ハナダシティ(7)
その後、二人でポケモンセンターへ・・・。
その頃はもう既に夜になっていた。
「・・・あ。」
「どうしたの?」
「・・・・・プール。」
「明日来なさいよ。何なら貸し切りにしたげるわよ。」
「・・・(コク)・・ピカチュウ達、きっと・・・・・喜ぶ・・。」
「ルナはこれからどうすんの?」
「・・・・(ヒラヒラ)」
ポケットに入っていた、サントアンヌ号のチケットをカスミに見せた。
「え・・・!?キャーーーーーーーー!!うっそぉ!!サント・アンヌ号っていったら世界最大の豪華客船じゃないの!何でアンタが持ってるのよ!?」
「・・・・・・?・・・貰った。」
「誰に!?」
「・・・・・オーキドさん。」
ウソ百発。
・・・ホントはマサキさん。
だけど・・・、正直あの人に対しては余り共感できない・・・。
「そっかー、オーキド博士、世界的には有名だからねえ。はぁ〜。私も一度は行って見たいなぁ〜。」
カスミがため息をつく。
「・・・結構・・・・・憧れ?」
「当ったりまえでしょ!?
優雅で高級感溢れるひと時・・・。
静かに雄大な海を一望できるテラス・・・。
貸し切りのプールで泳いだ後に、ビーチチェアでゆったり・・・。
そして、豪華な船上パーティー・・・。
あああ〜〜〜!羨ましい!!」
「・・・・・・・(ピラ)」
私は、さりげなく、もう一枚のチケットを取り出す。
「・・・!?・・・そっちは何!?」
・・・・・・カスミ・・・面白。
・・・からかいたくなった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・余り。」
私は、カスミの表情を一瞥する。
最初は、何を期待していたのか、驚きの中に若干の笑みが伝わる。
チケットの2枚目を見た瞬間に、私以外の誰が使うのかを考えた事で、カスミ自身にも可能性がでてきたからこその、期待だろう。
そして、あえて溜めて、余りと公表。
カスミの顔が一変する。幼い子供が見せる無邪気な表情に近づいている感じ・・・。
・・・カスミの期待度が上がっていく。
「・・・・・?」
あえて、欲しいかどうか聞かない私。
・・・解らないフリをする。
カスミ side
な!何でルナがサントアンヌ号のチケット2枚も持ってんのーー!?
しかも、そのうち1枚は余りですって!?
超ーーー欲しいーーー!!!!
「・・・へぇ、余ってんだあ。因みに誰かと行く予定だった?」
・・・ここで間違っても、自分から欲しいなんて子供みたいな発言は避けるべき・・・!
・・・今後そういう目で見られたくないし、私の自尊心ってもんがあるのよ!
「・・・・・う〜ん。・・・元々どうしようか考え中だから・・・。」
・・・くう、ルナめ!
自分はあえて、豪華客船なんて興味ないなんて言い回しして!
先手が打ちづらいじゃない!?
・・・あれ?・・・これって逆にチャンスじゃないの?
なんなら私が使おうかという大義名分がつくじゃない!?
・・・・・でも、ルナの事だから、どっちにしろ私が下手にでたら、おこがましい感じになっちゃうわね!
どうする、私・・・!!
「行きなよルナァ!滅多に行けるもんじゃないわよ!そこら中の女の子の憧れなんだから。」
底上げよ、底上げ!
オマケに、”そこら中の女の子”と、抽象的に言い換えた事で、私に的を絞らせる作戦!
「・・・・・おいしいもの・・・食べられる?」
「そりゃ当然よ!世界中から集まったシェフやパティシエが作る料理は4つ星認定されてるものばかりなんだから!」
「・・・・・居心地・・・いい?」
「広大な海を眺めながらクルージングできるって、どんだけ贅沢よ!ほらほら、きっと楽しいわよ!」
・・・これだけ良心につけとけば、私の名前を言う筈・・・!
ここから先、ルナの表情の変化等に注意を寄せる。
「・・・でもあと1枚・・・どうしよ・・・。」
「だったらわた・・・(ぅ、えふん)・・・!・・・ルナが一緒に行きたい人を誘えば?」
あ、ぶ、な〜!!
危うく情に飲まれて、先走る所だった。
・・・まだ言うには早いわ・・!
でも、率直な質問になったとはいえ、これで誘導尋問するしかない。
「・・・・・行きたい人・・?」
「そうそう、いるんじゃないの〜?ルナにだってボーイフレンドの1人や2人くらい〜!」
レッツ!消去法よ!
ルナの事だから、あんまり人付合いとか無縁そうだし、一気に的を絞って狙いを私に向けさせるわよ。
「・・・・・・・う〜ん・・。」
よしよし、いるわけない!
このまま的を絞って・・・・・?
あれ・・・・?
ルナの顔が・・・・・若干紅く・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・嘘でしょ(サアァ←血の気が引く音)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ポッ。」
や、や、や、や、
やっちまったぁ!わたしぃぃーーーーー!!!
地雷踏んだぁーー!
折角こんなに時間かけたのに!
あれだけ注意網張ってたのに!
”ポッ”って何よ!”ポッ”って!
表現古すぎるのよ!!アンタ!!
あ”あ”あ”あ”〜〜〜〜!!
もう私マインスイーパーいや!!
「い、いや、つーか、以外だわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・?」
「あ、ゴメン。怒んないで。」
ルナ side
・・・・・・グリーンと・・、か・・・。
あーゆー所、グリーン興味なさそう・・・。
・・・一緒にいるだけでも心強いし、話しとかするの楽しいし・・・。
ボーイフレンド・・・まではいかないけど・・・。
でも、それはそれでカスミに遠慮させてしまいそうだから。
カスミは既に意気消沈としていた。
・・・結構からかい甲斐のあるヒトだった・・・・・。
「・・・・・カスミ。」
「・・・へ・・何?」
「・・・・・行きたい?」
「え・・・!?・・・ひょっとして・・!」
「・・・・・条件付き。」
「じ・・じょうけん?一体何?」
「・・・耳。」
「?」
「・・・・・耳かして・・・。」
「何なの何なの!?」
カスミはルナに近寄り、耳をかす。
「(・・・・・・ボソ・・ボソ・・・・。)」
「ホントに・・・、いいの?」
「・・・私一人じゃ、楽しくないし・・・」
「・・ルナ、大好きいぃぃーーーー!!」
カスミに万遍の笑みでフロントホールドされた。・・・くるしい・・・。
ピンピコピコリン〜♪
数日後・・・。
ハナダジムの前で、私は待ち合わせをしていた。
暫くして、中からカスミが飛び出てくる。
「ゴメーン!お待たせ!」
息を切らせて、私のもとへ駆け付ける。
「さあ、出発しましょ!目標はクチバシティ!!夢のサントアンヌ号へ!!」
晴天霹靂の元、私の隣には新しい友達がいた。
・・・気ままに一人で旅を続けるつもりでいた私にとっては思いもよらない事。
「ルナさあ、聞きたい事あるんだけど。」
カスミと出会わなければ、目的もなく、ただ茫然と、旅をしていたかもしれない・・・。
「アンタのギャラドス、何で非常食扱いなの?」
カスミが私を引きずりながら、バトルに誘ってくれた。
・・・必要とされてた・・・・・?
「やめときなさいよ!いい?コイキングの鱗や身は有り得ない位硬いのよ!彼等は泳ぎが不得意だから、流されて岩肌にぶつけて身体を傷つけるのよ。だから食べれないんだってば。」
でも・・・、
泣きながら私に・・・”ありがとう”って、言ってくれた。
この瞬間、胸の中に感じた熱い想い。
それはきっと、私は一人じゃないって感覚を覚えたんだと思う。
「煮込めば大丈夫ですって!?アンタ!自分の手持ちに何て事いうのよ!私が面倒見るわ、そのギャラドス!危なっかしくて仕方ないから!」
・・・正直、私はポケモンバトルが好きとは自分から言えない。
でも、私達の日常を護る為なら、バトルを通じて強くなろうと思う。
毎日旅をして、風を感じて、この子達とじゃれて、一番自由に生きること。
気づかせてくれたのは他の誰でもない・・・、・・・・・貴女だから・・・。
「・・・・・カスミ。・・・それが真の目的?」
「な!な、何のことよ!?」
「・・・・・・いっておく。・・・このギャラドスはおじいさん。・・・・大事にしなくちゃ・・・ダメ・・・。」
「は!?・・・だったら尚更非常食にしてんじゃないわよ!こんなに強いのに勿体ないわ!私だったら、ちゃんと・・・!」
「・・・・・本性あらわした・・・。」
「そーゆー意味じゃないってばぁ!」
「・・・・・おしおき・・。」
「ひゃ!?ちょ、まって!フシギダネ!反則!反則よ〜!脇はダメ!ちょ、ま、あっはははっははは・・・・!」
「・・・・ごめんなさいは・・?」
「フシ。」
「やめなさいよ!・・・あははは・・・、こうなったら!人質!」
「ピカピ!?」
「ダ!?ダネ〜!」
「迂闊に手を出したら、ピカチュウをくすぐるわよ〜!」
「・・・・・鬼・・。」
「誰が鬼よ!?誰が!!」
「・・・・・鬼は地獄に・・。」
ズボッ!!ズガガガガ!!
ドッシャーーーーーン!!
「きゃーーーー!?・・・なんで此処に落とし穴があるのよ!?」
「ディグ!!」
「・・・・・ディグダ、掘った後は、ちゃんと埋めとく・・・。」
「殺す気かああぁぁーー!!」
「・・・・謝ったら・・・許したげる・・・。」
「別に、人のポケモンとろうなんて一言も言ってないでしょー!?」
「・・・・・・・・・・・・カスミは、物が欲しいときには・・・遠回しに物言いする。・・・・・すぐわかる・・。」
「(ギクッ!)・・・・・何なの何か文句あんの?」
「・・・フシギダネ・・・私の鞄から・・ジョウロ出して・・・。」
「ごめんなさい、もうしません。」
カスミが仲間になった。
「・・・・・・・・・(クス)」
「ああ〜〜〜〜!?今、笑った!?」
「・・・・!・・・・・・・・気のせい。」
「ふ〜ん、アンタもそんな表情できるのね〜。」
「ピカ!」
「ダネ!」
「ディグ!」
「Zz〜。」