第十話 全てを知る女
「……これで、6体目か」
新聞の記事を読むカズマ。記事には巨大なエンプティのオニゴーリの姿が。
「浦川先生。最近のエンプティなのですが、前回のジーランス、今回のオニゴーリ。共に変異ウイルスに冒されておりません」
「そうか。これは一体……」
「もしやエンプティは、何らかの原因で変異ウイルスを発症するのでは?外部からの干渉とか……」
「その可能性も捨てきれないか」
腕を組むカズマ。と、ここで……
「そういえば、あっちゃんは?」
「あれ?浦川先生、今日は見ていないのですか?」
その日の夕方……
「はぁ」
小テストの成績を見て、ため息をつくシズル。
「そうくよくよするな。今回がダメだったら、また次頑張ればいいんだよ」
「そうだよシズルちゃん。そんな風に落ち込まないで」
「……はぁ」
ため息しか出てこない……
「元からシズルって、頭悪かったの?」
「おい、いくらなんでもストレートに言いすぎだろ」
「小学校の頃も、テストの成績が悪いってよく言ってたもんね……」
そして交差点に差し掛かる。
「じゃあオレとナナはこっち」
「私はこっちだから」
「うん、またね。みんな」
シズルは3人と別れ、また歩きだした。
と、その時だ。
「?」
前方で、うつ伏せに倒れている女がいた。
「ど、どうしたんですか!?」
女は茶色のサイドアップテールの髪、さらには黒を基調としたジャージを履いている。
「う……うぅ……」
「く、苦しいんですか!?きゅ、救急車呼びましょうか!?」
「うぅ……」
グギュルルルルル〜……
「?」
「おなか……減って、かなん……」
「か、かなん?かなんってどういう……」
その言葉を最後に、女は意識を失ってしまった。
「ちょ、ちょっと、しっかりしてください!目を、目を開けてください!」
シズルの家、食堂。
ガツガツ!ムガムガ!パクリパクリ!ガツガツ!
女は目の前に運び込まれた食事を次々と口に流し込んでいる。
「す、すごい食欲ですね。相当お腹減ってたんですか?」
「ん、%$&#※@☆Σ△×!」
「あ、飲み込んでからでいいですよ?」
ごっくん。
「うん。……ほんま、死ぬかと思った……ダーリンに頼まれてここまで来たんやけど、道に迷ってもうて……
助けてくれて、ほんまおおきに!」
「お、おおきに。です……」
10分後、出された大量の料理は、あっという間に女の胃袋に収まった。
「はぁ〜、もう幸せやわ〜」
目を閉じたまま、女は幸せに包まれている。
「あの、ちょっと聞いていいですか?」
「ん?」
「あそこで何をしていたんですか?倒れていたんですけど……」
「あぁ。道に迷って倒れた。以上やで?」
それだけを言うと、女は立ち上がった。
「じゃ、うちはダーリンのとこ行かんと。お世話になりました」
「あ、待ってください。今……」
「え?」
外を見ると、大雨が降っていた。
「今夜はずっと雨って言ってました」
「う、マジなん?……困ったなぁ。どないしよっか」
腰に手を当てる。
「あの、もしよかったらここに泊まっていきませんか?」
「ええのん?」
「はい。お父様もお母様も、今日は帰ってこないと言っていました」
「ほんま?ありがとう!」
女は安堵した様子である。
大浴場。
「こんな広い風呂、初めて見たわ……ギャラドスが水吐いとるし」
いや、正式には彫刻なのだが。
「すいません。落ち着きませんか?」
「うんうん?旅館みたいでええと思うで」
湯船に浸かる二人。
「お湯加減どうです?」
「……ちょっと熱い」
「はは、私たち、熱めのお湯が好きなんで……」
頭にタオルを乗せ、ゆったりと浸かる。
「……そういえば、まだ名前を聞いていませんでしたね?」
「うち?うちはアキラ。まぁ、しがない女の子やで」
アキラと名乗った女は、プカプカと湯船に浮かんだ。
「なぁ。そういや知ってる?」
「え?」
「エンプティってバケモン」
「あぁ、いるみたいですね。暴れているみたいで、なんだか怖いです」
「君、大変やったね。だって、一回襲われたんやろ?」
どきりとした。
なぜ、部外者であるアキラが私が襲われたことを知っている……?
「な、な、なにを……?」
「よう無事やったね。もしかして、君を助けた子がいるとか?」
「い、いませんし、私は襲われていません!最近になって存在を知ったんです!」
「……なんでそこまで必死こいて否定すんの?」
にじり寄ってくる。
「もしかして、やっぱり図星?」
「……!?」
手玉に取られているような気がする。
シズルは焦り、湯船を出た。
「あれ?どないしたん?」
「ゆ、湯あたりしそうですから!もう出ます!ゆ、ゆ、ゆっくりしていってくださいね!」
そしてそのまま、大浴場を出て行った。
「……変な子。ぶくぶく……」
「はぁ……はぁ……ど、どうしよう……」
部屋に戻ったシズルは、激しく動揺していた。
軍事の最高機密である自分のことを、なぜ彼女は知っているのだろう。
冷や汗が止まらない。……せっかくお風呂に入ったのに台無しである。
「まさか……」
無い知恵を絞り、シズルはアキラの正体を考えてみる。
もし彼女が、エンプティ関連で、何か知っているとしたら、もし彼女が、私たちに敵対するような人物だとしたら。
これは由々しき事態。シズルは携帯電話に手を伸ばし……
「とりあえず、浦川さんに」
と、カズマに電話した。
しかし、なぜかカズマは電話に出ない。
「ど、ど、どうして……?」
「なぁ、君」
「!?」
心臓が止まるかと思った。部屋の外には、頭にバスタオルを巻いたアキラがいた。
「あ、アキラ……さん」
「……」
アキラは何も言わず、こちらに向かって歩いてくる。
「……!」
「逃げんといて。すぐに済むことやから……」
まずい、やられる。
思わず大きな声をあげようとした時、アキラが、
「……はい」
「え?」
髪留めを手渡してきた。
「脱衣所に置いてたで。忘れ物」
「あ、あぁ……ありがとう、ございます」
髪留めで髪を結ぶ。
「……えぇ子やね。ちゃんとお礼が言えるなんて。ホンマに」
「あ、あはは。そ、それより今日はもう、お休みになってください。私が寝室まで案内しますんで」
「いや、ここで寝たらあかんの?」
「!?」
またしても伸び上がるシズル。
「どどど、どうして!?」
「どうしてって……意味はないよ。ただなんとなく?」
「い、いえ、わ、私が困るんです!私が」
するとアキラは再び睨みつけて、
「もしかしてうちのことを誰かにばらそうとしてるやろ」
「!?」
冷たく言い放った。
「堪忍して欲しいなぁ。うちはただ宿を借りとるだけやのに」
「あ、い、いやだなぁもう!そんなことするはずが」
「後ろに回した右手は何なん?」
「あ……!」
バレた。
「食事してる時も君は右手でナイフ持っとったのに、髪留めを左手で結ぶのはおかしいやろ。
そんなうちは鬼じゃないんやから、ちょっと隠すくらいやったら怒らへんよ」
「で、ですか。はい。すいません」
その夜。
結果、アキラはシズルの部屋のソファーで眠ることになった。
「……」
当然、シズルは眠れるはずもない。
うちは鬼じゃないんやから
だが、おそらく自分は命を狙われている。
それに下手に連絡をすれば、マイやカエデ、ナナにも……
それだけではない。一体どれぐらいの人に迷惑をかけるのだろう。
「……ど、どうしよう……」
「何を怖がることがあんの?」
「!?」
アキラが声を発するたび、心臓が飛び出しそうになる。
「うちに気にする事無く過ごしてくれたらええんよ。うちはお世話になってる方やし」
「え、えぇ……」
「それに、寝らな明日、エンプティが来たら困るやろ?」
ドキリ。
「君だけやなく、他の3人にも迷惑かかんねんで」
「……」
見透かされている。見透かされまくっている。
シズルは得も言われぬ恐怖に苛まれた。
翌朝……
……不思議なくらい、よく眠れた。
おそらく恐怖で、体が疲弊しきっていたからだろう。
目の前には、アキラが自分のことを覗き込んでいる。
「!?」
跳ね起きるシズル。
「おはようさん」
「お、おはようさん……です」
「朝ごはん出来とるで」
食堂に行くと、フレンチトーストが置いてあった。
「これ、うちが作ったんよ。よかったら食べて〜な」
「……」
アキラが作ったというフレンチトースト。
何か、薬でも混ぜているのではないだろうか。……ドラマみたいに。
そして、動けなくなった自分をアキラはどうするつもりなのだろう。
「今日学校なんやろ?はよ食べ〜や。遅刻すんで」
「……」
思い切ってシズルは、芝居を打ってみた。
「う〜、おなかが〜……」
「?」
「おなかが、おなかが痛いです〜。これは食べられないです〜」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「……大根」
「……う〜?」
「もしかして、フレンチトースト嫌いなんか?」
大好きです!○わず嫌い王決定戦に出せるほど!
「そんな下手くそな芝居打ってまで食いたくないっていうとか、あんたもしかして、アホなん?アーホーなん?」
「……」
「……まぁええ。無理して食うとなっても悲しいやろ。うちが代わりに」
「食べます!是非、食べますよ!」
シズルは思い切りほおばった。そして……
「……!」
突然苦しさに襲われ、喉を押さえた!
「あ〜もう、急いでかき込むからやで。はい水」
と、アキラはコップを差し出す。
……このコップにも何か仕掛けが……?もはや何もかもに疑心暗鬼だ。
「何しとん!窒息したいんか!?」
ぶるぶると顔を横に振り、水を流し込んだ。
「はぁ……はぁ……」
「もう、しっかりしぃや」
……今度はゆっくりと食べてみる。
「お、おい……しい……」
「一応料理はたっぷり作っとるからね。ほんまはもっと凝った料理作りたかったんやけど、ちょっと寝坊してもうて」
「そ、そうなんですか……」
すべて食べ終わったあと、時計を見ると、
「うわぁもうこんな時間!?ち、遅刻しちゃう!」
慌てて準備をしようとするが、
「はい、カバン」
「え?」
アキラがカバンを取り出す。
「ごめん。ちょっと用意させてもらってん。あ、ノートとか中身見てへんから安心して」
「ありが、とうございます」
「あとこれも。丹精込めて作ったから、食べてみて?」
箱の中には、サンドイッチが入っていた。
「……」
もはやあれもこれも怪しい。だがここで断っては、時間がなくなる。
足早に飛び出そうとするシズル。
「そない焦らんでも、変身すればええんとちゃう?」
「え?」
「<スタートアップ!アルタリア!>ってね」
聞こえない振りをした。内心は心臓が飛び出しそうだった。
シズルは逃げるように、家を飛び出した。
「……」
その時、アキラの携帯が鳴った。
「もしもし?……あぁ。出ましたよ。しっかりと。……大丈夫」
すると、アキラは笑みを浮かべ、
「うちも、行動しますよ」
その日の昼休み。
「脱出シーン、主にラストに乗り物に乗っての脱出があるゲームは名作ばかりだと思うの」
「きゅ、急にどうしたの?ナナちゃん」
「だって、ラスボス倒しました〜はい終わり〜。だけじゃ盛り上がらないでしょ。まぁそれでもいいゲームはいいゲームだけど。
そこに脱出シーンという、最後まで気が抜けない要素を盛り込むことで、最高にいいゲームになると思うの」
「分かる気がするな」
と、カエデ。
「何というか、<クリアした!>って感じは確かに一層出ると思う。オレは勘弁だけどな。
そんなの、クリアしたと思った瞬間脱出とか、心臓もたないよ」
「メ○○イトの逆襲も最後のシーンでやられまくりそうだもんね、カエデ」
楽しそうに話す3人に対し、
「……」
元気がないシズル。
「あれ、シズルちゃん?」
真っ先に気付いたのはマイ。
「え?」
「元気ないね。どうしたの?」
「う、うんうん?何でもない」
と、無理からにサンドイッチをほおばる。
「無理してるんじゃない?シズルちゃん」
「え?」
「無理してたら吐き出さないと、体に毒だよ?」
「……」
シズルは悩んだ。
ここで打ち明けると、この3人にまで危険が及んでしまうのではないだろうか。
とにかく自分たちを知っている存在……どうすればいいのだろうか?
「……」
だが、自分だけでは恐らく解決は無理だ。
「え〜〜〜!?私たちの正体を知ってる!?」
「し〜〜〜!!」
「ご、ごめん……」
予想通りのリアクションだ。
「いや、これはまずいことだぞ」
カエデが顎に手を当てる。
「仮にその女……アキラって女がオレたちの秘密を知っているとして、万が一それが世界中にバレたら……
オレたちは満足に動けなくなるかもしれない」
「ど、どういう事?」
「浦川先生が言っていたの。エンプティの色が変色する……あれは外部からの干渉かも知れないって」
「そ、そんな……」
顔からみるみる血の気が引いていくシズル。
「で、でも、もうすでにその女の人は動いてるかもしれないよ!そしたら……」
「くそっ、なんで急にそんな奴が出てくるんだ。とにかく、先生と浦川さんに相談してみよう」
「う、うん」
その日の放課後、
「オレは進藤先生に、ナナは浦川さんに連絡を頼む。マイ、お前はシズルと一緒に帰ってくれ。
万が一のことがあったら、シズルを頼む」
「分かった」
にわかに慌ただしくなる4人。
「ごめんなさい、私のせいで、こんな……」
「何言ってんのシズルちゃん!困った人を助けるのは当たり前だよ!」
「マイちゃん……!」
シズルの目に、涙が浮かんだ。
そしてカエデとナナを見送ったあと、家路を急ぐ二人。
「はぁ……はぁ……」
「がんばって、シズルちゃん」
「う、うん」
そして人気のない路地に差し掛かった、その時だ。
ゴス……
「うっ……」
ドサ……
首の後ろを手刀で殴られたマイは、気絶してしまった。
「マイちゃん!」
「危機的状況にあったら、団体行動。常識ちゃうの?」
「あ、あなたは……!」
歯を食いしばるシズル。
そこにはアキラがいた。
「ど、どうして……どうして私がここにいるのがわかったんですか!?」
「ふふん」
いつもはどっちの道を帰ってるの?
いつもは……ここを右に曲がるんだけど……
じゃあ左に行こう!
え?どうして?
いつも帰ってる道を通ったら、きっと奴は君の帰りを待ち構えているはず!だから……
「君、警戒心がないなぁ。なんでちゃんと見いへんの?」
「な、何を」
「朝何のためにうちがサンドイッチ作った思ってるん?」
「!?」
まさか、シズルはサンドイッチをどかした。
そこには、小型の盗聴器が仕掛けられていた。
「こ、これを……」
「その通り、君の言うことなんか筒抜けもええとこ筒抜け」
「……」
「そや、君にええもん見したる」
するとアキラはモンスターボールを取り出し、
「これ、な〜んだ?」
ポン!
その姿に、シズルは思わず半歩下がった。
おとといエンプティブレイクしたはずの、オニゴーリがそこにはいた。
「そ、そんな、どどど、どうして……」
「どうしてやと思う?答えてみ?」
「……」
無い知恵を絞って、この答えにたどり着いた。
「まさか、エンプティも、変異ウイルスも……!」
「……」
「許さない……!」
そしてシズルは変身する。
「君はアホなんか?相性最悪なそんなポケモンに変身してまで、このエンプティと戦うわけ?」
「……戦います」
「なんで?」
「でないと、マイちゃんが苦しむに決まってるからです!」
倒れているマイを見ながら、シズルは凛とした表情で言う。
「エンプティは倒さなきゃいけない存在……それに、友達のピンチだったら、私は無茶もします!」
「……ほう?」
「だって、友達を守りたいから!」
「おもろいなぁ。君」
ゴオオオォォォ……!
「!?」
「せやけど、無謀と無茶は違うって、知らんの?」
不敵に微笑むアキラに対し、シズルは退かない。
「……マイちゃん……!」
シズルはおいかぜを使うが、当然ながら接近してくるオニゴーリを止められない。
ならばと、コットンガードを使うが、やはり止まらない。
「……もう、ダメなのかな……!」
諦めかけるシズル。しかし……
「いや、マイちゃんを、守らないと……!」
「笑えるね。死ぬかもしれへんのにそうまでして守りたい友達って、何?」
「……」
「友達は、友達です!それを守るのに、理由なんていりません!」
その言葉を聞いたアキラは、再び笑みを浮かべた。
そしてオニゴーリは大きく口を開き……
「!?」
ポン!
「……あ、あれ?」
花束を飛ばした。
その瞬間、アキラが3回手拍子をして、
「合格。黒髪のお嬢ちゃん、もうええで」
と言った。
「……もう、思い切り殴るんだから、びっくりしちゃいましたよ」
首をさすりながら起き上がるマイ。
「え?え?え?え?」
全く状況が飲み込めない。
「まったく、浦川さんも好きだな。こう言うの」
「私は面白かった」
そこへカエデとナナもやって来る。
「あ、あの、これは……」
「……」
アキラが手を打つと、オニゴーリはイリュージョンを解いた。
……ゾロアークだった。
「え、えっと……」
「……浦川 晶(うわかわ あきら)。うちのダーリンがいっつもお世話になってます。
今回ダーリンの指示で、君をずっと試してたんよ」
「は?ダーリンの……指示?と、いうか、ダーリン?浦川……さん?」
その瞬間、
「えぇ〜〜〜!娘さんですかぁ!」
「遅っ!?」
マイが大きな声を上げると、
「違うよ」
「……は?」
ホロロジウム軍事センター。
「ダ〜〜〜リン!」
「あっちゃ〜〜〜ん!」
抱き合うカズマとアキラ。
「会いたかったよう!ダーリン!迷子になって、腹が減って、死ぬか思うたもん!」
「俺も心配だったよ!あっちゃんにもしものことがあればどうしようって思ったさ!」
「これからは、ず〜っと一緒やで!」
おいてけぼりの4人。
「あ、あの……今回のことを説明していただけますか」
と、ナナが言う。
「あぁ。うちは最初からここに来ようかと思ったんやけど、迷ってしまって……
その時、ダーリンが言ってた女の子に会ったんよ。君のことやけどね」
シズルの方を見る。
「で、せっかく君に会ったんやから、ちょっと試そうかと思ったんよ。君の精神の強さを。
案の定君は、諦めんと友達を守るために戦おうとした。
無謀な相手であったとしても、ね」
「まったく。はた迷惑な度胸試しですね。進藤先生からネタばらしを聞いたとき、足から力が抜けましたよ」
「私はずっと、気づいてた。浦川先生、シズルが危険な状況なのに{いつものモード}じゃなかったから」
「も、モード?」
そのネタばらしを聞いて、シズルは、
「……」
「シズルちゃん?」
大粒の涙を流し始めた。
「うぐ……ぐすっ……!」
「ご、ごめん!ほんまにごめんな!ここまで君を追い詰めてるとか、知らんかったから……
うちの勝手なわがままに付き合わせてもうて、ホンマにごめんな!」
「よ、良かったです」
「え?」
アキラのほうをじっと見て、こう言った。
「アキラさん、悪い人じゃないと、信じていましたから……」
「え?」
「あんなに美味しそうにご飯を食べて、あんなに無邪気な反応をして、悪い人じゃないと思ってましたから……
本当に、本当に良かった……」
「……ありがとな」
そんないい空気を、
ギュルルルル〜……
シズルの腹の音が切り裂いた。
「あ、君今日そういえば何も食うてへんねんな」
そして先ほど、シズルが地面に置いていたサンドイッチの箱を開けて、
「食べ?」
と、サンドイッチを差し出した。
「……はい」
そしてシズルは笑みを浮かべた、
「どれ、じゃあ俺も」
「ダーリンはお預け!また後で!」
「え、そんな……」
軍事センター内は、大きな笑い声に包まれた。
TO BE CONTINUED……