私は「アオヤギ」?それとも「クロキ」?
1日目 その3
「さぁ、始まりましたウラリーグ、今夜は春の三つ巴2時間スペシャルで〜す!」
天の声……すなわち、ナレーションが聞こえてきた。
この声も聞いたことがある。確か去年の春、変わったんだ。
「まずは、インテリチーム!」
「「「「「いえ〜〜〜い!」」」」」
原田を筆頭に、全員が思い思いのポーズを取る。
……あれを私もするのか……仕方ない。
「そして、人気者チーム!」
「「いやっふぅ〜〜〜〜〜!」」
テンションがとびきり高い名倉と坂本、
「いえ〜〜〜い!」
普通の1人。
「……ふぅ〜い」
無理矢理ノっていると見せようとした私と、
「……」
イラッとしている大潮。
「そして……女子アナチーム!」
「「「「「ふわっふ〜〜〜〜〜!」」」」」
テンションが高い……と、いうかいつも思うが、
ウラヌスはいつからチーム別々で分かれるようになったんだろうか?
その後、出演者の紹介がなされる。
インテリチームは……まぁ、名門大学を卒業したメンバーで揃えられている。
次に……人気者チーム。
「はい、初登場の青柳 愛華さん。小悪魔アイドルとして今飛ぶ鳥を落とす勢いの人気アイドルです」
「ど、どうも……」
笑顔を作るのは、正直苦手だ……
「で、でもさぁ青柳さん」
名倉が言う。
「何か印象変わってない?」
どきりとした。
「何か別人みたいに見えるんだけど、歌しか聞いてないからかな!?」
さらに、どきりとした。
正体がバレる……ということはないはず。
だが嫌が上にも、こういうことを言われるとドキっとする。
「なんか雰囲気違うよな!」
さらに原田が後押し。余計なことは言わないでくれ……
「でも、それあたしも思った。シャラシティで修行してるうちに、ずいぶん印象変わったよねアイちゃん」
「……」
ま、まずい。
私はいてもたってもいられず、こう言った。
「い、今までのは全部社長の命令だったんです!」
「……は?」
「社長の命令で、そう言う小悪魔的なキャラを演じてただけっす!こ、これからはあの……
 なんだ、その……」
「まとめてから言わな!」
原田のその言葉に、スタジオは笑いの渦に巻き込まれた。
……助かった……そう思っていいのだろうか?
とりあえず分かることはひとつ。

社長のせい万能説。

「続きまして同じく初登場の竹田 力(たけだ つよし)さん。
 現在は{スカッとニッポン}の強烈キャラとして人気を博しています」
先程、私に大潮とマネージャーがもめているのを教えてくれた男だ。
どこかで見たことがあると思ったら、その番組か。
……もっとも私は見たことがないが……
「早速ですけど、例の白目お願いします」
「はい!」
すると、竹田はパチンと手を叩いて……
「よろしくねぇ!」
と、カメラに白目を見せた。
「はっはっはっ……」
「……」
私は面白いが、これ子供は怖くないのだろうか。
そんなことを考えていると……
「いいから早くクイズをやりたまえ!」
と、大潮。
「こんな無駄な時間など惜しい!さっさと始めんか!」
「まぁまぁ大潮さん。もう少し待ってくださいよだってまだ自己紹介も終わってないじゃないですか〜」
堀内がなだめるが……
「黙れ黙れ!いいから始めるぞ!」
「あの、大潮さん」
「始めろと言っているのだ!わしの言うことが聞こえんのか!」
大潮の顔は真っ赤になっている。
「……」
怯えている坂本、困った顔をしている竹田。
だが私は特に怯える様子はない。
……あれは権力を傘に着ているだけの、虎の威を借る狐だ。
「……怒るわけにはいかないんすか?」
名倉に耳打ちする。
「そういうわけにもいかないんですよ〜。大御所って怒らせると何するかわかんないですし……」



結局、坂本と大潮、そして女子アナチーム全体の自己紹介がなされぬまま……
「ファーストステージ、パンポンフラッシュ!」
気を取り直し、全員が盛り上がる。
「さぁ、このステージはよく考えればわかる即答問題です。
 わかったらお手元のボタンを押してください。
 お手つきだとほかの人に解答権が移ります」
私は一人目に選ばれた。
……早押し問題……
反射神経はいいほうだと思う。
「アイちゃんがんばれ〜!」
「リラックスリラックスぅ!」
竹田と坂本の声が聞こえる。
「……」
大潮は相変わらず憮然とした顔だ。
「さあ、初登場の」
ピンポ〜ン!
「あ」
しまった。ついうっかり押してしまった。
「青柳さん、まだ早いですよ」
はははははと、スタッフの笑い声が聞こえる。
「す、すいません……」
「いいよいいよ!面白いから!」
「ははははは……」
正直名倉には言われたくない……

※なお、この問題は全てポケモンに関する問題です。
 もしよければ、ご一緒にお考えください。

「それではまいります。問題!」
ボタンに手を添える。
「あと一つ、何?」

{ひこうタイプのジムバッジ}

フェザーバッジ ウイングバッジ ?





ピンポン!
「早かったのはインテリチーム、乾さん!」
「ジェットバッジ!」
ピンポンピンポ〜ン!
「正解!」
早い……
これはぼんやりとしていられない。
「次に行きましょう、問題。この技、何?」

おおごえの しんどうで てきに ダメージを あたえる(3世代)
うるさく 響く 大きな 振動を 相手に 与えて 攻撃する(それ以降)





ピンポン!
「早かったのは女子アナチーム、後藤さん!」
「ばくおんぱ!」
ブー!
「残念お手つき!次にインテリチーム、友田さん!」
「ハイパーボイス」
ピンポンピンポ〜ン!
「……」
全くわからない。
ハイパーボイスを使うポケモンを使うチームの人物は何人も見たことがある。
だが技の効果、そこまで集中して見たことがなかった。
「どんどん参ります。問題!これ、何?」

{効果抜群の時威力を弱める木の実}

エスパー=ウタンのみ ひこう=バコウのみ
ほのお=オッカのみ はがね=?





ピンポン!
「早いのは女子アナチーム、後藤さん!」
「カシブのみ?」
ブー!
「ここでお手つき!」
ピンポン!
「インテリチーム、香取さん!」
「リリバのみ」
ピンポンピンポ〜ン!
「せいか〜い!インテリチーム絶好調!」
「……」
よくわかるな。
答えを聞いているんじゃないか?とも思ったが、流石にこの場にいて突っ込むのは野暮すぎる。
「なんだねわしに勝たせようという気はないのか!?答えを聞いているのではないかね!?」
だが大潮はあっさり言ってしまう。
「そんなわけないやないですか!そもそも先に押してたのは女子アナチームですし!」
「ふん!あの女もわざと間違えたのではないのか!?」
最初は笑い声が響いていたが、徐々に渇いた笑いになっていく……
「どんどん参ります。問題!」
しかしアナウンサーは続けようとする。さすがだ。
私もできる限り早く抜けなければ……
「あと一匹、誰?」

{ブラック&ホワイトの、イッシュ図鑑における通信進化するポケモン}

ガントル=ギガイアス ドテッコツ=ローブシン
カブルモ=シュバルゴ ?=?





ピンポン!
くそ、押し負けた。
「今度こそ抜けるか?女子アナチーム後藤さん!」
「チョボマキ アギルダー!」
ピンポンピンポ〜ン!
「せいか〜い!ようやく抜けた女子アナチーム!」
「ぬう……」
「え、てか青柳さんやばくね!?」
名倉が言った。
「はい、青柳さん、現在4連敗です」
「ぐう……すんません……」
「落ち着いてアイちゃん!リラックスリラックス!」
そうは言っても……

「仲間はずれは、どれ?」
{シビルドンが覚えない技}

きあいパンチ ばかぢから
ドレインパンチ きあいだま





「きあいだま!」
ピンポンピンポ〜ン!

「ここ、どこ?」
イッシュ地方 9番道路の洞窟





「修行の岩屋!」
ピンポンピンポ〜ン!

「この技、何?」
もてる ちからの すべてを あつめて とつげきする。
つぎの ターン はんどうで うごけなくなる。





「ギガインパクト!」
ピンポンピンポ〜ン!

「これ、どのポケモン?」
{素早さが遅いポケモン}

1位 ツボツボ 2位 ?





「ナックラー」
ピンポンピンポ〜ン!

気が付けば、私の両隣にはウラヌスの二人が立っていた。
「何やってんだよ青柳さ〜ん!」
名倉の声。
「すんません……」
8連敗って、確かそんなに簡単に出るものでもないはず。
「おっしゃこのまま一気にいったるわ!」
「青柳さんには悪いけど、このままなんの面白みもなく抜けちゃうね?俺」
……流石にスタッフや、同じチームの視線が痛い……
「では参ります。問題!」
ピンポン!
「まだ問題出てないですよ?」
はははという笑い声。私は顔から……いや、全身から火が出そうだった。
「流石にもう試合放棄したいんじゃないですかぁ?」
と、女子アナチームの一人がいい。
「ま、しょうがないよね。こんだけ負け続けならね!」
「ドンマイドンマイwww」
あちらこちらから罵声が聞こえる……
「……あんまり調子に乗るなよ……」
流石にイラッときたので、殺気を込めて言ってみた。
……が、これですら笑いになる。バラエティって恐ろしい……
「では、改めて参ります!問題!……これ、なんの街?」

とおく はなれた いこくに もっとも ちかい みなとまち






ピンポン!
「うお!?」
これはもらった。
「早かったのは、青柳さん!」
「……」
「青柳さん?」
「……」
……しまった。ボタンを押すのに必死で、問題を忘れた。
ブブー!
「……」
何をやっているんだ私は……
ピンポン!
「代わりに押したのは、堀内さん!」
「アサギシティ!」
ピンポンピンポ〜ン!
「せいか〜い!1位抜けは女子アナチーム、20ポイント獲得です!」
そんな声が聞こえないほど……
「……」
私は落ち込んでいた。
「ちょっ青柳さん暗い暗い!」
「ま、まだ始まったばっかりですから!長い長い人生、こんな経験もあるって!」
そして最後の原田は、

「あとひとつ、何?」
{特性 マジックガードを隠し特性以外で持つポケモン}

ピッピ ピクシー ピィ ユニラン ダブラン ランクルス







ピンポン!
「シンボラー!」
ピンポンピンポ〜ン!
「せいか〜い!2位抜けはインテリチーム!10ポイント獲得で〜す!
 そして!この結果……青柳さん、10連敗です!」
……背後を振り返る勇気もない……
「青柳さん。青柳さん。思ってる以上に……思ってる以上に、俺ら気にしてないから」
名倉の声。絶対嘘だ……
恐る恐る振り返る。
しょんぼりした顔の竹田と坂本。
そして……クリムガンのような顔になっている大潮……
何も言われなくてよかった。なにか言われたら罪の意識が芽生えるところだった。
「はい、オッケーで〜す!15分の休憩のあと{森先生の漢字テストツアーズ}の収録に参りま〜す!」
スタッフの声が聞こえると、私は大きくため息をついた。
「……青柳さん。大丈夫だからね」
そう言っている名倉の目は、あまり笑っていない……

休憩があるということで、私はカフェオレでも飲んでリラックスしようとした。
時計を見ると、午後8時になろうとしている。
休憩室にも多くの出演者がいる。
……だが、多くの出演者はテレビを見ながら、ガヤガヤと話をしている。
「どうしたんすか?」
「あ、青柳さん!さっきのこと、気にしてないからな」
竹田が言う。……いっそ気にしてくれ……
「あぁいや、今なんか臨時ニュースが入ったみたいでね」
テレビに映し出されていたアナウンサーが、ニュースを呼ぶ。
「……繰り返します。今日午後7時30分頃、
 ヒウンシティのモードストリートの路地裏付近で、二人組の男性が殺害される事件が発生しました。
 殺害した男は女を連れており、現在も逃走中とのことです。
 殺害されたのは、ヒウンシティ在住の小西 孝宏さんと、小津 直孝さんとみられ……」
「!!?」
煙に包まれている写真と、先ほどの名前を見てはっとした。
小西……小津……
この二人はマーシレスキングラーで同じチームだった。
二人共よく私をサポートしてくれた。その二人が、謎の男に殺された……?
「アイちゃん知り合い?」
「……い、いや。別に……」
周りを見渡すと、大潮がいなかった。
「大潮、さんは?」
「え?そういやウラヌスのお三方も見てねぇな。どこいったんだ?」
その時、
「!?」
電話がかかってきた。
「す、すいません、私です」
まさか桐生……?いや、それ以外のメンバーかも知れない。
今のニュースを見て、電話をかけてきたのだろうか。
だとするなら、ここで話を聞かれるわけには行かない。
私は女子トイレに駆け込み、電話に出ることにした。
「も、もしもし」
電話の相手は……
「おいアマカス!俺の電話に出ないとはいい度胸だな!何を考えている!」
「……?」
知らない相手だった。
「あ、あの」
「どうせいつもと同じようにメイクを落としていたのだろう?
 言わなくても分かるぞ!なにせ俺とお前はもう10年来の付き合いだからな!」
「……あの〜」
「なんとか言ったらどうだアマカス!だんまりを決め込むとはお前らしくもないぞ!」
間違い電話のくせに勝手に話を進める男に、苛立ちが募ってくる。
「そんなことよりどうだ?ダークライやクレセリアのことはわかったか?
 ……って、誰だ!?お前は!」
ようやく間違いに気付いたらしく、これまた高圧的な言い方をしてきた。
私はイライラがピークに達し、ついにこう言ってしまった。
「誰に向かって電話をしているんだ!」
と、言ったあと、電話を強引に切る。
……そしてまた、同じ番号からかかってくる。
「おい!俺より先に電話を切るとはいい度胸だ!名前を聞いておいてやろう!」
名前を聞いておいてやる……?そっちこそいい度胸だ。
私は思い切り相手を馬鹿にする意味合いで、こう言ってみた。
「……青柳 愛華。通りすがりの……たい焼き屋さんよ!」
……だが、すでに電話は切れていた。
「たい焼きがどうしたの?」
しかも坂本にそれを聞かれていた……
「あ、あぁ……いや……ど、どうしたの?坂本」
変なこと言うんじゃなかったと、心の底から後悔した。
「もうすぐ収録始まるから、スタジオに入っておくようにってスタッフさんが言ってたよ」
「うん、わかった。今行くわ」
トイレから出ると……
「あとあたし、たい焼きは尻尾からだな〜」
と、坂本が言った。頼むから忘れてくれ……



「さぁ、セカンドステージは森先生の漢字テストツアーズ。
 今日はどんな問題なんでしょうか。森先生!」
モニターに、森が映し出された。
「はい。まずレベル1は読めないと恥ずかしい漢字。
 レベル2は同音異義語。同じ読み方でも違う漢字を書いてください。
 レベル3は書き間違いが多い漢字。
 そしてファイナルは僕からの最終問題。ま、基本的に正解させるつもりは、ありません!」
ドヤ顔で森が言う。そう言われると答えたくなる。
「いいか!わしの見せ場をちゃんと見るのだぞ!いいな!?」
最初は大潮らしい。相変わらずやかましい奴だ……
しかし漢字は読むことは出来るが、書く事は個人的に難しい。
そう考えると昔のほうが良かったのだが……っと、話を戻す。
前をじっと見据え、静かに息を整える。
……さっきの汚名をなんとしても返上しなければ。
私は静かに闘志を燃やした。
……燃やす場所が違う気がするが、とりあえず気にしないでおこう。

バタフライ ( 2016/07/03(日) 22:38 )