第4話「ファンクの館の子犬」
[ファンクの館]
「ここが…」
「ファ、ファンクの館!?」
今は真っ昼間の0時頃。
なのに、館のまわりだけ、ヤミカラスが飛んでいるのだ。
それに…チックは少し震えていた。
「チック、何で震えて…」
「ぼ、僕は………【お化けが…嫌いなんだぁーーー!!!】」
空にチックの声が響いた気がした。
いや、声が大きすぎて響いて聞こえただけかも知れない。
「い…いやだよぅ…入りたくないよぅ…うわぁーー!!」
チックにも…苦手なものが…
まるで、生まれたてのヨーテリーである。
「とりあえず…中にはいってお化けがいないか確認しようよ。」
「うん………」
やっと泣き止んだチックは立ち、館へと一歩一歩進んでいったのであった。
ー昨日はチックのこと…ちょっと、カッコいい…と思ったのに。
~☆~
まず、私は慎重にドアを開けた。
ギ……ギぃぃぃ…
音だけでも不気味さを感じる。
「チコ………帰ろー!」
「ジュリーのために…いこう!」
私はそう言ってまた慎重に中にはいる。
チックも中にはいったのを確認すると、歩き始めた。
だが、その時、
ガァンッ!!!
「ひ、ヒィッ!?」
きゅうに大きな音と真っ暗になったので私もビクッとした。
だが、チックが弱音をはく声だけが響いた。
「チック、落ち着いて。なにか灯r」
「これ。どうぞ。」
どこからかランプが出てきた。
さらに声も。
「あ、ありがとう…」
私はランプを受け取って渡した正体を探したが、どこにもいなかった。
「灯りがあるからこれでいこう。さ。」
私はチックを誘った。
「灯りがあるなら…大丈夫…」
何とか落ち着いたようだ。
一瞬ほっとすると真っ直ぐ進み始めた。
~☆~
ファンクの館は2階建てで、一階の書斎、広いリビング。
二階の誰かの部屋が3部屋など、探し続けたがゴミすら見つからなかった。
そして今、二階のダイニングルームにいる。
食器やろうそくが均等に並べられている。
「チック、………!い…いない…!?」
さっきまで…いや、玄関のドアから真っ直ぐ歩くまではいたのに…
そして急に心配になった。
一人で泣いてるかも知れないし、最悪の場合も考えられる。
ダメダメ…!そんなこと考えちゃ…
だって……。
ガクガクッ……カタタ!!!
まるで邪魔をするかのように並べられていた食器などが勝手に動きだし、さらに、わたしに向かって飛んできたのだ…!
「き…きゃぁ!!!」
この部屋を出てダッシュで左のろうかへいく。
ろうかは絨毯でできており、走りづらい。
食器はどんどん迫ってくる。
さらにもうひとつ迫ってくるものが…
「行き止まり!?」
そう、ほぼ左端に来てしまったのだ。
とりあえず…ギリギリまで…!
走るスピードを少しはやくし、壁ギリギリまでいく。
でも…この先どうしよう!
と、その時だった。
「か、壁が!?きゃぁーーー………」
普通の壁がまるでからくり屋敷のようにくるっと回り、まっ逆さまに落ちていく。
あの日ーー崖から落ちた日よりも怖く、速い。
さっきいた壁のところだけ明るく、遠くなっていく………
ドカッ!
「いた………くない!?」
何でいたくないんだ…?
ん…?したになにか…
って、チック!?
あ、まずは降りないと…
「チック!起きて!」
いくら揺すっても起きない。
気絶しているのだろうか…?
「ハハハ!!さっきのやつは笑えたな。」
「あ…は、はい…」
少し明るくなっていると思ったら、ドアが少し空いていたようだ。
少しずつドアの近くへいって中の様子を見る。
「あの頭に葉っぱがあるやつ…[ぎゃぁーーー!お、お化けー!うわうわ…]とかいって気絶したときは驚いたぜ。」
「そ、そうですね…」
ムカ……
あんなことを言うなんて…許せない!
だけど…わたしだけで倒せるか…
カチ………
「うお!?急に暗くなったな…」
わたしが見ていた部屋が急に暗くなったので、なにも見えなくなってしまった。
「………さん…、ど……あ……た……」
トコ…トコ…
部屋から誰かがあるいてくる音が聞こえる。
「おいおい…?何が…」
「ちが……!…てけ…!デテケデテケデテケ…」
「いったい誰なんだよ!」
「しり…………そ…はね………」
「ワタシだよ…!!!!!!」
うすくだが何か透明じょうのものが浮かんでいる…!
「へ……!?うがーーーーーーーーー!!!」
一匹は逃げていき、もう一匹はたおれこんでいる。
透明のものがこちらへ向く。
「ワタシは…ミカタ…トクベツ…アナタ…タオレテイルアナタ…コイツ…ムラ…オクル…」
「あ…待って…!あなたは…」
そのものに正体を聞かぬまま、目の前に強い光が出たーー
~☆~
「だ……じょ……!チ……!チコ!起きてよ!」
うぅ…この声はジュリー?
でもなんで………、はっ!
急に起き上がった私にビックリしたジュリーは、ベットの横にいた。
「急に目の前に光が現れて、それが収まったらチコとチックと…」
トントン
誰かがドアのノックを叩いた。
「失礼します。わたくし、ドーバ警察のものです。入ってもよろしいでしょうか。」
「えぇ、どうぞ。」
ジュリーの声を聞いたあと、ドアが開いた。
中にはいってきたポケモンはなぜか薄茶色の薄いコートと、同じ色の帽子を被っている。
「まず、わたくしはドーバ警察の東部署のリーダーである、グライオンのグランともうします。」
「話は聞きました。あなた様のおかげで一匹を確保することができました。ありがとうございます。」
「いえ…一匹逃がしてしまいましたし…」
「それでも犯人逮捕にご協力ありがとうございます!」
「あと…ジュリーさん、ですよね?」
「あ、はい。何でしょうか?」
「この町のことです。ジュリーさん、町の町長になってくれませんか?」
「町長になるって………!えぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「もちろん、急なことなんでゆっくり考えてくださって構いません。ですが、宿のオーナーの話によりますと、町のことを一番に考えていたと聞いています。」
「ジュリー、私ね…町の話を聞いた時のことを思い出して思ったの…ジュリーならこの町を…前より美しく、明るい町になるって…」
「チコ…………。うん!分かった!わたし、やる!町を!町のポケモンを!守る!」
「分かりました。では、手続きをするために東部署まで一緒に来てくれませんか…?」
「はい。あ、少し待っててください。」
ジュリーはまた私の方を向く。
「チコ、ありがとう!これ…」
ジュリーは私に何かを見せた。
半分に割った滴のかたちをしている。
「これは、しずくのキーホルダー。わたしが持っているもう片方をあわせると…」
ジュリーの持っているシズクト私の滴が合わさった。
「これは……友達の…私だと思って!」
友達という言葉に少し心がギュッとなったのは気のせいだろうか。
「うん!」
そのあと、チックと再開した。
どうやら隣の部屋でまだ気絶していたらしい。
私たちはファンクの館方面の道へ進めばボストさんの家に行けるという。
「私ね、一つ疑問に思っていることにあるの。」
「疑問に思っていること…?」
「うん、誰かにランプを渡されたり、異様にすべての部屋が綺麗だったり…」
「ひぇ!?その話は勘弁して…!」
「でも…あれはなんだったんだろう…」
私たちは夕日にむかって今日も冒険を続ける。
だが、夕日に写った影は三つある…
「マタ…アエル。」