」
「シャア!」
ギャラドスは麻痺状態になった。
「お前ら!今のうちに行くぞ!」
「へい!」
あいつらが逃げる!
フシギダネとピカチュウを担いで・・・!
「行かせるかあ!喰らえ!冷凍ビーム!」
僕はひたすら撃ちまくった。
「んなもん当たるかぁ!」
難なくかわされてしまう。
奴らを捕まえなきゃ!
でないと、フシギダネが、ピカチュウが・・・!
冷凍ビームの連撃もむなしく空を横切り、ロケット団は段々と遠ざかっていく。
「どうしよ・・・どうしよ・・・。」
焦りと衝動が、やがて絶望へと変わる。
「もう・・・だめだ・・・。」
自分だけ、出来る出来ると浮足立っていたのが間違いだったんだ。
結局、役に立たないまま、最悪の結果を引き起こしてしまった・・・。
何やってんだろ、あんな調子にのって、みんな、ピンチなのに、肝心なところで・・・・・・・。
悔し涙が頬を伝う。
その刹那・・・。
ドギュン!!
銃声がこだまする。
「ぐわ!」
「・・・!・・おい!大丈夫か!?」
命中した男は倒れ、伸びていた。
持っていた網を手離し、あの二匹は解放された。
・・・え。嘘。まさか。
僕は振り向く。
・・・ルナだ。
ルナが狙ってくれたんだ。
でも、右が利き腕の筈。なのに、肩を脱臼しているにも関わらず銃を構えたんだ。
ルナは地面にうずくまり、体を震えさせている。痛みのあまり、体が無意識に痙攣している。
「ルナ!無茶しすぎだ!」
「さ・・・さ、最後まで・・・・・。」
「ルナ?」
痛みを耐えながら、ルナは僕に語り続ける。
「・・・希望を・・・捨てない・・!」
「・・・・・・わ、分かったよルナ。だから、もう喋るなよ。」
「・・・あきらめたら、そこで・・!」
「分かったからこれ以上喋るな!危ないから!色んな意味で!!」
先生・・・。僕、バスケ嫌い。
ルナ side
・・・私は、多分もう・・・動けない。
今の射撃で1人やっつけた。
残り二人。
フシギダネとピカチュウを網から出した。
後は起こすだけ。
相手は足止めを喰らっている。
・・・今がチャンス。
「ディグダ、・・・鞄に・・・、眠気覚ましが・・。」
「・・!・・・ディグ!」
「あの子達を・・・起こして・・・。」
「ディグ!」
ディグダは穴を掘るを使い、姿を消す。
「・・・・・・・・・・ギャラドス!!!!」
動けなくても・・、・やれる・・・・・。
ロケット団(隊長) side
クソガキがぁ!!ふざけた真似を!
「おい!いつまで寝ている!起きろ!」
突然飛んできたモンスターボールに当たって気絶した部下を起こす。
・・・本当に気絶しているようだ。
「・・・この役立たずが!」
コイツは捨てよう。
月の石とポケモンがいれば、多少のゴタゴタはカタがつく。
「おい、網に詰めろ!」
「へい!・・・あ!ディグダ!今度はにがさねえ!」
何!?網から出てきた!?
「ディグ!」
ゴゴゴゴゴゴ・・・!
「うわ!」
またマグニチュードか、小賢しい!・・・ さっきより規模がでかい。
「お前!残りの手持ちを出せ!俺はアーボックしかいない!」
「へ、へい!いけガーディ!!」
このちょこざいを黙らせてやる!!
「たたきつける!」
「ガーディ!火の粉!」
アーボックとガーディの攻撃は当たらなかった。
地面に潜ったか?
「警戒しろ!」
地面技は相性悪いからな・・・。
しばらくすると、奴が飛び出し、ガーディに命中した。
「巻き付けろ!」
アーボックに出会いをとらせた。
「ディグ!?」
よし、捕らえた。
「・・・ふん、仲間を助けにきたか?だが2対1で挑むかバカ。・・・寝ろ。」
スプレーを直で浴びせる。
本当に眠ったかを確認し、網に入れるが・・・。
・・・?・・・地面から、抜けない・・・?
ディグダは、下半身を地上に現さないと云われているが、どうなってる?実質的に抜けん・・・!
これでは、捕獲網にはいらん・・・。
・・・・?・・・!?
捕まえた奴らは?
どこに消えた・・・?
周りを見回すと、もう一人の男が倒れていた。首を絞められた跡があった。
「・・・・・!!」
最悪だ・・・。
最悪のパターンだ・・・。
このモグラ・・、あの時カゴの実でも食わせたのか?
でなきゃ起きる筈がねえ!
・・・辺りに潜んでやがるな。
だが、こっちとしてはやりやすい。
俺は、ナイフを取り出し、ディグダの首に当てる。
「おいチビ共!下手にでてみろ!コイツの首刈っ切るぞ!」
・・・反応・・・無しか。
「5秒以内に出ろ。4、3、2、1・・・・・!」
なめやがって!!
「じゃあ死ねやぁ!!」
モグラの首を切ろうとした。
だが、モグラの姿が無い!?
「なぜだ?眠らした上に、俺のアーボックで締め付けたはずだ!?」
今はアーボックの尻尾の中は、もぬけの殻だった。
辺りを見回す。
・・・・・・・・な!?
ルナ side
あの子達は無事に取り戻した。
・・・ディグダのおかげ。
部下らしき男を、フシギダネの”すみれ咲き”でやっつけた後、ボールに素早く戻し、捕らえたディグダも、ボールに戻すことが出来た。
岩石が密林のように転がっているこの地帯は、身を隠しやすいが、遠距離攻撃できる場所が極力限られる。
既に体力が限界の私は、ギャラドスの背に乗り、あの子達をボールに戻せる高さまで上げてもらえた。
ボールに戻すとき、開閉スイッチの真正面に赤い光が一直線に伸びる。それに当てないと成功しない。
ロケット団の位置はここから50mほど。
ねらうのが得意な私にとって、これくらいの距離は造作もない。
「・・・はぁ、はぁ、・・・・・・・・・・・・逃がさない・・・!」
ギャラドスを前進させる。
全てを取り返し、カタをつける時がきた。
男が罵声を上げる!
「アーボック!毒針!女に当てろ!」
1対1のバトルが始まった・・・!