断章
「二匹の龍が、二つの国を支配してる。
それぞれは互いに似通っていて、そしてまるで違う存在である。
互いにいることで、世界の平和が保たれている。そう言い伝えられている。」
彼女は、ここまで読むと本を閉じた。
そして、静かに立ち上がり、窓際へと歩き出した。
「すぐにそこにある神殿。まるで太陽を突き刺すように建っているの。
太陽が一番瞬くと言われてる時間に、刺さるかのように。」
神殿を見上げ、しばらく静かな空間ができる。
また彼女は口を開いた。
「反対側の国には、月が満ちる時に刺さるかのように建っているの神殿があるらしいの。」
静寂に、ドアを叩く音が割り込む。
彼女はドアへ振り向く。
「あら、お客さんかしら……。
そうね……もうすぐ、物語は終了するのね……。」
置きっ放しの本を棚に戻し、ドアを開いた。
「私に聞きに来たのでしょう?」
────物語の、主人公さん