番外!踊るポケ捜査線!〜クチバの波止場の浦島作戦〜(7)Last
ゼニガメ side
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トランシーバーを繋げたい所たが・・・さすがに壊れたか。あんだけ動きゃな。
ケイトやガーディは何処にいったのか。
あの4人組は捕まったのか。
色々と安否は気になるが、探さねぇ事には始まらねぇ。
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工場の路地を走っていると、向かいからウチの警官とポケモン(ジグザクマ)が走ってきた。
あいつは特捜部だ、あんなに慌てて何かあったのか?
「ゼニガメ!無事か!」
ジグザクマが俺に安否を問いかける。
「おう、ジグザクマ!奴ら見つかったか!?」
「いや、それよりマズイ事になった!」
「ああ”?」
「モンスターボールが開かないんだ!これ以上応援がだせない!」
「モンスターボールが開かねぇだぁ!?」
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・・・どういう事だ?あいつらの仕業だとでもいいてぇのか?
「俺は本部に戻って報告に行く!」
ジグザクマは俺を通り過ぎて走っていく。
「おいジグザクマー!ケイト見なかったかー!?」
「一番奥の工場の中だぁ!」
去り際に答えたジグザクマ。
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一番奥っつったら・・・ここか。
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でっかいシェルターが3つぐらい並んだ、横長の工場。
右側にはフェンス。奥と左側は海。
とりあえず入るか。
夕焼けの光が遮光され、ひんやりとした空気と、ホコリくさい空気が混じったような空間に足を踏み入れる。
だいぶ暗いな、見渡す限りひらけた作業場だな、ここで船を造ってたのか?
辺りを探索しながら、ケイトを探す。
ヒタヒタと、俺の足跡の音が反響する。
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・・・扉が開いてる。
作業場の奥の方で見つけたドア。俺は、ゆっくりとドアから顔を覗かせる。
・・・・・いねぇな。中は・・・通路になってんのか?
足音をなるべく立てないように、俺は中に入り、奥へと進む。
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しばらく進むと、左右にひとつずつドアがある。奥の方にも、左右にドアが、計4つか。
とりあえず、右手前の半開きのドアを開けて中を見る。
・・・製図室か?
・・・・・・散乱した紙が落ちてやがる・・・・・!?・・・・足跡、発ッッ見!
長年被った床のホコリを除けるように、靴の跡がびっしりとついている。
・・・・ガーディ達もこの部屋にいたようだな、あいつらの足跡もあらぁ。
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次は左の部屋。・・・ここは、用具室か。荒らされた様子はないな。
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奥へと進み左のドアをゆっくりと開ける。
ガチャガチャ・・。
・・・鍵がかかってら。
・・・・・内側から鍵をかけられたか、元から開かないのか。
前者はないな、ガーディ達が先に来てるんだ。見過ごしたという事はないだろう。
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右側にあるドアに手をかけた。
バチッ!!
「な!?」
・・・・・・静電気か?
なんでここだけ?
俺は部屋に入った。
ここは・・・仮眠室か。
二段ベッドが二台。きったねぇシーツがしいてやがる。
ホントにきたねぇな・・・あちこち黒ずんでやがるぜ。
・・・まるで、焼焦げたような。
・・・・・俺は鼻をかいだ。
・・!?・・焦げ臭ぇ!しかも真新しいぞ!
俺はすかさず辺りを調べた。部屋の隅にベッドの隙間、そして、ベッドの下を覗いた。
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・・・ありえねぇ。どうなってやがる。
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「ガーディ!!?しっかりしやがれ!」
ケイトのガーディだ。戦闘不能になって、ボロ雑巾のようにベッドの下に転がっていた。
「おい!おいゴラァ!!」
何度も気付けのビンタでガーディを起こそうとした。
「・・・・・・・う、ぐ・・。」
ガーディが目を覚ます。
「ガーディ!どうしたってんだ!」
「・・・・ゼ、ゼニガメ・・・まずい・・・やつら・・・、妨害電波を・・・・ケイトの・・手持ちがだせねぇ・・・、ケ、ケイトが・・・。」
ガーディは薄らぐ意識の中で俺に必死に声を出す。
「は!?妨害?電波?ケイトはいま何処だ!?」
俺は聞き返したが、ガーディは気絶したようだ。
「・・・・・クソッ!!」
・・・なんてこった。
ガーディの体のダメージを見るからに、電気タイプの攻撃を受けたようだな。
この部屋が焦げくせぇのも、ドアノブに静電気があった事から推測できる。
気になるのが、コイツの言ってた”妨害電波”という単語。
そして、ケイトの手持ちのポケモンが出せねぇだぁ!?確かジグザクマの奴もんな事言ってたな・・・。
敵はシロヤマ組にロケット団。
モンスターボールの機能を奪う電波を発信したとでもいいてえのか?
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俺はガーディにオレンの実を食わせて、ベッドに寝かせ、部屋を出た。
通路の奥には階段がある。
・・・ガーディを連れて帰りたいのは山々だが、ケイトが心配だ。
俺は急いで奥にある階段を駆け上がる。
ついさっき部隊に戻って、回復と支援物品の補充をしたから、今持ってるモンといったら、煙玉にオレンの実ぐれぇだ。
・・・トランシーバーも換えときゃよかったぜ。
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上の階に上がり、薄暗い廊下を進んでいく。
・・・一体どこにいやがるんだ!
だんだんと暗くなって視界がわからねぇ、イライラしてきやがる。
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・・・その時。
バチィ!
乾いた音と光が、廊下の奥から漏れた。
・・・・!・・・・あの部屋だな!!
俺は躊躇いなく走り出し、正体不明の光と音がしたであろう、つきあたりの部屋の前にさしかかる。
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目の前にドアがあるが関係ねぇ!
水鉄砲でドアをぶち破る。
「「うわ!」」
「何だ!?また警察か!?」
・・・ビンゴだ。
俺は部屋に突入し、即座に奴らを目で捕らえる。
黒スーツが4人。
倒れてる奴が一人。
・・・?・・・一体誰だ?
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「・・・・・・・ぅぐ・・。」
ケイト!!?
まさか、やられちまったのか!
「ビリリダマ!スパークだ!」
俺の足元からビリリダマが二体、電気を帯びて突っ込む。暗くて気づくのが遅れた!
バチバチバチバチ!!
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俺は咄嗟に守るを展開した。
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「(ガーディもケイトも、こいつらビリリダマにやられたっつーのか!?・・・・・・ケイトは何とか生きてる、この部屋は出入口がひとつだけ、敵さんは皆一カ所に固まってる。)」
・・・どうするか?
思考が渦巻き、冷静な判断ができねぇ。
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『理由や義理、考えるのは二の次。
一番大切なのは、本人がその一瞬何を感じ取れたかで御座る。』
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・・・けっ、こんな時にカモが言ったこと思い出しやがって・・・・。
俺は甲羅から煙玉を取り出し、間髪置かずに投げつけた!
「おらぁ!!玉手箱だぁぁああ!!」
ボンッッッ!!
辺りは白い煙に覆われた。
「なっ?」
「くっそ!」
「どこへ行った?」
「見えねぇ!」
・・・俺もそうだが、あいつらも俺の突入にビビって頭がついていけてねぇ。
ならば強攻策だ!!
俺はこの隙にケイトを助けて逃げようと考えた。
俺はケイトのそばに寄るが、ケイトは既に立ち上がっていた。この擾乱(じょうらん)に紛れて、この場を撤退するケイト。
「ゼニガメ?来てくれたのね!ひとまず撤退するわ!」
「応!大丈夫そうだな!」
さっきまで倒れていたから、一瞬ド肝抜かれたが、いらねぇ心配だったな。
俺とケイトで部屋から逃げようとした。
だが、部屋の出入口にはビリリダマ二体が行方を塞いでいた。
「っち!」
俺は水鉄砲を繰り出す。
ガキンッ!
・・・!・・・こいつらも”守る”を使えるのか!?ちっとも堪えてねぇ!
「動くな!」
ガチャ
ガチャ
ガチャン
ガチャン!
敵が、俺達をここから出さんと、ピストルを構える。
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「(・・・・く・・・ケイト。)」
「(・・・刺激しない方がいいわ。・・・コイツら、結構やばい。)」
俺とケイトは強行を諦める他なかった。場所も狭い。相手は多人数。ビリリダマもいる。
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ゼニガメ side out
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「・・・・ゼニガメをボールにしまえ。」
男がケイトに言う。
「・・・今、この子のボールはないわ。あなた達が盗んだんですものね。」
ケイトは答える。
ゼニガメのモンスターボールは、以前男達が、ケイトのポケモンを数匹強奪した。そのうちゼニガメも入っていたのだが、たまたまゼニガメはボールの外にいて、難を逃れた。
ケイトも、目の前の男達の被害にあった一人である。
「・・・ちっ、とりあえず隅へ行け。」
もうひとりの男が、ケイトとゼニガメを部屋の隅に追いやる。
そして、それにくっつくように囲うビリリダマ。
「変な真似してみやがれ。自爆させるからな。」
ピストルを向けながら男が脅す。
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黒スーツの男達は、互いにこれからどうするか雑談していた。
「・・・くっそ。どこで嗅ぎ付けやがったんだコイツら。」
「済んだ事だ、取り乱すな。あんたら、ブツは確認できたか。」
「確認はしたけどよ、条件下のポケモン30匹。・・・ここから撒かなきゃ意味ねぇだろうが。」
「・・・・・・・。」
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ゼニガメとケイトは、黒スーツの男に気づかれないよう、情報をかわす。
ケイトはボールの中に入れてあるダブランを中継して、ゼニガメと会話する。
「ゼニゼニ、ゼニガ?(ガーディが下で倒れてたぞ、何があった?)」
「(通訳中)・・・・・下の部屋で奴らを見つけたのよ。・・・・・でも、奴らが変な機械を出したかと思えば、私のモンスターボールが一切開かなくなって、・・・無線機も効かないから連絡もとれなかった。不甲斐なくビリリダマにやられたわ・・・。」
「ゼニガ、ゼニ。(外にいる奴らもボールが開かないって言ってたぞ、奴らの機械をどうにかできねぇのか?)」
「(通訳中)・・・・・一体なんなのあの機械。・・・ロケット団が開発したのかしら?すごく広範囲な妨害電波発信機よ。」
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部屋全体にには重苦しい、緊迫した沈黙が支配する。
黒スーツの男が言った。
「女、無線機を貸せ。」
「・・・・・・・?」
ケイトは敵の思惑を理解できず、仕方なく無線機を渡す。
男が送信ボタンを押した。
「警察共、こちらには女警官にゼニガメを捕らえた。少しでも抵抗してみろ、すぐにぶっ殺してやるからな。それが嫌なら大人しくしてろ。」
男が電源を落とす。
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「あなた達、既に周りは警察が何重も包囲してるわ。今さら人質をとっても時間が勿体ないだけよ。」
ケイトがいう。確かに、ゼニガメやケイトが捕まろうが、こちらの優位には変わらない。
「関係ない。・・・お前、エスパータイプは持ってるか?」
「・・・?・・・いたら何なの?」
「よこせ、死にたくなければな。」
ケイトの頭にピストルが突き付けられた。
「(・・・!・・・そうか、奴ら、エスパータイプのポケモンでテレポートするつもりね!)」
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ケイトはシラを切り、首を縦にふらないようにする。
「持っていないわ。」
内心、緊張を隠せないケイト。
「・・・ビリリダマ、ゼニガメに電撃波だ。」
バチィ!バチバチバチ!
「ゼエエニィーーーーーー!?」
ゼニガメに電流が走り、倒れ伏す。
「ゼニガメ!?」
「エスパータイプを持っているか?」
ケイトは理不尽な問答に怒りを覚える。持ってても持っていなくても係わらず、躊躇いなくゼニガメを痛め付ける。
「・・・持っていないわ。だから意味ない脅迫はよして。」
「・・・・・・ビリリダマ、スパーク。」
バリバリバリバリバリバリ・・・!!
「ゼニガァァアアアアアアア!!!」
弱点の技をモロに浴びせられ、目を見開き身を強張らせるゼニガメ。
「!?・・・や、やめてえええぇ!!」
ケイトが叫ぶ。
電撃がおさまる。
ゼニガメが力尽きて倒れた。
「・・・出せ。」
「・・・・・・くっ。(ゼニガメ・・・ごめんなさい・・・。)」
ケイトは、モンスターボールを投げて渡す。
男が片手で受け取る。
ケイトは疑問に思った。
奴らの持っているモンスターボールは自由に開くかもしれない。けど、現在、奴らの発する電波のせいで、私達のモンスターボールは開かないはず。
奴らはエスパータイプは持っていない。
奴らが私のダブランを出す瞬間がチャンス・・・!
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ケイトは身をかがめる。
「よし、早速出すぞ。おい、一旦スイッチを切れ。」
「おう。」
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カチ、・・・ヒュ・・・ウ・・・。
黒スーツの男がケイトのダブランを出した。
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と、同時の出来事だった。
ケイトが、奴らが妨害電波発信機の電源を切る瞬間に、ボールを放った。
「サイドン!ガルーラ!ハピナス!出てきて!」
ケイトのベルトについたボールからポケモンを出す。
「ガアアア!」
「ガルルル!」
「ハピーー!」
ケイトの考えは的中し、一気に形勢を逆転する。
「な!?」
「く、マズイ!」
「ハピナス!ゼニガメに卵産み!」
ハピナスはゼニガメの体力を回復させる。
「ス、スイッチをつけろ!」
「くそ、まだポケモンを持ってたのか!」
黒スーツの男が再び機械を起動させる。
「ガルーラ!泥棒!」
ガルーラの泥棒で、男から妨害電波を発する機械を奪う。
「な!?」
「壊して!」
バキィ!!・・・プシューー・・・。
妨害装置を破壊し、モンスターボールの機能を回復させる。
「て、てめぇこのアマ!」
「撃ち殺せ!」
男達がケイトに向けて発砲する。
「ダブラン!トリックルーム!」
「フーーー!」
ブォン・・・!
突如、部屋の空間が一瞬歪む。後に銃声が響き渡る。
バン!バン!バン!バン!
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しかし、目の前には不可解な出来事が起こる。放たれた銃弾が、まるで綿毛が飛ぶようにフワフワと、空気中を泳ぐ。あまりの遅さに、男達はたじろぎ驚いている。
「何だと!?」
「何!?」
「はあああぁ!?」
「た、弾が遅ぇ!?」
トリックルームとは、互いの素早さの高低を逆転させる技。目にも追えない銃弾を放っても、肉眼で追えるようになるのが、この技の真髄である。
ケイト達は弾丸をかわす。
「サイドン!破壊光線!」
サイドンが口内から爆熱を男達に放った。
ガキィィン・・!!!
しかし、ビリリダマによりガードされてしまう。
「調子に乗りやがって!ビリリダマ!自爆だ!」
ビリリダマが光に包まれる。
「・・・!!・・・危ない!みんな、逃げるわよ!」
ケイトがゼニガメを担ぎ、ガルーラ達と一緒に部屋から飛び出るように逃げる。
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カッ・・・・・、ドゴーーーーーン・・・・・!!!
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砂煙、瓦礫の破片が爆風で飛び散る。
ケイト達は廊下で伏せて爆風に耐える。
・・・ビリリダマの爆発がおさまり、ケイトは態勢を整えて、すぐさま部屋に戻る。
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しかし、そこには誰もいなかった。
かわりに、壁には大きな穴が空いていた。
ビリリダマの爆発で壁が崩壊したようだ。ここから男達が逃げ出したのだろう。
ケイトは、無線機の送信スイッチを押す。
「全体につぐ!こちらケイト!現在地奥の工場!爆発と共に4人組が外に逃走!私とゼニガメは無事です!直ちに包囲網を再度展開して!」
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ケイト達も奴らを追いかけようと意気込むが、ケイトは誰かいない事に気づき、顔色が蒼白と化した。
「・・・・ダブラン?・・・・ダブランは何処に!?・・・・まさか・・・奴らに捕まったの!?
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工場の外、ポートの敷地内で待機していた警察は、ケイトからの伝達を聞いていた。
『・・・・・人組が外に逃走!私とゼニガメは無事です!直ちに包囲網を再度展開して!』
ケイト部長の安否が解り、警察の人からは安堵の息が漏れる。
同時に、奥にある工場の包囲を開始した。
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数分して、4人組はすぐに発見される。
工場の隅の広場。逃げ道はなく、背後にはただ広い海が広がる。
すでに日が沈み、薄暗い為に海と空の色が同調している。
「ロケット団!及びシロヤマ組員!もう逃げ場はない!大人しく投降しろ!」
特攻隊に囲まれ、海を背にした4人組。事件は集結を迎える。
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・・・誰もがそう思っていた。
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「くくく、誰が投降するだと?」
黒スーツの男がマンタインを繰り出した。
「波乗りだ!」
マンタインを海に出し、男達4人はマンタインの背に飛び乗った。
「し、しまった!」
マンタインは、ポートの波打際のブロックを後に、どんどん距離が離れていく。
「コリンク!パチリス!10万ボルト用意!」
迎撃専門の部隊のポケモンが先頭に立つ。
「止めたほうがいいぜ!俺達を攻撃してみろ、袋の中のモンスターボールは海の底だぜ!」
俺達は言い聞かせた。
「くっ!」
そう、犯人達にとって盗んだポケモンは人質であり、商売の利益でもある。
しかし警察側にとっては、盗まれたポケモンは、被害にあったトレーナー達の大切なポケモンであり、安々と傷物にはできない。
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そこへ、ケイトが到着した。
「はぁ、はぁ、ダブラーーン!!サイコキネシスよーー!!」
捕われたダブランに、サイコキネシスで奴らの動きを封じようと考えたケイトだった。
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「ああコイツのことか!暴れるもんだから戦闘不能にしといたぜ!」
ぐったりしたダブランを掴み掲げる男。
「ダブラン!!?」
ケイトが叫ぶ。
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「おい、よかったのか?テレポート要員じゃなかったのかよ?」
「なんだ知らないのか?秘伝技や便利技は、気絶させても効果を発揮するんだよ。ま、そんなことしねーでも、・・・・・くくく、見ろよ、クチバ警察のマヌケ面を。」
だんだんと、クチバの海の闇に逃げていく犯人達。
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「ケイト部長!発砲許可を!」
特攻隊がピストルを構えた。
「ダメよ!あのマンタインも、盗まれたポケモンなのよ!傷付けるわけにはいかない!」
そう、今回4人組が妨害するために出してきたポケモンは、殆ど巷で盗んだポケモンばかり。よって犯人達は使い捨てに出来る為に勝手がよかった。(メタモンやエレブー達は除くが。)
「な、ならどうするんですか!?」
「・・・・・ッ!」
唇を噛み締めるケイト。
意を決してマンタインを巻き添えにして、彼等を捕まえる事が警察として正しい事なのか?
しかし、思考する内に犯人達は、闇でかすれて見えにくくなっていく。
「ケイト部長!」
「・・・!(ど、どうすれば!)」
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ドギュン!
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闇夜に、銃声が響き渡る。
その音は、警察側からの方からした。
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「な!?だ、誰です!!発砲許可はとっていませんよ!!」
ケイトは激怒して、辺りを見回した。
しかし、ピストルを構えている特攻隊は、皆首を傾げる。
「い、いえ、我々ではありません。」
「撃ってないですよ。」
「右に同じです。」
特攻隊は発砲していないという。ケイトは、再度見回す。特攻隊、特捜部、警戒員、少女、先行部隊等。
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「(・・・・・・・・少女!?)」
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ケイトは、警察の隊に紛れて、先頭に立ち、波打際から4人組の乗るマンタインへ向けて、ライフルを向けて銃弾を放った少女を一瞥できた。
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「ル!ル、ルルルルナさん!?何故ここに!?その銃はなんですか!?は、発砲はダメって!っていうか、なんで民間の貴方が!?じ、銃刀法違反ですよ!!」
パニクるケイト部長。それもそうだろう、テントで待機をしてもらっていたルナが、警察の先頭に立って、4人組を銃で狙撃していた。
「・・・・・・・・・・・・ノリです。」
「何が!!?」
そこらじゅうにいる警察官は皆、同じ事を叫んだ。
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一方、マンタインで逃走していた犯人一行。
突然の銃声に萎縮する4人。
「な!」
「マジか!?」
「伏せろ!」
「危ねぇ!」
警察のいるポートからは50mぐらい。
被弾を恐れた男達だったが。
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バチャン・・・!
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掠る事なく波に飲まれて消えていった。
「お、おどかしやがって。」
「ふう、下手くそが。」
男達は安堵する。
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警察側は、ルナの放った銃弾が、犯人やマンタインに当たらなかった事に冷や汗をかいた。
やがて落ち着いたケイトがルナに近づく。
「ルナさん!どうして来たんですか!どうして銃なんて!」
ケイトがルナの銃を見る。
「あ・・・あれ?そのライフルは・・・。」
「・・・はい。・・・対ポケモンの捕獲用小銃です・・・・。」
ひとまず、実弾を撃った訳ではないようで、ほっとするケイト。
もしそんな事が起こったら大問題である。
「そ、それよりさがってて下さい!危ないですよ!」
「・・・・・ゼニガメは・・・大丈夫ですか?」
ルナはケイトに尋ねる。
「え?」
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ルナは、警察の待機場のテントから出て、周りの状況を警察官から聞いていた。途中、ケイトとゼニガメが捕虜になった事も。
それを聞いたピカチュウやディグダ、フシギダネは今にも飛び出さんばかりに、憤っていた。
ルナはその時、ホントにゼニガメの事を、心から想ってるんだなと、実感が湧いた。
フシギダネ達はケガをしている。
ここから出す訳にはいかない。
その場にいたピカチュウ達を宥めて、ルナは銃を取り出し、回復薬を詰め込んで、テントから飛び出したのだった。
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「ゼニガメは、なんとか大丈夫です。」
「・・・・・いっしゅ・・地方のポケモンは・・・?」
「・・・・・。」
ケイトは押し黙った。
「・・・・・ケイトさんのゼニガメには・・・・うちの子達がお世話に・・・なりました。」
ルナは未だに、遠く離れていく犯人達を見つめる。
「・・・・・信じて下さい・・・・・必ず、助けます。」
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ルナの見つめる先に、突如光が発した。
その場にいた警察は皆、その光に釘付けになる。
その光は皆がよく知っている、モンスターボールからポケモンが飛び出す時の光だった。
そして、その光から。
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「ガアアアアアアアアアアア!」
ルナはギャラドスを繰り出した。
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4人組 side
「ガアアアアアアアア!!」
「ぎゃあああ!」
「なんだコイツは!」
「マ、マンタイン!翼で撃つ攻撃!」
マンタインの翼で撃つ!
ギャラドスに小さなダメージ。
「ダメだ!威嚇の効果で全然効いてねぇぞ!」
ギャラドスのアクアテール!
マンタインにギャラドスの尾が直撃する。
「ぐわああ!」
「どわあ!」
シロヤマ組の二人が海に落ちる。
「くっ、おいギャラドス!このまま俺達を倒してみろ!ここにある民間のポケモンは海の底に沈んじまうぜ!へへへへ!」
「そうさ!下手すりゃ、民間のポケモンもボールの中とはいえども、ケガじゃ済まねぇぜ!?」
ロケット団2人は言い放つ。
商品であるポケモンを盾にされ、ギャラドスは攻撃を緩める。
「・・・ガルルル!」
「マンタイン!今のうちだ!逃げろ!」
マンタインに指示をし、一気にその場を去ろうとするロケット団。
「「おい!置いていくなぁぁ!」」
シロヤマ組がマンタインに掴まる。
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ドギュン!!
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再び銃声が鳴り響いた。
「げっ!また!」
「気をつけろ!」
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男達は周りを警戒する。
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睨みつけるギャラドス。
その他には静かな波の音。
「・・・大丈夫そうだな。」
「威嚇かよ。」
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ギャラドスが笑った様に見えた。
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「・・・てめぇ、何笑ってやがる!」
「!?・・おい、お前、ブツの入った袋はどうした!?」
「何だと・・・あ!!?」
盗んだのポケモンのボールが沢山入った袋を、ロケット団が持っていたはずが、いつの間にか消えていた。
カモネギの泥棒!
カモネギはロケット団から、一切の隙を見せつけずに袋を奪い去っていく。
「「何だとーーー!!?」」
「今の銃声はコイツだったのか!?」
「くそ!警察の中に、対ポケモン用捕獲銃を持ってる奴がいやがったか!?」
対ポケモン用捕獲銃は、野生のポケモンを捕まえる為に弾倉に空のボールを入れるだけでなく、自分の手持ちを弾倉に入れて離れた場所に撃ち込んでポケモンを出すことができる。
カモネギは袋を足で掴みながら、くるくる旋回しながら警察の方へと進んでいく。
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「くっそーーーーー!」
「取引失敗か。」
ギャラドスが口内に熱気を集中させる。
「く、どうするんだよ!?このままじゃ!」「落ち着け、こっちにはイッシュ地方の珍しいポケモンがいる。”テレポート”で逃げるぞ。」
「そうだな、取引は失敗したが、イッシュのポケモンさえいれば、ボスも許してくれるはず。」
「よし、”テレポート”発動だ。」
ロケット団の男が、掴んでいたダブランを掲げた。
ギャラドスは、逃がすまいと一気に技を放出した。
ギャラドスの竜の怒り!
「遅い!じゃあな!」
「あばよう!」
「へっへへへ!」
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シュン・・・!
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ドッカアアアアン・・・!
ギャラドスの攻撃は空を切る。
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4人組は、テレポートを使い、マンタインやダブランごと、海の上から姿を消した・・・。
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・・・・・かに見えた。
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それまでの光景を見た警察官達も、ケイトも、ルナも、盗まれたポケモンは取り返したものの、犯人の捕獲が出来ずに、しかもマンタインやダブランを奪われ、追跡不能に陥る結果を予想していた。
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・・・そう・・・予想していた。
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これから起こる出来事は・・・。
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その場にいた者全ての視線が奪われた。
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???の封印!
ダブランのテレポートを封印した!
シュン・・・・・!
消えかけていたはずの4人組が、再び姿を現す。
「「「「!!?」」」」
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唖然とする4匹。
彼等の目の前には、驚きの表情を浮かべるギャラドス。
その後方に。
ソイツは現れた。
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???の封印。
マンタインの波乗りを封じこめた!
突然、マンタインが海に沈み出した!
「な!?」
「ど、どうしたんだこいつ!?」
「しゃんと泳げぇ!!」
マンタインはもがきだし、背中に乗せていた4人組を海に投げ出した。
「「「「ぐわああああ〜!?」」」」
海に落ちた男達が海面に浮かび、目の前にいるソレを確かめた。
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ソレは、まるでイルカのようで、全身真っ黒に白いラインが描かれている。
大きさはギャラドスの半分ぐらい。それでも、海のポケモンにしては大型クラスに位置するだろう。
そして、最も印象が高いのは、額に埋め込まれた宝石の様な結晶だった。その美しさに見とれていた4人組は、身震いをする。
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「・・・な、なんだコイツは?」
「新種か?」
「コイツ、何をしたんだ?テレポートも、波乗りも、全部無効化にしやがった。」
新種のポケモンだと判断するロケット団。そんな4人を見ていたイルカは、額の藍色の宝石を輝かせた。
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???のサイコキネシス!
4人組の男達の身体が海から上がり、宙に浮かぶ。
「な、なんなんだ一体!?」
「はなせ!」
「う、動けねぇ!」
そしてそのまま、男達はイルカのサイコキネシスにより、元来た水路を逆走し、待機している警察との距離が縮まる。
そして、そのまま陸地に放り流された。
当然、待機していた警察官に取り押さえられ、4人組は成す術もなく、縄につく事となった・・・・・。
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サイコキネシスを使ったイルカは、再び額の宝石を光らせる。
次は、波に浮いているダブランに集中力を注いだ。ダブランに藍色の光が包み込み、光が消えたかと思えば、ダブランは目を開けた。
ダブランの体力が回復した。
ダブランはフワフワと浮かびながら、陸地の方へと帰っていった。
???のサイコキネシス!
マンタインをサイコキネシスで浮かせて、陸地へゆっくりと運んでいく。
その場に残されたギャラドスと謎のイルカ。
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「・・・・・ガルル・・。」
ギャラドスは、目の前のポケモンが、野生のポケモンではないことを見抜いていたようだ。突然現れて、自分達をすぐさま味方するような行動は有り得ない。
そう読んだギャラドスは、きっと、彼(謎のイルカ)も4人組を追っていたんだろうと、解釈していた。
「・・・・・キュウキュウ・・!」
ギャラドスに挨拶を返すイルカ。実にシュールな絵である。
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???のサイコキネシス!
イルカは、警察へ届いている袋に入ったモンスターボールを一つ取り出し、宙に浮かばせながら、自分の方へ引き寄せた。
???のテレポート!
そして、そのボールと共に、イルカは姿を消してしまった。
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ルナ side
・・・・・・・カスミが昨日いってた・・・・イルカさん・・。
・・・あっという間にやっつけて・・・凄かった。
こっちでは、警察達が犯人を逮捕し、パトカーに連行している。
今まで殺伐としていた空気も緩み、普通の感じに戻っていく。
・・・・・・・あ、ギャラドスが帰ってきた。私はギャラドスをボールに戻す。
「・・・おつかれ。」
・・・カモネギも戻ってきた。
「・・・・・ごめんね。・・・・・初日早々、働かせすぎた?」
「クワッ、クワッ。」
・・・首を振ってくれる。
「・・・・・敢闘賞。」
私は鞄から、お魚のソーセージを取り出して、カモネギにあげた。
「・・・・・・・・クワ。」
・・・・?・・・・気に入らなかった・・・?
私はカモネギをボールに戻した。
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・・・・あ、ケイトさんがやってきた。
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「ありがとうございます!」
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・・・・・・・巡査部長による敬礼・・。
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「・・・・・・(ビシッ)」
私も右手で敬礼した。・・・帽子ないけど・・・いっか・・・。
・・・・?・・・・・・周りの人達が笑ってる・・・・・・・なんか不愉快・・。
「クスクス、ノリがいいわねルナさん。・・・本当にありがとうございます。もう少しで、盗まれたポケモン達を・・・ダブランを・・・連れていかれるところでした。」
「・・・いえ、どちらかといえば、最後にやってきた・・・イルカさんの方が・・・。」
「それでもです!確かに結果的にはイルカのポケモンによって最悪の事態は免れました。しかし、貴方は即座に犯人を足止めさせ、その隙にカモネギでモンスターボールを取り返しました。迅速且つ的確な判断でした。」
ケイトは頭を下げる。
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「・・・・・・・・/////。」
・・・視線を反らして、テキトーに海を眺めた。・・・暗くなっててなってよかった・・・かも。
「フフ・・・(フシギダネといい、ピカチュウ達といい、・・・・・こんな素晴らしいトレーナーのポケモンに出会えて、ゼニガメも幸せね・・・・・。)」
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