解決編
店内に入ると、相変わらずダイが座っていた。
「まず、犯人が八雲さんにだけ毒を飲ませた。その手順から」
すると日野は、ダイと金城にプラカードを下げた。
「ダイさんが月島先輩。金城さんが八雲さん。という形で話を進めて行きます」
「それ、お手製か……?」
ダイは最初こそ戸惑っていたが、
「僕みたいな三文芝居でもいいなら、喜んで手を貸すよ」
と、快諾した。
「私は犯人の役を」
まず、月島先輩と八雲さんは、言い争いをしていました。
「お、お前の母ちゃん出べそ!」
「精神年齢が低すぎるよ金城さん」
か、金城さんのボキャブラリーは放っておいて……
そして八雲さんは月島さんに水をかけます。
当然月島先輩は、びしょびしょになったでしょう。
月島先輩の衣服にかかった水の量から、水はほとんど飲まれていなかったか、飲んでいなかったでしょうから。
そしてそのあと、トイレに立った八雲さんを見送った三田村さんが服を拭きに来ます。
大丈夫ですか?お客様。
「あぁ。僕は大丈夫だよ」
その布巾で月島先輩は体を拭いたあと、
細谷さんがコーヒーを持ってきます。
あ、細谷さんの役割を決めていませんでした。火川さん。お願いできますか?
「え?俺?」
お願いします。
「……わかった」
トレイを持って、左手で品を渡すふりをしてくださいね。
「お、お待たせいたしました〜」
「あぁ。ありがとう」
月島先輩はそれを受け取ります。
……受け取って、しまいます。
この時先輩にとって不幸中の幸いだったのは……
先輩がホットコーヒーを頼んでいたことでしょう。
アイスコーヒーなら、淵を持ってしまった可能性がありますからね。
そして月島先輩は、細谷さんに手渡されたアイスコーヒーの上の方の淵を持ち、
アイスコーヒーを彼の前に起きます。
そこへ八雲さんが戻ってきます。
八雲さんはストローを使わずコーヒーを飲む。それを知っていた犯人の思惑はまんまと当たり……
「うぐ!く、く〜る〜し〜い〜……ガクッ」
このように、息絶えてしまいます。
これが犯人の使ったトリックです。
「ちょ、ちょっと待て。じゃあ犯人って……」
「えぇ。私は犯人の役を演じる。そう言いましたよね?」
そして日野はビシッと指をさし。
「あなたですよね?三田村 明博さん」
場が一瞬凍りつく。
「ちょっちょっと待ってくれ」
月島が声を上げる。
「俺が犯人じゃない。そう認めさせたいのはわかったよ。だけど、三田村さんが犯人なら、どうやって毒を盛ったんだ?」
「簡単ですよ。彼は毒を、あの人の水に含んで入れていたんです」
さらに日野はコップを取り出し……
「この水の中に毒薬を入れ、まずは直接飲ませようとしたんでしょう。しかし、八雲さんは水を飲まなかった。
そればかりか、月島先輩にその水をかけるという、大ハプニングまで起こってしまいました。
そこで三田村さんは、咄嗟に布巾を持ち出し、月島先輩を拭いたんです」
「ま……まさか……」
「そうです。<布巾で拭く>という月島さんの行動を通して、月島さんの手に毒入りの水が付いてしまい、
その濡れたままの手で月島さんがコーヒーのグラスの上側を持って置いてしまったことで、
毒は八雲さんが飲むコーヒーのグラスに付着してしまったんです。
しかも、上側だけに、ですよ」
すると三田村は……
「じゃあ一番怪しいのは俺じゃねぇだろ」
「え?」
「だって、コーヒーを持ってきたのは細谷だぜ?細谷なら、いつでも毒を盛れたはずだ」
「毒を盛ることなんて出来ませんよ。それは厨房からここにやってくれば分かります。火川さん。ついでにお願いできますか?」
火川は一瞬何を言われたかわからなかったが、
「わ、わかった」
厨房から普通に出てきて、月島の席の近くへ移動。
その際、ダイと金城が座っていた席の前を通る。
「なるほどね。下手な動きをしたら、金城さんに目撃されちゃうというわけか。
一応聞くけど、金城さん、細谷さんはなにか怪しい行動をした?」
「いえ、まっすぐに月島さんの席に向かい、コーヒーを手渡していました」
「うん。この証言は信用していいだろうね。金城さんが嘘をつく利点がないもん」
日野はさらに続ける。
「次に、これをご覧下さい」
それは、金城の証言を記録したメモ用紙だった。
私たちは午後4時40分頃、このカフェに入ってきました。
そして10分ほど後に、八雲さんが来店。月島さんがこのカフェに入ってきたのは、午後5時頃でした。
ちょうどこのカフェは満席になっていて、月島さんは被害者の八雲さんの向かいに座りました。
そしてふたりが口論になったあと、八雲さんは月島さんに手にした水をかけ、トイレに立ちました。
慌てて従業員である三田村さんが、布巾を取り出し、月島さんに手渡すと、
月島さんは念入りに服にかかった水を拭き、その布巾を返していました。
その後、月島さんの席に、細谷さんがホットコーヒーとアイスコーヒーを運んできました。
月島さんはアイスコーヒーを受け取ると、八雲さんの目の前に置き……
そして月島さんは、ホットコーヒーを飲みました。
その直後……大体1分もなかった時間で、八雲さんが帰ってきて、
再び月島さんと口論になり、その最中にコーヒーを飲み……
そのまま、帰らぬ人となりました。
ダイさんが電話をするよう訴えるのに時間はかかりませんでした。
通報をしたのは滝川さんで、間違いはありません。
「それがどうしたんだよ?」
「この話が本当だと、明らかな矛盾が発生するんですよ」
「どんな矛盾だよ……言ってみな?」
「ここです」
私たちは午後4時40分頃、このカフェに入ってきました。
そして10分ほど後に、八雲さんが来店。月島さんがこのカフェに入ってきたのは、午後5時頃でした。
ちょうどこのカフェは満席になっていて、月島さんは被害者の八雲さんの向かいに座りました。
月島さんの席に、細谷さんがホットコーヒーとアイスコーヒーを運んできました。
「八雲さんが来たのが午後4時50分。そして月島先輩がやってきて、ホットコーヒーを頼んだのは午後5時頃……
なのにどうして、八雲さんのアイスコーヒーと月島さんのホットコーヒーが出来上がるのが同時だったんですか?」
「うぎ……!」
「……お答え願いますか?」
「そ、その時はほら、あのふたりが来店してたんだよ。ホットミルクティーとストロベリーサンデーを頼んでたから、立て込んでたんだ!」
するとダイが。
「おかしいなぁ。僕は八雲さんがきた頃にはまだストロベリーサンデーを頼んでないんだけど」
「!?」
月島も思い出す。
「確かに……そうだ。俺が来た頃にはまだ、ダイさんのストロベリーサンデーは2,3口食べられていたくらいだ」
「だからなんだよ!そんなのが俺がやったって証拠に……」
「なるんじゃないのかな?」
ダイが引き続き続ける。
「だって、君は食事を作っていなかったはずだよ。かと言って、その時レジにいたわけでもない。
ストロベリーサンデーや料理を作るのは滝川さんの役目だし、
レジ係は細谷さんの役割だろうしね。現に僕は滝川さんにストロベリーサンデーを作ってもらうよう言ったんだよ?」
「う、うるせぇ!じゃあ俺がやったっつー証拠を見せてみろよ!俺がどうやって、あの人の水に毒を混ぜたんだ!」
血が上る三田村。
「でもさ、三田村さんもかわいそうだよね。犯人に仕立て上げられるなんてさ」
「え……?」
だが、ここで急にダイが180度態度を変える。
「だって君は、本当にやってないんでしょ?だったらもっと声を大きくして否定しないと」
「お、おう!やってねぇよ!俺はやってないって!」
「それに厨房にあった手袋はおそらく毒薬を入れるときに使ったんだろうけど、あれは三田村さんには入らないよ」
「て、手袋!?」
唖然とする三田村に、ダイが続ける。
「そう、手袋。君には到底入らなさそうな、小さな手袋だったよ」
「そ、そうか……わかったぞ……!俺に罪を着せるために、犯人は手袋を用意して、俺の犯行に見せかけたんだ!そうだよな!細谷!」
「えぇ!?」
大きく驚く細谷。
「だってお前しかいねぇだろ!あんな青い手袋を用意して……手袋は男と女で色が違ったはずだ!」
「そ、そんな……!」
さらに火川が……
「それに、厨房からはあなたの指紋が検出されなかった。これはあなたが、手袋をはめて何かをしていたことにほかなりませんね」
「ち、違う!僕じゃない!僕じゃないんだってば!」
「あなたのポケモンはクロバット。それを使えば、どうにかして毒を盛れたはずですよ」
「……」
ついに無言になってしまった。
「では、続きは署で……」
と、火川が言った時だった。
「しかし、すごいね!」
急に大声を出すダイ。
「な、何ですか?」
「だって、捨ててあった手袋の存在を知らずに、手袋が青色だって分かるなんて、超能力者か何かになれるよ!三田村さん!」
「……!?」
一瞬安心しかけた三田村の顔が、一気にこわばった。
「それとも、まさか手袋を見たのかな?どこかで」
「言っておきますが、勘で言った……という理論は通用しませんわよ」
「……」
その言葉を聞いたあと、日野は続ける。
「細谷さん。あなたはどうして、ずっとその手袋をはめていたんですか?」
「そ、それは……」
細谷は手袋を取ると、右手に霜焼けが出来ていた。
「なるほどね、それを見られると確かに不快になる人はなるだろうね。それに水回りの仕事なら、霜焼けの手に大ダメージだよ。
厨房に指紋がなかった理由も、持ってきたコースターやグラスに指紋がなかった理由も、これで説明できるね」
「ご、ごめん……でも、どうしても水がしみるから……」
しかしそれでも引き下がらない三田村。
「じゃあ俺がどうやって毒を入れたか、言ってみろよ!」
「……どうやって、ねぇ……」
そこで月島が気付く。
「……あれ?日野は?」
「では、三田村さん」
急に日野が厨房からやってくる。
「あなたが本当に何も知らない。毒など知らないというのなら……」
「!?」
グラスの水を手渡し、
「このお水を飲んでください。先程、厨房にあったお水入れからお持ちしました」
「あ、い、いや……その……」
「飲めますよね?」
「し、歯周過敏なんだよ俺。だからあんまり冷たいのは……」
逃げようとする三田村。
「それは飲めませんよね。なぜなら……」
「じゃあ僕が飲むよ。ちょうど喉が渇いてたし」
「!?」
奪うようにしてダイは、日野の持っていた水を一気に飲んだ。
「いやぁおいしいね。甘いものには普通の水がよく合うよ」
「お、おい……お前……!」
「ん?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「どうかした?」
「……あ、あれ?」
「どうかしたのかな?三田村さん。まさかとは思うけどさ……これが本当に厨房にあった水入れに入っていたものだと思っているの?」
「え?」
唖然とする三田村。
「三田村さん。あなたは今、決定的なミスを犯しましたよ」
「な……!」
「本当に毒をどうやって入れたのか知らないというのなら、あなたはダイさんを止めなかったはずです。
なのにどうして、あなたはダイさんを止めたんですか?」
「あ、いや、その……」
そして金城がこう言った。
「日野さん。彼はこのまま黙秘権を行使し続けるはず。この事件の幕引きは、あなたが行うのです」
「……はい」
三田村さん、あなたは八雲さんを殺害する目的で、お水に毒を混ぜたんでしょう。
そして八雲さんが来店し、その水を注ぎ込みます。
その後、毒入りの水を使われないようにするため、あなたはずっと厨房に残り続けました。
あなたの目的は、八雲さんだけを殺害すること。
ほかの人を巻き添えにするわけには行きませんからね。
しかし八雲さんは渡された毒薬を飲むことはなく、それを月島先輩にかけてしまった。
あなたはそうなることも見越して、タオルを月島先輩に手渡し、
直接的ではないですが、月島先輩に毒殺させたんです。
そしてその後、あなたは証拠隠滅に取り掛かった。
空の毒薬の瓶を厨房の外に投げ捨て、そしてゴミ箱に、たった今使ったと思わせる青い手袋を入れる。
その青い手袋は、あらかじめあなたが用意していたものだったのでしょう。
そしてあなたは毒入りの水を処分しようと、そのお水入れを持った瞬間……
「三田村さん。ちょっといいかな?」
「!?」
ダイさんに目撃されてしまった。
「今から現場検証をしたいって、鑑識さんが言ってるんだけど、構わないよね?」
「い……いいっすよ!」
そのせいで、あなたは毒入りの水を処分することができなかったのです。
そしてそのまま、先ほどの、毒入りの水……
……ではなく、普通の水を飲むダイさんを止めようとしてしまい、あなたは尻尾を出してしまった。
「間違っている部分があるなら、反論してください」
「……」
「ですが、あなたのポケモンを見れば一目瞭然ですよ」
日野がモンスターボールに手を伸ばし……
ポン!
アマルルガを出す。
「……月島先輩。最後は……お願いします」
「え?」
「だって……私は月島先輩がいないと、何も出来ませんから」
「……」
月島は右手を伸ばし、アマルルガの周囲に円を書いた。
アマルルガ 親:さんだ 技:フリーズドライ 10まんボルト ストーンエッジ エコーボイス
「……フリーズドライ。だな」
月島がこう言った。
「先程も言ったとおり、あなたの使った毒は揮発性が強く、水より軽いため」
「気体と化さないように氷にして水に混ぜ、じっくりと毒を水に混ぜた」
「そのために使ったのが、アマルルガです。アマルルガのフリーズドライで、液体の毒薬を氷に変え……」
「そして水入れに混ぜ込んだ……もちろん。俺が飲む水はただの水道水を利用して、俺が死なないようにして」
月島、日野。二人同時に指をさし……
「お前の負けだ」「あなたの負けです」
「「三田村 明博さん」」
「……」
三田村は口をあんぐりと開けて……
「ち、ちくしょう……完璧な……完璧なトリックだと思ったのに……!」
膝から崩れ落ちた。
「ゆ、許せなかったんだ!あいつが!俺から……何もかもを奪ったあいつが!」
「……」
「俺はこのカフェにバイトで入る前……自分の店を持ってたんだ……だけど、あいつが店のことに難癖をつけて……
やってきては何かしら文句をつけて、俺の店の評判をガタ落ちさせてきた!
俺のカフェはあっという間に閉店して……ずっと俺は一人だった……
田舎で暮らす両親のためにも、ここで諦めるわけにはいかない……だから俺はこんなボロっちいカフェでも働いてきた……」
キッと、鋭い眼光を上げて、
「だけど今日来たあいつにそのことを話したらどうだ!?」
「……あぁ。そんなカフェ。あったようななかったような。
悪い悪い。いちいち閉店するようなしょぼくれたカフェなんて覚えてねぇよ」
「……その瞬間。俺が抑えていた感情が爆発したよ。あとはあんたたちの推理通りさ」
「……」
すると……
「あはは……」
ダイが突然、口を開けて笑い出した。
「あははははははははは!そんな理由だけで君は人の命を奪うことが出来るんだね!」
「て、てめぇ……!」
怒りに身を任せる三田村。
「お前に俺の気持ちが分かるかぁ!?」
「わかるわけないよ。人を殺すような人の気持ちなんて、分かりたくもないしね」
「て……」
猛スピードでダイにダッシュ。
「てんめぇ〜〜〜!」
「……」
ドッゴォ!
「……あのね。君はすべてを奪われたと言っているけど、それは勘違いも甚だしいことだよ」
ダイの右の握りこぶしが、三田村の腹部を正確に捉えていた。
「がっ……」
「だって君はまだ命があるじゃないか。彼に怨み妬みを抱く。そんなことをするより先に、
<0からやり直す>という選択肢もあったはずだよ。
それなのに彼に変なことを言われただけで殺しちゃうなんて、信じられないって言ってるんだよ」
「ごっ……」
「君は最低で……な人間だ。君には罪を償うことで、マイナスからのやり直しを進めるよ。
君のような独りよがりな人間に、それが出来るわけないだろうけどね」
そのまま三田村は、ずりずりと地面に倒れふした。
「さて、あとは任せるよ。刑事さん」
「お、おう……」
と、火川が手錠をかける。
「つ、月島……先輩……」
「ありがとう。日野。……お前がいなきゃ……俺は……」
「い、いえ。その……私が事件を解決できたのは、ダイさんと金城さんのおかげですから」
「でも、解決しようとしていたのはお前だってことは、十分に分かってる。本当にありがとう」
日野の頭を撫でる月島。
だが、次に月島は意外な行動に出た。
「……待てよ。ダイ」
「え?」
ドッゴォ!
「ぐほ!」
右頬をグー。ダイは軽く吹っ飛んだ。
「……な、何を……」
「いや、ダイって呼ぶのもなんだか恥ずかしいからこう呼んでやるよ」
「こんな所で何やってんだよ!兄貴!」
……月島 大樹。29歳。
月島 和也の兄であり、元刑事。
コーストカロス方面の数多くの事件を解決してきたが、ある日を境に刑事をやめ、探偵事務所を開いたらしい。
金城はその部下にあたる。
今でもシャラシティを中心に活動を進めている。
「人を殺すような人の気持ちなんて、分かりたくもないしね」
これは彼の決め台詞だった。
それを実の弟、月島は覚えていた。
「……」「……」「……」「……」
月島、大樹、金城、ゾロ子。
この4人が月島の家の床に座って一体どれぐらい時間が経っただろう。
「……あの。そろそろ機嫌を戻してくれないかな?」
「戻せるかぁ!お前のせいで俺危うく逮捕されるとこだったんだぞ!」
「いやいや、でも和也が容疑を認めていたのもまた事実だよね?」
「そ、それは……と、とにかくまず謝ってくれ。まだお前からごの字も聞いてないぞ」
すると……
「ご」
・ ・ ・ ・ ・
「そういう意味で言ったんじゃねぇよ!ちゃんと謝れって!てかいい加減にしないとゾロ子を逃がすぞ!」
「え!?なんであたしに飛び火すんの!?」
「まぁまぁ。落ち着いてください。日野さんを見習ってはどうですか?
あのお方は礼儀正しくて、落ち着いているお方でしたよ。
それに……あなたたちと違って純真ですし」
と、金城がなだめると……
「俺は兄貴と違って」「僕は和也と違って」
「「純真だ」」
「……あなた方、本当は仲がいいでしょう……?」
再び床に座り直したあと、
「……で?」
「ん?」
「シャラシティからはるばる歩いてミアレにやってくるほどだ。よっぽどの要件があんだろ?兄貴」
「あはは。和也はお見通しなんだね。そう。僕と金城さん……二人で今回はとある依頼を持ってきたんだ」
そう言うと、大樹は真剣な面持ちになって、
「僕と和也の父、月島 春次郎(つきしま はるじろう)の
未解決事件……」
「!?」
その言葉を聞くのは、10年ぶりぐらいだった。
「ブラッド・ハイドレイゴンのゼツボウサーカスが、開演の時を待っているよ」