クチバシティ(3)
ルナ side
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・前回までのあらすじ。
・・・私はマサラタウンから家を飛び出し、フシギダネを始め、色々なポケモンと出会い、仲間が増えていった。
今ののジムバッジは2つ。
道中カスミとともだちになり、現在はクチバシティに滞在中。
・・・そして昨日、なんやかんやでロケット団が事件を起こし、斯く斯くしかじかで私がロケット団を退治した事になり、ちゃっかり一つ星トレーナーの表彰を受けた。
カスミ「グダグダか。」
ルナ「・・・・・・・大丈夫。・・・わかりやすい。・・・・・3ヶ月ぶりの・・・更新。」
カスミ「余計な事言わなくていいの!」
.
.
.
ロケット団と警察との騒動から翌日の朝。
この日は、カスミが楽しみにしていた日。
「さ、行くわよルナ!」
ポケモンセンターの宿泊部屋で、荷物を整えたカスミが、私の手を引いた。
「・・・?・・・・・確か、船のパーティーは夕方から・・・。」
「ポケモン修業の約束したでしょーが!」
「・・・(忘れてた・・・。)」
.
私とカスミは、クチバシティを東に進み、街の郊外に出た。
そこは、草むらが生い茂る広い11番道路で、風がとても気持ちいい・・・。
私とカスミは、ボールからポケモンを出した。
カスミは、スターミーとゴルダックとアズマオウとドククラゲ。
・・・・・・?
「・・・そのドククラゲは?」
「パソコンから引き出したのよ。相当な暴れん坊だから、そろそろしつけとかなきゃ。」
「・・・パソコン?」
「あんた、パソコン使った事ないの?ポケモンを6匹以上捕まえると、自動的にそのポケモンはボックスに送られる様になるのよ。」
「・・・・・?」
「・・はぁ・・ま、追い追い教えたげるわ。」
私は、ボールからフシギダネとピカチュウとディグダ、非常食(カモネギ)に元非常食(ギャラドス)を出した。
「じゃあ、各個人でアップしましょ。1時間後に試合ね。」
「・・・(コク)。」
.
私はフシギダネ達を集め、アップを開始する。
「・・・まず、柔軟から。」
「ダネフシ!」
「ピカピ!」
「ディグ!」
「カモ!」
「ガアアァァァ・・・!」
「・・・ギャラドスは・・・年だから・・無理しないで・・。」
フシギダネ達は、各自で身体をほぐし始めた。腕を伸ばしたり、背筋を伸ばしたり、ジャンプしたり・・・。
「・・・・・・・?」
・・・何か・・・・・視線を感じる。
私はふと振り返る。
「・・・・・・・・何。」
カスミが腕を組みながら、こっちを見ていた。
「見学。」
しれっとカスミは言う。
「・・・・・・カスミもアップさせないと。」
「私達はもう始めたわよ。そこの池で軽く流し(体をほぐす程度に泳ぐ事)してるから。」
「・・・・・・・見学の意味は?」
「敵情視察。」
「・・・・・インチキ。」
「冗談よ。でも、ルナの特訓が気になるのよね。強さの秘訣とかあるんでしょ?」
「・・・・・・・・恥ずかしい・・。」
「(こないだポケモントレーナーを始めた初心者が、こうも短期間で強くなるなんて・・・。本気の私を倒すし、あのロケット団を軽くあしらうし、星をひとつ獲得するし・・・。・・・何かある筈だわ。)」
.
・・・カスミの視線を気にしながら、私は再びポケモン達を集めた。
「・・・それじゃ・・・いつもの。」
「フシ!」
「ピカ!」
「ディグ!」
「カモ!」
「ガアァ!」
「(いつもの・・・?)」
私はフシギダネ達にそう指示し、私は後ろへ下がって後退する。
フシギダネ達は、自ら草むらの中へと入っていった。
そして、円を描く様に陣形をとった。
そして、フシギダネが”あまいかおり”を使った。
・・・・すると。
「「「「「キシャーーーーーー!!」」」」」
フシギダネのあまいかおりに誘われた野生のポケモンが、フシギダネ達に襲いかかった。
オニスズメ、スリープ、コラッタ、ラッタ、ポッポ、ケーシィ、ニョロモ、ナゾノクサ等、多数の野生に囲まれながら、私のポケモンは円の陣形を基本に戦いを行う。
「フシャー!!」
フシギダネは、状態異常攻撃で複数を。
「ピカァーーーチュウーーー!!」
ピカチュウは飛行タイプを主に。
「ディグディグ!」
ディグダは奇抜的に相手を襲い、混乱させる。
「カモ!」
カモネギは前衛で敵を翻弄。
「ガアアアァァァ!!」
ギャラドスは大破役。中央にて敵を駆逐。
戦況が変われば、各々考え方を変えて、バトルの仕方を変える。
.
20分くらい経ち、敵のポケモンがあらかたいなくなる。
フシギダネ達は、息を荒げながら、なんとか立っていた。
・・・・・・・・・・。
ドキュン!!・・・ガンッ!!
「フシィッ!!?」
私はフシギダネに発砲する。
案の定、モンスターボールの弾が命中した。
「・・・・フシギダネ、アウト。」
「ダネェ・・・・。」
・・・・・気を抜いていなければ、私の銃弾はかわせる筈。
・・・集中力を養う為に、私はいつも銃を手に構え、この子達の練習を見守っている。そして、隙あらば、撃つ。
・・・・・・・仲間を撃つのに抵抗があるかといえば・・・・ない。
・・・だって・・・・練習だもの。
・・・・・私だって、オンとオフの切り替えはする。
「・・・・・というわけでフシギダネ、罰ゲーム。」
私は鞄から、赤い液体の入ったペットボトルを取り出した。
それを、プラスチックの皿に少し注いだ。
「・・・・・テレビでやってたから・・・・飲み干して。」
「ダネ!ダネフシ!!」
フシギダネがブンブンしている。
「ピーカー!ピーカー!」
「ディーグー!ディーグー!」
「カーモー!カーモー!」
「・・・ほら、皆が一気コールしてる。」
「・・・ダネェ。」
フシギダネがピカチュウ達を鋭い目つきで一瞥。そして、皿に入った赤い液体を、恐る恐る舐めた。
「(ペロ)・・・・・?・・・ダネ?・・・・・!!!?・・・ダ!!?・・ダネダネ〜〜〜〜〜〜〜!!!?」
辺りをゴロゴロと転がりながら、巡横無尽に暴れ出すフシギダネ。
「・・・・・はい。水。」
私は、別の皿に入れた透明の液体を差し出す。
「ダネ〜〜〜〜!!」
フシギダネは口の中へ、ガバガバと飲み干していく。
「・・・・・薄い酢酸だから、気をつ 「ダーーーーニェーーーー!!?」
フシギダネはピクピクと痙攣する。
「・・・・ピカピ。」
「・・デ・・ディグ・・。」
ピカチュウ達はこの光景を目の当たりにし、恐怖に怯えている。
「・・・・・みんなに言っておく。・・・・・銃弾に当たった時は・・・・・・死ぬとき。」
「ピカァ!!」
「ディグ!!」
「・・・カ・・・カモ。」
「・・・Zz。」
・・・・うん、みんな気合い入った・・・。
「(こ・・これはキツイわねぇ。)」
.
.
そしてその後、再びフシギダネのあまいかおりで、野生のポケモンを呼ぶ。
フシギダネ達は、迎えうつように戦う。
・・・・・基本的に、私は指示をしない。
皆の戦いを観察し、口出しは一切しない。
事前にポケモン達には、地形をうまく利用し、自分自身に出来ることを考え、判断し、咄嗟に行動が出来るようになること。
絶対に勝てない時は逃げる事。もし逃げれない状況の時は、とにかく時間を稼ぐ事。そして必ず最後まで、諦めない事。
それらを教え込んだ上で、実践練習を重ねていく。
・・・・・私としては、色んな相手と戦って、様々な戦い方に慣れて、臨機応変に対応できるようにしておきたい。
・・・野生とのバトルでマンネリしてきたかと思ったらすかさず、私が銃弾で狙撃し、当たったら罰ゲームというルールを設けて・・・・・。
.
20分後、野生のポケモンとのバトルが終わり、みんな地面に倒れ伏す。
私は、鞄から回復薬を取り出し、ひとりずつ治療していった。
.
「・・・・・フシギダネは、小さな相手に執着しすぎてる。・・・貴方のツルは、修業すれば全体攻撃にもなるし、相手の動きを鈍らせる事が貴方の役割・・・何も倒す必要はない。・・・異常状態の粉をうまく・・・使い分けて、ナゾノクサには・・・毒は効かないから注意。・・・・・貴方がウチの司令塔。・・・しっかり敵全体を観察して、味方を・・・フォローしてあげて。」
「ダネ。」
「次、ピカチュウ。・・・複数の敵の前で、大きな技を多用しない。・・・あの後、いくつか反撃されてた筈・・・。・・・焦らなくても大丈夫。ポッポやオニスズメが接近してきたら、落ち着いて・・・合わせるように電気ショック。・・・空中にも地上にも目が行って・・・近づく敵にも目が行ってるから。・・・・・もっとマイペースに。それから・・・影分身を使うときは、電光石火をする寸前に。・・・もっと素早さを活かして、相手を惑わせるイメージで・・・。」
「ピカ!」
「次、カモネギ。・・・・・・・・・・・・・・強すぎ。・・・・次から次へと、敵を薙ぎ倒してた。」
「クワァ!」
「・・・でも、私達の練習、初めてだから、連携が難しかったと思う・・・・。・・・・貴方の間合いは、誘導にも使えるから、・・・・・ディグダと相性がいいかも・・・・。次からは・・・仲間も助けてあげて・・。」
「・・・クワァ・・!」
「ディグダは・・・・ニョロモの水撃を想定しないと・・・・、辺りが水浸しで、行動範囲が狭くなってた。・・・・・冷凍ビームで凍らせれば?」
「ディグ!?」
「・・・ディグダは奇襲担当。・・・貴方のテリトリーの地中では、どんどん有効活用して。・・・・地上にいる時間を減らして。仲間想いなのは知ってる。・・・でも、貴方がやるべき事をやり抜いたら、あの子達の負担も減るから・・・。・・・出来るだけ砂嵐は使わない事。・・・みんなダメージ受けるから・・・。」
「ディグディグ♪」
「ギャラドス・・・・身体は大丈夫?」
「ガア・・・。」
「無理しないように・・・。相手を威嚇してくれるだけでも助けになる。・・・身体が大きいと狙われやすい。・・・・・次からは”吠える”や”こわいかお”を多用してみて。」
「ガア・・・!」
.
.
「ルナ。」
カスミがそばにやってきた。
「・・・・・・何?」
「これ、いつもやってるの?」
「・・・・・(コク)・・・今日は、少し抑えめ・・。」
「・・・・えっとさ、アンタの両親は・・何、プロトレーナー?」
「・・・医者。」
「・・・・トレーナーズスクールでトップだった?」
「・・・・私?・・・・私は、普通の学校を中退・・・。」
「ひとつ言わせてもらうわよ。」
「・・・・・・・?」
「アンタが今やってた特訓は、ゾーンサバイバルって言って、上級トレーナーがやるようなトレーニングなの。指示なしで、ポケモン各自の考えを優先しながら限界まで戦って鍛える。・・・ぶっちゃけ、素人が出来るもんじゃないの。」
「・・・・・ありがと。」
「褒めてない。・・・とにかく、初心者のアンタが、捕まえて間もない子達に少しハード過ぎるのよ。・・・加減してトレーニングさせないと、ポケモンが倒れるわよ。」
「・・・・・・・ごめん。」
「(・・・それにしても、野生のポケモン複数相手に20分。それを2セット。・・・その後ルナは、自分のポケモンにアドバイス。それも、細かい専門知識を交えて、かなり的確に。・・・・・これで初心者ですって?・・・・・なーんかあるわね・・・。)」
.
.
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ディグダ side
修業の休憩の合間に来てみたものの・・・・・。
「(・・・絶望的だ。)」
『keep out!』と書かれた看板に、立入禁止を意味するだろう、鎖が垂れ下がっている。完全な封鎖というヤツだ。
・・・ディグダの穴。
かつては僕の住み処だったのに、目の前のそれは、ただの土の山だった。
「(・・・みんな大丈夫かな・・。)」
僕は穴を掘り、地面に潜って、昔のふるさとに足を踏み入れた。
.
巣穴の中は、完全に埋もれていた。こないだまでは、人間が余裕で通れる広さはあったのに、土砂崩れや浸水、氾濫によって跡形もなく住居が消されていた。
・・・なんだか億劫になってくる。兄ちゃん達や他の皆を置き去りにして、自分だけ助かって・・・。
しばらく掘りつづけると・・・。
「チク!?チクじゃないか!?」
この声は・・・チャカおじさんだ!
「おじさん!?」
「チク!!生きてたんだな!!」
チャカおじさんは、ディグダの穴に住む、僕らの世話役的ポジション。いつも珍しい木の実を貰ったり、外の世界の話を聞いたりしていた。
「えっとさ、僕、今来たばかりだから・・。」
「そうか、うん、・・・何から話せばいいものか・・・。」
「他のみんなは無事なの?」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・おじさん?」
「こっちじゃよ。」
僕はチャカおじさんの後についていった。
.
しばらく掘り進むと、少し湿っぽい、広い空洞に出た。
「ここは?」
「地下水のたまり場じゃよ。」
・・・こんな所、初めて見るんだけど?
「今回の土砂崩れは、地上のトレーナーが、ポケモンに『地震』を何度も指示していたからじゃ。」
「・・・マジで?意図的に?」
「わからん。バトル目的か、ワシらの乱獲目的か知らんが、とにかくその地震によって、地盤が沈み、この空洞が現れた。」
少し青光るこの場所には、突起した岩が天井や壁から出ている。地下水が綺麗に映え渡っている。少し神秘的な感じがした。
僕はおじさんに続く。
「・・・さぁ。チクも供養しなさい。」
へ?供養?
「なんの事?」
「この先じゃ。」
おじさんが僕を先に行くように促す。
そこから先は、少し傾斜が高く、転ばないようにゆっくりと石の坂を登っていった。
「・・・・!!?」
そして、僕は見た。
数えきれない程の、石の墓標を。
「・・・・・これって・・。」
「海水や、地下水の氾濫に巻き込まれた仲間は皆、この場所に固まっておったよ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
不定型な石を、地面に突き刺す様に、バランスも均等間隔も無視した、少し乱雑した感じに、ざっと見て300個位はあるだろうか、墓石として奉られてあった。
「これ、全部おじさんが?」
「うむ。」
「兄ちゃんは!?兄ちゃん達はいたの!?ねぇ!!?」
一番気掛かりな事を真っ先に聞いた。
「・・・・・・・・・。」
おじさんは目を閉じる。
「・・・・・・・嘘だろ・・。」
僕は蒼白の表情に変わる。
「・・・・・・・・わからん。」
「わ、わからない・・・・・って?」
「ワシも、全てのディグダを確認した訳ではない。ただ、この場にいたディグダ達は皆、既に溺れ死んで躯(むくろ)じゃったが・・・。他の場所にも、ディグダの亡きがらが、今でも埋まっておる。」
・・・・こ、これだけの墓の数を目の当たりにして、まだ一部だって・・・?
僕は少し目眩がした。
「・・・あれ?・・・チャカおじさんの他に生き残っている仲間は?」
「・・・ほんの数十匹じゃ。みな、この場所を恐れて、遠くへ行ってしもうた。」
・・・・・・マジで・・?
「・・・えっとさ、その中に兄ちゃん達は・・・・・居たりした?」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
僕は、ガックリとうなだれた・・・・・。
.
・・・僕は、溺れ死んでいった仲間に対し、目を閉じて黙祷した。
.
空洞を出た僕とチャカおじさん。
チャカおじさんは僕に、手伝って欲しいと言ってきた。
この状況で、手伝わないわけにはいかない。生き残った仲間は既にここにはいない。そんな中おじさんは、たった一匹で仲間の死体を一匹残らず見つけ、供養してあげているんだ。
・・・本当ならば、手伝う所なんだけど・・・・・。
「おじさん。悪いけど、時間なんだ。」
「時間?」
「・・・トレーナーを待たせてる。」
こう言えば、誰でも理解出来るだろう。案の定おじさんは、目を見開いた。
「・・・チク・・・・・お前。」
「命を助けられたんだ、僕。」
トキワの森付近で、餓死しかけていた所を、助けてくれたルナという少女。
僕はその人についていかなくてはならない。一度無くした命。今はルナの力にならなくてはならない。
それが、恩義ってヤツだ。
「たわけ!チク!お前は、死んだ仲間はどうでもいいというのか!?」
チャカおじさんが激を発した。そりゃそうだろう。僕はこの故郷で育った。ここの仲間達には本当によくして貰った。けど、いざ野生からトレーナーのポケモンに成り下がれば、あとは知らん顔だというのかと、例えるのと同じだし。
「・・・・・おじさんが大変なのは解ってる。・・・解ってるけど。」
「やかましい!そんなに人間の温情が好きなら、ずっと人間の言いなりになれ!野性の恥さらしめ!」
「そんなんじゃないやい!!」
「じゃあ何だというんだ!?」
「兄ちゃんがいないじゃんか!!!」
「・・・・・・・・。」
気づけば、頬に涙が伝っていた。
「僕は・・・ゾウ兄ちゃんと・・カイ兄ちゃんが・・・・心配で心配で・・・生きていて欲しくて・・・会いたくて・・・その想いだけで僕は生きてきたんだ!」
でも、此処には居なかった。最悪、この土の中で息絶えているかもしれないんだ。
「おじさん、兄ちゃん達の事聞いたら『わからない』って言ったじゃん!!じゃあ探すさ!!きっと兄ちゃん達、どこかで生きてるもんね!」
さっき見た墓標は、パッと見で300以上はあった。あれでも『一部』なんだ。
「・・・・・もしさ。僕がここを手伝って・・・・・・遺体回収の時に・・・・・・・兄ちゃん達が出てきたら・・・・・・・きっと僕・・・・・自殺するよ・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
チャカおじさんは、眉間をよせたまま、少し俯いた。
.
「・・・ありがとね、チャカおじさん。・・・・・ムリして・・・『嘘』ついてくれて。」
「・・・・・・・?」
「・・・僕、最初から気付いてたからさ、あの墓の数見た瞬間。」
「チク?」
「・・・・優しいね・・・・・・チャカおじさん・・・・グス・・。」
「は?」
「・・・うん・・・チャカおじさんは『わからない』って僕に言ってくれた。・・・・・だからさ、僕その言葉を信じるよ。」
「えっと・・・・・チク?」
「うん、そう、きっと生きてる。・・・・・不思議だ。そう考えただけで、生きる活力が溢れてきた。」
「チク。」
「え?」
「お前、なーんか勘違いしてないか?」
「何が?」
「お前の兄貴達、多分生きてる。」
「・・・・・いいよ。気遣かってくれなくても。」
「近隣の目撃情報によるとな、『10万ボルト』を発するディグダと、『火炎放射』を吹くディグダが現れたと 「でええええいいいいいあああああ!!!?ああああうううわわわあああ!!!?うぎゃああうおうおいえういあええ!!!?」
.
.
.
「そ、その話!ホントなんだね!?」
「ま、間違いないじゃろう。」
「早く言ってよ!!その情報!!」
僕と兄ちゃん達は、元々はダグトリオ。
普段はバラバラに行動しているだけで、バトルの時になると合体するんだ。
その時に僕等が使えるのが、『トライアタック』。
一番上のゾウ兄ちゃんが、『火炎放射』。
二番目のカイ兄ちゃんが、『10万V』。
そして、一番下の僕が、『冷凍ビーム』。
「どうして早く言ってくれなかったのさ!」
「・・・どうせ言えばお前、手伝わんじゃろうて。」
「あったり前じゃあああ!!やったぜえええ!兄ちゃん達は生きてたああああ!!」
興奮と喜びのあまり、辺りに冷凍ビームを撒き散らした。
「どわあああ!?よ、よさんか!!」
「いざ!再会(ツァイツェン)!」
僕は、一目散にディグダの穴(旧)を脱出した。
「・・・・・・・・・バッカもんが。」
チャカおじさんは、呆れたように溜息をつきながらも、少し嬉しそうに、僕を見送ってくれた。
.
.
地表に出た!
さて、行き先は・・・・!
.
.
ゼニガメ side
.
「・・・・・・・・。」
.
・・・・・殺気!
俺はその場から、ジャンプして地面から離れた!
ドゴオオォォ!!
「ゼニガメーー!おはよーさん!」
・・・回避しなければ、『穴を掘る』攻撃の巻き添えになっていただろう、そこにはディグダがいた。
俺はアクアジェットを繰り出した!
ザバアアアァァ!!
「どんな挨拶だぁ!」
「ぎゃああああぁぁ!!?」
効果は抜群だ!
.
此処はクチバのとある公園。
昨日まで、事件の捜査で今日は取り調べや現場調査。後は警察や人間に任せて俺はオフを満喫していた所を、このモグラが邪魔してきた。
「あれ、今日は何、サボリ?」
「休みだボケ!」
「ゼニガメ、ケガしたって聞いたからさ。」
「あんなの屁でもねぇよ。少し手が痺れるがな。・・・・・てめぇらのフシギダネよかマシだ、ソッチの容態は?」
「だいじょーぶ。ポケモンセンター行ったら、結構回復したから。」
「・・・・・すまなかったな。」
「ありゃ、らしくもない。」
「るせぇ。だが現実問題、てめぇらの助けがなけりゃ、ロケット団を捕らえる事はおろか、盗まれたポケモンも取り返せなかった。・・・警察が民間の手を借りたのはいけねぇ。俺はまだまだ弱ぇ。もっと訓練を追加して強くならなきゃならねぇ。」
俺はため息をついた。
「気にしなくてもいいよ。困った時は助け合うのが当たり前。ま、結果オーライって奴だね♪」
目の前のディグダは、ニコニコと笑みを零す。その表情に少し救われながらも、俺は今の仕事に対する意識を強めるのだった。
.
「ん?俺に用があるんじゃねぇのか?」
「あ、そうそう。ディグダの穴の事でさ。」
「・・・・そうか、てめぇ、アソコの出身だったか。」
俺は、少し顔を強張らせた。
あの場所は、確か約1ヶ月前、ロケット団によるディグダの大量乱獲が目的で、ポケモンに『地震』を連発させた。その影響でディグダの穴の地盤が変動。地下水脈や海水の氾濫に土砂崩れ。やつらの住み処は瞬く間に押し潰されていった。
幸い、人間に被害はなかったが、ディグダの被害は著しく甚大だった。ロケット団は、穴から逃げてきたディグダを片っ端から捕まえ、穴に残されたディグダ達は崩壊する岩山に埋もれ、捜索困難となってしまっている。
当然そのロケット団は現在、指名手配中だ。
「よく生きてたな、てめぇ。」
「まーね、で、捜索願いなんだけどさ。」
「捜索?・・・いっちゃ難だが、あの事故で巻き添えになったディグダは数知れねぇ上、ロケット団に捕まったディグダもいるんだぜ?」
「いやいや、『10万ボルト』と『火炎放射』を使うディグダの目撃情報があるって聞いてさ、けーさつ官なら知ってるかと思って。」
「・・!(・・・・あぁ、そういう繋がりだったのか。コイツは確か、『冷凍ビーム』の使い手だったな。するとアイツらは・・・・兄弟か・・・。)」
俺はスッキリしたように回顧する。
「ひょっとして、知ってる!?」
ディグダは、俺の顔色を伺い、希望に満ちた声で問い詰めた。
俺は目の前のディグダを見据え、少し渋るように話はじめる。
「・・・・事故の時、俺も立ち会ってた。」
「え!そうなの!?」
「ああ、ロケット団が多人数で道塞いで、ディグダの穴の前にたむろしていた。現行犯で乱獲していた。結局数人しか取り押さえられなかったんだかな・・。・・・その時に、ディグダの穴の入口から、『火炎放射』を撒き散らしながら、果敢にロケット団から住み処を護ろうとしていたディグダがいた。」
「(・・・・・ゾウ兄ちゃんだ、・・・・兄ちゃん、逃げずに戦ってくれてたんだ・・・・。)」
「ソイツは長い間入口で粘ってた。入口に近づくロケット団を火炎放射で何度も追い払った。・・・だが、結局モンスターボールに捕まっちまったんだ。」
「・・・・・そのロケット団は何処?」
「知ってたら今頃取り押さえてるに決まってんだろ。」
「それもそーか・・・、んで、『10万ボルト』使うディグダは?」
「・・・・・・・2週間前だったな。今のてめぇみたいに尋ねてきた。『火炎放射』に『冷凍ビーム』使うディグダ知らねぇかってな。」
「・・・火炎放射に冷凍ビームって・・・それって、カイ兄ちゃん!?」
「ああ、そんな名前だったぜ。そいつ、事故に巻き込まれてかなり衰弱してたが、ロケット団を潰すだの愚痴零して、どっか行ってそれっきりだな。」
「・・・・そっか・・。」
目の前のディグダは、真剣な顔を繕うとするも、ニヤニヤした気持ちが抑えられずにいる。
「・・・兄ちゃん達は・・・生きてた・・・!」
ディグダはニコっと笑うと、後腐れないような表情で、背伸びをした。
「ありがとね、ゼニガメ。んじゃ、僕戻るわ。」
「もういいのか?」
「もういい!ありがとねーー!」
俺は、後ろ姿のディグダを見送った・・・。
.
「(・・・・・けっ、どいつもこいつも。)」
俺は、公園に照り付ける日差しにウトウトしながら、欠伸をした。
.
.
.
ルナ side
「・・・・・・それじゃ・・・・・練習・・再開・・。」
「フシ!」
「ピカピ!」
「ディグ♪」
「カモ。」
「ガァァ・・・!」
フシギダネ、ピカチュウ、ディグダ、非常食(カモネギ)、元非常食(ギャラドス)は休憩を終わらせ、練習を再開する。
・・・・?
・・・・・・ディグダ・・・なんか・・・機嫌がいい・・?
「ディグディグ♪」
.
.
.
「じゃあ、3on3で勝負よ!」
「・・・(コク)。」
カスミと試合を行う。
カスミはドククラゲ、私はカモネギを繰り出した。
「バリアーよ!」
ドククラゲは、バリアーを張って物理に強くなる。
「・・・剣の舞。」
「クワッ!」
・・・カモネギは軽快な舞踊で、攻撃力を上げる。
「ガンガンいかせてもらうわ!ヘドロ爆弾!」
「・・・・・守る。」
カモネギは守りの態勢に入る。
ドククラゲのヘドロ爆弾!
ザンッッッ!!
カモネギはドククラゲのヘドロ爆弾をネギで薙ぎ払う。
「波乗り!」
「・・・・・不意打ち。」
ヒュッ・・・・ドゴォ!!
カモネギの不意打ちがドククラゲの胴体に決まる。
ザッパーーーーーン!!!
ドククラゲの波乗りを至近距離で受けたカモネギ。
「ク・・・クワッ・・・!」
遠くに流されたカモネギが、フラフラと戻ってきた。
「(体力的には、私のドククラゲが競り勝ってる、このまま一気にいくわよ!)」
「・・・・・・・・・・カモネギ。」
「・・クワ?」
「・・・・・貴方のやり方に・・たくしてもいい?」
「・・・!・・・・クワ!」
・・カモネギが頷く。
すると、ネギを構え、ドククラゲと正面で対峙する。ピクリとも動かないその姿が、サムライみたいだった。
「ドククラゲ!冷凍ビーム!」
ドククラゲの冷凍ビームがカモネギに迫る!
ズガアアアアン!!
冷気を纏った爆風が巻き上がる。
「クワ。」
ザンッッッ!!
「ギョロロロロロ!!!?」
・・・いつの間にか、カモネギはドククラゲに攻撃していた。
「速い!!?」
カスミが驚く。
ドククラゲは、ネギの攻撃を受けて苦しそうにしていた。
「(効果抜群ですって!?あの技・・・・まさかあのカモネギ、”サイコカッター”を!?)」
カモネギは再びドククラゲに抜刀しようと駆け寄る。
「く、ドククラゲ!波乗りよ!」
バシィィイン!!
カモネギはドククラゲの攻撃よりも速く、ドククラゲの胴体にネギで討ち払った。
「また不意打ち!?」
ドククラゲの波乗り!
ザッパーーーーーン!
カモネギはひるまず、攻撃を続ける。
「(く・・・、相手の体力が急に上回った!?・・・こうなったら少しだけでも相手にダメージを・・・・・!)」
カスミはドククラゲに激を入れた!
「”みずびたし”よ!」
バッシャアアアアン!
「カモ!?」
カモネギの不意打ちが失敗した。
カモネギは水タイプになった。
「・・・・ってえのは、二流の考え方なのよ!!」
ドククラゲのギガドレイン!!
効果は抜群だ!
・・・カモネギは倒れた!
「よっし!よくやったわ!ドククラゲ!」
「ギョロロロ・・・!」
「・・・・・おつかれ。」
私はカモネギをボールに戻した。
私はディグダを繰り出した。
「ディグ!!」
「お次はディグダね。互いに相性は良くないけど、素早さじゃそっちが速いから、こっちのブが悪いわ。ドククラゲ、戻って!」
カスミはドククラゲをボールに戻す。
「・・・・・交代は・・チャレンジャーのみ・・・。」
「ジム戦じゃないからいいでしょ!」
カスミはスターミーを繰り出した。
「ベストメンバーよ!この子はジム戦の時のスターミーじゃないからね!」
「・・・・・・・またパソコン?」
「・・・そ、そうだけど、そう卑屈に言わなくてもいいでしょ!?」
「・・・・・辻斬り。」
「ハイドロポンプよ!」
ズバァァアン・・・!!
素早さで勝ってるディグダの辻斬りが、スターミーに命中した。
効果は抜群だ!
「ジュワ!」
スターミーのハイドロポンプ!
バッシャアアアアン!!
・・・・・ディグダは倒れた。
「順調順調!」
カスミがスターミーとハイタッチした。
・・・私はディグダをボールに戻した。
「・・・・・手加減して。」
「あーら、練習で手を抜いたら、修業にならないわよ?」
・・・カスミは既に勝ったつもりなのか、凄く怠慢になってる。
私は、後ろを振り向き、フシギダネ達に尋ねた。
「・・・・・次、行きたい人。」
「ダネ!」
「ピカアァ!」
「・・・・Zz。」
フシギダネとピカチュウが素早く挙手し、ギャラドスは寝ている。
「・・・・じゃあ、一番早かったピカチュウで。」
私はピカチュウを繰り出した。
「スターミー!サイコキネシス!」
「・・・充電。」
ピカチュウは充電を開始した。
ピカチュウの特防が上がる。
スターミーのサイコキネシス!
ウィイイイ・・・・・ン・・!!!
ピカチュウは苦しそうに体を震わせる。
「充電の効果をうまく利用したわね。」
カスミが評価する。
「・・・10万ボルト。」
「ピカ!ピィーーーカァーーー・・・ヂュウウウウーーーーーー!!!!」
バリバリバリバリバリバリ・・・・!!
電撃が止み、スターミーの姿を見てみる。
・・・・・無傷だった。
「守る成功!」
10万ボルトを受ける直前に、守るでガードしていた。
「・・・・・影分身。」
ピカチュウは影分身で、回避率を上げた。
「スピードスターよ!!」
スターミーのスピードスター!!
ドガガガガガガ・・・・・!!
「ピ・・・・・カ・・・・。」
・・・・ピカチュウは倒れた。
「やったーーー!やっとルナに勝ったーーー!!」
カスミはスターミーと抱き合って喜んでいる。
私はピカチュウをボールに戻した。
「・・・大人気ない。」
「何度でもいいなさい!アーッハハハ!」
・・・・・そこまで私に勝ちたかった?
カスミはホントに嬉しそうに笑っていた。
・・・・・・・・・。
後ろを向いてスターミーとじゃれているカスミに、私は近づいた。
トントン。
私はカスミの肩を叩く。
「ん?どうかし (プニュ・・・)
振り向いたカスミの頬を、私は人差し指でぶっすりと刺した。
「・・・・・・・・。」
茫然としたカスミをよそに、私は指を離し、背中を向けてポケモンセンターへと歩いていった。
「・・・・て・・・・低レベルな仕返ししてんじゃないわよ!!!」
後ろでカスミが何か大声で叫んだ。
「(・・・・お腹すいた。)」
ルナ side out