番外!踊るポケ捜査線!〜クチバの波止場の浦島作戦〜(2)
ゼニ「くそ!どこ行きやがった!?」
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前方には廃工場。左には海。右側には広めのアスファルトがあり、40m先には出口がある。この出口以外はこのポートから出れる事はできない。鉄条網が張り巡らされてあり、ポケモンでさえ侵入を拒む。
ディグ「出口を出たっていう事は?」
ゼニ「ありえねぇ。人間の足はそんなに速くねぇ。」
ピカ「・・・人の気配がする・・・・・こっち!」
ピカチュウが先導し、正面の通りへと向かう。ゼニガメとディグダは後を追った。
道路が狭くなり、左側には建物が2つ、右側にはひとつ。夕焼け空のせいで昼間のような明るさはない。影が静寂を支配する。
ピカチュウが止まった。
ピカ「・・・あれ?・・・足音が聞こえなくなった?」
ゼニ「隠れたか?だがもうすぐ増援がくるんだぞ?」
ディグ「この敷地内ってさ、出口以外に出れるところってあるの?」
ゼニ「ねぇ。高さ2.8mフェンス登って鉄条網で串刺しにならない限りはな。」
ディグ「出口で待ち伏せした方がいいんじゃなi」
ドキュン!!
「「「!!?」」」
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銃声。
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やがてこだまが消え。
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緊張が走る。
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ピカチュウの頬に細い赤線ができた。
ゼニ「隠れろぉ!!」
ドキュン!!ドキュン!!
3匹は慌てて左後ろにある建物の入口へと全力で駆け出した。
ドキュン!!ドキュン!!
弾を弾く音が増える度に、3匹の感情は焦燥と恐怖へと変わる。
逃げ道であるドアの前へきた。
ゼニ「どいてろ!」
ゼニガメのロケット頭突き!
錆びれたドアは音を立ててへしゃげる。一気に駆け込んだ。
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ピカ「はっ・・はっ・・はっ・・!」
震えが暫く止まらなかった。
ディグ「ピカチュウ、大丈夫?痛い?」
ピカ「ううん、ちょっと掠っただけ、痛くないよ。」
ゼニ「・・・待ち伏せかよ、上等じゃねぇか。迎え討ってやる!・・・・・と言いたいところだが、テメーラ、先に逃げな。」
ピカ「・・・・・今更そんなこと言わない!」
ディグ「そうだよ、君一人でどうにかできるの?」
ゼニ「五月蝿ぇ!この馬鹿!」
突然張り裂けるような怒号に、ピカチュウとディグダはたじろぐ。
ゼニ「遊びじゃねぇんだぞ、コッチはマジでやってんだ!一般人のテメーラが首突っ込むのも限度があらぁ!」
ディグ「ぉお、怖。」
ピカ「じ、じゃあこのまま引き下がれって言うの!?女の子の顔に傷つけられて、黙っていられるもんですか!」
ゼニ「その傷でテメーは死ぬとこだったんだぞゴラァ!!」
ピカ「・・ぅ。」
ゼニ「頼むからもう止めてくれ!ディグダ、お前の穴を掘るでピカチュウとこの敷地から脱出しろ。フシギダネも責任持って俺が連れて帰る。俺の事は心配すんな、どっちみちすぐに増援が来るから一気にカタつけれる。もうすぐここは戦場になるんだよ!」
ゼニガメの必死な力説を聞いていたディグダとピカチュウ。
自分本意で乱暴な彼にも、警察としての誇りがあるんだな、と感じていた。
『ザ・・ザー・・・ゼニガメ?・・こちらケイト。奴らは敷地内?』
ゼニ「ああ!(向こうからは『ゼニ!』と聞こえている。)」
ケイト『こちらは既に突入態勢はとれてる。ネズミ一匹逃がしゃしないわ!』
ゼニ「解った!奴らは銃を持ってる!敵は4人!車は壊した!民間人のポケモンもいる!現在地は中央の建物1階!(『ゼニゼニゼニ、ゼニガーメゼーニガメゼニ!ゼーニーゼーニガメゼニガー!』)」
ケイト『ダブラン!テレパシーお願い!・・・・・・・!・・・・了解!ゼニガメ、あなたは民間のポケモンを保護!直ぐに突入するわ!』
プツッ、とトランシーバーが消えたかと思えば、ウーーーウーーーとサイレンの音が響き渡った。
ディグ「わ、ビックリした!」
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ゼニ「・・・・・いよいよ緊急事態だぜ。敵がどうでるか・・・。」
ピカ「・・・・・アタシ達は、どうなる?」
ゼニ「・・・・・・・・保護しろって言われちゃ、しょうがねぇだろうが。ここにいろ。」
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ピカ「・・・味方が助けにくるまでここで?・・・じっと待ってるの?」
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パシィン!
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ゼニ「いい加減にしろ馬鹿!」
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ゼニガメの平手打ちがピカチュウの頬に命中する。
ゼニ「まだそんな事言ってんのか!?何かテメー!命より意地張ってピストルで殺されてーのかよ!」
ピカチュウは泣きじゃくり始めた。
ピカ「だっで・・!!フシギダネは今でも戦っでるんだよ!!4対1にもかかわらず!!そんな危ない橋渡ってまで、アタシに託してくれたの!!・・・何でなのかアンタにわかる!?・・・アタシもディグダもフシギダネも!アンタの事助けたいって思ったからよ!!」
銃弾で掠れた反対側の頬、今打たれて赤くなった頬に手を当てるピカチュウ。
ゼニ「だからもうすぐ終わるんだろが!!四の五の言ってでしゃばっても意味あんのか!?ねぇだろが!!助けてくれた事にはスゲー感謝してる!マジで嬉しいよ!だからテメーラには無事でいて欲しいんだよ!!」
ピカ「・・・でも!・・でも!!
・・・・・・・・・それじゃあ何の為に、フシギダネは、アタシは、
・・・・・・ぅあああああん・・・悔しいよぉ・・・・・。」
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大粒の涙を流して泣くピカチュウ。
ゼニガメはため息をつきながら、ガキが・・・、と呟く。
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色々な面で板挟みとなっているディグダは、二人が口論している間、しかめっ面でずっと考えていた。
やがて真顔に戻り、ゼニガメに言った。
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ディグ「っつーかさ、ゼニガメ、貸し多いよね?」
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ゼニ「・・・・んだとぉ?」
ディグ「だってさ、僕らが助けなけりゃ、君今頃エレブーに炭クズにされてたよ。」
ゼニ「・・・・・ノーカンだ。本来なら初見の地点で公務執行妨害だ。見張りの邪魔したからな。」
ディグ「でも僕車壊したよ。しかも2台。」
ゼニ「・・・・・。」
ディグ「オマケに、ピカチュウの嗅覚と聴覚がなかったら、敵の位置分かんなかったじゃん。何て報告するつもりだった?見失いましたって?」
ゼニ「・・・・・ぐ。」
ピカチュウは既に泣き止んでいる。
ディグ「しかも警察ともあろう者が、民間のポケモンをバトルさせといえ放置とかWW。保護できてねーじゃん。命令無視だ無視。」
甲斐性なし、えらそーに、ノロマ、ハゲ等スラスラと軽快に罵倒の文句を連発するディグダ。
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ディグ「・・・が・・・ぎ・・・・・・ぃいい加減にしやがれぇえ糞モグラァァア!!」
ぎゃぁあああああ!!!
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怒りにプルプル震えていたゼニガメも、堪忍袋の緒が切れ、調子づいてるディグダにのしかかり、はたく、頭突き、水鉄砲の応酬。
断末魔の叫びが部屋に響いた。
ピカ「ちょっと!加減って言葉知らないの!?パート2!!」
ゼニ「うっさいわ!・・・こんな惨めな思いは初めてだ。」
延びているディグダに蹴りを入れ、ガクッとうなだれるゼニガメ。
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ピカ「・・・ねぇ、ゼニガメ。」
ピカチュウは涙で濡れた瞳を拭い取り、ゼニガメの瞳を見る。
ピカ「ゼニガメは・・・いい警察官だよ。とっても立派、自信持っていいよ。」
ゼニ「・・・・・・・。」
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ピカ「でもさ、警察以前にアンタ亀でしょ!!亀なら亀らしく助けられたら恩返ししなさいよ!!」
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ゼニガメは大きく息を吸い込み、深くため息をついた。
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ゼニ「誰がうまい事言えといったあああぁぁぁ!!!」
良い場面・・・。なんて一言も言わせない。いや、させない。
ゼニ「どいつもこいつも!俺を舐めてんじゃねーぞゴラァ!」
ディグ「警察官が逆ギレかー!?こりゃ駄目だー!!」
ゼニ「るせぇ!」
ディグ「がふっ!?」
ピカ「まどろっこしいわね!男のくせに貸しのひとつも返せないの!?」
ディグ「そーだそーだ!」
ゼニ「あ”あ”あ”ぁぁぁ〜〜〜!!五月蝿ェ五月蝿エェ!バーカバーカ!もう勝手にしやがれ!俺ァもう知らんからな!」
ゼニガメは壁に頭を打ち始めた。
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ピカ「(・・・ディグダ、ありがと。)」
ディグ「(貸しひとつ、だからね♪)」
二匹は向かい合い、軽く舌を出してはみかんだ。
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