ハナダシティ(4)
カスミはアズマオウを繰り出した。
私はフシギダネを出す。
「つつく攻撃!」
「・・・かわして。」
アズマオウの突撃を難なくかわすフシギダネ。
「・・・タネマシンガン。」
「水に潜って!」
宿り木の種が含まれたフシギダネの銃弾を、アズマオウは水に飛び込んで回避する。
ここのフィールドは、プールサイドが足場になっていて、すぐ隣には大きなプールがあり、反対のサイドは壁になっている。
地上戦となると、移動範囲が限られてしまう・・・。
「こっちの番よ!アズマオウ、水の波動!」
アズマオウの口から水の衝撃波を受けるフシギダネ。
ダメージは小さいが、とてつもなく早い。
「・・・ヘリコプターで防いで。」
フシギダネは、蔓を螺旋状に構え、防御壁をつくる。
「アズマオウ!水の波動!」
構わず攻撃を続けるアズマオウ。
それを防御するフシギダネ。
(・・・・相手は水に入る事でスピードに特化している。・・・相手のだいたいの戦法は、自前のスピードを生かして遠距離攻撃を加えながら、隙を見つけて体当たり・・・・かな?
・・・何にしても、一度捕らえない限り、攻撃を与えることは難しい相手・・・・。)
「アズマオウ!角で突く!」
アズマオウは、泳ぎのスピードを生かし、水から勢いよく飛び出し、フシギダネを狙い撃つ。
「・・・ジャングルーム。」
フシギダネは、幾数もの蔦や蔓を出し、正面に向ける。
アズマオウが突撃する瞬間、大量の植物の蔦や蔓が増殖し、衝撃をクッションのように吸収する。
オマケに、相手の身動きを封じる効果もあるから一石二鳥・・・。
「止められた!?」
「・・・タネマシンガン!」
至近距離でのタネマシンガンで一気に勝負をつける・・・。
「水の波動!!」
次の瞬間、爆撃音が響き渡る。
あの状況で、すかさずカスミは相殺させた。・・・・さすがプロ・・・・。
フシギダネとアズマオウは互いにダメージを負った。
アズマオウはプールへ逃げ込み、再び水の波動を撃ち続けた。
フシギダネは反射的にヘリコプターでガードする。
「・・・フシギダネ、そのまま引きつける。」
「さて、うまくいくかしら?」
余裕の表情を浮かべるカスミ。
・・・?
攻防が続く最中、フシギダネに異変が起こる。
フシギダネが目を回し、フラフラし始めた。
「・・・!?」
「混乱状態にかかったわね!行くわよアズマオウ!」
・・・混乱?
状態異常のひとつ・・?
・・・私は、毒や麻痺や眠り等なら治せるが、混乱を治す薬は持っていない。
フシギダネは自分を攻撃し始めた。
「・・・くっ・・!」
すかさず傷薬で回復させる。
「アズマオウ!つつく!」
アズマオウの攻撃が命中する。
効果は抜群だ。
傷薬を使ってなかったら、やられていた・・・。
フシギダネはまだ混乱から治らない。
自分を攻撃しつづけている。
「・・・落ち着いて・・!」
「もう一度よ!」
早い動きで接近するアズマオウ。
一方フシギダネは、指示の有無に関係なく、突然蕾から花粉を出した。
何かと思い、目を見張っていたが、接近してきたアズマオウが粉に触れた途端、突然アズマオウは倒れた。
「!?・・アズマオウ!しっかり!」
アズマオウは目を回し、フラフラして動きが不安定。
フシギダネと同じ状態・・・。
私は、フシギダネと初めて会った時の事を思い出した。
『フシギダネは、感情を花粉で表現するのじゃ。』
オーキドさんは、確かにそういった。
フシギダネは、混乱状態になったことで、相手を混乱状態にする花粉を作り出した・・・・。
相手は陸地・・。チャンスは今・・・!
「・・・稲妻落とし!」
「ジタバタよ!」
フシギダネは、なんとか私の指示を聞き入れ、蔓を伸ばしてアズマオウを捕らえる。
アズマオウはジタバタを繰り返し、蔓から逃れようとする。
かなりの力・・・。・・・でも・・・。
「・・・フシギダネの蔓から抜けたのは・・・・今まで誰もいない・・・・。」
フシギダネの跳躍。
アズマオウを空中に投げ上げ、回旋。
そのまま、アズマオウの顔面を下方に向け、硬いプールサイドに叩きつけた・・・!
効果は抜群だ。
アズマオウは倒れた。
「ウソ・・・!?」
カスミは驚きを隠せずにいた。
アズマオウをボールに戻し、真剣な顔つきに戻る。
フシギダネは、混乱が治ったみたい・・・。
「やってくれるじゃないルナ!でも、それまでよ!」
カスミはシャワーズを繰り出した。
「相性の悪い相手には、それなりの対処を持つのは当たり前なのよ!」
シャワーズの冷凍ビーム!
「ダネェーーー!?」
フシギダネは倒れた。
私はフシギダネをボールに戻す。
「・・・・・・・おつかれ。」
相手はシャワーズ、体力がずば抜けて高く、簡単には倒せない相手・・・。
・・・でも・・。
私はピカチュウを出した。
「ピカアアアァァァ!!!」
凄まじい気合い・・・・。
電気袋からスパークが弾けている。
「油断大敵。シャワーズ!光の壁!」
シャワーズは、特殊防御を高めようと結界を張ろうとする。
「・・・電光石火!」
・・・させない・・・!
ピカチュウの素早い攻撃が当たり、怯むシャワーズ。光の壁を発動できなかった。
「・・・電磁波!」
ピカチュウは、シャワーズに電磁波を発する。
「水に逃げるのよ!」
電磁波を回避するシャワーズはプールに飛び込む。
ピカチュウは後を追うが、シャワーズの姿が見当たらない・・・。
水面の上から探してみても、泳いでいる気配さえ感じない・・・。
「フフ、シャワーズは水に溶けて身体を隠すポケモンなの。肉眼で見つけるのは不可能よ!シャワーズ!水の波動!」
突然、予測もしない方向から、水弾がピカチュウを襲う。
それを奇跡的にかわすピカチュウ。
「マグレにしちゃ、よくかわしたわね!でも、奇跡はそんなに起きないわよ!」
「・・・・・・電気ショック!」
「ピッカアアアーーー!!」
バチィ!!!!
ピカチュウから発せられた電撃が、プールを通電する。突然、プール全体の水面から蒸気がたちこもり、あちこちに幾つもの水しぶきが弾ける。
「な!・・・なんて威力・・。」
「・・・水は・・・電気を・・よく通す。」
水中に溶けているシャワーズも、ピカチュウの電撃に耐えられないだろう・・・。
・・・あの子の首につけているネックレス。あれは電気玉を元につくってある。トキワの森で拾ったものを、入院している間に加工して、アクセサリにした・・・。
あのアイテムは、ピカチュウの電気の威力を膨大に高めることができる・・・。
たかが電気ショックでも、威力が倍増している為、喰らえばひとたまりもないだろう。
「・・・甘いわね。」
・・・?
「さっき言わなかった?シャワーズは水に溶けて姿を隠すって。正確にいえば、身体を水に擬態させるのよね。
プールに逃げ込んだのは、ピカチュウをプールの方向に注意を寄せる為よ!」
・・・・・・・!?
「・・・ピカチュウ・・後ろ!」
「シャーーーーズ!」
ピカチュウの背後には、いないはずのシャワーズが突進してきていた。
「シャワーズ!波乗り!」
シャワーズは、体内から大量の水を排出し、ピカチュウに覆いかぶさるように、水とともにのしかかり、ピカチュウを飲み込んだ・・・!
(・・・!!・・・シャワーズがプールに入ってから攻撃した水の波動・・・。あの瞬間から・・・シャワーズはすでにプールから出ていた・・・!・・・自分を、水の波動という技自体に擬態して・・・!)
私は、カスミに尋ねた。
「・・・ピカチュウがプールに電気を流すのは・・・・・予想済み?」
「当然よ!だから敢えて居るフリをしてあげたのよ!」
・・・さすがプロだ。
自分のポケモンに合った戦い方。
何度も重ねてきた知恵や経験が、強さを物語っている・・・・。
「生半可のポケモンなら、私の水ポケモンには敵わないわ!」
・・・なら、私達は、その強さにどう補うのか・・・。
「・・・ピカチュウ・・電磁波!」
ザバァ!!
プールからピカチュウが飛び出し、奇想天外の不意打ちに驚いているシャワーズに電磁波を浴びせる。
・・・そう。
・・・・・・護ることで、・・・強くなる・・・!
自由を、仲間を、日常を
自分が生きる為に賭けている覚悟を・・・!
シャワーズは麻痺状態になった。
「ウソ!?今の波乗りが効いてない!?シャワーズの最高の技なのに!」
カスミは困惑している。
「・・・・・波乗りを喰らったのは・・・・影分身。」
「影分身!?いつそんな指示したのよ!そんなそぶり一度も無かったわ!」
「・・・バトルの時に・・・・・癖つけてるから・・・。因みに・・・電光石火のすぐ後・・。」
「・・・!!・・・シャワーズのレベルを見くびらない事ね!シャワーズ!アクアテール!」
シャワーズは、水の尻尾でピカチュウを薙ぎ払う。
スカッ・・・!
「これも分身!?」
ドカ!!
「シャーーーズ!?」
ピカチュウは、背後からシャワーズの後頭部に電光石火で攻撃した。
その衝撃の強さに、シャワーズはプールサイドに屈伏した。
「・・・・あと、言い忘れてた。」
「ピカァ!!」
ピカチュウは、倒れているシャワーズの胸倉を掴んで無理矢理起こす。
「・・・・私のピカチュウには特性があって・・・。」
「ピ〜〜〜〜カ〜〜〜〜・・・・・!!」
ピカチュウの身体から、凄まじく電圧が上昇する。今にもシャワーズが感電する勢いで、電気がバチバチと音を立てる。
「・・・・好きな人(フシギダネ)を傷つけられたら・・・・
私でも、手がつけられないくらい・・・
・・・バーサク化するから・・・。」
「ヂュヴヴゥゥウ〜〜〜〜〜!!!! 」
バリバリバリバリバリバリ!!
ビリビリビリビリビリビリ!!
ピカチュウは10万Vを覚えた。
シャワーズは倒れた。