ポケモン世界を歩こう
クチバシティ(1)
クチバに着いたのは夜。

冷たい向かい風が吹く。
・・・・潮の香り。
なんだか、ワクワクするにおい。


・・・最寄のポケモンセンターへ向かった。



カスミと私はポケモンを回復させる。

・・・あの子を除き・・。

「え〜、カスミ様のシャワーズは○月○日に逝去、死因はポケモンバトル、・・・以上でよろしいですか?」

「はい。・・あの、葬儀はシオンタウンのタワーで行われますよね。」

「ええ、日時はそちらでいつでも指定して頂いて構いません。・・御遺体についてはこちらで処置いたします。どちらにしろ、シオンタウンに転送しないといけないので。」

「解りました・・・お願いします。」




・・・バトルや事故等で死んだトレーナーのポケモンは、シオンタウンにある霊園へ送って、魂を慰めるらしい・・・・。



「・・・シャワーズ・・。私は大丈夫だから。
・・・ずっといっしょだもんね。
・・・・お休み・・。」

カスミはモンスターボールを係に渡す。
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ポケモンセンターの宿泊部屋。
カスミと同室。

私は窓ごしに映る夜景を眺めている。
今日は三日月。星がまばゆく光っていて、微かに空が紺色に見える。空から視線を下げれば、黒くて綺麗な海が波をたてている。
音は遠くて聞こえないけれど、月明かりや港の明かりに照らされた光が、まるでダイヤのように輝き、いつまで眺めていても飽きない。


・・・海を初めて感じた・・・。



カスミはベッドに寝転がり、仰向けになってじっと、天井の照明を見つめていた。

「私のシャワーズだけじゃない、巷の野生のポケモンやトレーナーのポケモンも被害が多いみたいね。・・・ロケット団・・・・・」

・・・?
カスミの声が震える。


「う・・・う・・・うがあああーーーーー!!!」


・・・・・・・・吠えた・・。


「・・・・・?」

「あったま来るわーーー!!私決めましたーーー!あの黒宗教団体ぶっつぶす事にしまーーーす!もぉーー許さないんだから!」

怒気の篭ったカスミの決意は、静かな夜に響き渡った・・・。

「・・・・・弔い合戦?」

「それもある!・・・・・・なんていうかさ・・・・吹っ切れた感じなのよ・・・。このまま終わりたくないのよ私的に。・・・ルナもそうでしょ?」

・・・最初は逃げようとか言ってた癖に。

「・・・何よその顔は?」

・・・・?・・・顔に出てた・・?

「・・・・・私は・・・この子達を・・・守ってあげたいし、一緒にいたいから・・・、危険な目にあって欲しくない。・・・・・・・・・一度だけ・・凄く心配かけた事があった・・・。」

「え?」

私は、オツキミ山でロケット団と戦った事を話した。

「・・・・・・・・ルナも被害にあったのね・・。・・・ゴメンね、私だけ何か勝手な事言って。」

私は気にしてないそぶりを見せた。

「・・・ヤマブキであの下っ端二人に暗示をかけた・・・・。・・・多分、もう追っ手が来ることは・・・ない・・・。」


・・・それが結局は・・・一番だと思う。

「・・・・・・・・・・ルナ、私は、これ以上あいつらを放っておけないわよ。今こうしてる間にも、色んなポケモンがひどい目にあってるのよ。」

「・・・・・相手は・・手段を選ばない・・・。」

沈黙、そして少し言葉を交えてまた沈黙。

・・・私達は別に、特別でも何でもない。

元ジムリーダーと新米トレーナー。

「そうね・・・もっと強くならなきゃ!」

「・・・カスミ。」

私は、目線をカスミに合わせる。


「・・・・・これからも・・・私のやることは・・・今までと同じ・・・。この子達と一緒にいて、旅をして、好きな事を探して、自由に生きる・・・。
・・・・誰にも・・・・邪魔はさせない・・・・。」

「・・・ルナって、ホント強いのね。あんな事があっても、決して後ろ向かずに前へ前へと進むんだもん。」

カスミは皮肉っぽく且つ、尊意のこもった口調でいう。



「・・・・・海が綺麗・・。」

自然と口から感嘆が洩れた。

「海見るの、初めてだったりする?」

カスミはベッドから起きあがり、私の側に来て一緒に窓から海を眺める。

「・・(コク)・・・でも不思議な感じ。・・・・懐かしい・・・って若干思う・・。」

「マサラにも海があるじゃない、たしか。」
「・・・・・何だか・・・新鮮・・。」

カスミは、頭の上にハテナを浮かべる。





ザブン・・バシャアン・・・・!



さざ波の中、大きな何かが跳ね上がり、波音を立てて姿を消した。


「・・・・・・見た?」

「ええ!アレってイルカでしょ、形的に!」
魚ではないことは確かだと思う。遠くて暗いせいで細かな形は見えなかったけど、波音が凄まじく大きかったから・・・。

「・・・・・ポケモン?」

「でもそもそもさ、ここ内海でしょ?こんな所にイルカがいるの?新種のポケモンかしら、・・・・・・絶対にゲットしてやるわ!」



爛々とした目で海を見つめるカスミ。



(・・・元気でたみたい・・・・・。)

潮な香りをのせた波風は、少しチクチクとするけども、山や自然の空気と違って、何だか温かかった・・・・・。



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サント・アンヌ号の船上パーティーは、二日後に開かれる。

それまで暇だから、いつも通り街を散策しようと思う。

・・・・・・・・昼から・・・そう・・・・・昼になってから外に出よ・・。

・・・・・散策といっても・・・いつでもできる・・・。

・・・・・・・・・・・もう少し・・。

「起きんかぁ!!」

カスミに布団を引っぺがされた。
・・・・・・さむい。

「もう13時過ぎよ!どんだけ寝れば気が済むのよ!」

「・・・・・ん〜・・・あと3分。」

「50分前に聞いたわ!」

「・・私に・・・・・癒しを下さい・・・。」

「全くもぉーー!何が規則正しい生活よ!ルーズ全開じゃないの!」

「・・・・・布団が・・・あまりにも気持ちぃ・・・。」

「ネコみたいに疼くまるな!・・・・・夜更かししてまで銃の手入れなんてするからよ!」

「・・・・・・ぅん・・。」

私は背伸びをして、眠った身体を起こす。

「ルナ、私今日買い物してくるから、先に出てるわ。二日も時間あるんだしね。それまで自由行動にしましょ。あ、それとさ、明日一緒に特訓しましょうよ。バトルに強くならなきゃいけないし、いいでしょ?」

「・・・・・(コク)・・。」

「ありがと!じゃ、お先に!」

軽快な足付きでカスミは部屋から出ていった。



・・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・ふぁ・・。」

欠伸をかみしめようにも、誘惑には勝てなかった・・・。


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フシギダネside


ピンピンピコリン〜♪


「おせーな、ルナの奴。」

「起こしにいかない?」

待ちきれなくて、ボールから出てみると、回復が終わったのだろう、保管所にいた。
隣には、ピカチュウが身体をブルブルと震わせる。

「もう昼だぞ、いくらなんでも起きてるだろ。」

「一緒に呼びにいこ?」

「・・・しょうがねーな。」

保管所を抜け出して、トレーナーの宿泊施設にある部屋へ向かった。

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歩いていると、さすがに昼過ぎになるとトレーナーが沢山いてごった返している。


「きゃー、カワイイ。ピカとフシのツーショだあ!」

「どこからきたのかしら!」

「こっち向いてこっちー!」


・・・女子トレーナーに色々言われながら歩いていく。俺はいたたまれない気持ちになる。

「ウフフ、アタシ達、カップルみたいだね。」

ピカチュウが俺に擦り寄ってベッタリしてくる。

「・・・親子の間違いだろ。」

「あー、ひっどい!」



こうして、ルナの部屋の前に来た。

ピカチュウが、ドアに耳を傾ける。

「・・・・・物音が聞こえない・・・・・・・・・・何か、スースー言ってる。」

寝てんじゃねーか!!なにやってんだウチのトレーナーは!!


「あ!・・・・・くひひひ・・!」

「なんだよ、気色悪いな」

「これは、もうやるしかないでしょ。」

・・・はぁ、乗り気しねぇな・・・。
嫌な予感がする・・・。

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ピカチュウside

「「おはよ〜〜ございま〜〜す。」」

『第一回ドッキリ企画チキチキルナの寝顔大拝見SP』開催します!

「さあ、早速入るよ!」

「ノリすぎだろ。つーかあいつのルナの寝顔なんて入院してる時に散々みてるだろ。」
「違う違う、公共の場とプライベートの時とは全然違うんだから。さ、ここからは声のトーンを下げて。

ゆっくりとドアを開け・・・。

「なんで鍵が掛かってないんだ!?」

「しー!静かに!たまたま忘れてるだけだって。」

「無用心すぎだろ、カスミは何やってんだよ。」

「カスミの気配はないよ、多分出掛けたんじゃない?」

「・・・あんだけ寝てりゃ、カスミも愛想尽きるよな。」



どんどん進みましょう!

「ん、あれがルナのベッドだな。じゃあ起こそうぜ。」

「ちょっと!まだ早いよ!」

「はぁ?何が?」

「こういうのは、回りの物を物色したりして楽しまなくちゃ。取りは最後だよ。」

「おい、いいのかよ、プライバシーの侵害だろ。」

「いいのいいの!さあこっちへ行くよ!」

「・・・・はぁ。」



洗面所です。

「こ、こ、これは!ルナの歯ブラシ!」

「・・・それがどうしたんだよ。」

「くわえたいとか思わない?」

「思わねーよ!!」



お風呂場です。

「水滴がついてるよ。」

「昨日使ったんだろ。」

「え〜と、シャンプーは・・・レモンの香りがする!リンスにコンディショナーも。ルナって小まめだね〜。」

「もう行こうぜ・・。」

「あ、フシギダネ!この石鹸みて!」

「何だよ。」

「○○がついてるよ。」

「見せるなや!なもん!」

「どの部分の○○かな?」

「知るか!」

「カスミとルナ、どっちのだと思う?」

「どっちでもいいわ!からかうな!」

「冗談だってば、怒んないの♪」



クローゼットです。

「これはルナの洗濯物みたいね。」

「昨日着てたワンピースにショートパンツか。」

「フシギダネ〜。まだ肝心なヤツが残ってるじゃん。」

「俺に言わせるな!」

「・・・・・ほほぇ〜、青地に白の水玉ですか。・・・リボンがついてるよ。」

「・・・・・・・。」

「ん?フシギダネ?何を想像したの?」

「・・人間に興味はない。」




そして寝室に戻りま〜す。

とりあえず、カスミのベッドが目についたのですが・・・。

「ぐしゃぐしゃだね。」

「性格でてるよな。」

「あ、何か落ちてる。え〜と、小説だ。タイトルは『15歳からの受難』?」

「どんだけネガティブなんだよ・・・。」

「フシギダネったら鈍感ね!昨日何があったか忘れたの?」

「・・・そっか、そりゃ落ち込むよな、シャワーズがいなくなれば。」

「女の子ってセンチメンタルなのよ。」

「せんち・・?なんだそれ?」

「・・・・・・要するに、気持ちが不安になるって事。」



ルナのベッドに来ましたよ〜!
まず最初に!

「カバンチェーック!」

アタシはルナのカバンのチャックを開けた。

「おいピカチュウ、やり過ぎだ!」

「こういう事は滅多に出来ないんだよ?」

ガサゴソとまさぐってみると・・・、

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「巾着袋だ。開けてみるね。」

紐を解く。
すると中には、普通のモンスターボールからスーパーボール、ハイパーボール等が色鮮やかにごっそりと詰まっていた。

「・・・うわぁ。」

「このボール、ほとんど汚れてるな。」

「銃の弾に使うのかな?・・・そういえば道中あちこちいったりきたりして拾ってたよね。」

「下校中にビービー弾拾う小学生か。」



次にでてきたのは・・・。


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「・・・養液だ」

「これって・・・植木とか苗木の土とかにブスッと挿す奴だよね。」
「・・・・・・・・。」

「フシギダネの分じゃないの?」

「・・・どこに挿すんだよ。」

「おしりとか?」

「ピカチュウ!これ以上探るな!とんでもない闇が潜んでる!」

「え〜!?これからなのに!」

「俺はもう充分だ!っつーか怖ぇ!」

「あと一回!あと一個だけ!」



カバンに手を入れて探ると、次に出てきたのは・・・。



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「・・・えぇ!?何コレ!?」

出てきたのはビン。
少し汚れたその空き瓶の中には、何か入っている。

「なんか、ピンクっぽいな。」

「きゃああ!?動いた!?何かモニョモニョしてるーー!?いやぁぁああ〜〜〜!?」
アタシはそれを強引にカバンに叩き入れ、カバンのチャックを閉める。

「おい!静かにしろよ!ルナが起きる!」

「ご、ごめん。・・・でもあれって何」?

「・・・・・多分、・・・ディグダのエサ(ミミズ)じゃないのか?」

「おげぇ!ミ、ミミズ!?」

「声が出けぇ!」


・・・・・ルナって・・・よくわからない・・・・・。

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スー・・・、スー・・・。

「これだけ騒いでるのによく寝てるね。」

「だな。」

さあ、締めくくりは寝顔を拝見しましょうか!

「さあフシギダネ、布団めくって。」

「俺がかよ!」

羽毛布団に包まったルナから、フシギダネはつるのムチでゆっくりとめくる・・・・。

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「・・・・・う・・ん・・。」

「「(ビク!?)」」
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「・・・・・・・・・スー・・。」

「「(ホッ・・・。)」」

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今のうちに布団をめくって寝顔を見る。

「わぁ、可愛い。」

「気持ち良さそうに寝てるし。」

布団を恋しそうに身体に抱き寄せたパジャマ姿のルナは、本当に気持ち良さそう。



「・・・さあ、取りだしましたるこの油性ペンで、いざ!」

「いざ!じゃねーよ!」

「ここまできたらいざ!」

アタシはペンのフタを開け、ルナの顔に一本の線をスーーッと引いた。

「「ぶっ・・!」」

斜めに顔に分け目が入ったにもかかわらず、起きる気配がない。

「・・ど・どうすんだよ、コレ。」

「・・そ・・・そりゃ、こーでしょ。」

アタシはペンで、鼻の下にチョンチョンと、短い線を書いた。

「「ぶふっ!・・・くくく・・・!」」

もうアタシ達は、自分の腹筋を抑えるのに必死だった。

「・・・くく・・お、俺にもやらせてくれ・・。」

「オ、オッケー・・・。」

「じゃ、じゃあ、額に、し、触角を・・・。」

「ぶふふ!!・・・・ッくく・・!!」

あああ〜〜〜〜〜!
これだからやめられないのさ〜〜〜〜♪

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5分後・・・。


「・・・はしゃぎすぎた・・。」

「・・・そうだな。」

ルナへの落書きは、笑いを通り越してドン引き状態。どこの般若?って感じ・・・。


・・スー・・・、スー・・・。


「・・・・・・もう、起こそうか?」

「タダで済めばいいけどな・・・。」

「・・・ど、どうせ怒られるんだったらさ、ちゃんとドッキリやろうよ!」

「・・・もう俺は知らん。お前に任せる。」
「あ〜ん!見捨てないで〜!」


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「・・・ホントにいくよ?」

「ああ、今日の山場だ。」

アタシは、ルナのカバンから、あの悍ましい空き瓶を取り出し、蓋を開けて、ルナの鼻先へと近づける。

ビンの中にいるウヨウヨした奴らが、外へ一気に出ようとはいずる。


「いくよ、3、」

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「2」


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「1」

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「「FIRE.」」

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ドボボボ・・・。

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「・・・・・・!!?!」

あ、ルナが目を覚ました。

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「・・・!?

・・・!!?

・・・(文字化できない声)〜〜〜〜〜〜!!?!」

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「「おはようございま〜す。」」

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ここからは、オンエアをカットさせて頂きます。これから先、私達に何があっても誰も知るよしはありません。

以上で『第一回ドッキリ企画チキチキルナの寝顔大拝見SP』を終わりま〜す!

お伝えしたのはアナウンサーのピカチュウとイケメンキャスターのフシギダネでした〜。

次回はありません!


ピカチュウ side out



美容室 ( 2012/03/19(月) 22:03 )