ポケモン世界を歩こう
ヤマブキシティ(3)
カスミ side


・・・・・お願い・・・もう止めて・・!


・・・シャワーズが死んじゃう・・!!

.

.

コイルの電撃が何度もシャワーズの首筋に流され、その度にシャワーズが体中を強張らせ、耳を突き刺すように悲鳴をあげる。

・・・私は目を閉じた・・・!

何なのよコレ!こんな事が現実な訳がない!夢よ、そうきっと夢!きっと!

こんな事があってたまるもんですか!
今見たのは、ただの錯覚よ、そうよ!


「シャ・・・!!・・ア”ア”・・!!」


ビクッ!!


ドクン ドクン

.

.

・・・ううん、何も聞こえない!
今のは幻聴!夢のつづきよ!

シャワーズは本当ならボールの中にいるもの!

目の前に居る筈がない!ましてや、傷付いて死にかけてる訳がないじゃない!

こんな訳わかんない夢、早く醒めなさいよね!

.

.

「ほらほら、目を開けなさいよ。」

・・・あの女が私の髪を掴み、顔を起こした。・・・痛いわね・・。

「あ〜あ、アンタが刃向かわなければ、この子は無事でいられたのにねえ。全部アンタが悪いのよ。」

・・・何か言ってるけど聞こえない。
・・・・聞きたくない!

「・・・フフフ、シャワーズも災難ね。こんな薄情なトレーナーと過ごして。今でもアナタの事拒絶してるわよ?・・・・・ほら、冥土の土産くらい、ちゃんと目を開けて。」

あの女が、私の瞼を指でこじ開ける。

.

ゾクッ!!!!

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

ドク ドク ドク・・・!!!!



・・・・・・・嘘よ

・・・・・・・・・・嘘よ!!

.

私は顔を振り、目を逸らせる。

「・・・あ〜あ可哀相に。完全に見放されちゃったわね〜。結局アナタの事、どうでもよかったみたいね〜。

・・・・・コイル、充電。」

.

.

.

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・嫌よ。

・・・・・・・・・ヤダ。私こんなのヤダ。

目の前でシャワーズが苦しんでる。

それを助ける事が出来ない。

見ている事しかできない。

私は体が痺れているからって理由がある。

動かない。

見ない。

聞かない。



・・・・どうしてよ。
助ければいいじゃないの。

今までそうしてきたじゃない!

私の仲間、今まで一緒に過ごしてきたじゃない!

楽しい事も、悲しい事も、全部、全部、互いに乗り切ってこれたじゃない!!





・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・そうよね、それが、出来ないんだっけ・・・。

・・・たすけることがができない。

・・・・たすけるちからがない。

・・・・・そのしゅんかんにくずれおちていく恐怖。

・・・・・・なんどもひていしてみたけど、のこるのは虚脱。

・・・・・・・とても寒い・・・・。

.

何でこんなに苦しいのよ!!
有り得ないわよ!!

もっと苦しいのはシャワーズの方でしょ!!

あんなに弱点の電撃浴びせられて!
あんなに呻き声あげてまで!

あの女に無理矢理見せさせられた時にあの子を見たでしょう!!

.

.

・・・・・・・・ねぇ。


・・・私、あんたを拒絶したのよ。


あんたが苦しんでる最中、ずっと無視してたのよ・・・。


・・・なのにあんた・・・。


私の方、ずっと見てくれていたの・・・・・・・・・?

.

.

.

「放電。」

ビクッ!!

私は咄嗟に目を開けた!

雷光がまばゆく光る!

それでも私は目を逸らさない!

.

.

「シャワーーーーーーズーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


カチ!カチ!カチカチカチカチカチカチカチカチ!!

「なんでよ!なんでボールに入らないのよぉ!」

「小賢しいわね!」

「あぐぅ!!」

頭を殴られ、地面に突っ伏す。

「アンタの絶望した顔見る為にこんな回りくどい真似したってのに!!もういいわ!!コイル!マグネットボムよ!」


コイルが銀色の光を倒れて動かないシャワーズに向ける。

.

(・・・・・・・・・・・・。)

(・・・シャワーズ・・・・ごめん・・・。)

.

(・・・・・・・・・・ギロ。)


「!!!?・・・生き・・て・・・シャワーズ!!!」


「やりなさい。」


ドゴーーーーーン!!


煙が舞う。
.

.

「シャワーーーーズ!!アンタ達止めなさいよ!!」


「コイル、どんどん連続。」


「ギギ。」


ドゴーーーーーン!!


「や!やめてって、いってるでしょ・・!!」


ドゴーーーーーン!!


「い、いやだ、いい加減にしてよ!!」


ドゴーーーーーン!!


「ねえ!!お願い!!ぐす、お゛ねがい、やめて・・・ょぉ・・!!」


ドゴーーーーーン!!


「ぅ・・うぐ・・ひぐ・・!・・ぇぐ・・!・・やめ」


ドゴーーーーーン!!


「ぅ・・!ぅぅ・・・!ぅううっ・・・!!・・・や・・・め・・・て・・・!!」


ドゴーーーーーン!!

「・・・・・ぁあああああああ!!!

ぅわあああぁぁんん!!!

助けてぇぇ!!

誰かあぁ、助けてぇぇ〜〜〜〜!!」


ドゴーーーーーン!!


「ル゛ナ゛ァ゛〜〜〜〜〜〜〜〜ア゛ア゛アア!!!!」










ドギュン!!

「がっはぁ・・!?」

.

.

.

ルナ side

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「痛いわね〜。折角いい所で、あらアンタ?・・・じゃあアイツ負けたの!?・・・だっらしないわねぇ!」

「ギギ」

・・・・・・・・・・・・カスミ・・・。

「ぅっ・・!うぐ・・!ひっぐ・・!ル゛ナ・・・・!」

・・・・・・・・・シャワーズ・・・・。

「 」

.

.

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・思えば、変な話。
カスミが最初に言った通り、こんな連中相手にする必要がなかった。

・・・・・というか、今までの私でもそう考える。
面倒な事は避けて、好きな事をして、誰よりも自由になって・・・・・。

・・・でも、ちょっと変わったかな・・・って思ってる。

ヤマブキに着いて、一悶着あって皆から狙われる立場になったけど・・・以前の私なら気にしない。
・・・逃げればいいから。





カスミ。





私の大切なともだち。

二人で一緒に居るときは余りよく解らないけど、ヤマブキから逃げるとき、何かちょっと違う・・・って感じた。


私の仲間にポケモンがいるけども、その子達とは感じ方は違う。
この子達は大切。だから護る。


カスミは大切。だから・・・・・。


・・・なんていうの・・・かな・・。



今まで私は、自分の歩く道を自分で決めていた。

フシギダネやピカチュウ、ディグダな非常食と一緒に。

カスミとは・・・一緒に・・・というか・・・。

二人で・・一緒に・・みたいな・・・・。




いうなれば・・・。



猫から人へと
少しずつ変容しているということ。



「・・・・・あんた、名前は?」

「私?ムツミだけど?」

「・・・・・私は、リナ。」

「ふうん。とりあえず、私は今からアンタ達全員始末して、本部へ帰って報告しなきゃなんないの。だから名前なんて要らないわよ。」

「・・・・・いいえ、必要でしょう。『私ムツミがヤマブキ市内で暴行を加え、ロケット団に刃向かったリナという女とその仲間を始末しました。』と。」

「どうせ死ぬんだからどーでもいいでしょ?。」

「・・・・・大丈夫。すぐ終わるから。」

「コイル!電磁砲!」

コイルの電磁砲!

「ヘリコプター。」

フシギダネのヘリコプターで、電磁砲の軌道を変えた。

「スパーク。」

ピカチュウのスパークで、静電気の特性を兼ね、電磁砲を帯電した。

「な!?電磁砲を帯電させた!?」

「ピカチュウ、前へ来て。」

ピカチュウを私の前へ来させる。

「くっ、出てきなさい!ルージュラ!ドードー!」

ムツミはルージュラとドードーを繰り出した。

「コイルはマグネットボム!ルージュラはフシギダネに冷凍パンチ!ドードーはトライアタック!」

コイルのマグネットボム!
ルージュラの冷凍パンチ!
ドードーのトライアタック!

「ピカチュウはルージュラに電光石火、フシギダネはコイルにツインウィップ、ディグダは砂嵐。」

ピカチュウの電光石火!
冷気を纏ったルージュラは電磁砲の電圧受けて感電。

ルージュラは倒れた。

フシギダネのツインウィップ!
コイルのマグネットボムに蔓で叩いて誘爆。

ディグダの砂嵐!
ドードーのトライアタックは、誘爆したマグネットボムで3つの火・氷・雷に分散。



砂嵐により、火と氷の影響で雨雲をつくり、残りの雷+マグネットボムの磁力で雷雲をつくり、ルージュラの冷凍パンチの氷結に帯電した電磁砲の電気が大気に舞う。。風を切るように巻くように強化していく砂嵐。



磁気嵐ができた。



「ひぃっ!?な、なんなのよ!?これ!?」
「ピカチュウはドードーに10万ボルト、フシギダネはコイルに稲妻落とし、ディグダはコイルにマグニチュード。」

「ちょ!?ド、ドードーはフシギダネにドリル嘴で・・・」

バリバリバリバリバリバリバリバリ!!!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!!

ピシャーーーン!!

「きゃああ!?」

《ガ・・ガ・ガガピーーーー》

「え!?嘘でしょ!?壊れてるじゃない!」
ピカチュウの10万ボルト!
ドードーは倒れた。

フシギダネの稲妻落とし!
コイルを巻き付け、地面にめり込ませる様に突き落とす。

ディグダのマグニチュード!

マグニチュード10!

急所に当たった!

効果は抜群だ!

コイルは倒れた。

磁気嵐はおさまった・・・。

《ガガガピーーーー・・・》

「くっそ!何で言うこと聞かないのよ!このポンコツ!」

「・・・・・その機械は?」

「な!?・・・コ、コイル!このアマに電磁砲!・・・・・・?・・ル、ルージュラ!サイコキネシス!・・・ドードー!トライアタック・・・・・!」

「・・・・・状況解らない?」

「・・・・・うっ・・。」


ポンポンポンポン!



ムツミの鞄の中からボールが?

スターミーにアズマオウにランターン、それにゴルダック・・・。

「・・・!?・・・勝手に出て来た!?・・・そんな筈はないわ!この装置でボールの機能を奪う筈!完全に壊れてる!」

「・・・・・説明ありがと。」

「ふ、ふざけんじゃないわよ!絶対に始末してやる!そこの女から!」

衰弱しているカスミの元へ走るムツミ。右手にはナイフを持っている。

ドギュン!!

「きゃあああ!!」

右手の甲を抑えて、ナイフを落とすムツミ。

.

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ま!まって!私はもう戦えない!本当よ!もう二度とあなた達を襲わないと誓うわ!リ、リナさんだっけ?ちゃんと本部には、始末しましたって報告しとくから・・・

「うるさい」


・・・本当に五月蝿い女。


「・・・カスミ・・・立てる?」

「・・・・・うん。」

スターミーがカスミを支えている。

「・・・・・ムツミ。」

「え?・・え?」

「・・・・・カスミは・・・私のともだち・・・。」

「・・・ルナ・・。」

「・・・・・私のともだちに手を出すなら・・・」

.

・・・・・どおりでこの子だけボールから出ないと思ったら、コイツの機械のせいだった・・・・。

私はボールを投げる。

私はギャラドスを繰り出した。

.

ドスの効いた声で発する。


.

.

.

.

.

.

.

.

.


「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」

「殺す」

.

.

「ひっ!!?い、あ、い、いやあああああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!??」


ムツミは意識を手放した。







私は、カスミのゴルダックを借り、ゴルダックに指示をする。

「・・・・・・・・ていう感じに暗示させるの・・・・・・できる?」

「ゴルダッ!!」

気絶している二人のロケット団にゴルダックの自己暗示の応用で、嘘の記憶を暗示させる。

・・・これで多分、追っ手は来ない筈。

「・・・・・・・・・・・・。」

(・・・・・カスミ・・。)

・・・ムツミに電気を浴びせられ、頭部を殴られ、自分のポケモンの死を間近で見せられた・・・。

・・・・・精神的にショックも大きい筈。

「・・・・・・・・・ルナ。」

「・・・・・・?・・」

「・・・ありがと。」

「・・・・・・・・(コク)・・・」

「私、アンタに助けられてばっかりね。バカみたい・・・。」

「・・・?・・・・・私も、助けられてる・・・。」

「え?」

「・・・道をたくさん・・・示してくれてる・・・。」

「・・・・・・・ルナ。」

「・・・・・・?」

「・・・私って・・・バカよね・・・・・・・・」

「・・・・」

「・・・最低で、自分勝手で、何がしたいんだろうね・・・。」

「・・・」

.

.

・・・・・・ギュウ・・。

・・・優しく・・・刺激しない程度に抱きしめる。

「・・・慰めの言葉なんか要らない。」

「・・・・・・カスミ。」

「・・・・・・・・・・・?」

「頑張ったね。」

「・・・・!!!!」

・・・・・カスミの肩が小刻みに震える。

「・・・・辛かった?」

「・・・ぅ・・ぅ・・ぁって、だって私!あの時何か!あの子に何か出来た筈なのに・・・・・!」

「・・・・でも、・・・頑張ったんでしょ・・?」

「・・・ひっく、な、慰めは要らないって・・。」

カスミの頭を優しく撫でる。

段々と服が濡れてきているのが分かる。

「・・・悔しいのは・・・皆一緒・・。カスミのポケモンも・・・私のポケモンだったら・・・特にピカチュウも・・。」

・・・ピカチュウは、シャワーズの躯に寄り添ってずっと泣きっぱなし・・・・。

「・・・・・カスミ・・。・・・最後に・・・認めれたんでしょ・・・・。」

「・・・・!!!・・っ・・!!!」

「・・・・今のカスミなら・・笑っていられる筈。・・・・あの中で、確かにシャワーズもカスミも辛かったかもしれない・・・・・・だけど、・・・・私を呼んでくれた。」

「・・・・・ぁ・・・と・・ぅ・・!!!」
カスミを強く抱きしめる。

「・・・偉いねカスミ。・・・よく頑張ったね。・・・・・今日だけ泣いていいよ。・・・今日だけ・・・・。」

「・・・ぅう!ぅっうえ!ぅうぅ!ひっく、ぐす、ぅぇえぁっ!!!・・・・・・・・・っっっぁ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ 」

.

.

.

.

・・・シャワーズは息を引き取った。
.


.

「・・・・カスミ。・・・あの時、あいつらと戦うなんて言わなければ・・・・・って・・・・思うときがある・・・。・・・・・・・・・・・。」

「ルナ。私のポリシー知ってるでしょう。水タイプで攻めて攻めて攻めまくるってね。」

・・・自分から”ともだち”って言うなんて、思ってもみなかった。

「・・・・・旅した時間、絆の深さ、規則正しい生活?」

「・・・なんで疑問形なのよ・・。」

・・・私は、この世界に来て、初めて自分を知ったと思う。

「・・・・・?・・・修業?」

「私もトレーナーとして1からやり直すの!だからさ、まめにバトルの相手をしてよね!」

・・・ポケモンは、私を何処までも導き、与えるだけ与えていく・・・・・?

「・・・私?・・・私は・・・、・・・日常を護るため。」

「日常かぁ・・・!それもいいかもね!(ったく、そこはあー言って欲しかったわ!)」

・・・けれど、何時しか無くなって消えてしまう事もあるかもしれない・・・。

「・・・カスミは何のために戦う・・・?」
「・・・・決まってんでしょ、”ともだち”の為。でしょ。」




美容室 ( 2012/03/19(月) 21:50 )