オツキミヤマ(1)
3番道路。
「・・・凄い数・・・。」
「ダネ!」
「ピカァ!」
「ディグ!」
遥か前方にそびえ立つお月見山。
その行方を阻むように、トレーナー達が待ち構えている。
「・・・・・フシギダネはかみつく。・・・ピカチュウは鳥ポケモンを中心に。・・・ディグダも相性を使い分けて・・・。」
私は臆することなく、前へと進む。
「な・・・つ、強い!」
「何だこの女の子、ヤバいだろ・・。」
「全然かなわねえ・・・!」
グリーンに傷薬をあげてしまったから、回復が出来なかったが、向かって来る相手に勝ちながら、どんどん先へ進んで行った。
数時間後、ポケモンセンターが見えた。
「・・・ちょっと・・休憩・・・。」
ポケモンを回復させ、体を休めて、旅の支度をする。
私はポケモンセンターからでて、間もない時だった・・・。
「クソ!あのクソジジイ!騙してくれやがったな!」
見ると、山男が怒鳴り散らしている。
離れたところで様子を見る。
「いらねえよ!こんな役立たず!」
山男はボールを投げ捨て、どこかにいってしまった。
私はすかさずボールを拾う。
「・・・フシ。」
・・・?・・・・・拾う癖を直せ?・・・・・ムリ・・・。
私はボールからポケモンを出してみた。
中にはコイキングが入っていた。
おそらく、さっきの山男は、どこかの商人に、幻のポケモンだと口車に乗せられ、押し売りされたのだろう。だから、捨てられたんだ・・・。
私はコイキングを見つめる。
「コイコイコイコイ」
水しぶきをたてながら、ピチャピチャと音をたてて跳ねつづける。本当に、休む術を知らずに、それしか取り柄がないかのように、ただひたすらに・・・。
「・・・・・・おいしそう。」
非常食にもってこい・・・。鯉だけに。
・・・?・・・・みんな寝てる・・・。
「ダネェ・・・。」
コイキング(非常食)を拾った。
お月見山入口の前についた私達。
ここから一般のトレーナー達が行き来する道のりで、野性のポケモンが沢山生息している上、出口までの距離が長い。
実力がなければ、出口にたどり着くのは不可能な洞窟だった。
「・・・・・ピカチュウ。」
「ピ?」
「・・・・・そこに山があれば・・・・・・・?」
「ピッピカチュウ♪」
・・・・・登る。
山は山でも岩肌で、勾配な崖が見渡す限りである。流石に、まともな神経をしていなければ、これを登ろうなど、思いもつかないだろう・・・。
「・・・私達には・・・ロッククライマーがいる・・・。」
「・・・フゥ・・・・・ダネダネ・・。」
お月見山登山プロジェクト
作戦A
フシギダネを、ボールに戻して、レボルバーに装填。崖の上へ向け銃で打ち上げ、上から蔓を下ろしてもらう。
.
幾分経たずして、崖の上に立つ。
心地好い風が吹きわたっている。
・・・薫風(くんぷう)ともいう。
・・・暗い洞窟を歩くよりも、見晴らしの良い処を選んだほうがいいに決まっている。
何より、誰も通らない道や場所を歩くという事は、自分が誰よりも新しく見つけたという独占的な感覚。
それが私を自然や大気、大地と一体化させる。
旅は心。
私は、レール通りに進む電車とはちがう。
思うがままに、気まぐれに、誰よりも自由に・・・。
気ままな旅ガラスのように・・・・・。
岩山を越えるのは、洞窟より簡単そうに見えるかと思うが、お門違い。
かなりきつい・・・。
ディグダに散策をして貰わなければ、確実に迷っていた。
・・・ディグダの散策は掘り進む事。途中、何度も岩崩れや崖崩れに遭い、死と隣り合わせだった・・・・・。
ポケモン side
「おか〜をこ〜え〜 ゆこ〜よ〜♪ヘイ!ヘイ!
くち〜ぶえ〜 ふきつ〜つ〜♪ヘイ!ヘイ!
そら〜はす〜み〜 あお〜ぞら〜♪
まき〜ばを〜 さ〜して〜♪」
「・・・ぶちこわしだよ、ピクニックの雰囲気じゃねえだろ、これ。」
「うたお〜 かろやかに〜♪
ともにて〜を〜と〜り〜♪
ラン! ラララ! ラ! ララララ!!」
「うるせぇーーー!!」
「え、でもさ、かり○し良くない?」
「だよねー?」
「ディグダ、真面目にやれ。」
「わかったよ、ちゃんと散策するよ、全く。・・・ちゃんと、真面目に、全力、全開で、・・・・・・・・・・
・・・全開の唄ァ!!
前進!前進!GO!全身全霊でGOォ!
前進!前進!GO!全身全霊で前へGO!!」
「イエーーーイ!!」
「うるせぇ!!パクリもぐらぁ!!ピカチュウ、お前ものるなぁ!!」
「沖縄へ行きてぇえええ!!」
「ホントお前だけ行ってこい。二度と帰ってくるな。」
ルナ side
(・・・この子達、いつの間にか仲良い・・・・・。)
少しつまらない私だった。
この岩山にも野性のポケモンが至る処にいる。イシツブテにゴローン、オニスズメにポッポにワンリキー、凹地にはピッピがいた。
バトルを重ねるにつれ、どんどんこの子達は強くなる。攻撃にパターンが増えたり、地形を利用したり、自分でやりやすいように、自由奔放に戦っている。
・・・というか、私がそういう風にするよう言ったんだった・・・。
”指示待ち”に慣れてしまうと、状況を自分で考えなくなるし、私が技を言って、この子達が聞き入れるまで、数秒の時間が惜しく感じる。
基本、自分で考え、自分で攻撃する戦法でやってきた。各々の判断が良ければ褒めてやり、悪ければ指摘する。
・・・・でも、ここ大事なバトルの時は、私が命令する・・・・・・・・。
でないと・・・・・・・、
・・・・・・・退屈。
・・・・・・?
・・・私、何でこんなにムキに・・・・?
.
途中、黒い服をきた人を3人くらい見かけた。
こんな険しい場所にいるのは怪しく思い、私は身を隠した。
「・・・このあたりはもういいだろう。」
「洞窟捜索だと広いし暗いスからね。でもまさか、ここでも採れるとは。」
「へっへ、こんだけ集めりゃ、給料上がりますぁ。」
「・・・月の石は、我がロケット団の戦力増加の素となる。研究開発が進めば、どんな弱いポケモンも進化させれば関係ない。先ずは力を溜め、着々と思い知らせるんだ、我々ロケット団の恐怖を・・・・・!」
・・・・・。
・・・宗教?
思想と理念を一つに!的なグループは珍しくは無いが、・・・月の石・・・か。・・・・・さっき拾ったこれがそうかな?
私は鞄から出してみる。
・・・・(ゴト)
あ・・・、
・・・・・見つかった、かな?
今私は、大きな岩の後ろに隠れている状態で、向こうの様子が見れない。
.
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
.
(・・・?・・・イケる?)
「サイホーン!岩砕き!」
私は咄嗟に岩から離れる。
地響きが近づくと、弾けるような大岩が砕けて、破片が飛び散る。
「・・・・痛ッ・・・!」
右膝に当たった。
痺れて感覚がない。体重をかけても、支えきれる状態ではなく、立てない。
・・・それより。
「・・・盗み聞きは良くねえなぇ。」
「なんだぁ、女ァ?こんなとこで?」
「・・・・・・。」
3人は私を捉える。まずい人達だとは認識していたのに、迂闊にも音をたててしまうなんて・・・・・。
「へっへっへ、足が痛いのか?俺に介抱さしてくれや。最近溜まってんだぁ。」
「隊長、どうしやすか?」
「・・・一先ず、そいつの鞄調べろ。」
男がズカズカと近づいてくる。
・・・・・・・はあ。
「・・・・・タネマシンガン。」
もう一つの岩影に隠れていたフシギダネが、男達目掛けて、タネマシンガンを撃ち込む。
「痛ってえ!」
「ッチ!このアマァ!」
もし、この奇襲なくて、普通に抵抗していたら、目の前のサイホーンにやられてお終いだった。
しかし、フシギダネは広域攻撃をしたおかげで、サイホーンにもダメージを与えた。
「サイーーー!?」
・・・しかも、ただのマシンガンではない。・・・宿り木の種マシンガンだから。
相性の悪いサイホーンには効くはず・・・。
「舐めやがって!隊長!こいつ、本気でどうします?」
「・・・我々の目的を聞かれたんだ。・・・・・消せ。」
「ハーッハッハッハァァア!!死ねだとよ!!」
ロケット団3人がポケモンを出す。
サイホーンに、ズバット、ラッタにアーボックが出てきた。
「サイホーン!メガホーンだ!」
「・・・ツインウィップ。」
サイホーンの突撃を蔓で止め、衝撃を与える。
「・・・パチンコハング。」
2本の蔓を相手に絡めている状態で、蔓を思いっきり戻す。
捕らえた相手がフシギダネより軽ければ、オーバースローや稲妻落としで決まる。だが、相手が重ければ、どうしても自分の体が踏み切れずに、自分が引っ張られてしまう。
今回はそれを利用した。
勢いよく、サイホーンに向けてゴムのように加速するフシギダネ。
フシギダネは歯を突き立て、相手の目を狙う。・・・前々から、急所を狙うように言っていたから。
ドシャアアァ!!
「サイーーー!」
急所に当たった。サイホーンは倒れた。
「ラッタァ!必殺前歯!女を噛みちぎれ!」
ラッタが猛進してくる。
避けようにも、足を怪我して動けない。
ラッタが目の前に迫ってきたその瞬間・・・。
ザザーーーーーーー
「ラッタ!?」
足場が細かい砂になり、四肢の自由を奪われる。もがけばもがくほど、流砂に捕まってしまう。
ディグダの蟻地獄だ・・・。
「・・・マッドショット。」
私はディグダに追い討つよう指示。
ラッタのダメージが蓄積していく。
残りは2体。
・・・いや、1体。
すでにズバットは、ピカチュウの電気に当てられ、戦闘不能だった。
「アーボック!締め付ける!」
・・・!・・・速い!
アーボックの速力に驚く暇もなく、私は捕われてしまった。
「・・・ぅぐ!・・・・!!」
・・・凄い力・・!・・・全然動かない・・・。
「おい!動くなチビ共!この女殺すぞ!」
男が怒鳴る。
その言葉に、あの子達は攻撃をやめる他に術はなかった。
「ようし・・・。」
男3人は、あの子達に近づくと、何かスプレーをかけた。その途端、あの子達が眠るように倒れた。
「・・・!?・・・何するの・・・!」
「・・・・・・・あぁ!?」
アーボックの尻尾に力が加わった。
ギリギリギリギリギリ!
「ああぁッ!!・・・・ぐっ・・・けほ、・・・うぅ・・!」
予想だにしなかった力が襲った。・・・まだこんなものじゃないだろうな・・・・・。
「・・・鞄を調べろ!」
「へい!」
男一人が私の荷物を漁る。
「悪く思うなよ、今までこうやってポケモン頂いてきたんでな。」
・・・私のフシギダネ、ピカチュウ、ディグダが縄で縛られ、網に入れられている。
・・・・・・・させない・・・!