番外!踊るポケ捜査線!〜クチバの波止場の浦島作戦〜(3)
ゼニ「・・・で、結局お前ら何がしたいんだ?」
ピカ「犯人をやっつける。」
ディグ「同じく。」
ゼニ「・・・見解がちげーようだから教えといてやる。今回の不正取引の中身は盗まれたポケモンだ。しかもトレーナーの。」
ピカ「(そういえば、巷でも強奪や盗みが多発してるってカスミが言ってた気が。)」
ゼニ「半年前からねちねちと犯行が続いて、全然尻尾が掴めなかったが、何とか海外に売られる前に身元を突き止めた。シロヤマ組。表向きは土木建築会社。だが裏ではロケット団とつるんで、そいつらが盗んだ育ちのいいポケモンを安値で買い取り、海外で高く売る。」
ディグ「うは、鬼畜の諸行。」
ピカ「尚更見過ごせないよ!盗られた方も可愛そうだよ!」
ゼニ「・・・・・まあ、そうだよな。許されねぇ。最近現れたロケット団、ポケモンを金にしか思わない下衆。」
ゼニガメは唾をはきつける。
ゼニ「で、こっちは閃光弾はもうねぇし、ピストルに対抗できねぇ。ハッキリいって何も出来やしねぇぞ。」
ピカ「警察の動きは?」
ゼニ「俺達の位置は報告した。もう来るはず『ピストルを捨てろ!おとなしく投降せよ!お前達は包囲されている!』・・・・・言った傍からだ。」
その後、トランシーバーから音が出る。
ケイト『ゼニガメ?こちらはアナタのいる建物から右後方20mの位置よ。そちらから奴らを観察できる?』
ゼニ「奴らは2階だ。前方両サイドの建物から一人ずつ窓から見えた。っつーか、さっきの説得意味あんのか?火に油注ぐなよ、相手は素人じゃねぇんだ。」
ケイト『(〜ダブランから通訳中〜)・・・アナタに言われるとはね。・・・アナタ達ポケモンには頼りにしてるの。私達人間だけだったら、今まで解決できた事件なんて無かったわ。』
ゼニ「・・・・・ま、アンタラにとっちゃ、便利な存在だよな。」
ケイト『(通訳中)・・・・・昔から変わらないわね。アナタがクチバの街中でイタズラしていた頃、私がアナタをゲットした時から・・・。』
ゼニ「人間とポケモン同士仲良しようがしまいが、どうでもよかったしな、あの頃は。」
ケイト『(通訳中)・・・・・少なくとも、私はそんな風に思った事はないわ。・・・・・見せてあげる、人間とポケモンの絆を。・・・・・絶対にポケモンを助けるわ!』
トランシーバーがプツっと切れる。
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その刹那、銃声が響き渡る。
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ドキュン!ドキュン!ドキュン!ドキュン!
ディグ「うぉわあ!?」
ピカ「きゃ!」
ゼニ「何だ!?」
ゼニガメは、敵に索敵されないように、ドアから少し顔をだして、通りを見た。
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目の前の狭いアスファルトを駆け抜けるゴースとゴースト達。
上空には夕焼け空を覆い隠すような、ズバットとゴルバット達。
銃声は轟くように響くが、彼等に当たる事はない。
ゼニ「(けっ、ゴルバットの超音波で既に位置特定してやがった。そしてゴーストタイプの奴らは陽動。物理攻撃は効かないしな。夢中に下を撃ってる間に・・・。)」
ゴルバット・ズバットのエアスラッシュ!
ズババババババババババ!!
上方から風を切る音が聞こえた。
窓ガラスが割れる音と共に。
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銃声は止んだ。
ディグ「え?何?何があった?」
ピカ「・・・?」
イマイチ状況が理解できない二匹。
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ゼニ「・・・俺達の役目は終わりって事さ。」
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ザ、ザーーー。
再びトランシーバーがつく。
ケイト『ゼニガメ?今のうちよ!こちらへ引き返して!』
ゼニ「おう!」
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ゼニガメとピカチュウとディグダは、ドアを飛び出して、後方へと逃げる。
ディグ「ぎゃああ!ゴースがいっぱい!」
ピカ「あ、向こうにお巡りさんがいっぱい!」
ゼニ「仕留めたかどうか解らねぇ!速く走れ!」
とは言っても、10匹を超えるズバット達のエアスラッシュを受けたのだ。両側ふたつの建物の2階に、切り口が開いたように内装がはっきり解り、ボロボロだった。
どう考えても避けられるはずもない。人間なら尚更だ。
故に、反撃を起こす余力などないのだ。
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では何故。
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ゼニガメ達その場に立ち尽くしてしまったのか・・・。
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ゴーストの黒い眼差し!
ゼニガメ・ピカチュウ・ディグダは逃げれなくなった。
ピカ「!?」
ディグ「な!?」
ゼニ「なんだと!?」
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動けないわけではない。ただ、逃げ道である先へと、進むことが出来ないでいた。
ゴルバットのエアスラッシュ!
真空波がピカチュウ達に迫った!
ピカ「危ない!」
ピカチュウが庇うように風の斬撃を腹部に受けた。
ピカ「がッ・・・・・!」
うめき声をあげてピカチュウは、地面に倒れる。
ゼニ「!!・・テメェ!」
ディグ「ピカチュウ!!?」
倒れたピカチュウを背負うゼニガメ。
ゴルバット・ズバットのエアカッター!
再び風の攻撃がやってくる。
ディグ「こっち!!」
ディグダの穴を掘る!
ゼニガメ達が通れる程の穴が空き、ピカチュウとゼニガメはディグダの後を追う。
エアカッターは、衝撃音をたてて地面に衝突した。
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地中2m程に避難し、なんとかエアカッターを凌いだ3匹。
ディグ「ピカチュウ!!大丈夫か!?」
ピカ「・・・・うぐ・・!」
ゼニ「飛行技だ、効果はいまひとつ。だが急所に当たったか・・・。コレ食え。」
ゼニガメが甲羅からオボンの実を出す。
ディグ「何それ?」
ゼニ「回復用の木の実だ。」
ゼニガメはピカチュウにオボンの実を与えた。
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だいぶ落ち着いたピカチュウ。
ゼニ「すまねぇな、ピカチュウ。」
ピカ「ありがと、ゼニガメ。」
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ゼニ「・・・・・。」
ピカ「・・・・・。」
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ゼニ「・・・・・んだよ。」
ピカ「・・・くひひ、やっと名前で呼んでくれた♪」
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ディグ「ベタベタか、君達は?」
ピカ「ほらほら妬かない妬かない。」
ゼニ「おうよ、ディグダのお陰だぜ。いい仕事すんじゃねーか。」
ディグ「え////、いや、ちょ////、お前、バカ////」
ゼニ「誰がバカだ。」
ディグ「ぐぇぇええ!締まる!締まるぅ〜〜。」
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ピカ「・・・・それはそうと・・・さっきは・・・。」
ディグ「そ、そうだよ!なんでゴルバットやゴーストが僕らを狙ったの!?味方じゃないの?」
ゼニ「紛れもねぇ、あいつらは特攻部隊所属のポケモンだ。・・・どうなってやがる!」
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ザザーーー・・・!
ケイト『・・ガメ!?・・ニガメ!?聞こえる!?』
地中だから電波が少し悪いようだ。
ゼニ「ああ!こっちは無事だ!どうなってやがる!?」
ケイト『(通訳中)・・・・解らないわ!奴らを仕留めたと思ったら、いきなりゴルバット達がお互いに”怪しい光”を放ち始めて、全員混乱してるの!』
ゼニ「なんだと!?」
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実際地上では、警察が放った筈のポケモン達が、我を失ったかのように蹂躙し、百鬼夜行のような惨状が繰り広げられ、警察も収拾に手間取る。
ケイト『ゴースト達も一緒の状態なの!ボールに戻そうにも、互いに”黒い眼差し”をかけていて、ボールに戻らない!』
ゼニ「敵はどうなったんだ!」
ケイト『(通訳中)・・・・・今ガーディを現場に向かわせてる!・・・・・え!?ダブラン、テレパシーを!・・・・・・・・・・・人間はいない!?においは!?・・・・・・ポケモンの残り香がする!?』
ゼニ「はぁ!?ふざっけんな!!絶対スーツの男がピストル持ってたの目視したっつーの!おい!ガーディと繋げろ!」
ケイト『(通訳中)・・・・・ダブラン、ガーディとゼニガメのパスを繋いで。』
ゼニ「ガーディ!テメェラの鼻は飾りかゴラァ!?」
ガーディ『・・・ゼニガメか。事実だ。反対側の建物も確認したが、ポケモンの残り香しかしない。あと硝煙の臭いだな。・・・・・敵のポケモンがピストル引いていたと考えられるな。』
ゼニ「俺は見たんだよ!黒いスーツ着て窓からピストル構えてやがった!」
見間違うはずがねぇ、と試行錯誤を繰り返すゼニガメ。だが、捜査のエキスパートのガーディが嗅覚で間違う事も有り得ない。
実際にポケモンの臭いしかしないというならば、ポケモンにスーツを着せていたのか?
否、スーツにも人間の臭いはある。それが全くないのだ。
ゼニ「じゃあさっさと追跡しろ!特捜部だろがよ!」
ガーディ『・・・目の前だ。』
ゼニ「は?」
ガーディ『目の前でズバット達やゴース達が混乱で暴れてる。その計22匹のうち2匹、硝煙の臭いのするポケモンがいる。』
ゼニ「・・・はぁ?」
ケイト『(通訳中)・・・・な、何ですって!?・・・・・・・・た、確かに数が増えてる!私達が放ったのはズバット5匹とゴルバット5匹。ゴース6匹とゴースト4匹の計20匹の筈!』
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ゼニ「(・・・・・・・・あぁ・・・・・そういう事か・・・。)」
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ケイト『とにかく!混乱したポケモンを沈静させるわ!!その中に敵が紛れてるんでしょ!』
ゼニ「駄目だ!ケイト、ガーディを使って直ぐに奴らを捜せ!コイツらは俺が沈静させる!」
ケイト『(通訳中)・・・・・・な!?今地上に出てきたら危ないわ!互いに攻撃しあってる渦中に飛び込む気!?』
ゼニ「・・・敵のポケモンがわかったんだ。説明聞く暇があったら、身を潜めてる人間を捕まえろ!人間もピストルを使ってた!ガーディ!お前が頼りだ!」
ガーディ『・・・・・・・・一応特攻部隊も参戦しているが、ホントに大丈夫か?』
ゼニ「テメーに心配されちゃしめーだよ、こっちにゃ強ェ味方がいる。」
ガーディ『・・・フン。・・・・・”ゴルバット”と”ゴースト”から硝煙の臭いがした。・・・・・ダブラン、パスを切れ。長時間のテレパシーは堪えるはずだ。』
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ケイト『・・・・ゼニガメ。』
ゼニ「・・・なあケイト、別に互いに隣り合わせで生きてくのだけが絆じゃねぇだろ。・・・・・・・背中預けられる人間、この世でアンタぐらいさ。」
プツ・・・。
ゼニガメはトランシーバーの電源を取り、受信を切断した。
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ディグ「敵の正体が解ったっていったけど?」
ピカ「誰なの一体?人間じゃなかったの?」
ゼニ「テメーラよく考えろ。ガーディが人間の臭いがしねぇって言った地点で、そこに人間がいないのは確定事項だ。代わりにポケモンの残り香。そして奴らはゴルバットとゴースト達に”紛れて”内部撹乱を図ったんだ。」
ディグ「へ?じゃあ、もともとポケモンだったのが人間に化けてて・・・え、どゆこと?」
ピカ「たまたま敵がゴルバットやゴーストだったって事?」
ゼニ「・・・テメーラ、”メタモン”を知らねぇのか。」
ディグ・ピカ「「めたもん?」」
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ディグ「つまり、メタモンが最初から人間に化けてたって事?ピストルをバンバン撃ってたのがそいつら?」
ピカ「メタモン達は囮だったんだ・・。」
ゼニ「囮でも厄介なのは間違いねぇ。4人組はこの敷地から逃げられねぇ、ガーディ達に任すのが得策だ。・・・この騒ぎを止めるぞ!」
ディグ「おー!!・・・でもどうやって見分けるの?一匹一匹やっつける?」
ピカ「・・・アタシなら出来るかも。」
ゼニ「ああ、ピカチュウの”かぎわける”でメタモンを見つけるぞ。その間他の奴が攻めて来るかもしれねぇ、俺とディグダは迎撃だ。」
ディグ「了解ー!まかせろぃ!」
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地上では激戦が繰り広げられていた。
空を覆い尽くす程のズバットやゴルバット。
大きな工場を挟む狭い路地に溢れ返る程のゴースやゴースト。
警察のポケモンは、特殊訓練を毎日行っており、力も精神も精練されているにもかかわらず、敵の謀略にかかり、全員が混乱状態にかかるという失態に陥った。
皆、我を忘れて自分や互いにを攻撃しあい、トレーナーである警官にも及んだ。
この収拾をつけるのは至難の技だろう。ただでさえ、訓練を受けているポケモンを鎮静させるのは骨がいる。
「くそ、埒外があかない!」
「なんでボールに戻らないんだ!」
突撃用の大きな盾を構えた特攻部隊の男達は、ボールをゴーストやズバットに翳す(かざす)も、全然元に戻らない為苛立っていた。
「コリンク!スパークだ!」
「ポチエナ!かみつけ!」
「ヨーテリー!吠えるだ!」
新たにポケモンを出して増援させるも、騒動がおさまらない。
「おい!またくるぞ!怪しい光だ!」
カッ、とまばゆく白い光が部隊を照らした。慌てて盾に身を匿うも、ポケモン達には覿面(てきめん)だった。
「あっ!ヨーテリー!しっかりしろ!」
「ぐわっ!落ち着けポチエナ!俺だ!敵じゃない!」
混乱状態になった増援は瞬く間に、戦闘不能にされていく。
「これ以上ポケモンを出すな!我々でこの場を抑えるのだ!」
「しかし、この状況では!」
ズバット達のエアカッター!
特攻部隊は慌てて盾でガードした。
「・・・くっ、一旦退却するしかないのか・・・?」
何度考えても、この状況を打破できる程の策を思いつかず、立ち往生するしかなかった。
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その時。
混乱状態のポケモンの渦中の中央から、コンクリートが勢いよく割れ、地面の中から3匹のポケモンが飛び出してきた。
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サングラスを掛けたディグダとピカチュウ。
そして、巡査部長のパートナーのゼニガメだった。
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地上に上がり、陣形を整え、戦闘態勢をとった3匹。ゼニガメが言う。
「いいかテメーラ!そのグラサン死んでも外すな!怪しい光を遮光する役目があるんだ!」
「なんで三つもサングラス持ってたか聞いていい?」
ディグダが疑問を口にする。
「諸事情だ!」
「ホント、その甲羅の中どんだけ物が入ってるワケ?まんまドラえもんじゃん!」
「うっははwwww、ドラえwwもんwwwwww至言wwwwww!」
「ぶっ殺すぞテメーラァ!?」
ツッコムピカチュウに笑うディグダ、怒鳴り散らすゼニガメ。
場違いな所でのびやかと漫才していた3匹に、攻撃が殺到する。
ズバットの翼でうつ!
ゴルバットのヘドロ爆弾!
ゴースの催眠術!
ゴーストの呪い!
多種多様な技が四方八方から襲いかかった。
「来るぞ!」
「オッケー!!」
「散!」
作戦、開始!!
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